1965年、ジョージ・シートン監督作品。モノクロ。

以前から気になって、見たいなあと思っていた、ちょっと変わった戦争サスペンス。いやー面白かった!もっと早く見ればよかった。

1944年、ノルマンディ上陸作戦前夜。米軍情報部のパイク少佐(ジェームズ・ガーナー)は、任務中に薬を盛られて敵側に拉致された。やがて同盟軍の病院内で意識を取り戻した彼は、白くなりかけた髪や霞む目、何よりも1950年の日付入り新聞に愕然とする。
知らないうちに、6年もの時間が過ぎているというのか?
しかし実は、ここは、彼を騙して情報を引き出すべくドイツ軍がしつらえた、偽の病院だった!「記憶喪失の治療にあたるアメリカ人軍医」になりすましたガーバー少佐(ロッド・テイラー)の誘導は、同盟軍の上陸作戦詳細を、うまうまとパイクから引き出してしまうのか?

ストーリーを細かく書くとだいなしだろうから我慢しますが、「スパイ大作戦(Mission Impossible)」の先鞭をつけるような、コンゲーム風の着想がすばらしい。
どこでパイクが気がつくか、気がついたとしてどう出るか。じりじりしながら見るわけですが、見ごたえを増しているのは何と言ってもガーバー少佐の人物設定だろう。彼はドイツ軍人ながら、拷問を嫌ってスマートな知能戦で情報を得ようとしているのだが、親衛隊の傲慢でサドな大佐が「こっちで尋問(=拷問)したい」と横槍を入れてくるので苦い思いをしている。そのへんちょっと見る方も少し共感してしまう。
「36時間」というタイトルは、36時間で情報を引き出せなければ親衛隊が引き取るぞ、と大佐が強要したことによる。

敵ながら誠実さをかいまみせるガーバーは、パイクと一時心を通わせすらする。その助手である看護婦アンナ(エヴァ・マリー・セイント)に秘められたハードな背景もいい。単なるアイデアストーリーに終わらない厚みを感じさせてくれる脚本だった。
ドイツ側の人物、特にガーバーの描き込みが濃いぶん、終盤の逃亡劇はちょっと物足りなく感じたりもするのだが、最後までひとひねりあるキャラ作りにつとめる監督(脚本もシートン)の心意気に打たれる佳作。小味な"昔の映画"らしい良さ満載で、オススメです。

ロッド・テイラーって濃すぎるカンジであまり好きな俳優ではなかったが、今回は良かった~。見直しました(笑)
ガーナーも、相変わらずの、ちょっと緊張感のユルいまったりしたところが、受ける芝居で映えていたと思う。ガンガン攻めの姿勢に入っちゃう俳優だとバランスが逆に悪くなるよね。
2001年、クリス・バー・ヴェル監督作品。
珍しくも最近の映画。さる筋から「映画好き(特にクラシック映画好き)には、オススメ!」とのことで手を出して(レンタルして)みました。

カメラやフィルムなどの映画的小道具をあしらったクレジットタイトル。なんだか60年代のB級スリラーかTV番組みたいな主題曲。おお、今時らしくなくて期待できるかも…?

クレジットが終わったとたんに、映像は、雨の中ずぶぬれのオードリー・ヘプバーン!?アレレ?と、思いきや。
ガラすきの映画館内、うるんだ目で「ティファニーで朝食を」のラストシーンに見入る男(ティム・アレン)。彼の正体は、実は殺し屋“毒舌ジム(Critical Jim)”だった。
重度の映画マニアな彼は、マフィアの依頼で捕らえた男タウト、実はフィンチ(クリスチャン・スレイター)に、近頃の映画はなっていないと愚痴る。
「昔の映画はいい。ストーリーがある」

「僕にもある」と答えた犠牲者に、殺し屋は言う。では話してみろ、処刑の最終指令を待つ間。
話が面白ければ、ポケベルが鳴っても無視してやるかも…
そこでフィンチはジムには捕まるまでの込み入ったいきさつを語り始める。それはダイヤモンド泥棒と脱獄とマフィアの追撃と、そして恋の物語だった…(回想場面つき)。


いやー、面白かったです!
なんてったって「映画愛」のお話なのがいいですね。しかもクラシック映画寄りなので、派手な流血や爆発や濡れ場なんかはお呼びでない、とことんファンタジックでロマンチックでクラシック。奇術師でもある泥棒(リチャード・ドレイファス)は、通行人に夢を振りまく片手間にダイヤをかっさらって逃げてくし、通信手段というと、イマドキ鳩だ!(笑)
「そんなんで大丈夫か?(リアリズムじゃないんじゃない?)」と思う人はいるかも。ユルい所も多少ある。が、“素敵場面作り”優先のストーリーは、私の好みにはバッチリ合っている。ロマンチック・コメディといってもいいかな。

ジムは様々な映画からの引用を口にしたり、語りの手法(?)についてツッコミを入れつつ「素晴らしい結末」を期待してフィンチの「物語」に聞き入る。まさに映画ファンの典型だ。リアルを映画的至福に変えてしまいたい、そして時には映画の中の展開をあわよくば自分好みに変えてしまいたい、と望む、映画ファンの抜きがたい習性をオノレの心のおもむくまま、我儘放題に発揮するジムに、映画好きは何度でもニヤリとせずにはいられないだろう。
ふふふふ…


ラストまで、完璧にヤられました。最後の最後まで、キモチのいい映画。
オススメに従ってよかった~♪ありがとうございました!m(__)m
「近頃の映画」でも、たまにはこんなのがあるんですね(笑)最近の映画なのに驚いて★多め。
そうしょっちゅう使える手でもないでしょうが…

エンドタイトル、ジムの口にした映画の数々について、いちいち表記してるのもいいですね(笑)
邦題は手抜きな気がしますが、かといって中身を語らずにうまくタイトルつけるのも難しそう。
でもせめて、ロマンチスト向きな映画であることが分かるといいのにな…。
まあ、原題からして何だかわかんないんですが。⇒"Who Is Cletis Tout? "


<追記>
あとで、エライことがわかりました。
モノクロ映画と思って見ていたのですがカラーだったんですね!(爆)

たまたまその日だけ、プレイヤーのケーブルがゆるんででもいたのかなあ。なにしろ私のみる映画はモノクロ率結構高いので全然不思議に思いませんでしたよ、やれやれ。
それともまさかDVDが不良品とか、いやそれはないか?レンタルだったんで今ではもうわかりませんが(笑)
モノクロって上品だなーと思いながら観ていたワタシ…
1962年、アンリ・ヴェルヌイユ監督作品。モノクロ。

大酒を飲むたび、中国での思い出を熱く語りまくるアルベール(ジャン・ギャバン)。だが、大空襲の中で、「夫婦生き延びてホテルを再建できたら酒を断つ」と誓いをたて、以来15年余りそれを守り通していた。
「酒を断ってから気難しくなった」と評される彼のホテルに、ある日ガブリエル(ジャン=ポール・ベルモンド)という青年が宿泊する。たびたび大酒を飲んでは騒ぎを起こす、だが憎めない彼を、アルベールは「何か忘れたいことがあって飲むのさ」と、静かな目で見守る。やがてある晩、ガブリエルの“爆発”に付き合ってアルベールも久々に鯨飲し、浜で花火を山ほど打ち上げたり大騒ぎをする。
その翌朝が、二人の別れであり、再出発でもあった…

このように書くとストーリーらしいストーリーもないし、主人公たちが何に悩み何にこだわっているのかの説明も、あえて説明不足に断片だけで放り出している。いかにもおフランス…というか欧州芸術映画って感じの心象風景だらけの映画なのだが、ユーモアも結構盛り込まれているし、なにしろギャバンとベルモンドですから、キャラクターの魅力だけでズルズルと見せられてしまう。ベルモンドは勿論だが(元々大好きだ!)、今回ギャバンの可愛らしさにはちょっとビックリした(ギャバンはそんなに興味がなかった)。白髪頭の太ったオッサンだが、ベルモンドとハジけるところなんか少年のようだ。

ベルモンドは元闘牛士か、昔闘牛士になりたがっていたのか、という描写があって、酒場でフラメンコをちょっと踊ったのでこれも驚き。でも、ほとんどは上半身だけか下半身だけ、全身をうつしてたのは最初の数小節だけだから吹き替えかなー(笑)

夫が大酒を飲んで中国にトリップするのを心配(それとも嫉妬?)する妻(シュザンヌ・フロン)の描写は、個人的にはイマイチわからない。“体壊さない程度なら飲ませりゃいいじゃん”と思ったり。ただ、その妻の態度を責めてる描写なわけでもない。十何年ぶりに泥酔した夫はすました顔で、最後にはまたアメを口に放り込んでいる。

