1959年、岡本喜八監督作品。モノクロ。

NHKBSでやってたのを録画。学生時代に名画座で見て以来の再見~☆
当時としては画期的な?戦場アクション。西部劇風味のキビキビしたカッコよさ、テンポのよさと斜に構えた皮肉な語り口が素敵。

とゆーか、“和製リチャード・ウィドマーク”だからね、主演の佐藤允が(笑)
若くてまだ痩せてるし、ギョロっとした目やニッと笑ってむき出した歯やらもあるけど、スピーディなアクションや、体格はデカくはないけど引き締まったシルエット、キザなポージングなど、ノリが確かにウィドマーク様を狙っててうなずける二つ名ではある。映画自体も、西部劇風味と書いたが、悠々・おおらかの古典的西部劇じゃなく、ジョン・スタージェスあたりのテンポの早いドライなタッチ。
映画のオープニングも、草の上に寝そべっていた主人公が、ガバっと起き上がると崖下へヒラリと跳躍、着地したのは鞍の上で、そのままダダッと馬を駆って走り去る…という、ちょーカッコいいワンシーン。ほんと、西部劇のノリをうまいこと取り入れてる(*^^*)

日中戦争末期、中国の奥地の日本軍駐屯地に、荒木と名乗る新聞記者(佐藤允)がやってくる。彼の目的は、ここの駐屯軍の中でも「どうしようもない連中」を集めた分隊、通称『独立愚連隊』で、妙な死に方をした見習士官の事件の真相を突き止めること。だが、『独立愚連隊』の面々は、敵中に大きく突出した危険な陣地に布陣させられていた。
中国軍の大攻勢を前に、彼は真犯人をあぶりだせるのか?そして記者の正体は…

途中からミステリー風味になるので、あまり語らないでおこう♪

主人公を追ってくる従軍慰安婦トミ(雪村いづみ)、キレた駐屯軍将校(中丸忠雄)、独立愚連隊の食えないリーダー軍曹(中谷一郎)、馬賊の兄妹(鶴田浩二&上原美佐)、登場人物たちのセリフにはいちいちひねりがあるし、キザなやりとりが楽しい。独立愚連隊のヘンな古参兵たちも、バカだけど愛すべき連中だ。ちょっとおかしくなっちゃった大隊長という意外なカメオ出演の三船敏郎にもビックリ(鶴田浩二の“カタコト日本語”も笑える)。

ひさしぶりに見たがやはり楽しかった。姉妹編「独立愚連隊西へ」はやらないのかなあ…
映画終了後の山本カントクの解説も、期待通りに“和製リチャード・ウィドマーク”の話をしてくれて満足(待ってました!)。「こんな顔の人」とスチルもチラっと出ました。ふふふ、よかったよかった。


たしかコレも和田誠さんがイイといってたので観たのじゃなかったかな。それとも小林信彦さんだったかな(私のクラシック映画好きはこの二人のせいである)。気に入って、カントクのエッセイも図書館の書庫から発掘して何冊か読んだっけ。映画同様キビキビと反骨精神のにじむ文章だったように覚えている。
2008年、三谷幸喜監督作品。スカパーでやってたので録画。

映画のセットのような、変に風情のある港町、守加護(すかご)。街をぎゅうじる顔役(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)とデキちゃった、小さなホテルの支配人備後(備後)は、顔役に無理難題=「伝説の殺し屋“デラ・富樫”を連れてこい」との命令を吹っかけられる。果たせないと殺される、と切羽詰まった彼は、売れない俳優村田(佐藤浩市)を「自主映画の撮影だ」と騙してアドリブ全開の“殺し屋”を演じさせるのだが…

トンデモな設定や展開はむしろ私の好む分野。あまりに無茶な進行だが、風呂敷をどう畳むのかと興味をもって最後まで見たし、時々はニヤリとできた。が…

三谷幸喜って、センスないのかなあやっぱ…

どこの国のどこの時代のハナシ?と突っ込むのはヤボだと言いたいのだろうけど(映画内で、外国映画のような街並みで、とか言い訳もしている)、このコテコテを、もう少しうまく見せられなかったんだろうか…
コレが舞台なら、まだいい。コテコテを見に行くのも舞台のだいご味だろう。
変に素敵な美術が逆にさめてしまう。舞台そのまんま、映画になってない感横溢でちと辛い。
わざとらしい、つくりもの臭い、って要素、私普段は受け入れるの得意な方なんだが…

「有頂天ホテル」は、短いエピソードの羅列だったためかそんなに悪いとは思わなかったが、こりゃー困ったもんだなあ「ザ・マジックアワー」。

「ステキな金縛り」はTVでやってもゼッタイ見ないぞ。
きっとコテコテでグダグダなんじゃないか。同じ?幽霊モノでも、「天国から来たチャンピオン」のような、センスのよいアッサリ感など、間違っても無いって気がする。


佐藤浩市は頑張ってはいるが、この脚本と演出ではなかなか厳しい。

かろうじてポジティブな存在感を見せてくれるのが伊吹吾朗。
深い声で「撤収~!」と叫ぶと“映画の現場”なニオイがじわりとにじむ(撮影スタッフじゃないんだけど)。
真面目な若頭役寺島進も、佐藤浩市の掛け合いでわりと笑わしてくれたかな。

芸達者がいくらでも出てるんだから、もっと面白く出来てもいいのになって映画だった。
コメディは好きだから一応最後までみたけどね。映画愛ってテーマもほんとは好きな筈なんだけどね…。
1978年、ウォーレン・ビーティ&バック・ヘンリー監督作品。カラー。

学生時代に劇場で見た、ファンタジック・コメディ。スカパーでやってたので懐かしくなって再見。うん、この頃は結構色々見てたんだよね。映画ファンとしてはかけだし(笑)だったかもだけど。
天国とか、天使とか、死んだはずがこの世にさまよい出るとか、魂だけ別の体でよみがえるとか、そのテの物語は実は昔から大好きなんである。
勿論、私自身よりもっともっと昔からそのテの物語はしっかり存在していて、この「天国から…」だって、実は1941年の「幽霊紐育を歩く」のリメイクなんですけどね(笑)

やっぱり人間、死とか肉体とかの絶対的な束縛を超えるほどの純愛ファンタジーに、憧れちゃうのはしょーがないじゃない?(^^;)

物語はというと…
天国の案内人(バック・ヘンリー)の手違いで天国に召されそうになったアメフト選手のジョー(ビーティ)。肉体は火葬に付されてしまったが、何が何でもスーパーボウルに出たい彼は、死んだばかりの富豪の体を借りてよみがえるが…

生まれ変わりについてウダウダうるさく言ってたジョーが富豪の体に決めたのは、請願に来ていたベティ(ジュリー・クリスティ)を救いたいと思ったため。笑えるしロマンチックだしスポーツ映画でもあるが、全体にアッサリ味でトボケた中にペーソスをにじませた演出がいい。控えめなしんみりした音楽もいい(主人公がサックスで吹く「チリビリビン」も、いつも調子はずれ気味)。

また、主人公は一途だが、かなりヘンな人でもある。100%アメフトバカで、他人の体で富豪宅で暮らしていてもアメフトの事以外何にも考えてない。富豪は妻とその愛人(富豪秘書でもある)に殺されたのだが、同衾してる二人を見ても、ぜーんぜん何にも気にしてなくてマイペースなあたり、どっちがより困った人だかわからない(笑)
アメフトバカなあまり、恋に落ちてることにも、なかなか自分でピンときてなかったりする。ロマンチックな映画だが、ラブシーンは限りなく抑制されてプラトニックなのがまた、たまらない。当時ハリウッドきってのプレイボーイとうたわれてた筈のビーティが、体育会系の可愛いアホ青年を演じてさわやか。
ハッピーエンディング?の微妙さ加減といい、何とも言えない独特の後味をのこす、イイ映画でした。

「生き返って」から行動が別人のようになった富豪に困惑し、動揺しまくる不倫カップル(ダイアン・キャノン&チャールズ・グローディン)、ジョーの仲良しトレーナー(ジャック・ウォーデン)の悲喜こもごも、天国の係官ジェームズ・メイスンのさすがの貫録など、周囲もみんないい味出してる。
人が変わったご主人に困惑しながら、なんとなくほっこり嬉しそうな執事さんもよかったな。そして、富豪のお屋敷の庭がまた素敵!

