今年の夏の名作劇場は、ひとつの作品を2部3部にどんと分けるという趣向。
すれ違い恋愛メロドラマだよ!との触れ込みの時代もの。
いかにも涼しげな蛍狩の場面から始まり、ヒロイン深雪はあっという間に困ったところを助けてくれた阿曽次郎と恋に落ちる。
が、深窓の令嬢のはずがなんとも情熱家なヒロインは、思う相手と裂かれると思うと家を飛び出して、とんでもない落魄の道をたどってしまう。人買いに廓に売られ、そこを逃げ出すも失明し、女乞食となって子どもたちにもなぶられる。
前半ラストは、はるばる彼女を探しに来た乳母・浅香(和生さん)との再会だが、またまた悪者の手に落ちそうになった彼女を救おうと、浅香が仕込み杖を抜いて大立ち回り。
これがカッコイイ!ぞくぞくするほどカッコイイのです。興奮しました!
浅香はもともとイイ女だったが、もはや悲運のヒーローのようだ。
ずーっと寝不足だから、冒頭はちょこっと船漕いでしまったんですけども。いやもう、もったいないもったいない(泣)
とった座席も、1列目だけど横っちょのほうで、萩の祐仙(勘十郎さん)の滑稽な動きとか見にくかったしなあ。
深雪は一輔さんで、今日の最後の段だけ蓑助さん。はかなげで哀れで何ともいえんです。

しかし阿曽次郎(玉男さん)、なにやってんでしょうねえ、美女に迫られるだけで何の役にも立たないじゃない。

あー、早く続きが見たい(キップは買ってある)。
…それまでにちゃんと寝不足解消できるんだろうかしかし。

昨日も今日も休みなのに職場にも行った、でも終わらない…しくしく。
仕事大混乱のなか、3月に取ってあったチケットで文楽へ。
(あの頃は異動に当たるとは知らなかったが、万一のためどこへ行っても休みになりやすそうな所でとったのだった…遠い目)

まずは「絵本太功記」(えほんたいこうき)夕顔棚の段/尼ヶ崎の段。
本能寺の変で主君を討った明智光秀(芝居の中では武智光秀)と家族の悲劇。
主君殺しの大罪を犯した息子を許せない母。死を覚悟した長男の初陣に心いためる妻と長男の婚約者。
誰もが命をはって光秀に、悪心から善心に立ち戻れと説く(長男は父親のためにと頑張ってるが、若者が命を散らすのも親にはつらいわな…)。

…信念をもって“暴虐の主君”を討った光秀の心にはブレはないが、なんか…
…家に帰っても踏んだり蹴ったりって…
…どーも光秀が気の毒で気の毒で(^^;)
最後は、なぜか単身様子をうかがいにきていた真柴久吉(羽柴秀吉)と山崎での合戦を約して終わる。小栗栖がナントカとか、母親は「逆さ磔でということにして」とか史実や巷説を連想させる単語がちらちらまじってテキトーさが面白い。

光秀は勘十郎さん。責め立てられても堂々としてる。母親は文雀さんがお休みで和生さん(文雀さん大丈夫かな)、長男夫妻は幸助さん&一輔さん(最近ぐんぐん大きな役つくようになったなー)。

続いて「天網島時雨炬燵」(てんのあみじましぐれのこたつ)紙屋内の段
「心中天網島」の同ネタだが、色々驚くような展開や演出がありびっくりした。
序盤治兵衛(玉女さん)を陥れようと恋敵が厚顔無恥に罠をかけてくる序盤はちょんがれ節をぎゃんぎゃん唄ってギャグが多い(治兵衛は屈辱の限りだが)。そこへ現れた兄孫右衛門がサクっと陰謀を暴いて去ってゆく。きゃー玉志さんカッコいい。一転、舅に連れ去られた妻の実家から治兵衛と遊女小春のもとに届く手紙が、幼い孫(舅からすると)のキモノに墨で書かれてるってそれは何…
あまりに凄いエピソードが続いて全然眠くならなかった(よくできているからというより呆れて…(笑))

「伊達娘恋緋鹿子」(だてむすめこいのひがのこ)火の見櫓の段
クライマックスだけ。有名な八百屋お七がヒロインの話。陰謀と戦う恋人のため、夜半に開門させるべく大罪と知りつつ半鐘を鳴らす、という話になってるようです。髪を振り乱して火の見櫓に上るアクションが見もの。簑紫郎さん、ついにタイトルロールだね!キャストもなんだか若手会みたいな感じでしたが、次第に動きがノリノリになってゆき、良かったです(^^♪

そのあと職場に回ったら次の日の講座のために4時間くらいも…
文楽とどっちが長かったかわからん…(涙)
やっとオフタイム!
仕事が片付いてるワケではないが、チケット買ってあった文楽公演第一部へ。
玉女さんの二代目吉田玉男襲名公演てんでか、いつになく満員で後ろに補助いすも。

さて演目の一本目は「靭猿(うつぼざる)」。狂言の有名な演目とのことで、狂言は見たことないが「狂言えほん」のシリーズで読んだことはあります私(^^;)
http://www.ehonnavi.net/ehon/82308/%E3%81%86%E3%81%A4%E3%81%BC%E3%81%96%E3%82%8B/

その猿の毛皮をくれ!いや、貸せ!(何年かしたら返すから)、言う事きかないなら射殺してやる、とご無体を言う大名に、猿回しは泣く泣く自分の猿を手にかけようとする。が、猿回しが振り上げた棒を、合図と思って無心に芸を披露する猿…。ほろりとする猿回し、それを見てようやく大名も自分の要求の酷さに気付き…。
お猿さんがとてもとてもキュート。文楽と猿、意外にも強力な組み合わせ。「近頃河原の達引」のパペット猿もちょー可愛かったよなあ。
玉翔さんの端正なポーカーフェイスと、天然~な猿の動きがミスマッチで何とも可笑しくハマっていました。

それから、二代目襲名のご挨拶あり。裃姿の技芸員さんたちがずらりと舞台に勢ぞろいして、玉女さん以外が次々とご挨拶を披露。

「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」
平家物語の豪傑、熊谷次郎直実と平家の公達敦盛。敦盛を助けるために(主君義経の意向もあって)、我が子を犠牲にする熊谷、ああまた我が子を犠牲にパターン…と思いつつ、クライマックスではやはりほろっとさせられてしまう。クライマックスでは石屋のオヤジが大クローズアップでそちらもビックリだが…

「卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)」
去年鑑賞教室で見た演目。ただし、その後ろ半分、柳の精であるヒロインお柳さんが、本体である木が切られるのでもう命が絶える、夫や息子ともう会えなくなる…としみじみと悲しむくだりから。
もう一つ前の段で披露される、夫平太郎のカッコイイ所が見れなくて残念でしたが、去年は勘十郎さんの割とキリッとしたお柳だったのが今回は蓑助さん。とことんフェミニンな、こぼれる色気とたおやかさにうっとりしていると…
はらはらと降りかかる柳の葉が、一枚…

なぜか蓑助さんの後頭部にピッと突き立った。
ピーターパンの帽子の羽飾りのよーに。
黙々と美女人形を遣い続ける蓑助さんが、どう動いてもぜんぜん落ちない。

さすがにちょっと笑いたくなり、まもなく黒子さんがさりげなく取り去ってくれたのでホッとした。
なんなんだ…
三十三間堂、前回も、小道具の鷹を長い棒で黒子さんが飛ばしていたら、同じく動かしていた鷺にひっかかって取れなくなって、ありゃりゃりゃりゃ、という、小さいアクシデントがあった。

