睦月けい著。

可愛い妹のために夜中に山ほどのマドレーヌを焼いて寝不足のヒロイン。授業中にうたたねしたら、気が付いたら異世界の、王子様のベッドの中!家臣たちはすわ痴女か暗殺者か!と色めき立つが(魔術もある世界だが、なぜか彼女の出現時には魔術の痕跡がなかったという…)、超絶不眠症に悩む美形王子は、「なぜか彼女の横だと悪夢も見ずに熟睡できた」と、ヒロインの「抱き枕効果」を評価し傍におこうとする。
さて彼女は、痴女疑惑を晴らして元の世界に戻る道を見つけられるのか…?

「首なし騎士と首の姫」より先に書いていたもののリライト?
純西洋風ファンタジーだった「首」と違って、異世界トリップもの。リライトも効いているのか、巻を重ねるについて言葉遣いに違和感が出てた「首」の欠点は、こちらではほとんど感じなくて、"内心ダダモレ"のおかしみは前作にまけないユーモラスな語り口で楽しめた。

料理大好きなヒロイン、言葉もままならない世界で、お菓子と料理への愛をテコにして奮闘するさまが楽しい。家臣たちの態度はかなりキョーレツだが、次第に彼女の努力を評価する者もあらわれる。

二巻目が楽しみ(*^^*)
ジョン・スコルジー著。

シリーズ1巻目のラストからン年。2巻目のラストからもう少し近そう。両方にかかわる人々でできあがった、ペリー(1巻目の主人公)の家族。


無事コロニー防衛軍を年期いっぱいつとめあげて引退したペリーは、妻ジェーン(元特殊部隊)とともに、とあるイナカっぽい星で行政官としてまったりと大岡裁きをぶっぱなしていた。
そこへ、新しいコロニー、これまでにない十もの星から様々な民族が集まってつくるコロニーのリーダーに夫婦でなってくれ、との依頼が昔の上司から届き、ふたり+養女のゾーイはコロニー「ロアノーク」へと赴くことに。

西洋史にちょっと興味のある人なら、え、なにそのネーミング…と思うかもしれません。
あんのじょうロアノークでの暮らしはやがて壮絶なサバイバルとなり、星系間の陰謀の焦点となり…

いやー今回も、あれよあれよの面白展開で面白かった。

主人公の安定した人格(老人だからな)と、会話に見られるユーモアのセンスが素晴らしく、とんでもない展開があっても嫌味を感じなくてよい。
四巻目も読もう、うん。
「文楽へようこそ」にもかぶるけど、これは勘十郎さん一本でまとめたもの。
新作作ったり、国内はもちろん(高津小学校で文楽技芸員のみなさんが小学生に教えてるのは有名だけど、ほんとにいろんなところで先生をされてるようだ)、海外にまで行って講師をしたり、新作を考えたり、いかにも「動」のイメージの人形遣いさんらしい。
(同期の玉女さんは、「静」!…たぶん。)

美麗な写真はもちろん、どれだけ人形の修行、工夫に熱中してらっしゃるかがわかって面白かった。あーあ、次の文楽シーズンまであとまだ3か月かあ…
ティム・イーガン作。

ガラクタ置き場にあったピンクのれいぞうこ。ちょっぴり不思議の匂いがします。
冷蔵庫の不思議が、ただただぼうっと暮らしていたネズミのドズワースを"覚醒"させてくれるのですが、最後には、いい意味で、トン、と突き放されてしまうのが新味というか、深いというか。
実は最初読んだ時には、どんどんミステリアスに盛り上がったあと、ラストで、少しアレっと思ったのですが、しばらくするとじわ~っと効いてくる。ちょっと抜け感というか、あえて少しはずしてきてるというか、
小さい子にはわかんないかもな~、な感慨が残ります。

そして今日、なんと、ドズワースのその後を描いた本も出ていたことに気付きました!
タイトルすらネタバレになるのでゆるーく一言で書いておくと、すんごいダメダメな友人?に振り回される話なのですが、そのダメダメな友を心配して涙ぐんじゃうような人もいて。なんかこう無償の愛というか、人?が人?を思う気持ちの摩訶不思議さと温かさがつたわってきて、こちらも良かったです。