70年代くらいまでの映画は、まだ、しんみりと控えめなところがあって良かったと思う…
牝猫と現金
牝猫と現金
牝猫と現金
1967年、ジョルジュ・ロートネル監督作品。カラー。

「女王陛下のダイナマイト」のロートネル監督の、これも変わったギャング・コメディときいていて、スカパーで録画。

名の知れたギャング"ツキのピエロ"は、銀行から4億フランを強奪した後、駅で警官に補足され射殺された。一方、この死んだギャングの愛人カティ(ミレーユ・ダルク)は、まさに二人の赤ちゃんを出産したところだった。彼女は4億フランの隠し場所を知っているのか?と、警察も他のギャングたちも彼女にアレコレつきまとう。カティは彼らをふりきって、シングルマザーのための施設で産後の数週間を過ごしたあと、施設で仲良くなったママ友(!)マリテ(アヌーク・フェルジャック)と二人の赤ん坊を連れて、ピエロと暮らした田舎家へ向かう。勿論ギャングたちも追ってくる。
4億フランはどこに、そして最後には誰の手に?

「ダイナマイト」は最初から音楽のせいもあってかクスクス笑えるが、「牝猫」は意外にトーンが渋かった。少なくとも前半は…特に冒頭は。
ピエロの射殺までシーンなど、物悲しい音楽で渋ーい描写。いかにもフランスのフィルム・ノワールである。全体に音楽が物悲しいのが、ちょっと意外でしたね。
もちょっと明るくてもいいのに。
あ、でも、最後の総攻撃前夜に、近くでキャンプのギャングのボスが「戦いの前の音楽はいいもんだ」とか言って手下にハーモニカで物悲しい曲を吹かせるのはイイ。なんか「アラモ」の総攻撃前夜の"皆殺しの歌"みたい(笑)
ちなみに手下の中には仏語訳「毛沢東語録」を読んでるのもいる。時代色なのか?

ただ、ギャングに追跡されていても、包囲されていても、目覚まし時計が鳴ったらソク、ミルクの時間!と、新米ママ二人はなんだか浮世離れしていてほほえましい。レストランや田舎の家で子どものようにふざけあう姿も印象的。庭先で外でスッポンポンで水浴びなんかしちゃう(それをまた近所の変人画家が望遠鏡でのぞいてる)。牝猫といってもアバズレな感じじゃなく、アカンボと一緒にだんだん母親たちは、天然ピュアな心にかえってゆくような描写。
花の咲き乱れる野原にかこまれ、崩れかけた教会堂の横に立つ、この田舎家も大変素敵な景観で、見るとホノボノするあたりは「女王陛下」にも通じるセンス(「女王陛下」でダルクが住む農場も実に美しかった)。もちろんお花畑で銃撃戦だってやっちゃうのだが。
この美しく鄙びた背景とアカンボたちが、次第に物語に明るいトーンを加えてくれて、全体としてはほんのりユーモラスな変格ノワールという感じ。ギャングたちも含めて憎めない変人が多く(なんか登場人物全員子どもっぽい気がするが…)、後味も悪くない。
まあ、ひたすらミレーユ・ダルクの魅力でもってるとも言える。今回は飾らないジーンズスタイルが多いけど、勿論ミニスカートもお似合い。細くてお洒落で妙にカッコイイ。あんな風にカッコよく髪を振りたててみたいわー。昔はアラン・ドロンと共演してるの見ても、どこがいいのかぜんぜん分からなかったんだけどなー(笑)

そもそも私の知ってる俳優がちっとも出てない。
ヒロイン以外で目立つのは、狂犬のような、でもちょっと情けない殺し屋アミドゥと、組織を裏切って女たちにつくアンリ・ガルサンですかね。ガルサンを割とすぐに女たちが受けいれるのは、ギャングたちの中では比較的男前だからだろうきっと。女たち両方にコナかけたりと欲望に忠実だが、戦闘面のコーチもしてくれるし、そんなに悪い男でもない。なんかこの人すごくアメリカ人ぽく見えるんですがなぜかな。馬顔だから?メル・ファラーとかパトリック・マクグーハンとかあのへんに通じるツラガマエ。

ぐだぐだダラダラした感想しか出てませんが、そこそこに楽しめました。
女王陛下のダイナマイト
女王陛下のダイナマイト
ジョルジュ・ロートネル監督作品。カラー。

大昔にTVで見て、あまりにナンセンスな楽しさに、ひっくり返って喜んだ作品。フィルム・ノワールの筈だけど爆笑必至のヘンな話だ。
多分これも、和田誠さんが面白いとどこかで書いてたから見たのだと思う…。
リノ・ヴァンチュラの良さを初めて認識した作品でもあった…

物語の主人公は、足を洗って堅気の実業家になった、元ギャングのアントワーヌ。キレるとついつい大暴れしてしまうが、本人は「キレちゃだめだ、冷静に平和的に…」と、常日頃から、努力はしている。
ある日、昔の仲間に頼まれて逃走資金を融通してやったらのがケチのつき始め。

立て替えた4万フランは、ミシュロンというノミ屋(ジャン・ルフェーブル)から取り立ててくれとのことで、彼を訪ねたアントワーヌは、ミシュロンを襲撃してきた若者とハチあわせ、咄嗟に撃ち返して殺してしまう。実はミシュロンは、英国人ギャング“大佐”とその部下たちに狙われていたのだった。「月賦償還がすむまで待ってくれ」と頼んでも当然彼らは聞く耳など持たず、ミシュロン、アントワーヌ、その旧友ジェフ(ミシェル・コンスタンタン)の行く先々に、銃弾とダイナマイトの雨が降る。「冷静に、話し合いで…」と、忍の一字で逃げ回るアントワーヌの堪忍袋も、やがては切れる時が来て…

「カタギになったから」とグッと堪える元ギャング、てのは、とても普通な設定だ。ただ、テンポの良すぎるスピーディ演出はノワールというよりマンガ。そして何より登場人物たちの描写がぶっとんでる。

まず、英国人ギャングたちのインパクトがすごい。純白スーツにボウラー・ハットのキザなボスは、丘の上に優雅な別荘を構えているのだが、若い部下たちは揃ってモッズ・ファッションに身を包み、暇な時間は毎日テケテケ、エレキギターの音に合わせて踊り狂ってる(ボスが一喝すれば絶対服従だが)。襲撃となれば一糸乱れず、過激にクールに無言で暴れ回るのだが、度のすぎたチームワーク(笑)に加え、ムダにイケメン揃いなのがまた笑わせる。
フランス人の「イギリス人はワカラン」そして「今時の若いモンはワカラン」を煮詰めたような敵設定である(笑)
映画が作られたのは、ビートルズ旋風まっただなか。時代色炸裂な音楽的くすぐりが、今見ると余計に可笑しい。「オースティン・パワーズ」のソウル・ボサノヴァとかピーセラ版「カジノロワイヤル」でガンガンかかるバカラック節とか、それらの破壊力にバッチリ通じるものがあります。私はビートルズ世代じゃないけどサ。
まーそれに、英国人てヘン!、ってのも、案外汎用性のあるくすぐりかも(笑)
英国的ユーモアの奥深さ(奥深すぎ…)には、定評ありますからね…

対するフランス勢はというと、コワモテの癖して「キレちゃダメだ、キレちゃダメだ、キレちゃダメだ…」のヴァンチュラは勿論楽しいし、「オレたち、ヤンチャはもう卒業したよな」な相棒コンスタンタンの肩の力のぬけっぷりも素敵だ。そろそろとメガネ(老眼鏡?)を出してかける所なんかなんともはや。「ラ・スクムーン」で見たとき、どーして主役のベルモンドがこのヘンな顔のオッサンに尽くしまくるのかイマイチ理解できなかったが、ここのコンスタンタンはイイ。とてもイイ。そして疫病神ミシュロンを演じるジャン・ルフェーブル!小心なのに発言にはときたま図々しさ爆裂というバランスがこれがまた素晴らしい。あまりのダメ男っぷりに、いつしかヴァンチュラが放っておけなくなるという、ビミョー極まりない愛嬌?までにじむ。