三十三間堂、次に見る時が楽しみである(二度ある事は三度あるんでないかしら)。

第二部も当然キップは取ってある。
楽しみ楽しみ…
【文楽】初春文楽公演・第2部
今日はオフタイム、新春公演夜の部へ。時代物と世話物ひとつずつのカップリング。
あわてて出たら、第一部行ったとき買っておいたプログラムもっていくの忘れた(T^T)

「日吉丸稚桜」駒木山城中の段
タイトル通り、豊臣秀吉の若い頃、の演目。名前はちょっと変えてある。藤吉郎ならぬ木下藤吉(このした・とうきち)とのことです。大星由良之介みたいなもんですね。
墨俣一夜城やなにやの手柄でひとかどの大名となった藤吉、ですが、その家来の堀尾義晴一家の悲劇+加藤清正誕生、というところ。舅が伯父を殺した仇だったと分かって妻を離縁しようとすると妻は自害。舅のほうにも色々事情はありそうなのですが(元は武士だそうだし)、ここの段だけだとよくわからなくて残念。舅も娘と婿を思い陰腹を切りつつ木下藤吉が悩んでいる城攻めのための間道を明かしてくれたり、いろいろ…かなりムチャをします。そう、文楽らしい義理と人情とのせめぎあいで。ぐわーっと心を乱されうるるとなりますが、落ち着いて考えるとムチャだよねえやっぱり。
タイトルロールだけど玉志さんの藤吉よりも和生さんの五郎助のほうが主役なのかそうなのか…

「冥途の飛脚」淡路町の段・封印切の段・道行相合かご
近松の世話物。遊女梅川をライバルより先に身請けするため、顧客からの預かり金に手を付けてしまった忠兵衛…。もう最初から忠兵衛、すでに友人から借りた分には手を付けていて、梅川のことしか考えておらず浮わつきまくっていて、ほんとにダメな男。それにくらべると友人八右衛門の懐の深さはエライものがあるなあ。
それでも、あっさりとキレてダメルートに突入していく忠兵衛を思う梅川、二人の心の結びつきは真摯なもので、雪のちらつく中を新口村(忠兵衛の実家)さして、よろめきながら落ち延びてゆく二人の姿はうっとりするほどきれいで見とれてしまいます。
忠兵衛玉女さん梅川勘十郎さんで。

新口村に行ってからの部分は、しばらく前に同ネタ別作家作の「傾城恋飛脚」で見ましたので、これである意味完結したのか…。

ただ、おととい4時間しか寝てなかったのが取戻しきれなかったか…(朝寝したんだけど…)
忠兵衛が越後屋にキレて飛び込んでくるちょっと前のあたり、少し意識が飛んでしまった。いかんなあ。ああもったいない。(T^T)
【文楽】初春文楽公演・第1部
行ってきました!昨日住大夫さんの本を読んでテンションもだだ上がり(笑)
お正月らしい、それも、この三年で一番派手派手な感じのプログラムでした。満足満足。

まずは「花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)」
春の「万才」…美男の大夫と三枚目の才三が新春を寿ぐ舞を。
夏の「海女」…海辺を舞台に…
秋の「関寺小町」あの小野小町です。
冬の「鷺娘」…そのまんま…

季節がかわるごとに真っ暗に暗転して背景がガラリと変わる。
ぜんぶすごい!いや、「万才」はちょっと?と思ったのだが気のせい?(大夫の玉佳さんが珍しくちょっとぎくしゃくと見えたような。まあ、三枚目におちょくられたりする立場だが二枚目は。三枚目は一輔さん、のびのびと)
しかし「海女」からぐわっとひきこまれ。海辺を歩む娘が、頭上を飛ぶ鳥に見入るうち、気まぐれに近づきまた離れてゆくつれない恋人へ思いをはせる(このへんがすごく自然に伝わる)。嘆きつつ舞うと、なぜか蛸が出てきて一緒に踊る!
なにー!江戸時代の演目に!美女と触手か!
びっくりしました。しんみりが途中でちょっとコミカルになって終了。蛸案外可愛い。

「関寺小町」百歳になった小野小町が杖をついて登場。老いさらばえたわが身を恥じ、昔の栄華をしのんで、狂気すらにじむ舞を見せ、またよろめきながら去ってゆく…老いの醜さ辛さを見事な品格とともに見せてくれる(文雀さん)。ワビサビ。

「鷺娘」は一面の銀世界、雪が降りしきる中にたたずむ、綿帽子の娘。清らかに、艶やかに、華麗に舞う!綿帽子や打掛や、少しずつはずして雰囲気を変えながら、ひたすらに舞う。途中で真っ白な枝を振って踊るところは某Youtubeのボカロコラボ文楽人形を思い出したが(爆)、それ以外にも透ける傘を二本持って、ゆっくりだが回しながら舞ったりもする。
えっそれかなり大変なんじゃないんですか。さりげに超絶テクなのでは。
すみません、初めて清十郎さんで「うおおおおおおお!」と思いました(テクだけではなくとにかく美しかったし…)。
これからは清十郎さんというとあああの鷺娘と思うと思います。


ここで30分休憩。サンドイッチをはぐはぐしながらこそこそとスマホでモバノブ(爆)

で、「彦山権現誓助剣(ちかいのすけだち)」より“杉坂墓所の段”“毛谷村の段”。
樵ながら剣の達人、六助(玉女さん)。孝心あつい六助が亡くなった母の四十九日の準備をしていると、老婆を背負った浪人者があらわれて、病気の母のため何とか急いで仕官したいので、試合ってわざと負けてくれと頼み込む。なんと殿様は「六助に勝つ」というのを就職試験にしているらしいのである。素直な六助は承知するが…
騙されてると思うでしょう。騙されてます。
親切心の八百長負けで嫌な目にあって帰宅すると、旅の老婆が立ち寄って、突然「私を親にしなさいな」…
まあ落ち着いて、考えさせてと隣の部屋に老婆を休ませると、今度は旅の偽虚無僧が、表に干してあった子どもの着物を見て「誘拐犯か!」と乱入してくる。実は前日ホンモノの誘拐犯から助け出した子どもの着物なのだが…
虚無僧は腕っぷしも強いが実はなかなかの美女(和生さん)。誤解がとけたとたんに、ツンがデレに変わって突然「私を女房に…」
お、同じやんこのノリ、と思うと、やっぱり親子なのであった(笑)
実は二人は六助の剣の師の妻と娘で、「六助と結婚させたい」などという話を聞いていたためだった。しかし、ちと順番を考えるべきだな…どーゆー血筋なんだ…
なんやかんやで悪い浪人=師のカタキとわかって、みんなで家族になって敵討だ!

…で、おわってしまった。残念。「俺たちの戦いはこれからだ!」て。
…最後まで見てみたかったなあ。
本当に最初から最後までとなると、また一日仕事になるのだろうが…

そして最後、「義経千本桜」の“道行初音旅”(だけ)。
幕が開くと一面の桜。いやー圧倒されました。
静を遣う勘十郎さんの裃まで桜の花でいっぱい(うしろを向いたときは迷彩のよう…)。
以前勘十郎さんの使う狐のスーパーぶりには圧倒されたものですが、今回は狐は幸助さんにまかせています。白地に赤い狐火模様の裃で狐をはね回らせたあと、早変わりで佐藤忠信に変身して再登場。静といっしょに踊ったり、源平合戦の話を語り聞かせたり。
勘十郎さんは扇の妙義をみせてくれました。人形に持たせてる金扇を一瞬でくるって回して持ち替えたり、扇を弓矢にみたせて後ろ手に投げると、ズバリと忠信に命中する…
うーんすごいすごすぎる…美しい、美しすぎる…
アクロバチックなだけでなく終始圧倒的に華やかな舞台で、もー堪能しました(*^^*)

去年までより、30周年記念で倍率が上がったという文楽手ぬぐいも当たらなかったけど、そりゃもうおなかいっぱい、こんな幸せないわー…な気分で、帰途…ならぬ職場への道につきました。
くすん。一日休むのは無理だったのよ…