私は酒・タバコとも飲まない家庭で育ったので、泥酔することの意義は実はピンとこないし泥酔したこともないが、迷走中の青年が色々な思いに決着をつけてきちんと人生を再開するのには、あの大騒ぎが必要だったのだろうし、何と言うか、主人公たちのソレは大変魅力的な泥酔である。また、ラストの二人はそれぞれに何かを失った(諦めた)ように見えて、同時に、より確かな足取りで前に進んでゆくようにも見える。
寂しいような明るいような、不思議な味わいの映画だった。


でもまあ、強引に閉じ込められ見せられなかったらなかなか見ない映画だな、私には。
ベルモンド好きなので、そのうち見よう見ようと思いつつ、後回しにしてた作品(笑)
色々ホメてるのに★3て…。えーと、何というか、気持ちよく見れたが特にあれこれ語る気にもならず、というところなので。
実は出張で三時間以上乗るハメになった列車の中で、PCにイヤホン差して見ていたのだった…
(一回そういうのも試してみようと思って)
その前にも半時間ほどPCで仕事もしていたせいか、映画が終わるか終わらないかの凄いタイミングでバッテリが切れてしまいました(笑)

やっぱ映画バッテリで見るのは一本が限度か。やってみないとわかりませんな。
やはり映画は家(or映画館)で見よう。トンネル入るとうるさいし。


えーと出張は一泊で、ホテルで書いてます。駅近とインターネット可能、というのだけで選んだビジネスホテル。明日もあるのでさっさと寝よう…
The Merry Monahans (1944)
The Merry Monahans (1944)
The Merry Monahans (1944)
1944年、チャールズ・ラモント監督作品。日本未公開、モノクロ。

いわゆる正規盤は出ていないので、パブリックドメインを謳う某海外サイトから買ってみましたオコナー映画第3弾。字幕なし、画質もかなり悪い。まあ40年代も前半の映画ですし…(一度画面がブラックアウト、そして一度ホワイトアウトした。一秒ずつだから許すことにする)
それでも十代の頃のドナルド・オコナー&ペギー・ライアンコンビがじっくり見れて満足です。44年秋公開だけど、25年生まれのオコナーが18歳で兵役に行く前に会社が撮りだめてたモノのはずなのでとにかく彼は17歳以下ですね(苦笑)、キャスト的にもまあまあ盛りだくさんかな?今世紀前半のヴォードヴィル一家の物語。

1890年。ピート・モナハン(ジャック・オーキー)は、共に舞台に立つリリアン(ローズマリー・デキャンプ)に求婚するが、芸人仲間のローズが「この前私と約束したでしょ!あれは嘘なの!」と騒ぎ出し、リリアンは姿を消す。「酔ったはずみの婚約」を思い出せないながら、結局モナハンはローズと結婚してパートナーとし、幼い子どもたちも加えて“モナハン一家”は"3 Monahans"、"4 Monahans"と、人数につれ名を変えながら巡業を続ける。
が、20世紀に入った頃、突然ローズは、貧乏な巡業生活に疲れた、と家族を捨てて失踪。自分が先に婚約していたとの話も実は嘘だったという。「今日からはまた"3 Monahans"だな」ピートは息子ジミー(オコナー)と娘パッツィ(ライアン)に言い聞かせて、これまで通りに舞台を続け、業界での評価も次第に上がってゆく。

ある日、ジミーは巡業先へ向かう列車で、偶然リリアンの娘で女優の卵シーラ(アン・ブライス)に出会う。同じ劇場に出演する二人は恋に落ち、ピートも今は未亡人のリリアンに改めて求婚しようと決めるが、その寸前にリリアンは座長のペンブルック(ジョン・ミリヤン)と"娘の才能を生かすために"と婚約してしまった。ピートは酒に溺れて舞台に穴を開け始め、兄妹は父親抜きで舞台をこなすようになる。兄妹は父親には「二人だと出来はイマイチ、パパがいなきゃ駄目」と言い続け、ブロードウェイの大劇場から声がかかっても「父親抜きで二人だけ」と言われるとオファーを断ってしまうが、兄妹二人の演技が高評価と知ったピートは姿を消す。が、一人で他の小さいショーに出演している父親を捜しあてた兄妹は舞台に飛び入りし、ブロードウェイのプロデューサーも立ち直ったピートを見て一家三人での契約をOKする。シーラと、ペンブルックとの婚約を解消したリリアンも合流し、"モナハン一家"は今度は"5 Monahans"に…。

列車内で退屈したジミーが走る列車の屋根によじのぼったり(煤だらけになった彼を、シーラが最初タダ乗りの浮浪少年と思いこんでお金をくれたりする場面も(笑))、後になるとシーラまで連れてよじのぼったりするのはさすがにムチャだと思うが、オコナーとブライス(15歳位?)の恋愛シーンは何とも可愛らしい(ペンブルックに反対されて駆け落ちまで計画する熱烈ぶりだ)。ノスタルジック人情バックステージミュージカルとして結構楽しかった。昔のヴォードヴィルって、やたら家族興業だったんですよね。バスター・キートンの子ども時代だって"3 Keatons"だったし「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」だって"4 Cohans"だったり「ショウほど素敵な商売はない」だって"5 Donahues"だった。(たまたま、「ヤンキー…」は今借りてきて手元にあるが、こっちもお母さんがデキャンプだったなあ…)

ナンバーもそれなりに数があって楽しい。お約束の巡業列車にポスターとか映像とか年度表記とかのかぶるショットが山ほどあります。ライアンの細い手足はビュンビュン動いて凄いなあ。オコナーも歌って踊って楽器持って、ジョルスンの真似とか芸達者ぶりを発揮してる(彼のダンスの旬は20代以降だけどね)。ブライスはほぼ歌のみ。オーキー、太ってるのにそれなりに踊るんだなあ(オーキーってと「独裁者」だが)。ここまでモテるのは不思議(笑)
一番気に入ってるナンバーはこれかな。父親が現れないので兄妹で強引に舞台に飛び出す。

http://www.youtube.com/watch?v=vkbZYHb2jPs

最初は兄妹役に幼い子役がもう一組いるのだけど、最初にオコナー&ライアンに変わる所はちょっと無理があって笑えた。立った所縮めて合成してるんだもん…こういうことをすると安っぽく見えるよね(^^;)…ああ、ユニヴァーサル・クォリティ!(個人的には★4だが…)

聞き取りはやっぱりあんまりできてません。英語字幕でいいから欲しいなあ…
最近、"Francis goes to Navy"の単発DVDがマイナーメーカーから出ているらしいのを見つけたのだが(端役時代のイーストウッドが出てるためにDVD化されたようだ)、字幕無しらしいから買うのを迷っている…
早く正規盤(FrancisボックスVol.2)出してよユニヴァーサル!(涙)
オコナー&ライアンBox出してくれるのでもなおよし。
結婚五年目
結婚五年目
結婚五年目
1942年、プレストン・スタージェス監督作品。
昨夜ダビングしようとしていて、ウッカリ半分ほど見てしまった。今日文化の日だってオシゴトだというのに。…仕方がないから仕事から帰ってから残りを見ました。笑うべきか泣くべきか(勿論前者)。

発明家トム(ジョエル・マクリー)と妻ジェリー(クローデット・コルベール)は、結婚五年目の記念日を迎えようと言うのに、発明に出資者が見つからず家賃(えらく立派なアパートだが)も滞納中。アパートを見に来た奇矯なテキサスの老富豪が美人のジェリーにポンと大金をくれたので家賃のほうはひと息つけたが、これがキッカケで二人は大喧嘩。ジェリーは「私たち、別れたほうがお互いのためなのよ!」と叫んで、トムを振り切り、離婚のメッカ・パームビーチ行きの夜行列車に飛び乗る。
文無しの彼女を助けてくれたのは、世界的大富豪ハッケンサッカー(ルディ・ヴァレー)。彼女は追ってきたトムを「兄だ」とハッケンサッカーに紹介し、出資者になってもらおうとする。が、ハッケンサッカーに結婚を迫られる一方で、その姉(メアリ・アスター)がトムに一目ぼれして積極的にアプローチするのを見ると、別れる気満々だった筈のジェリーも心穏やかではいられない。珍妙な四角関係の行き着く先は…?