男三人の逃亡珍道中がユーモアたっぷりに描かれるのだが、やがて逃亡中の三人はミシュロンの元妻を頼る。が、これが意外やイイ女、のミレーユ・ダルク。ソバカスだらけだがキュートでお洒落で凄く魅力的。夫には愛想を尽かしまくってるのだが、夫と正反対なアントワーヌが気に入ったのか彼らを泊めてくれる上、元夫に見せつけたいのかアントワーヌを「シェリ(=ダーリン)」と呼んではニッコリ笑顔の大安売りで、彼を困らせる。
そして、ヴァンチュラを森のお散歩に誘ったりする場面など、場違いに綺麗な映像でロマンチック。

おかしな連中大行進、リアリズムなぞくそくらえ、何やってんだコイツラ~、な、ナンセンス・ユーモア・ノワールでした。
いやー、ン十年ぶりに見たけど、やっぱり楽しかったです。
なんだか妙に風景とか綺麗なのもいいね。
私はフランス映画って苦手だけど、この頃時々作られてる、ナンセンスでお洒落なフランス風アクション・コメディは好きだなあ。
どこか、大好きな「コニャックの男」にも通じる、バカバカしくも楽しい映画でした。

バカバカしいのが好きな人にはおすすめ。
大真面目でオジサンたちがバカバカしいのを演ってるのがすがすがしい☆

ついでに英国産イケメンなお兄ちゃんたちが好きな人にもすすめておこう(笑)
やられ役だけどね。
1984年、和田誠監督作品。モノクロ。

昔映画館で見た筈だが、手頃に細部は忘れていて(ラストは覚えているが)、ドキドキしながら観賞。
いやー、映画監督業に手を出す他ジャンル有名人はアマタいるけど、和田さんみたいに最初っからこゆるぎもしない端正な出来の完成品を仕上げちゃう人なんて普通いないよね。
映画マニアとしての膨大な脳内データベースと、日本を代表するグラフィックデザイナーとしての美的センスが、あまりにも幸せな結合をとげたってヤツかしら。
和田さん絵だけでなく音楽と文章書きのセンスまであるからなあ…

なんて、うだうだ解説しててもしかたがないくらい楽しめました。
戦後の混乱期をモノクロで描いて、博打のためならどこまでも狂っちゃう破綻した博打うち群像の迫力、そのなかで一見さわやか系な主人公『坊や哲』=真田広之が、博打うち人生へずっぽり足を踏み入れていく、裏青春ドラマって感じでしょうか。こんなにドロドロなのに、ラストがほんのり明るいのも不思議な感触。
渋すぎる高品格、キザな俺様加賀丈史、懲りない男名古屋章、ドサ健(=加賀丈史)ファン?の女衒加藤健一、加賀まりこと大竹しのぶの強力女性陣、端役にいたるまで芸達者揃いで、もう満腹~でした☆
シャーロック・ホームズの素敵な挑戦
シャーロック・ホームズの素敵な挑戦
1977年、ハーバート・ロス監督作品。

大昔、映画館で見た。見て、あわてて、都合をやりくりして数日後(あと一週間しか上映予定がなかった)、再度映画館へとかけつけた。二本立て名画座だったから…(って、若い人にはワカランか)
ホームズ、英国、世紀末はもともと好みの要素だったが、予想以上に私のハートにジャストミート★だったからだ。
輸入盤ショップで、サウンドトラック版(LPレコード)も買い込んだ。

原作「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」は多分先に読んでたと思うが、雰囲気のある素敵な映画に仕上がっていて、原作を上回る(脚本は原作者のニコラス・メイヤーが書いたのだが)、ホームズ映画の隠れた佳作だったと思う。

内容はというと、「例の」ホームズ三年間の失踪時期を扱ったパスティーシュ。


悪癖のコカイン使用が度を越し始めたホームズ(ニコール・ウィリアムソン)の健康を心配した親友ワトスン医師(ロバート・デュヴァル)は、ホームズの兄と共に一計を案じ、ホームズを騙してウィーンに連れ出し、麻薬中毒治療の権威フロイト博士(アラン・アーキン)に引き合わせる。治療は辛く厳しいものだったが、光明が見えてきた頃、彼らはフロイトの患者でもある美しい歌姫ローラ(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)誘拐事件に遭遇する。

ホームズにとっては、事件こそ強壮剤のようなもの。ちょっぴりフラつきながらのホームズの推理に導かれ、三人は冒険の旅へと…
…そして、フロイトの催眠術によるホームズ過去への旅。そこには“宿敵”モリアーティ教授とホームズとの、意外な因縁が隠されていた。


ノスタルジックな世紀末ロンドンから、更に爛熟の美があふれる世紀末ウィーンへ。
生活のスミズミまで装飾的な時代のうえ、ジョン・アディスンの音楽も素晴らしいので、もう全編ウットリである。ポスターだってロコツにミューシャ風。

後半の冒険は、ホームズもリハビリ中とあって、無粋な車だのヤクザ者だのでなく、荒れ狂う白馬(なんでや?)に襲われたり、百合の花の追跡、SL大追跡&剣戟アクションと、謎ときの困難さよりも、ロマンチックの積み重ねに特化しているが、物憂げなワルツ、せつなげなヴァイオリン独奏、追跡場面はハンガリー舞曲のよう…と、映像と音楽が渾然一体、ぼーっとかけていても飽きることがない。

ニコル・ウィリアムソンは、いかにも英国的でよろしい。髪色は明るすぎるし鷲鼻ではないが、長身面長で雰囲気はちゃんと出てる♪知性とユーモアに「意外な弱点」のブレンドで魅力的なホームズをつくりだしてる。
アメリカ男優組のロバート・デュヴァル&アラン・アーキンは、意外なキャスティングだがこれも結構イケてる。控えめながら的確なデュヴァルは想定内としても、初めて見た時驚いたのは、アラン・アーキンだった。
背も高くないし地味な癖に濃くてしんきくさい、いかにもユダヤ系男優、といったイメージだったのだが(すいません名優に対して)、この映画で(だけ)は、ウェーブした前髪にアゴヒゲがロマンチック!物静かな中に勇気を秘めた、知的なヨーロピアン・ヒーローを演じのけてる。まあフロイトもユダヤ系なのだが…
こんなビジュアル「カッコイイ」アーキン、見たことない…うーん…役者やなあ…

ヒロイン・レッドグレーヴはお飾り、お姫様的な扱いだが、とても綺麗。
英国女優の美はやはり鼻筋にありと見た。

ワトスン夫人役のサマンタ・エッガーも懐かしかった。まだ結構可愛いよ~

この話のポイントとなるモリアーティの「解釈」、教授ファンは怒るかもしれないが(いるのか?…いや、いるんだろうな多少は)、ローレンス・オリヴィエ御大に演らせてるのだから立派なモノです(笑)

とにかく、ホームズとその時代への愛があふれてる佳作。
クレジットタイトルの背景からしてシドニー・パジェット絵(しかも注釈つき)だもんね。
ビリー・ワイルダーの「シャーロック・ホームズの冒険」もロマンチック主体のイイ映画だったが、それを上回るほどよくまとまっていると思う。
(まあワイルダーの映画は、だいぶ切り刻まれたそうですから割引く必要あるかもだが)


DVDのつくりは、ちょっとビミョーかな。
デジタルリマスターと銘打たれてる割にはなんか粒子の粗さをソフトフォーカスで誤魔化してるようなきらいもある映像だが、ノスタルジック風味を全面に押し出したオハナシなので、まあ救いはある。もともとソフトフォーカス調だったかも。
発売元スティングレイから直でないと買うのは難しく、ちょっとお高い値段だが、作品自体はやはり魅力的だったので、最終的には後悔はなかった。絶対レンタルに出まいし。

あ、あと、この値段なら、英語字幕もつけてほしかったよ~。
「日本語字幕」「吹替え用日本語字幕」「字幕なし」ってそのメニュー構成はちょっと…
個人的には、吹替えより英語字幕が欲しかった。だってこういうお話だから、台詞が凝ってるに決まってる。イギリス英語ってなんか結構聞き取りにくいんだ。ホームズ早口だし。

http://www.allcinema.net/dvd/holmes.html

それでも、うん、やっぱ、買ってよかったです(*^^*)
1965年、マーク・ロブスン監督作品。

多忙がいつまでたってもおさまらず、めっきり映画見ていなかった近頃の私。
ゲームの方が「ちょっとだけやって終われる」と思うせいです。ソレは大間違いなんですが…
久々の一本は、スカパーでやってた「脱走特急」!