しかしもう一度見たい、くらいである。(ムリだけど)
いわゆる世話物。
大阪相撲の関取が主人公だが、義理ある贔屓筋の息子が遊女の身請けをするのを助けるために、横恋慕の武士を殺してしまって蓄電する。この息子も息子で、実はいい奥さんがいるのに、遊女と恋してる場合じゃないっしょ!しかも奥さんの実家にかくまおうとか図々しいでしょ!それぞれの親たちも子への愛と浮世の義理との板挟みで苦しみ続ける。まあちょっとこの息子がアレすぎるな、で、第二部より見やすい席だったのに、途中で少し眠くなった(笑)
登場人物の一人をいさめるために、大人数でドッキリを仕掛けるところは面白かったが。

あーあ、もう秋の文楽シーズンは自分にとって終わってしまったなあ。あとはまた忙しい忙しい日が続くばかり。
秋の文楽シーズンがやってまいりました。
第一弾は、「奥州安達原」。
いわゆる前九年の役で源頼義やその子義家らに討伐された、奥州安倍氏の貞任・宗任兄弟が逆襲を企て…というようなお話(時代物)。

ごたぶんにもれず、実在のメジャー武将たち以上に、その周辺の様々な老若男女の悲劇が胸を打つ物語としてちりばめられている。
全五段の芝居のうちの、三段目四段目のみの上演です。それでも5時間近いのですが(笑)

「朱雀堤の段」では、駆け落ち出奔したものの夫と別れ別れになり零落した盲目の物乞い・袖萩とその幼い娘お君、袖萩の父・傔仗(次女を義家に嫁がせ、義家の舅でもある)、義家の密命を帯びて出奔した家来生駒之介と恋人恋絹、生駒之介を愛しつつ身を引いた義家の妹姫、など、多彩で複雑な関係性の登場人物が、あれよあれよという間に一気に紹介される。
この段は珍しく出遣いじゃなくて、人形遣いさんたち全員黒布に顔までかくしていらっしゃったので、今回あまり予習しなかった私はコレは誰?アレは誰?と、ぼんやりと想像しながら見てました(笑)
顔見ないでわかるほど見巧者じゃないもん!

顔が出てると気になる、と、どこかの市長が言ったりもしてましたが、個人的には出てるほうがなんとなく華やかでいいです。黒子スタイルはもっさりするけど、ビシッと和服で決めた主遣いさんたちはカッコイイ(ミーハー)。

次が「環の宮明御殿の段」(ここから、主遣いさんたちの顔がわかる)、
天皇の幼い弟・環の宮が貞任らにさらわれたらしいというので、義家・傔仗と朝廷から来た中納言則氏が、容疑者への詮議を行う。則氏が玉女さんだった。
この則氏が、えらくまたイヤミカッコイイんである。ちょうちょうはっしと容疑者(宗任)を追いつめつつ、返す刀でざっくりと傔仗に「散り際を心得よ(さっさと切腹しろ)」と追いつめる。まっ黒な装束の袖口にちらりと赤をのぞかせ、うわーカッコイイけど酷い。後で、実は…な正体暴露があるけど則氏のビジュアルが実にステキだった。実は貞任の変装だったので、途中で姿が変わってしまう。残念だ(笑)。

続いては極寒の中、父親が危機にあると聞き駆けつけた袖萩親子の愁嘆場。
結局家には入れてはもらえず、倒れ伏す母に自分の着物を脱いで掛ける幼い娘。泣かせます。貧しくとも、それだけの愛と信頼に結ばれた親子関係…昨今、親と子の間の凄惨な事件が多いことも思い起こされ、薄倖のこの親子の情愛は忘れられない名場面。
結局、なんと袖萩の夫は謀反人貞任だったとわかり、板挟みの彼女は、父親と時を同じくして自害してしまうのですが…

さて、生駒之介夫婦の道行の段をはさんで、四段目の「一つ家の段」。
安達原といえば老女です。
勘十郎さん登場!
ゆるゆると、あばらやの中で糸車を回してるだけで怖い婆人形を遣っておられます。
一見鬼のように怖い婆さんですが、実は、…見た目よりもっと怖い…
一夜の宿を借りようとした生駒之介夫婦を騙して、恋絹のお腹の胎児を奪おうとする。
恋絹に斬りかかり、腹を裂いて中から…うううう、ありえないほどグロく強烈な場面が…
人形浄瑠璃でないとこうは直截に表現できないですよね。
そしてその動機とは。

実は老婆は貞任・宗任の母であり、亡夫の復讐のために鬼と化しているのだった。
(後半、いきなり煌びやかな十二単姿に変身する!)

終盤は、もうあれよあれよの「実は○○は○○だった!実は××したと見せて××していたのだった!」の大連発。変性男子まで登場。どんでん返しにつぐどんでん返しのワクドキクライマックスを迎えるのだが、ただ、ひとつ気になった。

さらわれた環の宮らが、義家の送り込んだ偽物だったのなら、傔仗はどーして切腹しないといけなかったのか…???
則氏が促したせいで、義家がどうとかする前に腹を切ってしまったということになるのだろうか?いやしかしそれはあまりに…

やっぱ、どんでん返しをいっぱい仕込むのに夢中になった作者が、盛り上がってりゃそれでいいわ、で、流してしまったということ…なのか…?作者の近松半二はどんでん返し好きで知られているけど。

まあでも面白かった。

前に座ってた女性があんなにしゃんと背を伸ばし、頭を高くして見てなければなあ…
かなり見にくくて、首を右に左に伸ばしてみていたからちょっと疲れた。
もともと長身な上に着物で来てるから、帯のせいで背もたれにもたれにくいのはわかるけど。
やっぱり舞台鑑賞は、後ろの席のこともちょっとだけ考えて座ってほしいなあ。くすん。

なんか去年もこういうことが一回あったなあ。同じ人だったりして。やだな。
来週行く第一部では、もう少し前の人が頭が低いといいけど。
途中で寝てくれても可(席に沈み込むから)。
毎日寝不足でふらふらしながら…行ってきました文楽昼の部。
『平家女護島(へいけにょごのしま)』、『鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)』。
近松門左衛門の作品を集めてる。

「平家…」は、鬼界島へ流罪になった俊寛僧都らの話。流人三人のうち俊寛だけに赦免状が来ず…というのは平家物語の有名なエピソードだが、ここでは三人のうち、仲間の一人と結ばれた地元の海女を都へ同道させてやるために俊寛がわが身を犠牲にする話になっている。
序盤、恋の馴れ初めを嬉しそうに披露する語りがちょっとエロくて笑えた。半裸で水中を駆けめぐる野生の美女、豊満な肉体にまとわりつく魚たち、って、えらくビジュアル…
流人生活でボロボロフラフラの筈の俊寛と根性悪役人瀬尾太郎の立ち回りあり、最後は高台へ駆け上り、去ってゆく船を見送る俊寛の図をすごい大道具でもって魅せてくれる。ここ、初めて文楽劇場へ行ってみる前にNHKで見た場面だなあ。
こういう男っぽい役はやはり玉女さんですねー。蓑助さんの海女千鳥かわいいー。玉志さんの康成、すごく体壊してそうで、リアリズムですかあれ(笑)
海女ちゃんの方言は少しわかりにくかった(爆)