タイトルバックの映像からも、主人公カップルが尋常ならざるスッタモンダの末に結婚したらしきことが見て取れるが、まー出るキャラ出るキャラ全員ヘンで可笑しいのには驚くほどだ(それがスクリュボールコメディのお約束でもあるのだが)。夫の方はまだしも、愛する夫の事業を成功させるために別れようと言いだす妻、気前とタイミングのよすぎる老富豪、夜行列車内で狼藉三昧の狩猟クラブの金持ち連中、ケチなのか鷹揚なのか判断に苦しむ富豪青年と奔放すぎるその姉。
夫婦の名前がトムとジェリーってのも、エ?と思うが、考えてみたらネズミのジェリーはJ、ヒロインはGのジェリーだから関係ないか(笑)

アゴの落ちるよーなハッピーエンディングまで、一気に突っ走る。
…いや、満腹いたしました。
これだけ突き抜けてバカバカしいのは才能ある者にしか作れまい。というかよくこんなの本当に撮影したなあ。

クローデット・コルベールはあまり好きではないのだが、楽しめましたね。
ジョエル・マクリーは、まあまあ。ケイリー・グラントみたいにコメディに配置したら光り輝くようなことはないのだが、「できすぎない」ふつうっぽい二枚目ぶりは、美女に引きまわされる姿に嫌みがなくて悪くない。

「レディ・イヴ」のぶっ飛んだバカバカしさを思い出しました(同じ監督だから当然か)。
ま、コメディ好きですから私。
Words And Music (1948)
Words And Music (1948)
Words And Music (1948)
1948年、ノーマン・タウログ監督作品。日本未公開、カラー。
ううっ、ストレスがたまっていたせいか…オフの一日でDVD二枚見てしまいました。
いかん。仕事も持って帰ってるのに。

米盤ミュージカルDVDボックス、"Classic Musical from the Dream Factory volume 2"(英語字幕あり/リージョンオール!) 収録分より、最後に残った一作を視聴。
(参照http://13374.diarynote.jp/200902271555324824/)

ロレンツ・ハート&リチャード・ロジャースの作詞作曲コンビの伝記映画。もちろん半世紀前のハリウッド製伝記映画だから、好き勝手に史実は変えている筈なのでフィクションとして見ればヨシ。見所は勿論、このコンビの名曲群を歌い踊るゲストスターたち(一部は実名一部は役名で登場する)のパフォーマンス。ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランド、ペリー・コモ、リナ・ホーン、ジューン・アリスン、ヴェラ・エレン、ベティ・ギャレット、シド・チャリシー、アン・サザーン、と豪華絢爛。
そして、ハートがミッキー・ルーニー、ロジャースがトム・ドレイク。

午前中ユニヴァーサルのB級白黒ミュージカルを見て午後コレを見ると、さすがに豪華さ加減が全然違うな、と思います。コレで製作年度が同じなのかッ!
ただ…私にとっては、それほど好みのスターがいるわけでもないんですね(^^;)
既に「ザッツ・エンタティンメント」シリーズである程度見ているナンバーもあり、ストーリー自体はてきとーなので、ミュージカルは好きなんだけど時々退屈に感じました(笑)
一番良かったのはジュディとミッキーが久々に?一緒に唄い踊る"I Wish I Were in Love Again"。ミッキー・ルーニー、老け始めてるのはさておいても元々濃いキャラなわりに歌声に嫌みがないのがいいですね。冒頭「マンハッタン」をちょっと歌う場面もあった。

学生時代にコンビを組んだ二人、だんだん売れ出して、超売れっ子になって、ロジャースは奥さん(ジャネット・リー)もらって幸せな家庭を持つけどハートは好きな娘にふられて背の低いコンプレックスや孤独感で心身を病んで大ヒット続きの陰で早死にし、追悼コンサートがエンディング。中盤少し飽きていたけど、終盤のルーニーの熱演にはつい見入ってしまった(^^;)
まさかルーニーにさらわれるとは思わなんだ(私の中で。世間一般的にはさらってないかな)。

アンディ・ハーディBOX、やっぱ見てみたいような面倒くさいような。日本盤出ないよネエ。

ルーニー以外だとやはりジュディのソロと、ケリー&ヴェラ・エレンの「十番街の殺人」でしょうか、私的には。珍しくいなせなお姉ちゃんなヴェラ・エレンがカッコイイ。アパッシュダンス(最近覚えた(笑))のテイストが入ってるのかな、ただまあ、私の日記を読んでる人ならご想像つくでしょうが、例によって私モダンバレエっぽいのよりタップの方が好きなもので…。
Are You with It? (1948)
Are You with It? (1948)
Are You with It? (1948)
1948年、ジャック・ハイヴリー監督作品。日本未公開、モノクロ。
某海外サイト(lovingtheclassics.com)からの、未公開ドナルド・オコナー主演レア作品シリーズ第二弾(笑)
"Feudin’, Fussin’ and A-Fightin’"よりも、もっとわかんないだろう(設定的に)と思いながら字幕なし盤買ったけどやっぱりセリフわかんない。ハーバード出の若くて優秀な保険数理士役ってんで、絶対カタい専門用語連発するに決まってるし。それが、色々あってカーニバルの一座に…というとショウビズ用語も連発されるに決まってるし(^^;)と、今回は最初からヒアリング投げ気味です。
ただ、そういう珍しめな役なことと、ソング&ダンスナンバーはそこそこありそうって事で購入決めました。画質の悪さはそこそこ。
とりあえず一番詳しいTCMのシノプシス(http://www.tcm.com/tcmdb/title.jsp?stid=67574&atid=25449)を頼りに視聴。

計数の天才青年ミルトン(オコナー)は優秀な仕事ぶりでトントン拍子に出世しつつあったが、初めてのミスで勤める保険会社に損害を出した事で大ショック。会社も秘書兼恋人ヴィヴィアン(オルガ・サン・ファン)も失ったと思い公園をさまよううち、詐欺師まがいの芸人ゴールディ(ルー・パーカー)と知り合い、彼に連れられ一緒に旅回りのカーニバルで働くことに。カーニバルの生活がすっかり気に入ったミルトンと、彼を追ってきてこれまた芸人生活に入ってしまったヴィヴィアンだが、一座は実は他の投資家から買収の憂き目にあっていた。保険会社の重役たちもミルトンの才が惜しくなったらしく復帰を勧めにくるが、ミルトンらは保険会社の資料の中に、カーニバルのピンチを救うヒントを発見する。

話が進むとだんだんフツーにソングアンドダンスマンになっちゃうけど、専門用語を連発するところは期待通りに珍しいクールな目つきを見せてくれるオコナー♪ミニ計算尺を持ち歩いてるのが時代を感じさせるが(笑)
確率論や統計学の数学的才覚をギャンブル系ゲームに生かす方向でカーニバル生活に入るのかと思ったら(スロットマシンでジャックポット当てたり的当ての数字を正解しまくったりする。…ホントに保険数理士ってそんな事出来るのか、大変怪しい)、主人公意外に歌と踊りも出来ちゃうのでミニレビューでばんばん活躍する。…まあ、オコナーだし…
ゴールディにバーに引っ張っていかれて一杯機嫌になった彼が、タップダンスは数学的なものだ(リズム等が)、とか言って突然踊りまくったりするのが前フリだが、そんな強引な、と苦笑しつつも、踊ってくれるのは大歓迎なので文句も言えない。ちなみにその時少し一緒に踊るバーテンダーが振付家のルイ・ダ・プロン。よくオコナーの作品で振付やってるおなじみの人ですが、スクリーンで顔出すのは珍しいかな。

てな調子で、いくらミュージカルにしても相当に無茶なシナリオなのですが、何曲も歌と踊りが見れたからよしとしよう(あまり記憶に残る歌はないが)。一番イイ感じなのはバーでの数学的(笑)タップシーンですが、芸人生活には純白燕尾服とかアラブの王族風とか中華マジシャンとか王子様風とか、色々コスプレがあって楽しい。特に王子様ナンバー(ややバレエ風)はレア感があってなんだか嬉しかった(笑)
ピチピチに若いですしねえ。20代前半ですよ。

舞台やTVが主なのかあまり映画に出ていないようだが、ルー・パーカーも結構いい味出してた。名前まで似てるが、登場した時はルー大柴を連想した。まあそれだけ胡散臭さと調子の良さ全開な顔の長いオッサンということで(笑)
Feudin’, Fussin’ and A-Fightin’ (1948)
Feudin’, Fussin’ and A-Fightin’ (1948)
Feudin’, Fussin’ and A-Fightin’ (1948)
1948年、ジョージ・シャーマン監督作品。モノクロ。
某海外サイトからこわごわ、ドナルド・オコナー主演の未公開作品を色々と買ってみました。パプリックドメインだとのことですが海賊盤かも(苦笑)
画質はイマイチだが元々古いしレア映画なので個人的には納得いく程度。字幕は皆無ですが、ストーリーは割と単純なので大丈夫?