しかしイーガン、なんでこんなに邦訳が少ないんだ~!
続編の脇役で、でもすごく存在感のあるカフェの店主ホッジスさんの名を冠した絵本も本国では出ているらしいと聞いて、すごく気になっている私でした。
大阪府立とか持ってないかな…
と、探してみる。よーし未訳の原書を三冊発見!!♪
今度予約しようっと。
驚いたことに、ドズワースが日本へやってきた話まであるみたいです。
…ちょっと不安…


ついでに、私のイーガン初体験は爆笑モノの大傑作「まじめなフレッドおじさん」。
農場主のフレッドおじさんはもちろん、登場する全員が、とてもまじめな表情でもーたまりません。おじさんがあまりまじめなので、農場の動物たちが、これでは人間的にイカンのではないかと心配し始め、あの手この手でおじさんを笑わせようとする、という、かなりおバカな話ですが、とにかく好きです。
宇野朴人著。

戦闘シーンも多く、手に汗握る巻には違いない。そして騎士団の仲間たちをゆるがす、大きな転機も終盤にどかんと。…だが、そこで親の七光りですか…

大事な人間のためなりふり構わずというのはわかるが、信頼の強い絆が、どういう道をたどって結ばれたのか、もう少し過去話で描いておいてくれたほうがいいと思うよ(これはずっと思ってた。終盤の大演説の前になんとかすべき)。姫さんに対する1巻末の主人公の姿勢にはフォロー(解説)がやっと入ったが、出来杉女騎士については、二人の才覚が傑出していてそれを互いに知っているため、ってだけではちょっと…
アマゾンとかでは評価が高いが、すこしがっかりしました。
コロニー防衛軍のなかでも勇猛果敢で知られるゴースト部隊の隊員は、防衛軍に志願したものの、軍務につくまえに死んだ地球人のクローンで構成されている。だが、新たに部隊員となったジェレド・ディラックは、天才科学者ブーティンの遺伝子から作られたクローンだった。恐るべきエイリアン種族と手をくんだ裏切り者ブーティンの情報を得るべく誕生させられたディラックの熾烈な戦いと数奇な運命を迫真の筆致で描く話題作。


ジョン・スコルジー著。
「老人と宇宙(そら)」シリーズ第二弾。ただ、今回はぜんぜん老人じゃなくて、一巻目でちらりとその存在を知らされた特殊部隊"幽霊部隊"がクローズアップされる。無垢な兵士ジェレッド君のたどる道はハードだがユーモアも相変わらずきいているし、センチメンタルな味わいもチラ見させ、やっぱりスコルジーは面白い。
一巻目の主人公ジョン・ペリーにかかわったサブキャラも数人それなりの大きい役で出てきて、次の巻ではまたペリーが主人公となるらしい。そのうち読もう。楽しみ楽しみ…
さすがにというかやっとこというか、最終日はさすがに晴れました。
暑いくらいに…

昨日回るはずだった、幸福駅・愛国駅をまわってから(これもムスコの希望)、支笏湖周辺を気持ちよく散策して、千歳空港から帰阪しました。

何がびっくりって、大阪へ降り立っても、「暑い!」と思わなかったこと。

こちらも台風の余波で、気温が下がったままだったのか…(爆)

やれやれ明日からまた、お仕事です(笑)

台風の余波

2014年8月11日 旅行
コンスタントに寝不足気味の私は寝台車でもちゃんと眠れた。青森で途中下車時に駅近のスーパー銭湯に駆け足で寄ったから余計にか?東京出る頃には雨ももうピーク過ぎたなと思ってたのに、寝台車乗ってから雨音がまた大きくなった感じだったが、目をさましてみてびっくり。2時間近く遅れてるのだと言う。そのまま遅れを取り戻せぬまま札幌着。
日高本線に乗りたい、という鉄オタにしかわからない理由で、夫と息子が予約してたレンタカー屋や宿は道央(苦笑)、とりあえず在来線に乗り換えてみれば、半分もいかないうちに、こっから先は土砂崩れで不通になりました、と、ホームに放り出されてしまった。振り替えも何もなし。路線バスに二時間も乗って(しかも自腹)、ようやく静内町のレンタカー屋にたどりついたら、とうに午後になっておりました。いやはや。