「鑓の…」は、もう少し複雑でキレイゴトですまない人間ドラマ。不条理の悲劇でびっくり(でもうまいこと書くな近松…)。
“鑓の権三”とうたわれる笹野権三は、家中でも評判の武芸の達人で、茶道もよくし、おまけに絶世の美男。油壷からでたような、どんな女も見とれるような、と語られる。
こんなに何もかも「持ってる」男が、そもそも犯してもいない姦通のために妻敵として師に討たれる、という物語。
多分自分でも、こんなに何でもできるんだから、と、外には見せねど野心を心に飼っていたろう。言い交した娘はいるが、不出来なその兄伴之丞(権三をライバル視してくる)が鬱陶しいのか、権三にはイマイチ積極性が感じられない。出世のカギとなる、茶道の秘伝の伝授をめぐって、茶道の師匠の妻おさゐから「娘の婿になるなら伝授する」と言われて、承諾してしまう。が、娘の婿にと思っているだけの筈が、権三に別の女がいた、と知ったとたん、我が事のように嫉妬にかられたおさゐはにわかに狂態を演じて権三の帯を解いて投げすてるなどし、帯を拾った伴之丞から、おさゐと権三は姦通者として告発される…

姦通など全くしていないのに、この濡れ衣。そもそも告発者の伴之丞はかねてからおさゐに横恋慕して彼女を困らせており、この日も庭に潜んでいたのであった。ヒドイ。しかも正気に戻ったおさゐは「こうなったら夫に妻敵として討たれて、彼に男の一分を立たせてやって欲しい」と権三に訴え、残してゆく子どもたちへの未練を口走る始末、…なんて…なんて立つ瀬のない権三…そりゃ彼、恋人より出世を取った感はあるがここまでトンデモない運命の罠にかかるとは…。

…さて、ここでちょっと客席にモノ申したい。
呆然と見ていた私だが、このクライマックスでなぜだか、「妻敵になってくれ」て所で場内にみょーな笑いが広がった。子どもへの未練をもらす所でもだ。これ失笑するところじゃないだろ。なんでこんなんなの?私が行った今日の客だけ?

…明日、職場の文楽好きに聞いてみよう…


そりゃあ、今の世では余りにむちゃなナナメ上論理かもしれないが、お笑いじゃなくてむしろ不条理劇だろう。少々不快に感じた。
おさゐも、衝動的にとんでもないバカなことをして(更年期のなりかけか?)、でも親の情は普通に残ってておかしくないじゃないか。
昨日まではモテモテのエリート青年だったのに、今日は心も通っていない年上女と駆け落ち、明日は妻敵討たれ待ち。
あふれる美貌も教養も自分の運命を暗転させた。もはや武芸も役には立たない。
「せめての作法、刃(やいば)は抜く」と言いながらも、本気で斬りかかりはしない権三の暗い暗い表情がしみました。
さっさと恋人と祝言あげといたらこんなことにはならなかったのか?
権三はちょっと自己チューだけど、よくある程度のもの。これほどまでに不幸な末路をたどらずともよかったかも…無実なだけに。
(伝授に恋人手製の帯を締めてきたのも、なぜかな?まだまだ迷いがあったのか?)

現実は、予想のナナメ上をいくのだ、という意味では、昔も今も変わらない話。
こう見えて案外、近松の世界は現代的なのかもしれません。

権三は桐竹勘十郎さん。女殺の与兵衛とはうってかわって静かなかんじ。
おさゐは文雀さん。


おまけ。

“この言い回しは、この浄瑠璃から来てたのか!”シリーズ。
今回は、

「馬から落ちて落馬して」(鑓の権三) でした(笑)
【文楽】夏休み文楽特別公演・第3部 サマーレイトショー
夏です!夏文楽は、技芸員のみなさんの真っ白なお着物が目にも涼やか。
夜の部「女殺油地獄」へ行ってきました。仕事のあとで…(1日休みはとれなかった)。

「女殺…」は、放蕩者の不良ムスコ与兵衛が、やることやすことあんまり酷いんで勘当されて、借金返せなくなってパニクって、お隣の油屋の親切な若奥さんを手にかけちゃう話(強盗殺人…)

救いのない話だけどそのダメっぷりや、ダメ息子だけど親としては可愛くて何とかなってくれないかと悶々としてたり、平成の今でも妙なリアリティがある話。
そしてクライマックスは、油屋なもんで油の樽をひっくり返してどたばたスーイと転んですべって大騒ぎしながらの殺人場面、てな事で。うーむスペクタクルなんだろうか、と思いながら行きました。はい、スペクタクルでした!!!

ばびゅーんと舞台を何メートルもすべったり、立ち上がろうとしてもう半回転するくらいにころんだり、なにしろアノ勘十郎さんだから神業のごとき動きで魅せます。
人間にはあんなスピード出せないもんね、もうあれよあれよの数分間でした…!
(行った先でたまたま出会った先輩によると、新演出!、というか、普通より短めでサッパリと、ただしダイナミックに動かす短期決戦型だったとのこと。確かにあれだと去年夏の「夏祭浪花鑑」の殺人の場の方が長かった…)
逃げ回りながら油樽の蓋を投げつけたりするお吉さん。持った刀でそれを叩き落とす与兵衛。ってそれ相当すごくないですか。人形でやってるんですよ。三人がかりで動かす人形で、ですよ。空中戦だよもう。
以前白狐をびゅんびゅんブン回していた勘十郎さんならではの超絶テク、スピーディな動き。

いやーほんとすごいな人形浄瑠璃って…
それでなくとも、人形の何がいいかって、人間の役者でできない動きをしてのける所ですよね。死んだら本気で死ぬしね(演者が人形を倒れたまんまにしてそこを離れると、これ以上ないってくらいに死体です。当然だけど)。

と、いつも思うことを反芻しつつ、満足して帰ってきました。

今回は久々にカブリツキの最前列。もう舞台は私だけのモノ、みたいな嬉しさがあります。前に誰もいなくて視界爽快。字幕はちょっと見にくいけどね(^^;)

殺しの場の神業はもちろん、与兵衛の「かっこつけ不良青年」はカッチリと仕上がってました。最初から、ワルだし乱暴者だし、でも肝はそんなに据わってない。お吉さんやなじみの遊女とかには多少「可愛い」と思われてる気配すらあるのに、「殺し」という一線を越えてしまうんですね…
お吉さんは和生さん。まったりとあたたかみのある綺麗な若奥さんで優しいお母さん、を、すごく素敵に演じておられました。娘の髪を結ってやるしぐさとか、なにげないけど心にしみる。こんないい人がなぜこんな死に方をせにゃならんのか…としみじみ思わせる。

爽快さも救いもない、不思議な作品です。
けれど、見ごたえありました!
来週は第二部を見に行く予定。そっちも楽しみです(*^^*)
第二部は、勘十郎さんもだけど、玉志さんを見られるのがちょっと期待♪

文楽鑑賞教室

2014年6月7日 文楽
ハイ、本公演とは違うし~なんか演目少なそうだし~、と去年はスルーしてた「鑑賞教室」に行ってきました。とはいっても、短い目だから体力的にも気楽に見られていいかも。
家族が解説を見たいようなことを言ったのでその気になったのだけど、結局ひとりで行くことに。まあ基本的におひとりさまだから。

しかしびっくりするほどいい席が少なかったです。ボケてて朝イチで取らなかったせいもあるけど、住大夫さん効果の続きでしょうか。実際ほとんど満席みたいでした。週末だからか割と若い女性も多かった気がする。平日に行くのと平均年齢が全然違いますね。

以前お正月公演で見たことのある短い「団子売」からスタート。団子売りの夫婦の名前がお臼と杵造って、ほんとにまんまだわ。でも見目の良い夫婦なのよね♪

そして鑑賞教室。以前一度、以前子ども文化センターでの鑑賞教室を見たことがあったのだけど(その時の人形解説はお臼の一輔さん)、やっぱり今回は文楽劇場を使ってる分、なかなかみごたえ聞きごたえありました(子文では1000ポッキリでしたし)。しかし不思議なのは、語りの大夫さん以上に三味線弾きさんの方が流暢に立て板に水、ってところかな(笑)もちろんある程度前で話すのが得意な人を起用するのでしょうが…
「象牙100%」のお言葉は忘れがたいものがありました(笑)