年代は不明だがちょっと昔の、西部劇っぽい風情の田舎町リムロック。駅馬車に乗り遅れそうになったのを、一気に追いかけて飛び乗った旅のセールスマン・ウィルバー(オコナー)の駿足を見て、女町長マリベル(マージョリー・メイン)率いる町の首脳陣は、強引にウィルバーを拘束する。毎年恒例の、隣町との徒歩競争に出場させようと考えたのだ。リムロックは近年ずっと連敗中で、今年負けたら町ごと破産しかねない(賞金とか賭け金とか掛っているらしい)。
突然かどわかされて厩に軟禁されたウィルバーは当然腹を立てるが、町長の姪リビー(ペニー・エドワーズ)に惹かれて、結局レースに出る事を承知する。が、前夜に隣町の選手(リビーに関してもライバルである)が厩の水桶に毒を入れたため、それを飲んで具合の悪くなった馬を夜っぴて看病したウィルバーは、競走当日には完全にヘロヘロになっていた…

いーかげんな設定のコメディだが(強圧的に押し付けるよりも報償とか示して頼むほうが早くすむだろうに)、西部劇調の背景やのんびりムードは悪くない。幾晩もを共にした馬に思い入れてしまう主人公の人の善さもいいし、強面女町長の相方のヘナヘナしたオジサン(パーシー・キルブライド)も最後だけシャンとしたりして面白い。
ヒロイン・エドワーズはちゃんと自分で歌ってるみたいだ…派手さはないけど清純で可愛いカップルになってる。
競走シーンはそこそこ長く、主人公本当は速いのに、何度も倒れて寝そうになったり、隣町の選手の妨害に悩まされたりと波乱万丈なドタバタは結構楽しめた。
勿論最後は、なんとかかんとかハッピーエンド!オチもスッキリ決まっていい感じでした。

そして何より、オコナーのちょっと素敵なミュージカルナンバーが二曲含まれている。厩の中での凝ったソロタップ"Me And My Shadow"(影と踊ったり壁上り宙返りしたり)と競走前夜のパーティ会場の外でリビーと歌い踊るロマンチックな"Sposin’"。

http://www.tcm.com/video/videoPlayer/?cid=238589&titleId=74762 (Me And My Shadow)

ダンスもだが、歌もいつもながら良いなぁオコナー。

いやー頑張って購入してみて良かった~!
B級作品なのかもしれないが、可愛くてノスタルジック風味な楽しいコメディでした(*^^*)
諦めかけていたものを見れた嬉しさで点もやたら甘くなります。
1991年、バート・ケネディ監督作品。
ありゃ、こんなところにバート・ケネディが、と、ついレンタルしてしまった。
しかも主演はハルク・ホーガン…いかにもイロモノくさいSFコメディだが…

宇宙戦士のシェップ(ハルク・ホーガン)は、銀河の極悪将軍をやっつける任務をこなした後、宇宙船のエネルギー再充填に必要な数週間、「休暇でも取っとけ」という上司の言もあり、地球に降りることにする。
彼が下宿先に選んだ郊外の家の主人は、建築設計士のチャーリー(クリストファー・ロイド)。妻(シェリー・デュバル)と二人の子を抱え、社長に昇給を願い出たいが言いだせない気弱で平凡な中年男。下宿人の妙な言動をいぶかしんだ彼は、シェップをつけまわして正体を探りだすが、ある日シェップを狙う宇宙の賞金稼ぎが現れて…

まー何といいましょうか、モノすごくありがちで予想のつく演出と展開のコメディでした(^^;)
もうちょっと盛り上がらんかなあ、とは思うけど、とりあえずクリストファー・ロイドがいい感じなのは救いか。家の離れに作業場作ってゴーグルや溶接機や装備して工作が趣味らしい。そんな、オッサンだけど根っこがオトコノコ、なのがいいね。バック・トゥ・ザ・フューチャーの「ドク」役だった人なんだけど、「バック」ではドクの発明品にマイケル・J・フォックスが目を丸くしたりキラキラさせたりしながら冒険するわけですが、ここではロイドがホーガンのハイテク武器に目を丸くしたりキラキラさせたりしつつちょっとだけ冒険したり。でも中年の普通のパパだから冒険にも限度があって、まあそれでも彼なりに頑張るというところでしょうか。

ホーガンは、こんなイイ人でいいんか、と思ったけど製作にも噛んでるようだしなぁ。
とりあえず主演二人に嫌味がないのは長所?…脚本の出来はちょっとユルめだけど。
さすがに今回ケネディは脚本には名を出してません。

「お約束」のジャック・イーラムも、隣人役で出てるけどホントにカメオ出演て感じ。少し残念。

とはいえ、ひとつだけ、ムチャクチャに私の心を揺さぶったギャグがあったのでよしとしよう。
シェップの"冷凍銃"をチャーリーが紛失してしまい、二人が探しにでかける場面。とある銀行の入り口で、警備員が凍りついている(しばらくすると元に戻るらしい。すごく健全なお子様OKなコメディだ)。二人がそろそろと中へ入ると、銀行員やお客たちも凍りついている(拾った誰かが冷凍銃を銀行強盗に使用中らしい)。
霜の降りた銀行の奥へと進む二人に、ふと、…しめやかな「ジングル・ベル」の曲がかぶさる。

…!

私だけでしょうか、天を仰いで爆笑してしまったの(^^;)
たいへんに思いがけない方面からきた笑いだったので、虚を突かれました。

なわけで、★2にするのはやめときます。もっと救いのないダメコメディも存在するし。
1958年、ジョージ・アボット&スタンリー・ドーネン監督作品。

野球は昔は結構好きだったし、気になるミュージカルの一本だった。だいたい、野球狂が悪魔に魂を売ってひいきのチームを優勝に導くってアイデアが素晴らし過ぎます。ビバ、野球界のファウスト!

初老の夫婦ジョー(ロバート・シェイファー)とメグ(シャノン・ブーリン)の居間にはどーんとTVが控えている。仲良し夫婦なのだが、一年の半分(野球シーズン中)は私なんか眼中にないの、と妻は淋しく歌う。背景がマルチスクリーンで似たような他のご家庭がうつるが、そのうち一つが浴衣の日本人夫婦なのは御愛嬌。
贔屓のセネタースの連戦連敗に、ジョーが悪態をつくと、なんと悪魔が出現する。悪魔は一見小柄で妙にお洒落なスーツの中年男(レイ・ウォルストン)。魂と引き換えにセネタースを救う天才スラッガーにしてやろうと持ちかけ、ジョーもついつい誘惑に乗ってしまう。青年ジョー・ハーディ(タブ・ハンター)の姿に変身し、見事なバッティングと華麗な守備の謎の新人として、最下位のチームを優勝争いにまで導く。

意外に抜け目のないジョーは、取引前に、9/24までなら途中キャンセルが可能な「免責条項」を認めさせるが、勿論悪魔はこれを封じるべく様々な罠を張り、優勝決定戦は9/25にまで伸びてしまった。さあ、どうするジョー?

野球☓ミュージカルなので健康的なナンバーが多い中、目玉は悪魔の手下でジョーを誘惑しにくる魔女ローラ(グエン・バードン)。家を放り出してきたとはいえ老妻への愛がゆるぎない、ジョーの真面目さに逆に恋してしまうのだが、お色気タップリテクもたっぷりのキレのいいダンスを見せてくれる。ただまあ、タブ・ハンターと並ぶとやっぱちょっとトシかなあ。舞台でも同じ役だったそうだけど。誘惑ソング"Whatever Lola Wants"より振付のボブ・フォッシー自身と踊る"Who’s Got the Pain"のほうが好みだ。あまり踊れないハンターとデュエットの"Two Lost Souls"もイイ。

とはいえ、…やっぱり私って、ボブ・フォッシーって…そんなに興味わかないなあ。うまいと思うし、いいと思うけど(グラウンドで選手たちの踊る振付は、なるほどスライディングとかって、フォッシーの元々のダンスにかぶるなあと笑えた)、なんでだろう。やっぱり、結局、モダンバレエよりタップが好きということか。

そんなこんなで、ミュージカルとしてよりコメディとして楽しめた一作でした。
チームのメンツも皆いかにも頭が悪そうで、そして監督(ラス・ブラウン)はいかにも百戦錬磨な白髪頭で、50年代ムードたっぷり。地味~な老妻に、若返った夫が逆に未練たらたらなのもよろしい。老妻、もしかしたら何か感じ取ってるのかも、てのもいいな。

ウォルストンの洒落者ぶりは、なんだかアステアのファッションを参考にしたみたいな感じで可笑しかった。白スーツに赤タイ赤ベストなんかイースター・パレードみたいだ(笑)
地平線から来た男
1971年、バート・ケネディ監督作品。
主演のジェームズ・ガーナーをはじめ、助演のジャック・イーラム、ハリー・モーガンらワキを固めるメンツもかぶって、「夕陽に立つ保安官」の姉妹編ともいうべきコメディ西部劇(内容は全く関連がないが)。が、原題が"Support Your Local Gunfighter"なのには今回初めて気がついた…(「夕陽…」は"Support Your Local Sheriff")。
地元の保安官はわかるが、地元のガンマンて何…(笑)

ずいぶん前にTVで見たきり、スカパー録画で久々の再見である。

昨日今日とオフ。先週は忙しかった。日曜もあれこれ出歩いて疲れを残し、しかし今日は実家へ顔出しする用事もある。こういう時は、家族に弁当を作って送り出してから、すぐにちょっぴり1時間半程二度寝をするべきだろう、出かける前に。…が。
…映画もしばらく見ていない。最初のところだけでも、とコーンフレークを食べつつビデオデッキの前に座ったら、…1時間半程の映画を最後まで見てしまった(爆)