あとは襟裳岬を見に行くだけで一日が終わり。

この間、雨はほぼやんでいたのだが、襟裳岬到着前後だけ雨風と霧が激しくなり、海面すらもよく見えなかったことを申し添えておこう。
豆スープのような霧。 ←(C)「心の旅路」

いやはや、忘れられない旅になったなコリャ。
夏です。家族旅行の季節です。

我が家では、夫も息子も、私以外が全員鉄オタなので、私にとって家族旅行とは家族サービスです(笑)
まあ私の父もそうだったので、すっかり慣れていてどうとも思いません。自分も自分の趣味には貪欲だし、お付き合いできるとこは気軽にお付き合い。
今年は東京へ先行してる息子と本日合流しつつ、家族旅行へと向かう切符をとってました。

しかし今年は鈍足台風がいすわって、いつになくきっちり予報どおりに、今日朝が大阪のピークということに…

東海道新幹線、走るのか?というのに加えて、一緒にいく筈の夫が台風動員で朝一番には出られない、という予定外状態。たいがい大阪なんか夜中に通過するかそれていくかするので甘く考えていたのですが。
部活で上京してる息子をセンセたちから受け渡しされねばならないこともあるので、とりあえず9時前ののぞみで私一人が上京。急なことで、間違えて夫が持っておかねばならないものが私の荷物に入ってたりと、天災人災いろいろガビーン!を重ねながら、それでも20分程度の遅れで東京には着けました。もう少し前の列車だと途中強風で止まったりしてたようで、まだしもな時間帯だった様子。のわりに、もより駅から東京ビッグサイトまでの数分間がマジ暴風雨なのにもまいりましたが(その少し前まで雨降ってなかったのに。カサをつぶされないよう必死で踏破…)、門外漢にも模型ってそれなりに楽しいよね~。

http://www.moraco.jp/

夫もイベントには間に合わなかったけど、夕方の東北新幹線にはギリギリ間に合って合流成功。東北新幹線に飛び乗って青森へ。そして、ここで夜行急行「はまなす」へのりかえ。寝台車に乗りたいというのが、今年の旅行のコンセプトだったようです。
寝台車はすんごく久しぶりですが、昔乗ったときよりは乗り心地よかったかな♪
二段の寝台にもぐってカーテンを引くと、「お熱いのがお好き」の寝台車シーンが思い出されます。

一日中鉄道に乗ってるか、鉄道イベント会場にいるか、というとんでもない鉄分過剰な一日でした。
ははははは…


…でも…
実は、今回の旅行、その次の日のほうがスゴかったのでした(つづく)。

台風

2014年8月8日 日常 コメント (2)
むっちゃ困る。

今朝ムスコは全国高等学校鉄道模型コンテストに出るため上京していったが(これは部活)、日曜にはわれわれ親が合流し、更に東へ家族旅行に出る予定なんだけどな~

土曜の晩~日曜の朝くらいから西日本の台風ピーク?台風は日本列島縦断コース?
どうなるんだいったい…
睦月 けい著。

完結編。

…やっと終わった、って感じかな?(爆)
ちょっと巻数ひっぱりすぎた感じですね。最初の頃はヒロインの独白癖に独特の味があったのだけど…
The Saint’s Double Trouble
The Saint’s Double Trouble
The Saint’s Double Trouble
1940年、ジャック・ヒヴリー監督作品。モノクロ。
「George Sanders Saint Movie Collection」(5作品入り2枚組米盤DVDBox、字幕なし)で視聴。

黄門さまでも毎回あったが、シリーズが続くとお約束は「そっくりさん」。
ジョージ・サンダースのセイント・シリーズはやくもセイントのそっくりさんが登場する一篇が。

フィラデルフィア在住の考古学教授にセイントがプレゼント?したエジプトのミイラに、盗品のダイヤが忍ばせられていたことから、教授は殺され、セイントが容疑者として追われることになるが…というお話。毎回セイントを追ってるけど友人でもある、という警部(ジョナサン・ヘイル)もたまたまフィラデルフィアに来ている。(いい味出してる。完全レギュラーである)