とはいえ、お客さんに実演体験もしてもらう人形遣い解説が、鑑賞教室の一番濃い部分かも。人形のいろんな仕掛けも説明してくれるしね。簑紫郎さんがとつとつと…と思いきや、淡々とした中に意外や何ともいえないおかしみをにじませていい味だしてました。素人さん三人に具体的に動かす振付説明をして、「ホラ、簡単です♪」うそー!うそやー!会場大爆笑でした(簡単なワケないって…)。

そのあとは「三十三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)」から「鷹狩の段」と「平太郎住家より木遣り音頭の段」。この鑑賞教室用?演目は、約二週間のうちに、演者は四種類の組み合わせがあったのですが、勘十郎さんが出てることもあって(あと、休めるかとか多少ともマシな席があるかとかで…)今日午後の部を選びました。そして玉志さんが出てるのもあったので…でも、玉志さんの出番ちょっとだけだったなあ(;-;)

三十三間堂建立にかかわる因縁や伝説のお話ということで、異種婚バナシでもありました。最初鷹狩の段では、エライさんの鷹が鷺を捕まえようと飛び回ったところで柳の大木の枝に足縄が引っかかってしまって…というのが始まり。ですが、なんと黒子さんが竿の先につけて飛ばしてるこの鷹が、柳でなく鷺に引っかかってしまって黒子さん大ピンチ!あやういところで何とか外して柳にからませなおしたものの…場内には一時、微妙な笑いが充満しました。
とはいえ舞台上では、あわてず騒がず着々と演技が進みます。(プロや…)

鷹を助けよ、柳の木なんか切ってしまえ!とキレるエライさんに対して、たまたま通りかかった主人公・平太郎が、立派な木を倒さずとも…と、サッと弓を構えてからまった足縄を切り、鷹を解放するのでした。(この出会いから、平太郎の父の仇が判明したりドラマが転がりだすというわけです)
これホントに人形で弓を射るのですが、それなりにちゃんと近くへ矢を当ててるのがエライ。平太郎は玉也さんですが、キリッとさわやかなモノノフぶりで恰好よかった。

さて、いろいろあって主人公が結婚するのが、柳の木の傍で出会った、緑の着物の美女お柳さん(by勘十郎さん)。
実は柳の木の精で、平太郎と子どもまでなした後、その木が三十三間堂を建てるのに使われるってんで切られてしまい、親子夫婦の別れとなります。この夫婦、前世も夫婦だったとか色々あるようなのですが、五段中の二段だけの上演とあって、もっと説明が欲しかったなあ。だいたい平太郎の父の仇うちはどうなったんだ…全五段通しで上演したら、そっちもちゃんと決着がつくのだろうか…

そういう意味では、やっぱり、しんどいけれども本公演の通し狂言がイイんですかねえ。

とはいえ、お柳さんはしっとりと美しく、しかも途中でいきなり早変わりもあってビックリしました。満足です。人形の早変わりはいつも、服(とか顔とか)だけ変わったのか人形ごと変わったのかさえ分からないくらい鮮やかで目を見張ります。


…そしてプログラム(いつもと違って簡単なもの、しかも人形浄瑠璃の基礎知識的なものをしっかり書いたものが、タダで配られていました)をつらつら見ると、ああっ玉志さんが平太郎を遣ってる日もあったのかー!これはちょっと見たかったかもしんない…多分席ない以上に私休めないけどさ…orz


毎日疲れて帰って夜中に大航海時代やってる人間が(後半「ちょっと違う」)、文楽まで時間を作るの、大変ざます…
【文楽】通し狂言・菅原伝授手習鑑 第二部
【文楽】通し狂言・菅原伝授手習鑑 第二部
満を持しての、とは言い難いが(結局昨日もズルズル、寝たのは2時だった)、久しぶりに時間休もらってシゴト早めに抜けて、文楽第二部へ。
引退を表明した住大夫さんの出番ありということで最近は珍しくも人形でなく住大夫さん写真入りチラシも出回っている…

急に体調を崩して休んだ人もいたので、午前中は大混乱だったが午後はまずまず、で、予定通りに出る。但し私の体力は混乱でいっそうぐだぐだに。ちょっとだけ時間の余裕があったので、職員の休憩室の畳でヒソカに20分だけ(タイマーかけて)横になる…ちゃんと意識飛びました(笑)
20分でも寝ると違うね。いやー、こんなとこでちゃんと寝れるんだね自分。さすがだ(違)

というわけで、昨日同様5時間近い観劇が、ぜんぜん寝落ちなしにばっちりじっくり、堪能しました~!昨日より大仕掛けな場面、大泣き場面など、やはり後半の方が派手だったしね。
このぶんでいくと、そのうちいつかは、一日でちゃんと「通し」を見れるようになるんじゃないかいな。
元々私は、このトシでまだ腰をヤったことはない。ラッキー。

今日のおはなしは、昨日第一部で筑紫に流されることになってしまった菅公と、それぞれ主人に従い運命の転変に翻弄される三つ子のその後。
菅原道真、ライバルの藤原時平、道真の養女と恋仲の親王(このスキャンダルで時平が道真を陥れるきっかけを掴む)と、それぞれ対立する三者を主に持ち、立場上対立しあうことになる三つ子の松王丸、梅王丸、桜丸。彼らは父親の長寿の祝いに集まることになるのだが…
このおとっつぁんが朗らかで愛嬌のある老人で、嫁たちとも仲良しでイイ感じ、の祝いの席から一転して…の桜丸切腹の段。住大夫さんはココ。明るい調子の前半から、突然桜丸が奥から姿を見せると、老爺は実は懊悩を隠して明るく振舞っていたとわかり、一気に涙腺を緩まされる。誰かが書いてたけど、やっぱり住大夫さんに「なんまいだ」言わせると、もうなんちゅうか誰も勝てないですね。そしてここの桜丸は珍しく蓑助さんが遣ってた(他の段は清十郎さんだったと思うが)。ヨメの八重もこのへん文雀さんに変わってた。人間国宝大盤振る舞い…
文楽鑑賞歴まだ2年いってない私としては、蓑助さんの男役初めて見た気がします。まあ桜丸は兄たちに似ず線の細い美青年なので、ほとばしる薄倖感がよろしかったですが…
ほろりとしたところで、筑紫へ行った菅公と梅にまつわるあれこれ、雷公になるあれこれが。うわーすごい、凄い迫力、火を噴いてるし…
そしてラストの寺子屋。
忠義のためにと子を犠牲にする親の姿は、現代では「もってのほか」としかいいようもないだろうが、価値観は時代により変わるもの、時代の価値観に追いつめられて何よりも大切な家族を犠牲にする夫婦の悲しみには、やはり涙を誘われる。嶋太夫さんの語りもどーんと胸に響いておなかいっぱい。

今日後半はバリバリに勘十郎さん(=松王丸)の目立ちまくる内容で満足でした。
しかし松王丸、舎人にすぎないと思うのに、話が進むにつれてどんどん、なんかすごく派手に…(チラシ画像参照)
首実検の場なんか何者?というくらいキンキラの衣装にしかも「病気だ」って駕籠に乗ってやってきて刀を杖替わりにしている。何が何だかよくわからない。
文楽の筋って、なんだか、「こーゆー見せ場を作ってみたい」と考えた作者が、転を真っ先に考えてから、後付でいろんな理屈や原因や伏線を強引に付け加えて作ってるとしか思えないところがありますね。はらはら泣きつつそんなことも考える。場内けっこうハナをすする音があちこちで。ちなみに欧米人は鼻をかむのはOKだけど鼻をすするのはNGだと聞いたことがあります…文楽って、かならず外人さんも聞きに来てるの見るけど今日は特に多いような気がしましたが、みなさん如何。

たんのうしまくって、ぶらぶらと階段を下りてゆく。数メートル先に職場の知り合いに似た後姿をみかけて目で探しつつ、西側出口へさしかかって、目を疑った。

出口のすぐ外、マフラーまいて(いや今日は割と寒さが戻っていたが)、出てくる人待ち顔でさりげなく立ってるの、えええ?玉女さんいや襲名なさったから玉男さん!!!???