ほんとはDVD買っちゃった「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」を見ようと思ったんだけど、見始めたらなんか画質が予想以下だったので、「この値段でコレか?」とショックを受けて一旦ストップ。ある意味、鉄道アクションという共通項のある「脱走特急」にチェンジ。
大昔にTVで見た筈なんだけど、ラストシーン以外ろくに覚えていなくて、でも多分面白かった筈、そしてラスト印象的だった…で、特別好きな人が出てるとかじゃないけど期待の再見。

1943年、とあるイタリアの捕虜収容所。捕虜は大半英国兵だけど、アメリカ兵も少しいる。飛行機が撃墜され、新たに放り込まれてきたライアン大佐(フランク・シナトラ)は、英国兵のリーダー・フィンチャム少佐(トレバー・ハワード)と何かと対立しながら捕虜全体の指揮をとることに。
イタリア降伏後収容所を逃げ出した捕虜たちは今度はドイツ軍につかまり、列車で護送されることになるが、逆に列車を乗っ取り集団脱走をはかるのだった…!

シナトラがいつもよりぐっと抑えて渋いカッコよさを見せてオイシイ役どころ。頑固かつ戦闘的すぎて血に飢えた感じ(笑)のトレバー・ハワードがうまく盛り上げてやっている。
列車はイタリアをどんどん北上してスイス方面へと進むがその間、脱走モノのつねで、工夫と機転と変装のいろいろがユーモアも交えて披露される。
楽しい戦争アクションだが、終盤に至るに従い、単なる戦場ホラ話ではなく、リアリズムのほろ苦さがしのび寄ってくる展開がイイ。
見てない人のために伏せるけど、あのラストシーンは、ちょっと忘れられないよね(笑)

ちょっとせつない、定石をはずしたエンディングだ。

イタリア軍の収容所長に、あーやっぱこういう役…のアドルフォ・チェリ、ドイツ軍将校に、あーやっぱり(以下略)のウォルフガング・プライスとキャスティングは地味ながらしっかりしてる。従軍神父役でユーモラスなエドワード・マルヘアーも楽しませてくれる。

拾い物?が、イタリア人ながらナチスドイツが嫌いで主人公らに協力するオリアニ大尉を演じたセルジオ・ファントーニ。
なぜか黒アイパッチのスマートで頭も切れるイタリア軍人。ドイツ軍人か?と思っちゃうほどカッコイイ(逝)。ひたすら渋めな映画の中では、なんだか目に優しい純二枚目系。よく見るとたいしたことないのかもしれないがアイパッチの威力か、このメンツの中では妙に華を感じるー。
ただ、見てるあいだじゅう、実はずーっと…
「ナンバー・ツー!」という叫びが私の脳内に響いてました(笑)

え?…もちろん、オースティン・パワーズのですよ(ワカル人には分かるだろう)。

★4はつけすぎかもだが終盤の手に汗握るサスペンスといい、途中うつりかわる風景の美しさといい、大変楽しめた映画であった。こういうエンタが見たい心境だったのでOK!
1964年、ジョン・フォード監督作品。カラー。
英語字幕のみの輸入盤を買ったまま放っていたが(近年、16ミリフィルムだが日本語字幕つき自主上映で観賞できたため)、ようやく観賞。
(自主上映見た時の印象は、http://13374.diarynote.jp/200910042236528181/参照)
リージョン1と思ってたが、実はリージョンオールだったらしい。
ラッキィ!!!


1878年。
シャイアン族は、住み慣れた地域から1500マイルも離れた、アメリカ政府の指定した居留地に移転させられていた。政府の約束した支援物資は滞り、予定の会合に来る筈の政府要人たちも、一族総出で待ち構えるシャイアン族の前に姿を見せない。
政府(白人)の不誠実に絶望し、数百人にまで減ったシャイアン族は騎兵隊を振り切り、父祖の地へ帰ろうと過酷な旅に出る…

史実を基にし、西部開拓史の暗部をついたテーマだけに、楽しいものにはなりようがない話。それにいささか長い(3時間近い)。が、厳しく美しい西部の景観(真夏に始まった旅は、秋から厳冬へと長い長いものとなる)はフォードのオハコだし、端役に至るまでクスリとさせるような描写をこまめにはさむ語りのテクニックで、長いがそれなりに見せる。
個人的には、中盤のダッジ・シティのコミカルな一幕は少し浮いてると思うけど。ジェームズ・スチュアートとアーサー・ケネディがワイアット・アープとドク・ホリディとして登場し、ジョン・キャラダインとカードゲームに興じるのは確かにファンサービスだが、せめて室内のシーンまででとどめとけばよかったのになぁ。屋外でのドタバタは蛇足。

そして残念なのは、ラスト、せっかく内務長官E.G.ロビンソンを引っ張り出してきたのに、スクリーンプロセスまるわかり…なんであそこだけあんなに…うううう…
それ以外が美しい映像に満ちているだけにガックリする。追跡が続くうち、夏から秋に移り変わっていたところの風景など心にしみるし…。
アメリカにもちょっとは良心が残ってたかと、感動するところなんだけどな。

MYご贔屓リチャード・ウィドマーク様は、追跡隊の指揮官でありながらシャイアンの苦渋を理解し、多数の女子供を含む彼らを救えないものかと心を砕く“良心的”な白人。トップ・ビリングだが、群像劇っぽい構成と、上司も部下もやたら好戦的で彼の言う事を聞かないし、求婚している相手(キャロル・ベイカー)は逆に、シャイアンに同情的なあまり彼らの旅にくっついて行き姿を消してしまう、ひたすらソンな役回り。シャイアン族の人々(リカルド・モンタルバン、ギルバート・ローランド、ドロレス・デル・リオら)が非常に堂々と威厳に満ちた人々として描かれているぶん、存在感は弱く見えるかもしれない…が、コワモテでありつつ不思議に繊細な、独特の魅力を発揮していると思う。西部があんなに似合うのに根はインテリ、コワモテだけどマッチョじゃない、という、この人ならではの味わいですね。“理想主義的”で誠実な人物なせいか、なんだかモノすごくみずみずしく若く見える演技で、同じフォードの「馬上の二人」(これもインディアン問題がテーマ)の将校役ともクリソツである。
…実年齢は50歳くらいなのだが(爆)
いや、ラブリーチャーミーだから何でもいいです(^^;)
ナレーションも彼がつけてくれているのが、ちょっと嬉しい。
所謂二枚目声ではないが、歯切れがよく聞き取りやすい、知性を感じさせる声だと思う(*^^*)。

…結局は、ミーハーに堕ちてゆく私であった(笑)

とにかく、そこそこ安くて(日本のAmazonでも約1700円、直接海外から買うと更にお安い)、英語字幕つきでリージョンオール。
コレは意外とオイシイ買い物でした。
1967年、ラルフ・ネルソン監督作品。
アメリカ人指揮者チャールトン・ヘストンVSドイツの将軍マクシミリアン・シェルの熱き戦い(物理的ではなく精神的な、プライドの戦い)については、前にも熱く語っているので細かい事は抜きで。(http://13374.diarynote.jp/200909080047383316/参照)