ところが脚本が、何事かというくらいにテキトーで実に困ったもんであった。そもそも、なぜセイント(サンダース)とダイヤ窃盗団(密輸団?)のボスの顔がクリソツなのか、説明らしい説明がないようだ。ようだ、というのは私のヒアリングがダメダメなためかと思いきや、海外サイトを調べて回ってもやはり脚本にはこれといった説明がないらしい。
二人がそっくりであることを、二人またはどちらかが知っていて利用しているのかどうかもよくわからない…部下たちはびっくりしていたが、本人たちはあまり驚いてないような感じだったから…これも意味不明(それとも私のヒアリング以下略)。

http://www.tcm.com/tcmdb/title/88923/The-Saint-s-Double-Trouble/
http://www.imdb.com/title/tt0033014/

一時的にボスになりすまして窃盗団の連中を欺いたり、つかまったり脱出したりまたつかまったり(ちょっと頭悪いんじゃないかと思った…)、変装して手の込んだ脱獄や自身の死を演出したりと、場面的には色々盛り込んでるんだがとにかく回収されない伏線が大杉…

ボスとセイントの演じ分けも、服装髪型等その差は限りなく小さくて意味不明気味。トレードマークの口笛吹く以外に、まあちょっとだけ本物のセイントのほうがスマートに見えるのだが、たぶんコアなジョージ・サンダース好きさんにしか分からない程度の差(笑)

二役やるぶんサンダースの露出時間が増える、というそれだけのことに積極的な評価を感じられる人にだけおすすめします(爆)
いつもどおり、キザでウィットの感じられるサンダースらしい魅力はにじみでています。

あと窃盗団の仲間にベラ・ルゴシがいるんだけど全然目立たない…(^^;)

さっさとボックスの次の作品へ行こう~
上遠野浩平著。
いやーめっちゃひさしぶりにブギーポップが出てたのに気付いて借りたけど、ごく初期の大ボス・イマジネーター嬢が出てくる。以前読んだ時にも、イマジネーターは何やってるのかよくわかんなかったのだが私だけか。
二度目の天下一リーグ(最上位リーグ)で奮戦中。
初日1位スタートで、二日目上位陣に続けて星を落としたものの後半二度目の取組では1・2位両方に勝ち越して2位まで戻し、今日午後の戦闘で僅差で一位に返り咲きました♪♪♪

しかしその差がなんと、わずか87石。(ゲーム内の得点も石高表記である)
145万5千石台で競っていて、差が100もないんである。すごいな…
もう二位と直接対決はないので、相手のつまづきを待ってる状態だが、勝ち星の数がイコール石高でもないので読めない。負かした相手の順位の高さや勝ち方(圧勝か接戦か)で変わってくる。3時の戦闘でも、私も2位も勝ってるのに順位が入れ替わった。

うーん、どうなるかな~

今季は、今川のよっちゃんに加え、伊達コンビ、ゴールドマサムネとプラチナコジューロー(片倉景綱)が揃ってるのでめったにないチャンスと思ってたんだ、が…
限りなくプラチナに近いゴールドと称される伊達政宗。確かに強いです☆

来季のこともそろそろ考えねばならないが、あと一戦。
最終戦まで、わからない。最終戦が待ち遠しい…(ドッキドキ!)


<追記>

やりました。逃げ切りました。優勝~♪
さて、優勝チームのなんと半分、5人が今週でピーク、来週には使えなくなる、そうなると今使ってる強い陣形も必要兵種が足りなくなって使えなくなる…ので、これからちょっとガチャ、チーム再生(笑)

高コストプラチナ武将を使うためにも、低コストのコスパ良し武将を取りたいです。
といってるうちに、安東くん&大奥州時代に活躍した、ひーちゃん(コスト5津軽信枚・つがるのぶひら)が来ました。コストの割に高火力な上、抜けたトシちゃん(前田利家)と同じ兵種なので今の陣形が維持できるぞ。わーい。次に、やはり今期限りで放出したブロンズヒナちゃん(朝比奈泰能)にあっというまに再会。コスト3の割には高火力追撃持ちで良いと思う。よっちゃんと同門ボーナスつくし。ブロンズはすぐ再会できるからいいわ~
あとは低コスト高内政な人がほしいよー…(内政はなかなか難しいんだが)
幡 大介著。

鬱々たる思いを抱えて世に隠れ住む、凄腕剣客竹本。悪い人じゃないのに本人の暗さと漂う怖さで、他人も寄り付かない。
けれど、だんだん、だんだんと、のほほん大富豪同心・卯之吉との距離が近づいてくるあたりがなんともいい感じでした。最後は少し駆け足だったけど、今回卯之吉も割と事件に対して前向きだったし、竹本のキャラも新鮮だったし、最近では出来はいいほうかな?