西部のワイルドな景観を背景に、軽快に突っ走るSL。中には「明日は挙式よ」と盛り上がる裕福そうな姥桜(マリー・ウィンザー)と、少々ゲンナリ顔のラティゴ(ガーナー)のカップル。
が、案の定?夜中に停車した小さな鉱山町で、ラティゴはこっそり途中下車。おりしも町は、鉱山主二人の対立による紛糾の真っ最中だった。その一人バートン(モーガン)は、ラティゴの事をライバルが呼んだ著名ガンマンだと誤解し、逆に金を積んで味方に取り込もうとする。
ラティゴは町で意気投合した飲んだくれのジャグ(イーラム)をガンマンに仕立てて売り込むが、やがて怒った本物がやってくる。「さっさと逃げよう」と誘うラティゴに、意外やジャグは「オレにもプライドはある、逃げられない」。そうなるとラティゴも彼を巻き込んだ責任を感じて…この窮地、彼らはどう切り抜けるのか?(…あえて伏せます。私自身、ラストを完全に忘れていて楽しかったので)

前作以上にコメディ色は強い。バートンは仇敵の妹とデキていて老いらくの恋が情報源。お約束のじゃじゃ馬娘スザンヌ・プレシェットは何かというとライフルを乱射しながら、夢は東部のお嬢様大学へ行くこと。テンポの良さは「夕陽」以上かもしれない。
主人公からして、前作では強いのにトボけた男だったが、今作のガーナーは口先男もいいところ、ほとんど詐欺師?でギャンブル中毒、実は東部の出身で馬も苦手という西部劇ヒーローとはズレまくりの設定。でも、憎めないんだね(笑)
イーラムは何だか前作以上に「イイ男」になっちゃってて、ガーナーのダメ男度が上がった分、実にみごとなバランスだ(笑)
人畜兼業の医者(ダブ・テイラー)、酒場の女将(ジョーン・ブロンデル!)、宿屋の女主人や賭場の元締め、駅員兼電信係に至るまで、街の人々もそれぞれ一癖ある描き方でどの場面も飽きさせない。カメオ出演のガンマンは、何と驚きチャック・コナーズ?

コメディ好きの私には、いやー、映画ってほんとにイイもんですね、と故・某評論家ばりのクサイ台詞をもらしそうになっちゃう快作でありました。

…でも、昼寝しそびれたから、早く寝ないと…
Francis Covers the Big Town
Francis Covers the Big Town
Francis Covers the Big Town
1953年、アーサー・ルービン監督作品。日本未公開、モノクロ。
"フランシス"シリーズ四作目。

タイトルバックを、大きな鞄を持ったピーター(ドナルド・オコナー)が、テクテク歩いてゆく。ラバのフランシスと一緒に。彼方に林立する摩天楼を見やり「さてどんな仕事を探そうか」。
一人と一匹は、大都会=NYへとやってきたようです。『ウェスト・ポイントの優等生』は、どうやら一夜の夢だったらしい(笑)。今回は、完全前作無視で強引に新ネタに入っちゃうんだね。別にいいけど。

「新聞の編集者を目指すのもいいな、経験があるんだ」とピーター(高校時代の校内新聞とはいえ)。何とか掃除夫として新聞社に入った彼は、頑張って雑用係へ昇格。お人よしの彼は美人の社交欄担当者アルバータ(ナンシー・ギルド)や他の記者に情報を譲っちゃったりして遠回りをしますが(当然ネタ元はフランシス…)、フランシスの異常なまでの情報収集能力があれば、花形記者への道は遠いわけがない。
例によって、時々精神病院に入れられかけたりしながらも(笑)、やがてピーターの署名入り記事が、毎日のように紙面を飾ることになる。スクープしまくってるうち、裏社会のボスに睨まれたり、殺人犯の濡れ衣を着せられる大ピンチにも逢うのだが…

今回は(珍しく)、ロマンス方面までにぎやかだ。
フランシスの話をしちゃったのが災いしてアルバータには振られたものの、隣の八百屋のお嬢さん(イヴェット・デュグェイ)は最初っからピーターに好意的。フランシスにもニンジンを運んでくれたりするのだが、「まだまだ子ども(話の中で18才の誕生日を迎える)」と思っているピーターの目にはとまらない(^^;)
結局、フランシスのアドバイスで大人ッぽくイメージチェンジに成功して、彼ともいい感じになれるのだが、ホント、何でもできるんですねぇフランシスって…

色々な意味で、今作はかなり盛り返してましたね(*^^*)
ピーターたちにも珍しく成功者っぽい満足度の高い終わり方だし、田舎道でなく、大都会の下町を歩く一人と一匹というのもなかなかイイ感じ。「雨に唄えば」(1952)が大当たりした後の製作だから余計かな?(とはいえ今回も歌などはない)
都会的になったぶん、風変わりでピュアなお兄さん、というピーターのキャラがやや「普通」っぽくなった気もするが、本人にはこのほうが幸せだろうね(^^;)

しかし、これでDVD収録作はもう全部見ちゃったな~。淋しいな~。
フランシス、あと二作(ルーニー主演分もいれたら三作)はある筈なんだけど、vol.2は出ないのかしら。字幕なしVHSを買うのは気が進まないし。
(とか言いつつ、怪しい海外サイトに注文して到着待ち中なオコナー映画DVDが、実はまだまだあるのでした(笑)…到着するといいんだけど…(爆))

http://www.amazon.com/Adventures-Francis-Talking-Races-Covers/dp/B0001FVDQE
Francis Goes to West Point
Francis Goes to West Point
Francis Goes to West Point
1952年、アーサー・ルービン監督作品、日本未公開、モノクロ。

"フランシス"シリーズ三作目。

流れ流れて?ピーター(ドナルド・オコナー)は政府の軍需工場に就職するが、帰宅したとたんフランシスから「テロリストが工場を爆破するらしい」という話を聞く(どこでそんな情報をゲットするのかは、例によって不明である)。
官憲に連絡して何とか暴挙を防いだピーターには、FBIや警察や陸軍から"ぜひウチに来て"とスカウトの手が伸びるが、"ウェスト・ポイント士官学校へ入学させる"と勧誘した陸軍を選ぶことにする。
かくしてピーターは灰色の制服を着て、学業や訓練や上級生のイビリやルームメイトとの友情に満ちた日々を送ることに。

あれ、フランシスはどうしたんだ、と思いきや、士官学校へ着いてみるとフランシスがチャッカリ学内に。学校のマスコットなラバと親戚なのだそうな。…いいのかそれで。
いつの間にかフランシスは、別に放っておいても「やっていける」存在と確定したらしい。微妙に路線変更を感じる。
というか、とにかくウェストポイントに行かせたかったのだろうか(愛国心鼓舞のため)、冷戦や朝鮮戦争たけなわの時期だから。
学内でのエピソードも、色々あるがあまりまとまりがない。成績がビリで落第しそうになったピーターが、フランシスに家庭教師をしてもらったらグングン優等生に!(笑)というのはよいとして、いつもと違ってフランシスのためにピーターが苦労することも多い。どうしたんだフランシス。だいたい今回喋りすぎじゃないのかピーター以外に。さすがのピーターも近頃では学習したらしく、そんなにスグには「フランシスから聞いた」とか言わなくなったのに(笑)
しかし、「やれば出来る子」だったのかピーター!よかったね☆

クライマックスはウェスト・ポイントと海軍チームの大事なフットボール試合。
友人をかばって士官学校を辞め、姿を消したピーターを探し回るフランシス…
最後には誤解もとけて復学するんだけど、喋りすぎてヤバくなったフランシスは「ちょっとホトボリをさましてくる、またな」と出奔し、制服姿に戻ったピーターが笑顔で見送るエンディング。

うーん…
まあひょっとしたら、ちょっと離れたほうがピーター成長するかもしれんけど。
ちょっとだけ、ガールフレンドできそうな気配もあったし…「できそう」から一歩も進まないまま終わっちゃったが。どうもちょっと、練りこみ不足なシナリオでしたね。

…というわけで、シリーズ物のお約束?、巻を重ねるごと、やっぱ下降してきたなー。
そんな中で萌えポイントは、ピーター、色々あってしょっちゅう懲罰で中庭を行ったり来たり行進させられているんだけど、やっぱり歩く姿が綺麗だ~、という点ですね。オコナー、もともと姿勢が良いし首が長いので上半身が美しいです☆

さて、いつまでもウェスト・ポイントに置いておいてはシリーズが進むまい。
と考えるのは私だけではなく、四作目はまた民間人に戻るみたいです(新聞記者になるらしい)。どう戻すのかしら。わくわく。

http://www.amazon.com/Adventures-Francis-Talking-Races-Covers/dp/B0001FVDQE
Francis Goes to the Races
Francis Goes to the Races
Francis Goes to the Races
1951年、アーサー・ルービン監督作品。モノクロ、日本未公開。
一昨日の"Francis"シリーズ二作目です。当然英語字幕のみ。