こんなところになんで今日の菅公がーーー!?
(最後の「寺入り」「寺子屋」の二つの段には菅原道真は出てこないので、見間違いとかいうのはあっても、時間的には無問題!)

「えっ、たまめ(お)さんっ?」と口の中でつぶやきつつ反射的に会釈(今日の感謝のこもった)をすると、なんと軽く会釈を(誰かわからないなりに)返してくださいました。
まあ舞台に立つお仕事をしてたら、知らない人から会釈とか挨拶とかかけられるなど、いくらも経験おありでしょう。

うわーうわーうわー、目が合っちゃったー、会釈まで…すごくトクした気分。
私服(洋服)でも同じように謹厳誠実な雰囲気です。

しかしみんな気が付いていなかったような。それともプライベートを大事にするがゆえ、みな気が付かないフリをしていたのか(無粋ですいません)。

ああ、いい一日だったなあ…
ミーハーな私です…(^^;)
さー春の大阪場所です(違)…大阪春の文楽シーズン開始。

高校生のムスコが住大夫引退ニュースを見て「一回見たい」と言い出したため、いつもならいい席が取れそうな日を選んで平日にいくことが多いのに、激しくキップの取れる日が限られてしまい、今日前半第一部を見てきました。明日しかムスコが行けそうで前からヒトケタ列のキップの取れる日がなかったので。やれやれ…
まあ、高一にしては風流を解する彼、立派なものだとは思うけど。文楽も既に二回くらいは付き合ってくれたのだが、まだ一度も住大夫さんの出た日に当たってなかったのね。

今回はいろいろ不覚を取りましたが(11時からと勘違いしていて、少しだけ遅刻した。なんてこったい)、なんといってもここしばらく平均睡眠時間5時間くらいなのがなあ…
真ん中へんだけど通路よりわずかに後ろってんで、舞台全体はきれいに見渡せるが、人形好きの私には物足りない席だったのが悪いのか(字幕は見やすいが…)、断続的にずっと続けて睡魔に悩まされた。舞台上で進行していくあれこれはとても素敵なのに、あれ、意識飛んでなかったか?という瞬間が何度も。これまでうっかり船こいだことはあるが、恋でもたいてい一公演に一度だけ。一回ウトッときたら、あとはさっぱりさわやか。

それが今回は…。「まだらボケ」という言葉があるが、なんだかまだらな鑑賞になってしまってとても残念。三味線、浄瑠璃語りが気持ちよく耳に入るようになったこともあるだろうが、オゼゼを払って入場しているからには、やっぱりしっかり見なくっちゃね…
あとごひいきの勘十郎さんが、最初にちょこっと出て引っ込んだきり出てこなかったのもイカンのかも(たぶん第二部で大活躍なのだ)。

とはいえ、和生さんが二人分くらい出ずっぱりで大活躍していた。ほんのりと品があっていいなあこのかたも。
菅丞相の勘当された弟子・源蔵としてホロリ場面とアクション場面を両方こなしたあとは、カクシャクたる老女・覚寿として娘を殺した犯人をサクッと推理(違)
ちなみにこの殺人事件にかかわって、鶏が出てくるのだが、これの動きがビックリするほど真に迫っていて驚いた。
あと悪役の宿禰太郎の、ヘンにシャレっけのある…というか、シャレ者ぶったような妙な個性が印象的だった。エメラルドグリーンにオレンジを合わせたあの着物は何ー!
宿禰太郎を遣う玉志さんも、気になる人形遣いさんのひとりである。

まあ、全体に、前半だからかシットリ落ち着いた地味目な感じだったのも寝不足の身にはよくなかったか。
さあ明日のために、いい加減にさっさと寝ろ自分ー!!!

明日はシゴトを休めなくって、2時半くらいまで働いたあと、かろうじて時間休をとって劇場に駆けつけるんである。

明日は京よりあと6-7列くらいは前に行ける。目を皿のようにして楽しむのだ。
やっぱり遠い、中央通路より後ろじゃダメだ。
体力勝負だね(^^♪

…昼寝をしておきたいところだが、家に帰るヒマまではなし。
カプセルホテルとかはちょっとあれだし…
環状線に乗り続けるとか。四つ橋線に乗り続けるとか?

明日は住大夫さんも待っている。リベンジだ!!


…今日も、観劇のあと、実は職場にちょっと顔出した(今日は1時間だけだけど)。これだけやったら明日はちゃんと3時には、逃げて帰れるよなあ(泣)逃げるよ絶対!

ワタシ、ここんとこ、休みの日でも、ちょこっと職場に行ったりしているので(何時間もいたことも…)、一日も職場をのぞいていない日って、もう2週間以上無いんですけどぉ。
そして、明日からまた6日間フツーに、休めない日が続く。

誰か私に時間をめぐんでください…
行ってきました!第一部。

市長の課した観客動員数ノルマに届かないというのが記事になったのが今頃効いたのか、すごい人でした。2,3日前の記事にもありましたが、終演後にロビーに技芸員さんたちや人形ちゃんがお見送りに出てくださって、うれしいけどむしろ申し訳ないような心もちに。勘十郎さんまで出ていらっしゃったよ!エー勘十郎さん、第一部で出番が終わった人はまだしも、出番は第二部、これから阿古屋じゃないですか~(涙)

ただ「これまで伝統にあぐらかいてたからコレが当然」なんて扱いにされたら気の毒だと思って、ちょっと心配になった…「努力してない」なんてデマばかり流されてるんだもの。文楽は三業(語り、三味線、人形)の協働の舞台、しかも人形は人形だけで一体三人がかり。修練に時間がかかるから一軍選手の平均年齢はかなり高いし、そもそも少ない陣容なのに(二か所で同時に本格公演とかまず不可能)、舞台の外で変に無理をさせたくないと思う自分は間違ってないと思うよ。こんなに素敵な、…文楽なのに。


えー、話を戻して公演内容。
最初は「二人禿」。
廓で働く少女たちのショートスケッチ、って感じ。桜でいっぱいの舞台で、羽子板や手毬で遊ぶ姿がかわいくてにぎやか。

「源平布引滝」は時代物。壮年時代の斎藤実盛(平家方)と、後に老境の実盛を討つ手塚光盛の幼年時代の因縁を描く話だが、実盛とともに木曽義賢の側室(懐妊中)を追ってきた瀬尾十郎の大どんでん返しが泣かせる。もちろん一瞬だけ蘇生し幼い息子に呼びかける母親・小まんも。終盤は馬が出たり、首が落ちたり、捕り縄が飛んだり、見てみると結構派手な演目でした。(まだまだなにを見ても初見、だからなあ(笑))
それにしても、優しげな風貌のロマンスグレイ玉志さんが白髪に赤ら顔、ケレン味たっぷりの瀬尾を大胆に動かしているのは最初だけ不思議な感じがしました(^^;。玉女さんの実盛は堂々とした中にも憂い含み。

「傾城恋飛脚」新口村の段、は心中物、いやさ世話物(笑)
横領罪をおかして傾城梅川とともに実家のある新口村へ逃げてきた忠兵衛。久しぶりに父孫右衛門に一目会いたいと思う、その気持ちを汲んで梅川が、雪道に躓いた孫右衛門に駆け寄り介抱し…