遅番で11時近くなって帰宅して、でも明日休みだから何か見たい、名作でもしんきくさいのはこの状況ではさすがにヤだ、と思って、DVD買ったけどまだ見てなかった(見直してなかった)コレを見ました。
大昔のTV放映とその録画は何度も見ていたけど、DVDの綺麗画質はやっぱりいいねえ。DVDとして特に綺麗ってわけじゃないけどこれまでVHS画質だったから。
雪の中の機甲師団とお城とドイツ軍の軍服、と、妙に乙女心をくすぐる映画ですし(逝)。
いや、乙女心…ですよ…たぶん…
指揮者は裏が赤色の黒マントをひるがえしたりしてるし。

シナリオには、なにかとツッコミどころがあるのは認めますが、逆にいうとマンガチックな面白さがある異色戦争秘話って感じで、やっぱりなんか楽しかったー。
マクシミリアン・シェルのファンにはマストアイテムかも。かなり出ずっぱりでのキザキザな演技が楽しめます。ラストは絶対ヘストンよりシェルの方がカッコイイと思う。ただのドキザじゃなく知性がビームになって放たれそうな目ヂカラが素晴らしい。
また、軍服のコートもなぜか三種類くらい着替えてみせてくれているような。

さらに言いつのると、シェル、鋭い眼もとが最大のチャームポイントですが、口元からアゴのあたりがクドいので、第二のマストアイテムとしては、「ジャワの東」のDVD化を希望します。たしかこの映画ではアゴヒゲをたくわえていた筈で。
ビミョーな作品を色々出してくれる、キングレコードとかスティングレイあたりで何とかならんかしら。スティングレイの「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」もとうとう注文しちゃいましたもん。高価いけど。

さあ、明日はたっぷり昼寝をしないと。あさってのお仕事に備えて…
ブルックリン物語
ブルックリン物語
ブルックリン物語
1978年、スタンリー・ドーネン監督作品。カラー(オマケ部分以外は)。

昔、映画館で見た、と思う(細部は忘れたが)。なんたって、「今ごろあのスタンリー・ドーネンで新作ミュージカルが観れるんか!」と当時は驚いた。既に「ザッツ・エンタティンメント」でクラシックミュージカル好きになってましたからね。

厳密には半分しかミュージカルではないけど。
1930年代、プログラム・ピクチャーってんですかね、お手軽で安価量産な短め映画の二本立て上映が普通だった時代を、あえて再現して見ました~っていうつくりなので、ボクシング映画「ダイナマイト・パンチ」とミュージカル「バクスター・レビュー1933」の二本立てで105分。更に前説にジョージ・バーンズ老が登場して一席ぶち、二本の間には「ゼロ・アワー」なるWWI戦争映画の予告編まではさまる。
ニッチなクラシック映画好きピンポイント狙いな作品ではある(笑)
同じよーな俳優さんたちが両方の映画に次々出てきてほぼ同じ役をやったり、正反対の役をやったりというのも見どころ、楽しみどころ。

主演はなんと、ジョージ・C・スコット。いやねー、こういうアクと押しの塊みたいな人は私とても苦手なんですよ、名優だけど。…とはいえ、この映画では珍しく、主演だしイイ人に徹していて、それもタイプの違うイイ人で、ちゃんとしみじみイイ人に見えるのはさすがです。この映画のスコットが、一番好きかもしれませんな私(←ヘタレ)。

最初のボクシング映画では、葉巻を口から離さない下町のジムの老オーナーで、眼鏡の奥の目がいかにも好々爺。一方、物語の主人公は法曹家志望の苦学生だが、妹の目の手術費を稼ぐためボクサーとしてデビューする青年で、当然悪女の誘惑とか八百長の誘いとかありそうなネタがキッチリ入ってきます。いかにもな人情スポーツ物。
難点はこの青年役、ハリー・ハムリンがとてもとても頭悪そーなことかなあ?(^^;)

モノクロの予告編「ゼロ・アワー」をはさんで、二本目が待望のミュージカル!

さて二本目のスコットは、一転して全身ビシっとスタイリッシュに決めたブロードウェイのプロデューサー・“スパッツ”・バクスター。主治医に余命一カ月と宣告された彼は、生き別れの娘に遺すため是非あと一本ヒット作をと考えて奮闘する。ダンサー志望の娘(レベッカ・ヨーク)と音楽家志望の青年(バリー・ボストウィック)に、問題ばかり起こす傲慢な看板女優も絡んで、波乱の末に初日の幕は上がり…
お約束のバスビー・バークレー調(俯瞰で幾何学模様が楽しめる振付)はしっかり入ってるけど、そこはそれドーネンだしカラーから、4~50年代のMGMミュージカル爛熟期の気配もちらちら混じり、勿論おとなしめながらおおいに楽しめた。ボストウィックが売り込みでちょっとアクロバティックに歌い踊るところはMGMミュージカル色。舞台上でヒロインが「ダディ…!」と声をあげるシーンなど、ハッとするような映画的感興をそそる。ああ、やっぱりミュージカルって、音楽にのせての演出っていいなあ…。
ちなみに振付はあのマイケル・キッドらしい。ついでにキッドは、「一作目」のボクサーの父親役でちょこっと画面にも出てる。

他のキャストを振り返ると、二作とも似たような役のレッド・バトンズ(ボスの助手)とアート・カーニー(医師)、対称的な役で魅せるさトリッシュ・ヴァン・ディーヴァー(地味な眼鏡の清純派⇔悪女と、鮮やかに化ける!)とイーライ・ウォラック(ギャングと好々爺と)。バーバラ・ハリスやアン・ラインキング(「オール・ザッツ・ジャズ」の)など一方だけの出演者にも興味深い顔ぶれが。
特に、チョイ役だがカーニーの威厳はよかったねえ。喋ってる医学的内容があやしげなだけに余計に(笑)
ボストウィック&ヨークも、ミュージカル最盛期みたいな圧倒的テクニックは感じられないけど雰囲気は出ていた。メイクのせいか馬顔のライザ・ミネリな感じだったぞ。
予告編の空の三勇士はスコット、バトンズ、ウォラック、って、平均年齢がハンパない(笑)

あえてちゃちい作り、ありがち展開や、今じゃありえまいなセリフと使い回し風キャスティングを強行してるけど、そこを楽しめるむきにはオススメです。
それと30年代のファッションが好きなかたにも。男がみんな帽子かぶってて、いいよねえ(笑)

失われた週末

2012年5月6日 映画
1945年、ビリー・ワイルダー監督作品。モノクロ。
NHK-BS録画で視聴。

アルコール依存症がテーマ。売れないアル中の小説家(レイ・ミランド)の、依存症が次第に酷くなり恋人(ジェーン・ワイマン)や兄(フィリップ・テリー)の尽力にもかかわらず、人としてどんどんこわれていくさまを描いたシリアス社会派ドラマ。依存症を真剣に描いたものとしては嚆矢の作品とのことで、アカデミー賞も作品・監督・主演男優・脚色賞とたくさんとっている。

途中、恋人とのなれそめの回想なども入るが内容はホントにさっき書いただけ、のシンプルなもの。昼間タップのレッスンで眠くなりかけたまま見ていたが、まあそこはそれワイルダーですから。地味だが工夫がこらされた濃い演出と脚本で飽きさせず、最後にはちょっと手に汗握ってたり。
何度も見て楽しい映画でもないだろうけど(ミーハーな私にはそんなに好みじゃない)、今でも一見の価値はあるよね。
甘め頼りなめの二枚目ミランドの熱演も印象的。
DVD、買ってしまうとほっとしてなかなか見ないこともある。忙しくてほぼ一ヶ月の映画日照りの後に、GW実家参りに満を持して持参、視聴(笑)
ほんとはワンコインじゃなくBox(エロール・フリン・シグネチャー・コレクション)なんですよ。

1941年、ラオール・ウォルシュ監督作品。モノクロ。
合衆国第七騎兵隊を率いてインディアンと戦い玉砕したカスター中佐の半生を描く映画。勿論娯楽作品なので、面白くなるよう史実は適当にアレンジして作ってるのは制作年代からしても当然だが、予想以上に見ごたえありで満足。