前作のラスト(話が終わって、上司をピーターの家に招く場面)から、物語はスタート。

…そして、ソッコー場面転換。大きな荷物を持ち、田舎道をテクテクと、ラバと並んで歩きながらひとりごつピーター(ドナルド・オコナー)。
「なんでクビになったんだろう…」

…(^^;)
出だしは快調です(笑)

とある厩舎にさしかかったところで、"しゃべるラバ"フランシスは自分の遠縁に当たる競走馬Sir Gallantに出会い、意気投合。「自分はここでやって行けそうだから、町に戻って銀行員の職を取り戻したら?」と、クールなんだか思いやりなんだかビミョーなことを言うフランシスですが、フランシスの入れ知恵のおかげで、具合の悪い馬の原因を当てたり競馬場で勝ちまくったりのピーターは、厩舎の娘(パイパー・ローリー)から、今経営が大変なので力を貸して、と懇願されてポウっとなり、馬のことなど知らないのに厩舎に勤めることに。一方、彼の異常な勝ちっぷりにFBIもノミ屋のボスも目をつけて、怪しい、と逮捕しようとしたり彼を利用しようとしたり、大騒ぎ。

先の読めない展開が続き、目の離せないシナリオではありますが、同時にごちゃごちゃしてもいます。やっぱり続編の常として、一作目ほどではないかな。でも、一人と一匹のラブラブっぷりは可愛い(中段の写真、色っぽすぎです(笑))。こんなんじゃピーター、一生結婚できないんじゃないかとも思えるが…

ちゃんと歌うシーンなどは、やはり、今回もなし。
ちょびっとだけ、歌って誤魔化したりとかフランシスとデュエットするとかは無くもなかったですが。残念。

そこそこ楽しめたので、ついつい、そのままディスクを裏返してシリーズ三作目に突入してしまいました。
おいおい…

http://www.amazon.com/Adventures-Francis-Talking-Races-Covers/dp/B0001FVDQE
Francis : The Talking Mule
Francis : The Talking Mule
Francis : The Talking Mule
1950年、アーサー・ルービン監督作品。モノクロ、日本未公開。

やっと来ました"Francis"シリーズ四作品入りボックス(The Adventures of Francis the Talking Mule, Vol. 1 )。が、開いてみると呆れたことに、両面ディスクの裏表に強引にシリーズ四作品が詰め込まれていました。DVD一枚ではボックスじゃないなぁ…

ミュージカルじゃないけど、どこかで間違って歌くらい歌ってくれるといいなあ、と買ってみた。昔のコメディは一曲くらい、歌入ってることも多いしね。…なぁんも無かったですが。米盤、英語字幕あり。

まずは一作目"Francis"。
ファーストシーンは銀行の受付窓口(もちろん窓口は複数ある)に座る青年ピーター・スターリング(ドナルド・オコナー)。店内は混んでいるのだが、なぜか彼の前だけほとんど列が出来ない。彼を横目で見ながらヒソヒソ話をする客も…
己の不遇をグッと耐える風情のオコナーが何とも可笑しい。やがて上司が彼を呼びつけ、「銀行は信用第一だ。妙な噂のある人間は困る。根も葉もないバカな噂とは思うが…」。
ピーターは意を決し、どもりながら言う。
「いえ、あの噂は、本当なんです!最初から話させて下さい!」

かくして映画は過去に飛び、ビルマ戦線におけるピーター・スターリング少尉と、ヘンテコな"人語を喋るラバ"フランシスとの遭遇、そしてその後の彼らの「冒険」が物語られ始める。
おお、なかなかテンポの良い導入部ではないですか。


部隊からはぐれ、銃声轟くジャングルをひとり逃げ回っていたピーターは、「危ないから頭を低くして」と突然かけられた声に戸惑う。誰もいないのに…と思いきや、オッサンくさい声をかけてきたのは、一頭のラバだった(声:チル・ウィルス)。何故だか人語がしゃべれるラバ“フランシス”は、負傷したピーターを米軍基地まで送り届けてくれる(一応米軍所属のラバであった)。

さて、ピーターが気に入ったらしいフランシスは、その後も何度か、敵日本軍の動きや待ち伏せ情報などを教えてくれる(どこで情報をゲットしているのかはナゾだ)。そのたびピーターは手柄を立てることになるが、「どこでその情報を入手したのかね」「はっ、知り合いのフランシスというラバが…」で、手柄のたびに基地と精神病棟を行ったり来たりする羽目に。正気と証明するために「他の人間にも喋ってみせてくれ!」と頼んでも、フランシス、なかなか聞いてくれないんですね(気持は分かる。特別な存在だと知れたら面倒くさいことだらけだろう)。
病院の作業療法?でピーターが編んでいるバスケットが、だんだん巨大化してゆくのが結構笑える。それでも彼は何とか、精神病棟から出してもらうため、司令官スティーヴンス将軍(ジョン・マッキンタイヤ)を、"お仲間"に引き込むことに成功するが…。


とにかくこの主人公の、バカ正直っぷりが…凄いです(笑)
それも、お人好しで正直者だけどほんとにバカなんです!なのに、こんなに可愛らしく感じるのは何故(カオの問題ではない)。知的なタイプしか眼中に入らないと思っていた私なのに…

ドナルド・オコナーおそるべし…しかも、今回全く歌いも踊りもしてないのに…。
突飛な設定のコメディだが、意外なほど抑制の効いた彼の演技が、物語のスベリを防いでいると思う。終盤ピーターに届く、思いがけない悲報の場面なんか胸キュンですよ…
そう、たんにバカと言うのではなく、「無垢」を感じさせるキャラクターに仕上がってる。

そして、いつもクールに構えているが、ピーターのピンチ!となると、つい主義に反して人前で喋ってしまうフランシス。わかるよそれ!母性本能ってやつかねえ。オスだけど。
ハッキリいってこのコンビ、保護者はフランシスのほうである。
ちなみにラバ(Mule)とは、雄のロバと雌のウマの交配種(雑種)で、家畜としては優れた能力を持つが、生殖能力はない。ある意味切ない生き物である…

当時は低予算でかなりのヒットをかっとばした人気作品だったらしい(戦闘シーンなんかいかにも実写フィルムの転用)。なんと続編が6本も作られている。7本目はオコナーがもう嫌だと言ったので(厳密には、6本目に出る代わりにもうユニヴァーサル辞めさせてくれと言い張ったらしい)、ミッキー・ルーニーが主演したそうな。

私だって、すぐ二作目を見たくなっちゃったくらいだから仕方がない。ホントに何ということもない、ちゃち~ぃ話だし、コメディとしても今の目で見るとユルめな気がするが(爆笑、でなく、ニヤリ、とか、おいおい、って感じ)、場面の切り替えのテンポが良くてスッキリしているし、何より一人と一匹のおかしな友情(!)がほんわかと伝わってきて心地よい。多少古めかしいのかもしれないが、私は好きだ。
★4つ付けるには躊躇を感じるが…ええい、つけちゃえ!

最初からオコナーが気に入っていて見てるからかもしれないが、買って良かった~☆


http://www.amazon.com/Adventures-Francis-Talking-Races-Covers/dp/B0001FVDQE
1950年製作のアメリカ映画を見ていて、画面の端っこにムダに派手な顔があるな、端役もいいとこだが、これはもしやトニー・カーティスではないかな、と思って、家庭の都合で視聴を中断したついでにIMDBで確認しようとしたら、「カーティス死去」のニュースがImdbニュース速報として流れていた。

なんと。


…うーん、50年代の「顔」がまたひとつ、消えてしまったのね。
特別好きなスターではなかったが、派手な二枚目ぶりを逆手にとったようなドタバタラブコメは楽しませてもらった。「ボーイング・ボーイング」とか「求婚専科」とか。中身はそれほど覚えてないけど、大げさなプレイボーイぶりが可笑しくて。そして広川太一郎氏吹替えで(ここ重要)。
あまり好みでないから、彼のシリアス映画はあまり見ていない。

私が一番好きな彼の映画は「お熱いのがお好き」。「バイキング」も映画としては好きだがむしろカーク・ダグラスの映画だしなぁ。

若いころのカーティスのルックスは、凄く華やかなのだけど、どこか育ちの悪さを感じさせる翳があり、アメリカ版アラン・ドロンてな風情もありました。ドロンより年上だけど。
Imdbの写真もそんな感じ。

http://www.imdb.com/news/ni4632505/

合掌。


ちなみに私が途中まで見ていた映画というのは、"Francis"。ドナルド・オコナーの日本未公開コメディ。結構面白いのに、どうも今夜は最後まで見れそうにないのでレビューも明日以降のお楽しみ。ああ、はやく続きが見たい…
恋人を家に送って帰る道 (Walkin’ My Baby Back Home)
恋人を家に送って帰る道 (Walkin’ My Baby Back Home)
恋人を家に送って帰る道 (Walkin’ My Baby Back Home)
1953年、ロイド・ベーコン監督作品。日本未公開。
主題歌がヒットしたというよりは有名曲のタイトルを頂いて作ったミュージカル。軽いリズムに可愛い歌詞、いい曲です。帰りのエレベータで乗り合わせたオジサンは口笛で吹いてました(笑)