会いたい、でも罪を犯してしまってもう会えない、今でもどこにでもある親子の辛い情念をしみじみと描いてじわっと来ました。しかし梅川(蓑助さん)忠兵衛(清十郎さん)はもちろん、和生さんの孫右衛門まで老人なのにシュッとして品があって、なんてキレイなひとびとなんだ!(人形だけど…)と感じました。

第二部よりも地味なようでいて、ちゃんと「文楽らしさをいろいろ取り揃えた」いーい舞台でした。
あー、しかし、もう明日で千秋楽なのね。残念。

帰ってからは久々にdynabookの調教。Windows純正のシステムバックアップ機能について確認し、いったんバックアップも取った。簡単なものだがタダだし。これからはガンガン設定整えていくぞー。…時間があったら、だけど(涙)
新春文楽公演第二部。
今年の初文楽。

今回、家族以外に付き合って下さる方に恵まれ、初めて「おともだちと文楽」できました(*^^*)

短い「面売り」は、勘彌さんの遣う面売り娘と、一輔さんの遣う話芸の青年とが「一緒に商売しよう」と、歌い踊る出し物。去年の「団子売」もそういう傾向があったが、ゴンベが種まきゃカラスがほじくる…な歌がほんのりエロ方面に流れてくとかいうのは、新年のお約束なのか。ええまあ「おめでた」はおめでたいに違いないのですが。

続いて「近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)」。
初めて聞いたタイトルだったが、おしゅん伝兵衛って、名前は聞いたことがあるような、「そりゃ聞こえません伝兵衛さん」てセリフもどっかで聞いたことがあって「ここか!」な感じ(多分筒井康隆か田辺聖子の小説内でではなかろうか)。
ある程度長くて複雑な話のうち後半二段ぶんだけ、というパターンなので、話はいきなりおしゅくに横恋慕して伝兵衛を恨む悪者たちのたくらみ場面から。

前半『四条河原の段』。
幸助さん去年は三番叟で明るく踊り狂ってらしたが(ああもう一年もたったのね…)、今回は凶悪シリアスで。和生さんの遣う商家の若旦那伝兵衛は、町人なれど、根性悪のお侍よりはるかに上品でスマートな美青年。でも、耐えに耐えた末ついに刀を抜いて反撃する。殺陣の場面は素晴らしかった。、嫋々とながれる上方唄(ここだけ字幕がなくて??と思ったが、プログラムを見ると、浄瑠璃台本そのものではないからなのかな)が美しく響く中、ただただ息をのむ一幕でありました。

後半『堀川猿廻しの段』
この段で住大夫さんが出るとあって拍手は凄いし声はかかるしエライ盛り上がり。
眼も不自由なおしゅんの老母が近所の娘に地唄の稽古をつける、という地味なシーンからだけど何だかおもしろい。きっと地味な場面ほど難しいんだろうなあ。おしゅん(国宝文雀さん、しっとりした正統派美女ぶり)の兄与次郎が帰宅すると、この兄さんが人はいいけどすごく三の線なキャラで、大星由良之助だの唐木政右衛門だの豪傑のイメージが(私的には)強い玉女さんが遣ってたのが意外でした。
病と貧乏と娘の心配でくどくど言ってる母親の横で、ダイナミックにご飯食べまくって笑いをとる。あっちでしみじみ、こっちでクスクス、舞台のあちこちを見ないといけないので、やっぱりオペラグラスがなくてすむくらい前の方の席でないと私はだめだなー、ド近眼だから。
最後は旅立つ二人へのはなむけの猿回し。お猿は両手に一匹ずつのパペット。これがすっごくかわいくて楽しくて、でもそのバックには「好きにさせてやるけど、でもなるべく可能な限りは死なずに逃げ続けて欲しい」との家族の祈りがこめられている。堪能しました。

まきてぬぐいイベント(さすがに二年連続ゲットなど不可能)をはさみ、予約したレストランへ。

季節膳がとても綺麗で良かったけど、やはりちょっと時間足りない気味だったかな。
そういう意味では天ざるくらいにしておいた方がよかったか(^^;)

最後は「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」 阿古屋琴責の段。
逃亡中の景清の想い人、傾城・阿古屋はもちろん、これを詮議する畠山重忠、岩永左衛門まですごくキンキラと豪奢なお衣裳でお正月気分がいっそうもりあがります。
阿古屋の簪はもちろん金糸銀糸で見るからに重そうなうちかけ、遣う方も大変でしょうがそれを生かした動きの演出がそれだけでも楽しい。だが景清への思いと回想を歌いながらひたすら琴、三味線、胡弓を弾く阿古屋の演技が細かくて真に迫って、…指、全部動くんですか阿古屋人形…!びしばし動く指使いに眩暈すらおぼえた。あれホントにちゃんと弾いていますよね。私は和楽器は全然だけど、前から二列目で見てたら音出てましたし…
そして、あれ、左手遣いと足遣いの人も黒布かぶってない…と思ったら、左はなんと一輔さんだった(ノンクレジット)!。一輔さん、子ども文化センターの文楽教室でお話聞いたことがあるので、ちょっと親しみあります(笑)が、足遣いの人は顔だけではわかりませんでしたゴメン。毎日こんな豪華布陣なのかしら…でも確かに、並みの左遣いレベルでは足りないのかも。

勘十郎さんの遣う美女は、なんか「かわいい」。ほにょほにょした可愛さじゃなくツンデレにも通じるような、嫉妬もするし芯のある若々しい可愛さ。小さい箱から琴のツメを出してはめる仕草にきゃーかわいいと思ってたら、そのあとのめくるめく演奏ぶりが凄くて、うわーうわーと思っている間に終わってしまった。三曲じっくり弾いてたはずが、あまりにもあっというまに感じたので、まさか、船こいだか?こいでないよな?と自分を不安に思ってしまった。まさか意識飛んでないよね。眠いなんて思わなかったよ今日は。そのくらい時間を忘れた。
第一部も下旬で切符とってあるけど…第二部もまた行きたい…無理かな無理よね(涙)
阿古屋がすごーくよく見える前の方の席だったのだが、少し左よりだったため、阿古屋の弾いてる背後で一時岩永人形が何やら笑いをとっていた所が、完全に一輔さんに隠れて見えなかったので、そこも心残りなのだった。

それにしても、いつもにもまして、皆ミュージカルっぽかった気がする本日のプログラム(笑)
登場人物の一人が芸をしている間、関係ない他の人物はおとなしく聞いてるだけも可、と。
ただ、人形なので、俳優によるもの以上に、気配を消して静かに「聞いてる」だけってことができるのが、文楽ならでは、かな(笑)

時間をかんちがいしていて、思ったより早く終わったので、けっこう浮かれたまま、8時半すぎに職場(劇場からは近場だったので)にちょっと行った哀しい私でした。(今行っとけば火曜は行かなくていいかと思って…やはり、大変だったらしい)

http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2013/2937.html?lan=j

ついでに国立文楽劇場のデジタルライブラリーのうち、文楽人形関係のリンク追加~。

http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc5/index.html

鯖江市の文楽コンテンツも、人形の仕掛けなどよくわかるページですね。これも追加~♪

http://www3.city.sabae.fukui.jp/vod/takara/4/exhibit/gozonji/tisiki/tisiki.html
【文楽】通し狂言・伊賀越道中双六 第二部
行って来ました。仕事もぶんなげて(赤子のごとく)。ひーはー…

一部よりほんの少しお客は少なめだったかなあ。8割くらいか。先日私が座って気に入った席が、なぜか空いていて悔しかった。その辺がとれなくて、すこし端寄りの席で我慢したんだもん。キャンセルか。くー。
とはいえこれまでになく語りと三味線の大夫さんたちに近いところだったので、音響的にはすごく迫力ありました♪