1857年、ウェストポイント士官学校。新入生の一人としてジョージ・A・カスター(フリン)がやってくる。遅刻気味なのに堂々と、かつド派手なオリジナル軍服を着込んでの登場につい爆笑。猪突猛進&派手で有名なミュラ将軍(ナポレオンの部下)がアイドルだそうだ。反射的に悪ふざけをかまして「君の部屋だ」と監督教官のベッドに彼を送り込む上級生シャープ(アーサー・ケネディ)の所業も無理はない(笑)
が、学業操行は最低、剣術馬術は最高、の問題児カスター候補生は、南北戦争が始まるとその猪突猛進ぶりで殊勲を重ね、英雄となった彼は愛するリビー(オリビア・デ・ハヴィランド)とも結婚式をあげる。

ここまでの前半(三分の二)は、いかにもフリンの主演映画らしく、あまりに調子のいいヒーローぶりが大いに笑えて「無責任男シリーズか?」と感じるくらい。だが後半はガラリと雰囲気が変わってくる。

メデタシメデタシと思いきや、平和が訪れ退役将校となったカスターは無為な日々に満たされず酒に逃避。見かねたリビーの心遣いで、西部開拓の最前線ダコタ州へ騎兵隊の指揮官として赴任することになったカスターは新たな目標を得て立ち直り、卑しい流れ者やガンマンの集団だった第七騎兵隊を立派な軍人集団へと鍛え上げる。また、スー族の酋長クレージー・ホース(アンソニー・クイン)らとの戦闘に勝利し、白人に有利な平和協定も結んだ。ところが、西部の利権をとことん吸いたい資本家と悪徳政治家の策謀により、「ここだけは」と確保した筈の聖地を汚されたインディアンたちは空前の規模での大反攻に転じ、その最前線に立たされたのが、カスターの第七騎兵隊だった。

同じ策謀で首都へと召還されたカスターは、協定破りを目論む者たちを告発しようとするが議会に容れられない。彼はグラント大統領に直訴し首都から再びダコタへ舞い戻る。死地に向かう部下たちと運命を共にするために…。

悪い資本家はシャープとその父、悪徳政治家はカスターを目の仇にしていた元教官。わかりやすすぎる脚本だが、軍人以外はつとまらないという困った男カスターが、彼なりに人間として成長しているのが、見るものの心を揺さぶる。華やかな「栄光」を求めてウェスト・ポイントに来た青年は、最期に粛々と、大義も勝ち目もない戦場に赴くのだ。そして、前夜の愛妻との別れ…妻も夫も、互いに負担をかけまいと、可能な限りのさりげなさを装いながら既に死別を覚悟している。涙腺の緩む名場面だ。
明朗アクション西部劇がいつしか、歴史のうねりに潰される個人の悲劇にすりかわっていくドラマの流れの自然さには驚いたし、そんなには期待してなかったので余計に後半のフリンの迫力にもしびれた。史実がどうだかはおいといて、テンポのよさ、軽快・重厚を両立させるウォルシュ監督の男っぽいノリが「ああ、映画らしい映画だったなあ」としみじみとイイ後味を残す。
戦意高揚映画かしれないけど、うん、うまいこと出来てるわー。

フリンとデ・ハヴィランドの「いつものカップル」をとりまく周囲も賑やか。リビーの召使いにハティ・マクダニエル、カスターに目をかける将軍たちにシドニー・グリーンストリートなど。もちろんマックス・スタイナーの流麗なメロディと、アイリッシュ情緒たっぷり?の第七騎兵隊テーマ曲?ギャリーオウエンも耳に着いて離れない。
いや、楽しめました。
…いやー、やっぱ、エロール・フリンっていいなあ。甘いルックスととぼけたユーモアと運動神経(&スポーツマン体型)、意外とこれ三つ並んで揃ってるのって珍しいと思うよ。

快盗ルビイ

2012年3月30日 映画
1988年、和田誠監督作品。

ううーん、なつかしい~!と、スカパーでやってたので録画。和田誠さん大好きなんですよね。クラシック映画と昔のスターにのめりこんだのは和田さんに多大な責任があります。
実は「麻雀放浪記」よりこっちの方が好きかも知れない。歌のシーンがあるから(爆)

こんなんでやってけるのか?と、あらためてオノレの人間性とか資質とかの低レベルさに打ちのめされる今日この頃、ひさびさに観たけど、やっぱりちょっと癒しでした。
早く寝たほうがいいのについ最後まで見てしまった。

そもそも原作のスレッサー作「怪盗ルビイ・マーチンスン」は、自称天才的犯罪者な冴えない従兄弟に振りまわされる青年の話。これをカワイイ女の子(日本人)とそれに振りまわされる青年の話にしちゃって、しかも、ルミだからルビィって、和田さんやっぱり天才だよね。

キョンキョンがばりばりに若くてキュートだったころ。
真田広之も、まだけっこう若くて、思い切り頼りなげなダメ青年を、ぶあついメガネをかけ、口元をだらしなくポカンとあけて、一生懸命ダサーく演ってるのがおかしい。声も意外とカワイイ…キョンキョンとのデュエットがとてもいい感じ。ミュージカルにも一家言ある和田さんならでは、全体としては抑制のきいた演出の中で、ここだけはわざとらしくならない程度にオシャレで華があっておみごと。脚本も作詞もタイトルロゴも、と、あれもこれも和田さんのハイセンスにあふれてる。

盗みに入った家でなぜかお風呂にはいっちゃう場面もいいなぁ。でもシャツを脱ぐと、二の腕(の筋肉)だけがキャラを裏切ってるのが笑える。鍛えちゃってるだろうからなあ…。

カメオな脇役たちもそれぞれ印象的。木の実ナナと岡田真澄の夫婦なんか濃すぎるぞ。
エンディング曲も、あーこのメロディちゃんと記憶にあるなあ、と、うれしくなったり。


…しかし…

あーーーーーーーっ、明日一日で本当に私の職場の机は片付くのか!? orz
悲しみよこんにちは
悲しみよこんにちは
悲しみよこんにちは
1957年、オットー・プレミンジャー監督作品。パートカラー。
WOWWOW録画で視聴。

フランソワーズ・サガンの有名な処女小説の映画化。
モノクロではじまり、ジュリエット・グレコのメランコリックな主題歌を経て、去年の「幸せだった夏」の回想へ移る。
プレイボーイの父親(デヴィッド・ニーヴン)とその若い愛人(ミレーユ・ドモンジョ)まで一緒に、南仏の別荘で気楽なバカンスを過ごす17歳の娘セシール(ジーン・セバーグ)。
背伸びしたい年頃の娘にとっては、父の遊び人ぶりまでもが魅力なのだが、亡き母の旧友で周囲で唯一「常識人のオトナ」なアンヌ(デボラ・カー)に父が求婚したところから、人間関係にきしみが生じる。美しいが真面目なアンヌに生活態度を注意され、「父も自分も彼女に変えられていく」ことに反発したセシールは、彼女と父親の仲を裂こうと画策するが、そのために悲しい事件が…

ベリーショートのセバーグは勿論この映画で一躍有名に。キュートで残酷さと子供っぽさを同居させてイメージ通り。周囲もみな見事にイメージ通りである。ニーヴンはお手の物のお洒落なプレイボーイ中年役にちらりと弱さをブレンドして完璧な「ちょっと困った、魅力的な父親」だし、お気楽でセシールと親友気分のドモンジョも嫌味がなくていい感じ(「オトモダチ」できているのも、アンヌに比べればてんで『敵じゃない』と思われているからなのだが)。それに比べるとカーはさすがにオバサンぽいがまだまだ美しい。オトナなようでいて(そのぶん父娘に過大評価され甘えられてしまったのがいけなかったのかもしれない)、意外と激しくまた不器用なところがあるのは、別荘に現われた初日にも暗示されるが、物語はどうしてもセシール視点になるので、できればあと少し、彼女の側の気持ちも描いていておいてくれたらよかったかな。

どう考えても勉強もそっちのけで恋愛遊戯中のセシールは、ただのワガママ娘なのだが、よかれと思ってだがアンヌが色々言っても、あまりうまくは伝わらない(不器用なんだね。途中で自分でも迷ったり反省したりしているが)。セシールフィルターを通すためとしても、ちょっと高圧的に見えてしまい、微妙にギスギスした後味が残る。