毎日寝不足でふらふらしながら…行ってきました文楽昼の部。
『平家女護島(へいけにょごのしま)』、『鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)』。
近松門左衛門の作品を集めてる。

「平家…」は、鬼界島へ流罪になった俊寛僧都らの話。流人三人のうち俊寛だけに赦免状が来ず…というのは平家物語の有名なエピソードだが、ここでは三人のうち、仲間の一人と結ばれた地元の海女を都へ同道させてやるために俊寛がわが身を犠牲にする話になっている。
序盤、恋の馴れ初めを嬉しそうに披露する語りがちょっとエロくて笑えた。半裸で水中を駆けめぐる野生の美女、豊満な肉体にまとわりつく魚たち、って、えらくビジュアル…
流人生活でボロボロフラフラの筈の俊寛と根性悪役人瀬尾太郎の立ち回りあり、最後は高台へ駆け上り、去ってゆく船を見送る俊寛の図をすごい大道具でもって魅せてくれる。ここ、初めて文楽劇場へ行ってみる前にNHKで見た場面だなあ。
こういう男っぽい役はやはり玉女さんですねー。蓑助さんの海女千鳥かわいいー。玉志さんの康成、すごく体壊してそうで、リアリズムですかあれ(笑)
海女ちゃんの方言は少しわかりにくかった(爆)

「鑓の…」は、もう少し複雑でキレイゴトですまない人間ドラマ。不条理の悲劇でびっくり(でもうまいこと書くな近松…)。
“鑓の権三”とうたわれる笹野権三は、家中でも評判の武芸の達人で、茶道もよくし、おまけに絶世の美男。油壷からでたような、どんな女も見とれるような、と語られる。
こんなに何もかも「持ってる」男が、そもそも犯してもいない姦通のために妻敵として師に討たれる、という物語。
多分自分でも、こんなに何でもできるんだから、と、外には見せねど野心を心に飼っていたろう。言い交した娘はいるが、不出来なその兄伴之丞(権三をライバル視してくる)が鬱陶しいのか、権三にはイマイチ積極性が感じられない。出世のカギとなる、茶道の秘伝の伝授をめぐって、茶道の師匠の妻おさゐから「娘の婿になるなら伝授する」と言われて、承諾してしまう。が、娘の婿にと思っているだけの筈が、権三に別の女がいた、と知ったとたん、我が事のように嫉妬にかられたおさゐはにわかに狂態を演じて権三の帯を解いて投げすてるなどし、帯を拾った伴之丞から、おさゐと権三は姦通者として告発される…

姦通など全くしていないのに、この濡れ衣。そもそも告発者の伴之丞はかねてからおさゐに横恋慕して彼女を困らせており、この日も庭に潜んでいたのであった。ヒドイ。しかも正気に戻ったおさゐは「こうなったら夫に妻敵として討たれて、彼に男の一分を立たせてやって欲しい」と権三に訴え、残してゆく子どもたちへの未練を口走る始末、…なんて…なんて立つ瀬のない権三…そりゃ彼、恋人より出世を取った感はあるがここまでトンデモない運命の罠にかかるとは…。

…さて、ここでちょっと客席にモノ申したい。
呆然と見ていた私だが、このクライマックスでなぜだか、「妻敵になってくれ」て所で場内にみょーな笑いが広がった。子どもへの未練をもらす所でもだ。これ失笑するところじゃないだろ。なんでこんなんなの?私が行った今日の客だけ?

…明日、職場の文楽好きに聞いてみよう…


そりゃあ、今の世では余りにむちゃなナナメ上論理かもしれないが、お笑いじゃなくてむしろ不条理劇だろう。少々不快に感じた。
おさゐも、衝動的にとんでもないバカなことをして(更年期のなりかけか?)、でも親の情は普通に残ってておかしくないじゃないか。
昨日まではモテモテのエリート青年だったのに、今日は心も通っていない年上女と駆け落ち、明日は妻敵討たれ待ち。
あふれる美貌も教養も自分の運命を暗転させた。もはや武芸も役には立たない。
「せめての作法、刃(やいば)は抜く」と言いながらも、本気で斬りかかりはしない権三の暗い暗い表情がしみました。
さっさと恋人と祝言あげといたらこんなことにはならなかったのか?
権三はちょっと自己チューだけど、よくある程度のもの。これほどまでに不幸な末路をたどらずともよかったかも…無実なだけに。
(伝授に恋人手製の帯を締めてきたのも、なぜかな?まだまだ迷いがあったのか?)