除隊後、戦友たちと作ったバンドで売り出そうとするジガー(ドナルド・オコナー)。イマイチ客に受けず一時は解散となるが、ディキシーランド・ジャズのテイストを盛り込み、旧知の美人歌手クリス(ジャネット・リー)を加えて再出発を試みる。今度は成功しそうに思え、クリスとも相愛となったところで、ジガーの実家から横槍が。

彼は実は名家の次男坊なのだが、一時的に一族の会社経営が揺らいでおり、最近逝去したオペラ好きの祖父の遺書にあった「孫ジガーがオペラ歌手デビューを果たしたら遺産10万ドル!」というのを家族全員期待していたのだった。但しジガーは、かつて祖父につけられた先生のレッスンは内緒でサボりまくり、ろくに勉強していない(笑)
それでも母親を泣かせるに忍びず、期限を切られたオペラ歌手デビューに、バンドデビューより先に挑戦せざるを得なくなったジガーは、理由を知らないクリスや仲間から「バンドは結局ボンボンのお遊びだったのか」と総スカンを食う(社の経営危機は誰にも言うなと口止めまでされたため)。親友ブリンプ(バディ・ハケット)だけは、理由があるんだろ、と協力してくれたが、付け焼刃の猛特訓がたたってか、開幕直前にジガーの声が出なくなって更なるピンチ!事情を知って駆けつけてきたバンド仲間たちは、バックにレコードを流して口パクで誤魔化そうとする。当然すぐバレるのだが、ようやく声の戻ったジガーは舞台で強引にバンドを紹介、演奏が始まるとこちらは大受けして、どうにかこうにかハッピーエンド(多分)。

かなり無理のあるシナリオですが(普通音楽関係者だったら、口パクでも「あれはパヴァロッティの声と似すぎだ」とか何とか気づくのでは?)、まあそれはいいです。ミュージカルだし。
ディキシーランドまでがイマイチ盛り上がらないのも、バンドがウケないんだから仕方がないと思ってあげよう(監督が寝ぼけていたのかもしれない。後半のテンポはgood)。
最終的に魅力的なナンバーが多数入っていてくれれば私は許す。許すけど…
惜しいんだよね。

リアル背景でのナンバーは良いんだけど、ミンストレルショーの舞台の背景絵とか、夜道を歩いてて踊り始めると突然周囲は二人占有の遊園地…とか、舞台でのフィナーレ(ありえない舞台装置転換が…いや、そういうのはシネミュージカルにはあって普通なのだけど、何となく普通より説得力不足というか文法的に唐突というか…)とか、人工的なセットになるたび趣味がイマイチで踊る二人の魅力が減じている気がする。ミンストレルショーは客の入りが悪くて潰れるのでショボくて構わないのかもしれないが、オコナーとリーの二人が黒塗り+ど派手色彩な上に、バックがごちゃごちゃしすぎて踊りがよく見えない…
やっぱユニヴァーサル・クォリティなんでしょうか(涙)。

特に、フィナーレで「残念」を感じるのは痛い。最終的には本来(リアル)の服装(タキシードとドレス)で舞台上に戻って美しいデュオダンスを見せてくれるのだが、ヘンに舞台装置の陰とか作らず、主演二人の美しい身体と動きのラインをもっとよく見せてよ~、と言いたくなる。
そのくせ、あーんこのナンバーもう終わるの、とか思わせられる事が何度もある。付け焼刃でどのくらいオペラ歌えるようになったのかも聴きたかった(笑)

とまあ、文句はこれくらいにして、舞台装置がヘンに凝ってないナンバーは、逆にどれも魅力的だ(タイトル曲でオコナーとリーが踊る遊園地だって、まあそこそこロマンティックではある)。レコードショップの仕事を早くやめてバンド練習に専念しようよ、とオコナーがリーを誘って歌い踊る"Band Wagonなんとか(正式タイトル不明)"。新生ディキシーランド・シンフォニック・バンドの"South Rampart Street Parade"も歌メインだが盛り上がる。そして圧巻は、誤解して仲間が去った後、からっぽの練習場で、乱れる心をぶつけるように、激しい勢いでオコナーが踊りまくるソロタップ。ピンクのシャツに白パンツがお洒落…いやそれはともかく、明るいイメージのオコナーには珍しいシリアスなダンスナンバーだが、見事な表現力を見せてくれたと思う。やっぱりイイなあオコナー、と見惚れた。このナンバーまできて、絶対もう一度見てから帰る、と覚悟がついた(二本立てなのでのべ三本見れるか少し不安で予定決めずに来てたのだった)。
そう、もっと踊り手の力に頼れ、というか、小手先でなくストレートに踊りを堪能させてくれればいいんだよねえ。MGMみたいにゴージャスにやれないなら。

音楽シーンでは、スキャットマン・クロザーズも非常にいい味でした。ピアノ弾き語りの"Honeysuckle Rose"は物語を上向きにするポイントの曲でもある。この人TVの"Colgate Comedy Hour"でオコナーと一緒に"The Birth of the Blues"をやってた筈。この番組でオコナーと音楽コントをやってたシド・ミラーも音楽事務所のボス役で出ていた。こちらは何も芸をしなくて残念(笑)

色々文句も書いてしまったが、脚本もゼンブがダメというわけではなくて、いい場面もちょこちょこある。ジガーの実家から逃げ出したクリスをジガーがタクシーで追いかけるくだり(彼女は彼に好意を抱いているが、家柄の差を最初から気にしている)は、運ちゃんたちの会話も洒落ててお気に入り。オペラの特訓シーンも笑える。今回の主人公は根がボンボンなので、なんか凄くのびのび育ちましたーって感じのオコナーの役作りは納得の出来。バディ・ハケットの三枚目ぶりは…うーん。まあ憎めない感じではあるかな。最初の中国人ウェイターのマネはイマイチでしたが(私も東洋人だし)。その次のナンバーも中華風なんで、コレのせいで複雑な気分に。

それにしてもジャネット・リーは巨乳だなあ。ウエストもグンと細くて昨今の「ぱっつんぱっつん」て表現はこういのをいうのだろうか。


…なんだかだいっても…色々、来るの大変だったけど…来てよかった(*^^*)。
シネマヴェーラさんありがとう。
若々しいオコナーの、清新で端正なダンスが見れて満足です。

ちなみに併映は1939年のアルゼンチン映画「君を呼ぶタンゴ(La Vida de Carlos Gardel)」という聞いたこともないモノ。実在の歌手カルロス・ガルデルという人を主人公にした音楽映画、音楽メロドラマでした。71分だから「恋人を…」二周目が始まるまで頑張って付き合うことに。幼馴染の、ずっと結ばれなかった恋人が病の床でラジオで彼の歌を聴きながら死に、番組を終えたカルロスも飛行機に飛び乗って彼女のもとへ向かおうとしたとたんに飛行機事故にあって彼女のあとを追ってしまうというラストは…絶対、史実とは違うんだろうなあ(^^;)
でも、じつはちょっとウルっと来てしまった私でした。お恥ずかしい。たまに、こういう古風で直球ど真ん中なメロドラマを見るとほろっときちゃいますね。普段あまり見ないだけに?
清純派なヒロインも、一時カルロスの売り出しを助けてくれて彼とデキてしまうギャングの情婦?な裏ヒロインも、それなりに魅力的でしたし。


<追記>"Walkin’ My Baby Back Home"のDVDを、正規盤でもなく画質もガタガタだがLovingtheClassics.comで入手した。嬉しいッ★

いつのまにかYoutubeにもいろいろあがっていたのでリンク。ナンバー数はかなり豊富でこれでもほんの一部。

http://www.youtube.com/watch?v=hoqbBb9lR2Q

http://www.youtube.com/watch?v=I7KMmWW69rE

http://www.youtube.com/watch?v=SLJC1EAreAQ

http://www.youtube.com/watch?v=Lfiyns-nZ-M
ベル・オブ・ニューヨーク
ベル・オブ・ニューヨーク
ベル・オブ・ニューヨーク
1952年、チャールズ・ウォルターズ監督作品。
日本未公開だがジュネスからDVDは出てるしTV放映されたことはあるそうな。私は米盤DVDボックス収録分(英語字幕のみ)で視聴しました。(参照http://13374.diarynote.jp/200902271555324824/)