そして振り払おうとしても振り払えない暗い想いを、投げやりな遊蕩で紛らわそうとする「現在」の父と娘。父はまあ大人だからとおいとくとして、セシールはちゃんと試験に受かったんでしょうかね?(ちょっと気になる)

とかなんとかいいながらも、雰囲気よくまとまっていた映画。
学生時分にTVで見た時以上に、登場人物たちにちょっと批判的な気分にはなったが…(小姑化(笑))
1964年、ジョージ・キューカー監督作品。
BS録画で視聴。ちょうどよそで、オードリー・ヘップバーン&フレッド・アステアの「パリの恋人」の記事を見たりコメントしたりしたとこだったので(笑)

バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」が原作のミュージカル。60年ごろから主流になった、ダンスの個人芸より歌が中心のミュージカルだが(私は個人芸タイプが好き)、骨太の社会風刺や皮肉な人間観察の織り込まれた作品だけに、これはこれで正解かも。そして、レックス・ハリスン!このタイプのミュージカルでないと彼は出てこなかったろうし…。

馬車と自動車がすれ違う、20世紀初頭のロンドン。なりも言葉も汚い花売り娘イライザ(ヘップバーン)は、彼女の訛りをせっせとメモする言語学の教授ヒギンズ(ハリスン)と出会う。侮辱された、と思ったものの、後で「綺麗な英語を話せるようになれば、もっと良い職につけるかも」と思いなおしたイライザは、話し方のレッスンを受けられないかと教授の家を訪ねてゆく。最初は一笑にふした教授だが、「花売り娘をレディにすること」が可能かどうか、友人ピカリング大佐(ウィルフリッド・ハイト=ホワイト)と賭けをすることになり、イライザを屋敷に引き取り、最高級の話し方とマナーを仕込むことに(やっぱ英国人、賭け好きだ…)。
長く大変な特訓をへて、イライザはやがて、貴族の社交場アスコット競馬場、そして王族までがずらりと並ぶ大舞踏会へとのぞむのだが…

楽しくキャッチーな歌の数々(教授の歌のみ限りなく台詞に近く難しいが)、言葉をめぐるギャグと華麗なコスチューム…前半はまさにコミカルなシンデレラ・ストーリーだが、舞踏会の完璧な貴婦人ぶりの「後」こそが、ドラマとしては見どころだし考えさせられる。
舞踏会では大成功したものの、イライザそっちのけで狂喜する教授らを見て、イライザは傷つき教授宅を出る。が、生まれ育った下町へ行っても、レディになったイライザは既に場違いな存在になっている。ちょっとした夢(ちょっぴり暮らしをレベルアップ…)から始めた変身で、自分はどこまで来てしまったのか?夜のコヴェント・ガーデンに彼女の居場所はもうない。更に皮肉なことに、ここで再会する父親(スタンリー・ホロウェイ)も、意外な変身をとげている。娘にたかるばかりのダメ親父だったのだが、偶然入手した大金により本人曰く「中流階級のモラルに絡め捕られてしまった」のだ。
個人のアイデンティティというものは、外面だけでこうも揺らぐのか?「花売り娘かレディかの違いは、本人がどうふるまうかではなく、周囲にどう扱われるかよ」とイライザは言う。

とはいえ、二人三脚の熱い特訓の日々の中で、イライザは傍若無人なヒギンズ教授に惹かれてしまっている。
一方、最近では秘書役まで彼女にまかせていた教授は、彼女の家出に気づくと大慌て。その癖彼女の気持ちにはちっとも理解を示そうとせず、彼女の「自立ぶり」まで「自分の手柄だ」と言ってのけるが、再会した彼女にぴしゃりといなされ、しおしお自宅で思い出(?)の録音に聞き入るヘタレっぷり…だが、その背後には「やれやれ」という表情のイライザが。

教授が「もはや口だけ」であることはもう二人とも自覚している、という、ハッピーエンドの暗示で映画は終わる。原作戯曲のラストは“どちらにもプライドがあるし平和的共存はするが結ばれない”というもので、さすがは皮肉屋のショー先生。だが、ミュージカルのこれはこれで納得のエンディング。求めあっているところに妥協は生まれる(^^;)それを責めることはできません。
日本のちょっと古い時代の夫婦なんて高確率でそんなもんだったのでは…

かなり久しぶりに見たけれど、ストーリーの骨っぽい皮肉さが予想した以上に面白かった。
そしてやっぱり、そこんとこ、レックス・ハリスンだよな~(はぁと)。
オードリーは素晴らしく上品で綺麗だしコミカルな演技もできるけど、終始、超困ったおっさん(=教授)を、可笑しくも魅力的に演じてのけたハリスンにはかなわない。競馬場では、発音はともかく中身が伴わず、些か馬脚をあらわしたイライザも、舞踏会へ行く頃には中身まで相当レベルアップさせていたようだ(秘書がつとまるくらいだからね)。だからこそ、終盤教授に“一個の人間として”何とか認めさせることもできたわけだが、そこまでの内的成長や迫力までは出せてなかったようにも思う。
ジュリー・アンドリュースが「メアリー・ポピンズ」でオスカーをさらったのは、自分で歌ったから(+イライザ役をとられた同情票)と言われるけど、歌が吹替えかどうかだけじゃないよきっと。

特訓中のイライザを支えてくれたのは、何かと乱暴な教授でなく大佐の礼儀正しさなのだが、男と女はそれだけではないんだよね。教授は身勝手な皮肉屋で(しかも終盤はマザコン臭くさえある)、人の心にもなかなか気が回らないが、「言語」に対する敬意と献身はおそらく本物。
だから、イライザも必死でついて行ったのだ。男の魅力って、そんな所にチラ見えするもの。


そして、別タイプだがやっぱ頑固な超困ったおっさんのイライザ父(スタンリー・ホロウェイ)、端然とした英国紳士ぶりが癒しとなるウィルフリッド・ハイト=ホワイト。二人がまたいい味出してます。この映画、女性映画と思われそうだが(監督もキューカーだし)、いい仕事してるのはやっぱりオッサンたちだよね♪
スパイスのきいたショーの台詞が今も生きているのも凄い。独身主義者の教授が女なんてものは、“相談してきて、うなずくくせに、結局自分で全部決める”と歌ってるのって、「ホンマでっかTV」の議論と全く同じだろ(笑)
2010年、エドガー・ライト監督作品。

同監督の「ホット・ファズ」はなかなか面白かったし、スカパーでやってたので。噂通り変な映画だったなあ(苦笑)
バンドマンのスコット君、好きになったピンクヘア娘にアタックしたら、「邪悪な元カレ7人」を倒さないとダメって…。ありえないくらいゲームっぽくオタクっぽく進むコメディ。

冒頭ユニヴァーサルのいつものタイトルロゴと音が、ファミコンクォリティなのがいい。これは凄いかなーと思ったけど゜、結局はまあそこそこ、なおかしさでした。私は格ゲーは全くしないしね(それでも格ゲーのお約束はわからないでもないし、スピーディな対戦シーンはそれなりに楽しかったが)。
ちょっとだけファイナルファンタジー2の曲が聴けたのも懐かしかったしー、二番目の元カレ登場シーンのミラマックス曲も笑ったしー。
そしてエンドマークもファミコン風。

「おいおい」「やれやれ」「なんじゃそれ」と呟きながら、一応退屈せず見た。二回は使えないし見る人を選ぶだろが、ちょこちょこっとは笑えたから私としてはまあいいや。再見はすまいが。
1949年、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督作品。モノクロ。

3組の夫婦の人間模様(主に妻側を中心に)を描いた心理ドラマ。スカパー録画で視聴。
結構細かく書いちゃったので、これから見る人はあまり読まない方がいいかも?

