1964年、アンソニー・アスキス監督作品。
意外とほろ苦い後味はテレンス・ラティガンの脚本だから?。
黄色いロールスロイスをめぐる豪華キャストのオムニバス映画で、時代も場所も違えた三つの物語からなる。

(第一話)英国外務省の大物フリントン侯爵(レックス・ハリスン)は愛妻(ジャンヌ・モロー)に贈るべくピカピカの新車を購入する(いわゆるクラシックカーの時代である)。だが、黄色いロールスロイスは彼女と若い愛人(エドマンド・パードム)の情事の場に使われ、傷心の侯爵は車を返品する。
とにかくレックス・ハリスンが素晴らしい。紳士らしく貴族らしく、ぐっと自分を押さえた中に情感のにじむエレガントな演技で魅せる。なんでこんなに素敵で金持ちで自分を大事にしてくれるダンナがいてあんな青二才にころぶのか全く分からない。ジャンヌ・モローってあまり好きじゃないし。…ただ、「全く分からない」と妻自身も思っているらしいのは、オハナシとして納得がいかないでもない。

(第二話)イタリアへ里帰り中のマフィアのボス(ジョージ・C・スコット)はいつもつまらなそうにしている愛人メイ(シャーリー・マクレーン)の機嫌をとるべく、中古だがお高い黄色いロールスロイスを購入するが、抗争の都合で、自分だけ一時帰国することになる。留守番のメイは観光客相手のハンサムなカメラマン(orジゴロ?)、ステファノ(アラン・ドロン)の求愛に次第に心を動かされるが…
マクレーンは「いかにも」な役どころを着実に。スコットは、マフィアだし粗野な男と思いきや、意外な細やかさで彼女に執着しているのだった…めちゃくちゃ意外でした、こんな味わいも出せるとは。そして二人に付き添う運転手兼ボディガードのアート・カーニーがまたいい味。
エドマンド・パードムなんぞに比べれば、まだ20代のアラン・ドロンの可愛い顔といったらそりゃもー天使のようで、女が少々人生を狂わせても無理もないという気がするが、彼の最良の部分は引き出せてない感じ。本来、ちょっと影のある所が彼の魅力の鍵なのに、役柄はご陽気そのものなイタリアンだし…。芸達者揃いのアメリカ・トリオのバランスがぴたりと決まりすぎて、ちょっと彼だけ浮いている。それと、英語、吹替えじゃないかという気がして仕方がない。ドロンはもっといい声じゃなかったかなぁ。

(第三話)さらに数年後。滞欧中の富豪未亡人ゲルダ(イングリッド・バーグマン)は、中古の黄色いロールスロイスを購入し、旧知のユーゴスラヴィア王家を訪ねようとする。そこへ強引に同乗を願い出る謎めいた男ダヴィッチ(オマー・シャリフ)。祖国のために急ぎ帰国しなければならない、と言うが、官憲には追われているようだし?
だが、ユーゴのホテルに投宿した途端に爆撃が。ナチスドイツの侵攻が始まったのだ。運転手も逃げ出す中、ゲルダは意外なオトコマエっぷりを発揮し、自ら車を運転して怪我人を運んだりパルチザンを集結させたり、大冒険の日々の中、ダヴィッチとの恋も燃え上がるが…
妙にサバサバとしたバーグマンは面白いし格好いいが、もう少しダヴィッチが誰なのか教えてくれればいいのに…
あえてさらっと流したラストだが、ちょっと消化不良感をおぼえた。ベタでも三話目くらい、少しはハッピーエンドの予感とか可能性とか語ってほしいのよね。ほろにが三連発だからさ。

スターたちの共演、明るく美しい色彩の観光映画としての魅力(お洒落なクラシカル・ロンドンと緑のカントリーサイド、光溢れるイタリアの遺跡と景観、清々しい東欧の高原…)。
今は存在しないであろうような、のんびりとゴージャス感のある作品だった。
…もしかしたら制作当時でも、ある意味古めかしい作風であったかもしれないが。

コメント

nophoto
なにわすずめ
2009年6月12日22:35

これ、こないだ字幕版が出ましたね。私、前にも書いたと思いますが、オマー・シャリフのファンでもあるので、これは、以前ビデオ借りて見ました。
なんだか、オールスターキャストばかりが目立つ作品で、いまいちどれも心に残るほどの作りではないのが、本音ですが、DVDだと、風景は、たしかにきれいでしょうね。オマー・シャリフの魅力のひとつは、あの、エジプト訛りの英語だと思っています。それに引き換え、たしかにドロンはもひとつこの作品では、ぱっとしなかったなあ。同じオムニバスでも、「世にも怪奇な物語」の、ウイリアム・ウイルソンのドロンのかっこよかったこと・・・

ボースン
2009年6月12日23:29

こんばんわ。書き忘れましたが、実はスカパーで視聴した分です。でも凄く風景とかカラー映像がきれいでした。イタリア編は特に観光映画爆裂でしたね。

オマー・シャリフは、さわやかだけどちょっと薄味な扱いに感じました。何者だったんだー…(と、しつこく気になる私)

しかしまあなんたって、レックス・ハリスンですよ!私、彼が持ち馬を"My Boy,"とつぶやくように撫でる場面など、つい繰り返し見てしまいましたね。時には癖や毒のあるキャラも演じる彼ですが、今回はほんとストレートに可哀想で普通にいい人で心に沁みました。あと、第二話はドロン目当てで見たようなものですが、心に残ったのは他の三人でした(笑)…マクレーンもスコットもあまり好きじゃなかったんだけど。
ドロンは…綺麗で可愛いんですが明るいばかりじゃ足りないんです。
たぶん彼を一番生かせる国は日本かも(爆)
懐かしいダーバンCMは超カッコよかった…(「世にも怪奇な物語」は未見です、残念ながら)

nophoto
なにわすずめ
2009年6月12日23:50

見てください。是非。「世にも怪奇な物語」。エドガー・アラン・ポー原作作品たしか3話オムニバスだったかな。この中の、テレンス・スタンプ主演の「悪魔の首飾り」が、一番好きですが、ドロンの二役、見逃せないです。

確かに、ダビッチの扱いは、中途半端でしたね。まあ、時間が少なかったんでしょう。

「秘密諜報機関」の方にもコメント入れました。

ボースン
2009年6月13日8:06

「世にも…」DVDは出てるようですね。…スカパーでやらないかなぁ。

>まあ、時間が少なかったんでしょう。

大バーグマンに遠慮したのかも(笑)

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