20世紀初頭?のニューヨーク。婚約破棄は数知れず、プレイボーイのチャールズ(フレッド・アステア)は、救世軍みたいな福祉団体で働く、美人だがマジメでお堅いアンジェラ(ヴェラ-エレン)に一目ぼれ。いい加減だった己の生活を立て直すことを本気で誓い、色々な職にもついてみせ(それまで彼の生活は叔母の財産に頼っており、ろくに働いた事がないからすぐドジをしてはクビに…)、ようやく彼女を口説き落として結婚にこぎつける。が、祝いに駆けつけた人々に乾杯を何度も強要されて、久々に飲んだ酒につぶれて結婚式に遅刻してしまい…

たわいのない話だが、曲はそこそこキャッチーで良いものが揃っていると思うし、アステアは快調に歌いまくり踊りまくってくれる。
いつもお洒落なアステアの、珍しいウェイター姿だの道路清掃人姿だの郵便配達人姿だの乗合馬車の運転手姿だのが拝めるのも大層新鮮であった(笑)。一番有名な、砂まきタップダンス"I wanna be a dancin’man"は"歌って踊れるウェイター"として就職した時のもの。「ザッツ・エンタティンメントPart3」でも見られるボツテイクは、同じ曲をウェイターの制服で踊っているのだ(やはり地味だ、と服装を変えて録り直したらしい)。
アステア映画の中ではあまり評価は高くないということだが、十分楽しめた。
カラーで映像的にも華やかだし。

まあ何で評価が高くないかというと、脚本かなあ…。たわいがないのは良いのだが、恋して天に上る心地になったアステアは、ふわふわと空に浮いてしまうのだ。ビルの屋上へ着いてひと踊り。よくあるイメージ重視のダンスの演出かと思うとそうじゃなかったらしく、ドラマ部分でもう一度浮かんじゃう。ヴェラ-エレンも相愛になると浮かんじゃう。ラストも二人で浮かんじゃう。
…いくら20世紀初頭でも、いいのかコレ…と、ファンタジー好きの私でも、ちょっとためらうところはありますね。せめて何か伏線があればいいのだが、突然、「人間が恋心の高まるあまり浮かんでも普通」という世界観を押しつけられると動揺します(笑)
「空を飛べるあなたがスキ」とかって、物語にまともに組み込まれても、ねえ(^^;)

それと、ヴェラ-エレンにあともう"ひと華"あるとよかったのかもしれない。ダンスは上手いがこの人あまり色っぽくないし、特に前半は首元ピッチリの救世軍風地味ドレスだし。

この二要素が、二枚目ではないけどゴージャスな、そしてやっぱりあくまでオトナなアステアの間にびみょーな違和感を生んじゃったのかも。アステアファンには許せる範囲内なんですけどね…。アステアファンなので大まけして★4。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B001RMMBOI?ie=UTF8&tag=boatswascot-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=B001RMMBOI
キャグニーの新聞記者
1943年、ウィリアム・K・ハワード監督作品。モノクロ。図書館で借りたVHSで鑑賞。

昔話のように食っちゃ寝、食っちゃ寝していた、久々に休めた祝日。その合間にチョロっと観ました。
ジェームズ・キャグニーは、そりゃギャングを演っても凄いけど、やっぱり個人的には、普通にイイ人やってるのが好きだなあ、イイ人でも十二分に素敵ですよ。舞台は20世紀初頭あたり。ノスタルジックなゆったりムードもまたキャグニーには似合う。「いちごブロンド」あたりを気に入る人には特にオススメ。

流れ者のトム(キャグニー)は、浮浪者として逮捕されかけた所を、親切なマクロード夫人(グレイス・ジョージ)に「記者として雇うから」と救われる。彼女は平素から仕事のない浮浪者に朝食をふるまうなど博愛心に満ちた未亡人だが、彼女の新聞社は、町の腐敗を記事にしたため悪徳ボスから睨まれ、経営も悪化していた。トムは夫人のために、新聞をリニューアルしVS悪徳政治家キャンペーンを開始する…。

夫人には美人の姪がいるが、ややこしいことに悪徳政治家の息子と恋仲(この息子は父の悪事を知らない)。そして、キャグニーは、記者の経験もあるが(かつて政治の腐敗を記事にして、保身に走る編集長から首にされたという)、何よりも自由を愛し、全てが丸くおさまると、再び旅に出てしまう。そんな、頼もしいが孤高のヒーローを、キャグニーはソフトに、気持ち良さそうに演じている。製作も兄のビル・キャグニーだし。アクション・シーンも少しはあるが(当然主人公は結構強い)、あくまで優しさと愛嬌とが持ち味の主人公なのだ。
ありがちな「みんな一緒に幸せに暮らしました」の大団円ではないが、時代をちょっと昔にとったのも効いて、おっとりとさわやかな後味のヒューマン・ドラマに仕上がっていた。

原題の"Johnny Come Lately"とは「新参者」くらいの意味。たまたま町にやってきて闘いに手を染めることになったキャグニーを指すのだろう。
ポスターにオスカー像があるのは、音楽賞ノミネートのせいか?特に印象深いメロディラインはなかったが雰囲気は良かったと思う。未亡人役グレイス・ジョージは舞台の名優らしい。また、未亡人宅の家政婦はハティ・マクダニエルが演じていた。
キートンの決死隊
キートンの決死隊
キートンの決死隊
1930年、エドワード・セジウィック監督作品。
図書館のVHSで見たので(元々古いが)画質も劣悪。

第一次世界大戦中。金持ちのボンボン・エルマー(キートン)は間違って徴兵事務所に入り込み、一兵卒として欧州に送られることになる。社長のパパに手を回してもらって…と思ったものの、「贅沢な生活を投げ出して、一から頑張ろうだなんて立派だわ」と、以前は冷たかった憧れのメリーさん(サリー・エイラース)が言ってくれたので、とりあえず兵隊生活を継続することにする。婦人部隊のメリーさんとの心のすれ違いや 厳しくも可笑しい訓練(ありがちだけど)で引っ張りつつ、ほぼ運だけで戦争を乗り切る主人公。敵ドイツ軍のど真ん中に取り残されちゃった~!と思った途端に終戦との知らせが。
昨日の敵と喜び合いつつ別れの手を振るキートンの、"また、どこかの戦場で会おうな!"との結構ブラックな挨拶は、…なんか後で効いて来るパンチだった(笑)。

まだトーキー二作目なので、割とキートンの思うような映画作りができてたという説もあるが、ものすごく面白いというほどでもない。「エキストラ」同様、トーキーなりたての頃によくあるギクシャク感もある(音や音楽の使い方が滑らかでないため、場面転換がどことなくスムーズでない)。ただ、印象的なシーンはいくつかある。私がミュージカル好きなせいか、音楽がらみの場面がいい。後半すっかりレビュー映画だった「キートンのエキストラ」より良い!

この映画には、キートンの半ば"相棒"という感じで"ウクレレ・アイク"ことクリフ・エドワーズも出ている。って、昔「雨に唄えば」を最初にヒットさせた人としかイメージないんですが、ここでもウクレレ持って慰問のステージに立ったり兵舎でちょこっと唄ったり。
そんな中、兵舎でくつろぐ兵隊たちのワンシーン、なぜかウクレレの弦はキートンが押さえて、エドワーズはドラムスティックでそれを叩きながら唄って(同時にキートンが低音部をハミング)、もう一人の兵隊が銃剣を即席楽器みたいに使って伴奏つけて、みんなで横山ホットブラザーズ?…という場面が。ここだけ妙に素な感じのキートンでびっくり。脈絡もなくポン、と放り込まれてた場面だけど不思議に印象的。あと、キスされて舞い上がったキートンが窓辺に登ってウクレレ抱えて"You are meant for me"を唄いだす、という場面も。一瞬で他の連中に「煩い」と叩き出されたけど、もう少し聞きたかったよう(笑)キートンと音楽は意外と相性いいと思う。
ちなみに"You are meant for me"も、「雨に唄えば」でジーン・ケリーが唄ってましたね(^^;)

最後の慰問ステージのダンス(女役も全部男の兵隊たち)もなかなか。誰かの代役ってんで、振りも怪しいままに踊らされる、女役で黒いワンピのキートン(足元はゲートルとズボンが見えてる)。凄くヘンで、ダイナミックで(ぶんぶん回ってる)、でもタマに色っぽかったりして(笑)

http://www.youtube.com/watch?v=J3Dmr_xAr2Q

後半3分が特に見ものです。
apache dance(アパッシュダンス)っていうらしいですね、こういう荒っぽいの。
ウクレレ持ってるのがエドワーズ、合わせて踊るのがエイラーズ(舞台上で唯一の女性?)。


なぜかそのあと「キートンの白人酋長」(1922)も、ネットの無料動画にフルであったので視聴。
約20分の短編なのでお気楽(オチもスッキリ決まった)。こんなことしてると、寝不足直らない…

http://www.imdb.com/video/internet-archive/vi2728067609/

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