郊外の小奇麗な街。気取った女声(セレステ・ホルムらしい)のナレーションで、友人同士でもある夫婦たちが次々と紹介される。デボラ(ジーン・クレイン)と名門出のブラッド(ジェフリー・リン)、リタ(アン・サザーン)と教師のジョージ(カーク・ダグラス)、ローラ・メイ(リンダ・ダーネル)と百貨店チェーンの持ち主ポーター(ポール・ダグラス)だ。そして妻たちが婦人会主催のピクニックの手伝いに出かけようとした所へ、「三人の夫の誰か一人と、これから私は駆け落ちします」と書かれた手紙が届く。差出人は、美人で趣味が良いと街で評判も高いアディ。ナレーションも実はこのアディ(但し最後まで本人は登場しない)…という、技巧的な語り口でドラマの幕が開く。

まさか、と思いつつ出発した三人だが、それぞれ不安な気持ちで己の結婚をふりかえる。若く可愛いのだが、名門出の夫に引き比べて田舎育ちの自分に自信がないデボラ。幼馴染で子供にも恵まれた仲よし夫婦だが、ラジオドラマ作家として売れ始め夫の稼ぎをも上回った事からギクシャクし始めたリタ。実は貧しい家の生まれで、夫との会話にもどこか冷めた気配があるローラ・メイ。誰もが内心「本当はアディが夫の“理想の女性”では」とおそれている。妻たちにとっては毎回実にイヤ~なタイミングでアディからのチョッカイ(夫たちが喜ぶような)が入るのである。確かにヤな女だ(笑)

カップル6人全員がキッチリ性格を描き分けられ、見ていてサクサクと気持ちがいい。あるある、と思うようなすれ違いのエピソードが並ぶが、あまり鬱陶しくなりすぎずうまくまとめている。駆け落ち相手はどの夫か?妻たちの誰かが、本当に不幸のどん底に突き落とされるのか?のサスペンスがひっぱるが、三タイプの夫婦の諸相を見せられるだけで十分面白い。暮らしは半世紀で変わっても(妻たちが船上から未練気に船着き場の公衆電話を見やるシーンなど、今ならありえまい)、人の心の綾はそんなに変わらない。

女性陣の印象は、ダーネル(ローラ・メイ)>サザーン(リタ)>クレイン(デボラ)かな。
デボラは本人が気をしっかり持てば済むだけと思える(といってそれが簡単にできるとは限らないんだけどね)が、彼女の不安が全然ピンときてない夫もちょっと困りものかな。リタはデボラをサポートしてやれる親切でしっかり者の女性だし、ジョージはかなりデキた夫なので、共稼ぎにありがちなギクシャクや口論はわずかな気配りで回避可能。
最も根が深いのはローラ・メイ。いかにも落ち着きがあり大人の魅力溢れる彼女だが実は貧しい家の出で、玉の輿狙いの打算から交際と結婚生活がスタートした。ただ、愛情がない夫婦なわけでは決してなく、実は互いに相手に本気で愛されていないのではとの不安を抱いていたのがネックだった…というのが次第に分かってくる。貧しいけれど美貌を武器に「計算のできる」女、「頭のイイ」女、けれども決して嫌な女には見えない、というのは大したものだ。リンダ・ダーネル、あまり好みじゃなかったんだけど、見直しました。
ラストの笑顔はとてもよかった。

そして、リタの家のお手伝いさんがセルマ・リッター!タイトルクレジットにはなかったのに。
思わず「セルマ・リッター、キター!!――(゚∀゚)――!!」
やっぱいい味出してます、常に。セルマおばちゃん最強。

カーク・ダグラスは「執念の男」「コワモテの男」が看板になる直前で、フツーに感じがよくユーモラスな人物を演じている。こんなんの方が好きかも、私は。
粗野なようでそれだけではないポール・ダグラスの存在感もいい。まあとにかく、派手ではないけど十二分に面白く出来てるんですな、この映画。堪能しました。
1961年、ルネ・クレマン監督作品。モノクロ。
ビンボーゆえにファシスト党に入党してみたけれど、上からスパイを命じられて近づいたおかしなアナーキスト一家の一人娘にホレてしまった天涯孤独の青年(アラン・ドロン)のドタバタ…

うーん、9時まで仕事して帰ったのもよくなかったのか、半分くらいで飽きて挫折してしまった。
すいません、面白いですか?見たことあるかた(爆)

ドロンはむやみに若くてキレイで可愛いんだけど。(ヒロインのバルバラ・ラスも可愛い)
まあ、こういうドロンを待ってた、というわけでもないしね(笑)

<追記>
そして翌日。昼食にと買ってきたハンバーガー等ぱくつきながら、挫折したところ(半分ちょっと過ぎ)から再挑戦。

イベントのあるたび投獄されるのが「季節の風物詩」になっている市井のプチアナーキストたちと、抜け穴があって囚人が結構自由に出入り出来ちゃう監獄。本格派テロリストのふりをして彼女を惹きつけたものの引っ込みがつかなくなって困る主人公と、ホントに爆弾持って街へやってくる本格派テロリスト(アナーキスト)たち、それを利用しようとするファシストたちの思惑が錯綜する後半は、もっと面白くなってもいいのだが何故か盛り上がりが足りない。
最後のオチも不発?
チャールストン的20年代的に明るい音楽もなんか浮いてるし。

最後まで、ドロンの「顔」を楽しむ以外に、あまり収穫はありませんでしたね(^^;)

あ、そうそう、昼食は噂のビバリーヒルズバーガーでした。なかなかイケル。卵もだが、パリパリのフライドオニオンが挟まってるのがイイ。ただ、コレだけ食べるとさすがに終盤少しクドくなるので、何かサブメニューと交互に食べると更に吉かな(映画に気を取られているうち、ポテトを家族に一気食いされてしまった…)。
1963年、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督作品。

BSでやってたので。大昔のTV放映で見た後、時々「うーん再見しようかなどうしようかな」と思いつつずっとほっていたのですが、タダだから。
なにしろ私、クレオパトラを演じるエリザベス・テイラーとアントニーのリチャード・バートンのどちらもイマイチ好きじゃない。ただ、生憎なことに?シーザー役のレックス・ハリスンは好きなんですねえ(^^;)
だいたいキャラクターとしても(塩野七生さんにも洗脳されているもんで)、やっぱりシーザーとアントニーじゃキャラクターの格?が違うじゃないですか。
そんなこんなで、再見したい気持ちと、スゴイ長尺映画の前半だけ見たいってどうよ、とのモッタイナイ感との間で、ずーっと保留になっておりました。DVDも割と安くなってるしレンタルもあるんだけどね。今回はダメモトでタイマーをかけて出かけて、帰ってきたら誤操作でタイマーを途中解除しちゃったようなんですが、前半だけはしっかり入ってたというのがうまくできているというのか何なのか(笑)。

とりあえず望み通りに前半だけ冷やかし見だ~、うんうんハリスンは堂々としててやっぱいいな、と思いながら視聴。でもオトナなシーザーがだんだんクレオパトラに籠絡されてきてる脚本だなーと思い始めたらクレオパトラのローマ訪問の頃には眠くなってきました。シーザー暗殺後は眠気爆裂でもう寝室いって寝ました(爆)

やっぱり、ヴィヴィアン・リーとクロード・レインズが二人を演じた「シーザーとクレオパトラ」の方が好みだな~☆(http://13374.diarynote.jp/201103301501306431/)
クレオをお子ちゃま扱いのシーザー。絶対こっちの方が設定カッコいいし(笑)
ヴィヴィアンも可愛いしね。このバーナード・ショー版シーザーをハリスンがやってくれていたらもうめちゃくちゃ嬉しかったかな、ははは。勿論レインズも悪くないけどね。

テイラー版「クレオパトラ」だと、ある意味シーザーが「前座」扱いだからか、なんかシーザーの人物描写には中途半端感あり。デキる男だけど癲癇発作の弱点もある、で、この弱点はむしろクレオパトラの母性本能をそそったぽいが、最終的に彼がどの程度クレオパトラのいいなりだったかはぼかされている。暗殺直前には、次第に王座への道を意識してちょっとタカビーになりつつある描写だったが、シーザーは遺言書には女王母子の事はまったく触れず「ローマ人としての筋」を貫いてもいたのだった(これは史実)。
でもテイラー版はあくまでもクレオパトラがヒロインだから。…やっぱ後半はいいや。

ちょっと風邪気味だし、だからよけい眠いんだけど。そんなこんなでノー評価。あしからず。

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