飛鳥燃ゆ-改革者・蘇我入鹿-
2009年12月19日 読書 コメント (2)
町井登志夫著。「爆撃聖徳太子」が面白かったのでトライ。
大化の改新(つまり暗殺シーン)から始まって過去場面にさかのぼる。
若き入鹿はどちらかというと淡泊な性格の武人。剣の腕を買われて父毛人のボディーガード役もつとめたりする。
時代は、隋に代わり中華を統一した唐の勃興期。唐と朝鮮半島とを見て来い、と父に言われ、遣唐使船にこそっと乗せられた入鹿は、直接戦場にも身をさらし、隋とはひと味ちがった超大国唐の勢いと安定感を知り震撼する。改革者というのは大げさだが、征韓論を抑えまず国力の底上げに力を注ごうとする入鹿の半生を掛け足で描写する。
クーデターがあると必ず、それを正当化するためにその直前の為政者はボロカスに貶められるのはお約束なので、中大兄皇子らが蘇我氏について実際以上に悪く吹聴したとしても全く違和感はない。その後白村江へ兵を出して日本は負けているわけですしね。
アマゾンとかで「小説になっていない」とむちゃくちゃ書かれているが、話自体は面白いし古代史として納得はいく流れで、結構一気に読んでしまった。「爆撃…」同様、合戦シーンは殺伐とした中にも迫力と説得力があるし。
ただ、「爆撃…」は聖徳太子が元々非常に(何でも聞こえすぎるために)変な人として描かれていたので、これだけ愛想のない現代的に淡々とした文章でも結構マッチしたが、今回の入鹿は常識人だから余計に読む人によっては“何だこりゃ”と思うんだろうね。ただ、文学的表現のレベルで歴史のロマンだの何だのにこだわると、逆に入鹿や前作の聖徳太子らが「世界」を意識して抱く危機感は、こうストンとは伝わってこないかもしれない。
言わば古代史ハードボイルド。まあその…頑張って、引き続き精進してくれ作者殿。
こーゆー路線が日本で受け入れられるかどうかはしんどいところだが、英国にはリンゼイ・デイヴィスという、古代っぽすぎないのがウリなローマ帝国ミステリシリーズを書いて人気を博している人だっているのだし(密偵ファルコ!)。
私はまだ見放さないゾ。
大化の改新(つまり暗殺シーン)から始まって過去場面にさかのぼる。
若き入鹿はどちらかというと淡泊な性格の武人。剣の腕を買われて父毛人のボディーガード役もつとめたりする。
時代は、隋に代わり中華を統一した唐の勃興期。唐と朝鮮半島とを見て来い、と父に言われ、遣唐使船にこそっと乗せられた入鹿は、直接戦場にも身をさらし、隋とはひと味ちがった超大国唐の勢いと安定感を知り震撼する。改革者というのは大げさだが、征韓論を抑えまず国力の底上げに力を注ごうとする入鹿の半生を掛け足で描写する。
クーデターがあると必ず、それを正当化するためにその直前の為政者はボロカスに貶められるのはお約束なので、中大兄皇子らが蘇我氏について実際以上に悪く吹聴したとしても全く違和感はない。その後白村江へ兵を出して日本は負けているわけですしね。
アマゾンとかで「小説になっていない」とむちゃくちゃ書かれているが、話自体は面白いし古代史として納得はいく流れで、結構一気に読んでしまった。「爆撃…」同様、合戦シーンは殺伐とした中にも迫力と説得力があるし。
ただ、「爆撃…」は聖徳太子が元々非常に(何でも聞こえすぎるために)変な人として描かれていたので、これだけ愛想のない現代的に淡々とした文章でも結構マッチしたが、今回の入鹿は常識人だから余計に読む人によっては“何だこりゃ”と思うんだろうね。ただ、文学的表現のレベルで歴史のロマンだの何だのにこだわると、逆に入鹿や前作の聖徳太子らが「世界」を意識して抱く危機感は、こうストンとは伝わってこないかもしれない。
言わば古代史ハードボイルド。まあその…頑張って、引き続き精進してくれ作者殿。
こーゆー路線が日本で受け入れられるかどうかはしんどいところだが、英国にはリンゼイ・デイヴィスという、古代っぽすぎないのがウリなローマ帝国ミステリシリーズを書いて人気を博している人だっているのだし(密偵ファルコ!)。
私はまだ見放さないゾ。
コメント
そういえば、なにかの折に蘇我入鹿暗殺事件について少し調べたことがあります。日本書紀の記述が妙にリアルで怖かった!!暗殺隊の一員が直接書きのこしたのでは?と疑うほどでした(まさかそんなことはないと思いますが)日本古代史を背景にした作品はほとんど読んでいないのですが、豊田有恒の冒険小説はまずまず楽しめた記憶があります。町井さんの作品とあわせて、ひさしぶりに読み返してみます。
前作のタイトルはつい苦笑してしまいますが(「爆撃…」はけっこう傑作だと思っている私でも)、こんなにフツウに古代ロマンなタイトルは、合ってないような気がします…(^^;)
ロマンではなくゴツゴツとリアルな手触りの時代的危機感がウリの小説ですね。
そして豊田有恒、これは懐かしい名前です。昔何冊か(ヤマトタケルとか)読んだ記憶が。そういや半島モノ古代史小説のハシリでもある人でしたね。今読み比べるとどんなだか、気になります(笑)