現実は、予想のナナメ上をいくのだ、という意味では、昔も今も変わらない話。
こう見えて案外、近松の世界は現代的なのかもしれません。

権三は桐竹勘十郎さん。女殺の与兵衛とはうってかわって静かなかんじ。
おさゐは文雀さん。


おまけ。

“この言い回しは、この浄瑠璃から来てたのか!”シリーズ。
今回は、

「馬から落ちて落馬して」(鑓の権三) でした(笑)
1974年、スティーヴン・スピルバーグ監督作品。
スカパー録画で視聴。

テキサスの若い夫婦者が、福祉局の手でとりあげられてしまった赤ちゃんを取り戻すべく脱獄し、パトカーをカージャックし警官1名を人質に、一路里親の住む町を目指す物語。
アタマの悪そうな若夫婦と若い警官はしだいに親しくなり、その後ろには追う警察の車に加えてTV局や野次馬の車が長蛇の列をなして連なるようになる。パトカーとの駆け引き、ガンマニアに狙撃されたり野次馬たちからちやほやされプレゼントをもらったり、と、アクションや
サスペンスもあるけど全体にまったりした感じで、ニューシネマっぽさもある。

実話をもとにしているとしても風変わりな展開だが、強引でキュートな妻ゴールディ・ホーンが大変魅力的。70パトカーの隊長にはベン・ジョンソン、気弱そうな警官マイケル・サックスも懐かしいな~。昔カート・ヴォネガットJr.にハマっていたころ見た「スローターハウス5」に主演していた人だ(ジョージ・ロイ・ヒル監督、なかなかイイ味出てた映画でした!)。

楽しい映画だが、ニューシネマ的に?やっぱりしんみりと終わってしまって私的には残念でした。そのへんニューシネマって容赦ないもんね。
微罪でじきに出獄もできたろう夫のウィリアム・アザートンが、あまりにも気の毒…(^^;)
小椋春歌著。

ついに大団円!古代の王リュダとの戦いが大半なので、いつもより真面目度が上がっているが、それはそれでもりあがってた。ちょっと駆け足でなくもなかったが、むしろここまでよく巻数伸ばしたという気もする。だって一巻目でいちおう完全にラブ成就してるんだもの。

いやーしかし、これって著者の初シリーズなんだよね。
次の作品、ほかの作品もやっと出てきたところみたいで、次はどういう世界を見せてくれるか楽しみです。
【文楽】夏休み文楽特別公演・第3部 サマーレイトショー
夏です!夏文楽は、技芸員のみなさんの真っ白なお着物が目にも涼やか。
夜の部「女殺油地獄」へ行ってきました。仕事のあとで…(1日休みはとれなかった)。

「女殺…」は、放蕩者の不良ムスコ与兵衛が、やることやすことあんまり酷いんで勘当されて、借金返せなくなってパニクって、お隣の油屋の親切な若奥さんを手にかけちゃう話(強盗殺人…)

救いのない話だけどそのダメっぷりや、ダメ息子だけど親としては可愛くて何とかなってくれないかと悶々としてたり、平成の今でも妙なリアリティがある話。
そしてクライマックスは、油屋なもんで油の樽をひっくり返してどたばたスーイと転んですべって大騒ぎしながらの殺人場面、てな事で。うーむスペクタクルなんだろうか、と思いながら行きました。はい、スペクタクルでした!!!

