刑事ブロック
刑事ブロック
刑事ブロック
1973年、デヴィッド・ローウェル・リッチ監督作品。TVムービー。
オフビートな笑いをちりばめたユーモア・サスペンス。
軽量級だが私は結構好きだ。

厳寒のNYで犯罪者を追う刑事ブロック(リチャード・ウィドマーク)。だが、近頃の人心は荒れ果て、ブロックのハードワークも空回りに終わることがしばしば。犯人を逮捕しても裁判所が頼りにならなかったり、道行く人もちっとも協力してくれなかったり、はては上司にまで妙な疑いをかけられたり…ウンザリしたブロックは上司に辞表を叩きつけ、西部へと向かう。実は彼は、引退後のお楽しみにと果樹園(オレンジ畑)を購入していたのだ。引き留める上司に向かい、「ローンで買ったんですよ」と、いかつい顔を崩して嬉しそうに笑うさまがえらく可愛らしい(笑)

ところが。
不動産会社を通して管理人を雇い、何度か追加の資金も送っていたはずなのだが、現地に着いてみると、家も果樹園もかなり荒れていてガックリさせられる(笑)
しかも、ブロックの質問攻めにも悪びれない、陽気を通り越して能天気な管理人アーサー(ヘンリー・ダロウ)は、あっというまに「つい先日起きた、保安官殺しの容疑者No.1だ」と保安官補(マイケル・バーンズ)に引っ立てられていってしまう。何と保安官はブロックの地所で、アーサーの弓矢(彼はインディアン)で殺されたというのだ。
とはいえ、近隣でのアーサーの人格的な評判は意外と良く、「彼が人殺しなんてするわけがない」と皆が口を揃えて言う。引退したはずが、なりゆきでブロックは真犯人探しを始めることになる。若く頼りない保安官補もすっかり彼に頼る気マンマン…いいんですか、「元NYの刑事」ってだけでそんな扱いで(笑)


事件やその謎解き自体はたいしたものではないし、あれほど素晴らしかったウィドマークのアクションの切れも、さすがにこのトシ(60近い)ではちょっと鈍ってきている。しかし、堂にいったタフガイぶりが、下世話な苦労ばかりで嘆息続き…というギャップの可笑しさを十二分に引き出し、なかなかいい味出てると思う。
明らかに、当り役「刑事マディガン」(1968年)を踏まえてのキャラクターとも言えよう。
ちなみに「刑事マディガン」のTV版が、丁度ブロックと同じ頃にオンエアされている。

まあ最後はお約束通り、事件も解決し「もうNYに帰ろっかなー」とか言ってたブロックもこのまま西部に落ち着くかな~というエンディング。
これはパイロット版として作られたものらしいので、評判がよければ、その後連続ドラマ化された筈なのだが、残念ながら連続ドラマにはならなかった。まあ構想としては、探偵役ブロックの周囲を、三枚目だが弓の上手い助手(管理人)、何かと頼ってくる若い保安官補、目の保養かつ時には対立?の隣人の女弁護士(ベス・ブリックエル)、情報収集箇所となる町の中華料理店のオヤジ(なんとパット・モリタだった)などが固めるということだったのかなあ。
惜しいな、と思う…が、よーく考えると、この話の魅力の結構な部分が、NYのタフガイ・コップが慣れない西部の果樹園で、というギャップ部分にあると思うので、西部に根付いてなじんでしまったら、あとは何をやるのか?魅せる部分は逆に減ってしまうかも…そういうことか。
まあ、私はそれでもオンエアされてたらぜひ見たいですけどね。西部劇でもならしたウィドマーク様ですから。なぜか「刑事ブロック」の中でも乗馬シーンがちょっとありました。ただ、都会から来た刑事って普通いきなり馬に乗れるものかしらん。マクロードじゃあるまいし…

原題が"Block’s Last Case"。タイトル通り、これきりになってしまった、でもそれなりに楽しめた一作であった。昔録ったTV録画をダビングしつつ再見。CM抜いたら70分程…IMDbで見ると100分だから結構カットもあったようだ。また、当然吹き替えなわけだが、…やっぱり大塚周夫さん、毎回いい仕事してます…

コメント

nophoto
なにわすずめ
2009年6月15日22:13

こんばんわ。メールにも書きましたが、無事に届きましたよ!!ありがとうございます。また、見終わったら、コメントさせていただきますね。(もう少し先になるかもですが)
未だ見てない作品がどんどん手元にたまっていく・・・・去年の今頃、こんなことが起こり得るとは、とても想像がつかなかったです。人生バンザイ!!

ボースン
2009年6月16日0:00

ここのところのウィド様いろいろ、そらおそろしいものがありますね(笑)
人生読めないです、ホント。おいしいところ、食いっぱぐれないよう頑張りましょう☆

nophoto
なにわすずめ
2009年7月29日20:11

こんばんわ。これ、先週ようやく見ました。この作品って日本で劇場公開されたのでしょうか(まったく資料がありません)TVドラマと映画の中間みたいなつくりの作品でしたね。これは、大塚さんの吹き替えが、なんかとても笑いをさそってくれました。英語では、伝わらないニュアンスみたいなせりふがけっこうあった気がします。むらさき色のお部屋に唖然とする場面とか・・・なんか、気の毒な設定でしたけど、ウイドマーク様って、満たされた役どころでは、持ち味生かせないキャラなのね。だって、幸福に満ち溢れた役になったことってあまりないのでは?(愛のトンネルは、最後はハッピーでしたが、ずーっと悩み深き夫でしたし。)50年代初めの「映画の友」の中に、こんな記事がありました。まだ、40歳にならないうちから、ウイドマーク様は、引退後暮らす農場を探していたそうです。でも、彼がそこで暮らすのはいつになるんだろうね・・・といった小さな記事でしたが、実際は現役時代から週末は農場生活送っていたようですね。この映画みたいに、広大な土地に沈む夕日を眺めるテラス生活願望がずーっと昔からあったんでしょうね。70年代の作品って、使われてる音楽にいまいち格調の高さが感じられないのは単に好みの問題でしょうか?

ボースン
2009年7月29日21:02

もともとTVムービーですので、劇場公開はないはずですよ。ですから、音楽もあまり期待をかけるのは酷というものです(笑)
でもなんだか、やたら牧場とムショを往復してばかりなアーサーと次第にソレに慣れてしまうブロック、というのは笑えてツボでした。

最初から最後までハッピーな映画というと…うーん…難しいかな(笑)そもそもコメディが少ない人ですからね。そういう意味で、「大西部への道」はなんだかほっこりできた作品でした。一度だけ息子が大ピーンチ!て場面はありましたが、最も安定した家庭を持っていたのでは?
あ、「西部野郎奮戦記」もあった…!(笑)大金持ちだし!奥さんのことはほとんど気にしてないみたいだし!(爆)

お気に入り日記の更新

日記内を検索