ばびゅーんと舞台を何メートルもすべったり、立ち上がろうとしてもう半回転するくらいにころんだり、なにしろアノ勘十郎さんだから神業のごとき動きで魅せます。
人間にはあんなスピード出せないもんね、もうあれよあれよの数分間でした…!
(行った先でたまたま出会った先輩によると、新演出!、というか、普通より短めでサッパリと、ただしダイナミックに動かす短期決戦型だったとのこと。確かにあれだと去年夏の「夏祭浪花鑑」の殺人の場の方が長かった…)
逃げ回りながら油樽の蓋を投げつけたりするお吉さん。持った刀でそれを叩き落とす与兵衛。ってそれ相当すごくないですか。人形でやってるんですよ。三人がかりで動かす人形で、ですよ。空中戦だよもう。
以前白狐をびゅんびゅんブン回していた勘十郎さんならではの超絶テク、スピーディな動き。

いやーほんとすごいな人形浄瑠璃って…
それでなくとも、人形の何がいいかって、人間の役者でできない動きをしてのける所ですよね。死んだら本気で死ぬしね(演者が人形を倒れたまんまにしてそこを離れると、これ以上ないってくらいに死体です。当然だけど)。

と、いつも思うことを反芻しつつ、満足して帰ってきました。

今回は久々にカブリツキの最前列。もう舞台は私だけのモノ、みたいな嬉しさがあります。前に誰もいなくて視界爽快。字幕はちょっと見にくいけどね(^^;)

殺しの場の神業はもちろん、与兵衛の「かっこつけ不良青年」はカッチリと仕上がってました。最初から、ワルだし乱暴者だし、でも肝はそんなに据わってない。お吉さんやなじみの遊女とかには多少「可愛い」と思われてる気配すらあるのに、「殺し」という一線を越えてしまうんですね…
お吉さんは和生さん。まったりとあたたかみのある綺麗な若奥さんで優しいお母さん、を、すごく素敵に演じておられました。娘の髪を結ってやるしぐさとか、なにげないけど心にしみる。こんないい人がなぜこんな死に方をせにゃならんのか…としみじみ思わせる。

爽快さも救いもない、不思議な作品です。
けれど、見ごたえありました!
来週は第二部を見に行く予定。そっちも楽しみです(*^^*)
第二部は、勘十郎さんもだけど、玉志さんを見られるのがちょっと期待♪
GoLiveで更新…
HP放置中。

そんな中でも、かろうじて虚実日誌映画索引というページだけは時々更新していたのだが(何のことはない、本サイトから、この日記の映画記事へ飛べるタイトルリストというだけだ)、Windows8.1マシンに変えてから、それすらも放置していた。
だって慣れ親しんだHP作成ソフト、Adobe Pagemill がさすがに8.1では動かないんだもーん。
なんたってWindows95の頃から慣れ親しんでるんだもんなぁ。

いちおう、なんとか後継になるもの、8.1でも動きそうなナニかを…(しかも金はかけたくない)、と思い、タダでDLできるAdobeGoLive CSをDLしておいた。しかしやっぱり、何かを導入して全く新規に何かを作るより、何かを導入して、すでにできてるものを扱えるようにする方が難しい。というか世の中の解説本、どーして、そのソフトでイチから何かをすることしか書いてないのかね!そのソフトで、今あるサイトを編集管理していくのにどうすればいいのか、何で書いてくれないのかね!乗り換え客って欲しくないの~???

とかいいながら、DLしてからはや半年たつしと、思い立って、索引のところだけでも更新してみた。アップロード機能もGoLiveにはあるのだが、調べるのが面倒なので、結局慣れ親しんだフリーソフトのftpxで要るファイルだけアップした。
やれやれ、私はほんとにGoLiveを使いこなせるんだろうか。こんなに色々機能いらないんだけどサ…CSSもJavaScriptも要りません。
いちおうあどび同志だから少しは慣れやすいんじゃないかと期待したけど、甘いもくろみなような気がする…


夜中の3時すぎまで悪戦苦闘していて、翌朝ソフトのチュートリアルを見直したらある程度はわかってきたけど…。とりあえず映画索引の更新はすらすらできるようになりそうだ。
それより、やりかけの写真整理を何とかしたほうがいいな。
これができてないからサイトの自動全面更新がかけられないのだ(GoLiveならできるはずなのだが。接続設定はすませた)。

実はだいぶ前に、解説書を2冊図書館で借りてきて、サイト読み込みだけはできるように登録していたのだが、その時どうやったかすらわからなくなっていて、まずローカルの自分のサイトを読み込むまでだけでだいぶかかったのだった。やれやれ…
まあ、多少とも達成感はあるけど。ふう。

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