第二部は、仇討という大義のために、第一部で離縁されたお谷さんが更に更に不幸に突き落とされる話。
だもんだから、最大の盛り上がりの(筈の)「岡崎」の段、理不尽さが少々激しすぎて、全体としては第一部のほうが好きだったかなー。第一部のクライマックス沼津~千本松原のほうが。平作老人(by勘十郎さん)のかもす笑いもあったし…

もちろん、ふるふるふると泣きぬれるお谷さん(by和生さん)には見とれてしまったけど…

それじゃどこが特に楽しめたかというと、最初のところの引き抜きの劇中劇というか劇中万歳(漫才にあらず)、あれはカラフルでよかった。
「岡崎」も素性を隠したり他人にばけたりと複雑な面白みはあるのだが、そのあとの伏見北国屋の段も、仇のいどころを突きとめるためのミッション・インポッシブルだったりして、なんというか技巧的な話ですね。北国屋では、珍しくも、頼りなきイケメン志津馬の活躍が見られます。しかし、終盤、この話一番イイ男な(個人的見解)呉服屋十兵衛が久しぶりに飛び出して来て、しかしあっというまに退場となり、ヒジョーに残念な思いをさせられました(もうちょっと彼のイイ男ぶりを楽しみたかった…)。
いやー、資料を見ると、志津馬の「首(かしら)」も十兵衛の「首」も同じ“源太”の筈なんですが、どんだけ違うんだキサマら、という感じで人形(と人形遣いさん)の演技も実にあなどれないなーです。

白状すると岡崎の最初のほうでは、日ごろの疲労のあまり少し気が遠くなりかけていたので、もういちど見直したい聞き直したい気もするのですが…でも幕見席なんか、すごく後ろの端の方だけだからなあ。
そもそも幕見だけでも行ける日なんかなさそうだ。

先月見逃した「パリの恋人」だってどうすりゃいいんだと困っているし。

ほんと、ぜんぜん仕事片付かないし。死ぬよ、もー…
職場全体が欠員だらけで、片付かないからといって仕事を人に振ることもできないしさ。
ふん。
【文楽】通し狂言・伊賀越道中双六 第一部
久々に、めぐってきました秋の文楽シーズン。
今回も通し狂言を、一日通しで見る勇気(体力的に)がなくて、二日に分けての観賞です。
昨日終われなかったシゴトがあって、職場にちょっと行ってから、大慌てで日本橋へ。
職場、千日前線沿いなので(^^;)

荒木又右衛門で有名な“鍵屋ノ辻”の仇討を元ネタにした物語という。荒木又右衛門の名はさすがに知ってるが仇討内容までは実はよく知らない。そして、あまり予習しすぎても驚けないから~、と、ユルい気分で席に着く。ド近眼な私は今回も2列目、少し床寄りというところ。
このへんだとホントに人形が表情まで良く見える♪

さて、幕が開くと、とざいとーざいがなくていきなり話が始まっていてびっくり。冒頭の段は顔も見えない(2Fすだれの向こう?)若手オンパレードで、物足りなさはあるが、腰元たちのキャッキャ下ネタ雑談は、妙にハマっている…若くてまだ声のトーンが高いから。
美青年だが正直頼りない青年和田志津馬が、悪人面の沢井股五郎にハメられる。色男、○と○はなかりけりとか言われるが、足りないもの多すぎるんじゃないのコイツ。志津馬の父行家をバッサリ斬っちゃう大悪党股五郎の図々しさ図太さのほうがいっそすがすがしいくらい(爆)

とはいえ文楽人形の美男美女はほんとに美男美女だよなあ。クールジャパンは江戸時代既に始まっていたんだなと思う。だってアメコミとか外国のアニメとか外国の人形劇の人形のカオって、全然美男美女かわいこちゃんなんていないもんなぁ。一方、それを操る人形遣いさんたちは、ロマンスグレイ・オンパレードですけどね。和正装のロマンスグレイがたくさん、私には目の保養です。
歌舞伎には今のところ興味が全くないのは、浄瑠璃という以上に人形と人形遣いさんの魅力にハマっているからなんでしょう。

そして、頼りない志津馬をたしなめ励まし、股五郎と正面切って戦うのは、行家の弟子、丹右衛門(玉志さんロマンスグレイ)。人質交換で股五郎の老母鳴海とのやりとりは泣かせます。前半、いや前座のヒーローは丹右衛門ですな。そして三つ目の「段」でやっと出てくる荒木ならぬ唐木政右衛門は、やっぱりという感じでこれもロマンスグレイ玉女さん(去年は大石内蔵助だった)。柄が大きくていかにも豪傑。だけど江戸時代的に無茶(それもこれも仇討のためではあるが)ばかり言う困った人。
まあ、人が良くノリの軽い老武士て感じの五右衛門(政右衛門やお谷が世話になった人)だって、政右衛門に「明日腹を切ってくれ」と頼まれたら急にシャキーン!と姿勢を正してしまうからなあ。まあ時代もあるし、浄瑠璃台本って書いてるのは町人だから、理想化して拡大解釈したブシドーを描いていて、当時でも既にファンタジーだったのかなとか思ったりすると面白い。

一番困らされるのは妻のお谷さん=和生さん。私にとっては「大人の女」役のイメージが強い吉田和生さんは今回、もう一人の二枚目代表(ただし骨あり)呉服屋十兵衛も演ってて大活躍でした。「おきゃんな可愛い娘役」のイメージが強かった勘十郎さんは十兵衛の生き別れの老父平作で、笑わせたり泣かせたり…第一部最後の千本松原の段も泣けたなあ。前半の老いぼれヨロヨロ人足っぷりがとても可笑しくて、そのぶん後半が…
ここは語りも人間国宝住大夫さん。リハビリはまだされているらしくて、パワフルとはいえないけれど、お念仏のところなんか静まり返って、しんしんと心にしみました。
なんだかだいって老母と老父が印象的な第一部でした。

まああと蓑助さんのお米も、やっぱりこの人の美女は貧しくても気品が隠せないねぇ…

うふふうふふと夢心地で帰ってきました。
もう一度職場へ戻ったほうがいいかもしれなかったけど、それはもうヤだって思ったし(爆)

第二部は来週行きます。楽しみだ~♪
月曜は休みだったので、国立文楽劇場へ夏休み文楽特別公演の第二部「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」を見に行く。
内容は「なんちゃって大化の改新バナシ」である。(うんと雑駁に言うと、ラスボスが蘇我入鹿)

いろいろたまっていたので、少し出勤してから行く(涙)

疲れもたまっていたのに朝寝しないで録画した映画を見てからいったのも悪かったのだろう。
舞台はほんとうに素晴らしく楽しかったのに、ほんの少しだけ途中で船こいでしまった。
凄く前の方のいい席だったのに!ごめんなさい技芸員さん!
というよりお金はらっていっているのにもったいなさすぎる。

すごーくよかったので、できたらもう一度行きたいのだが…あと二週間しかないしー、目の悪い私は前の方の席がとれないと、と思うとやっぱり無理だよなあ。
そもそも来週の月曜(休み)は、第三部の切符とってあってこちらもいかなきゃならないし。
くそー、次は絶対絶対、ちゃんと朝寝とか昼寝とかして体力を完璧にしてから行くぞ…
まあ良い浄瑠璃からはアルファ波が出ていて良質の睡眠がとれてしまうという説もかなり強力に流布しているらしいのだが(あの「あやつられ文楽鑑賞」の三浦しをんさんまで言ってた…)。たしかにちらほら他にも途中で船こいでいる人はいた。
高齢者けっこうおおいですしね(笑)
舞台は一期一会、ちゃんと見なきゃな。

なのであれこれ語るのもおこがましくて、今回は省略。
酒屋で井戸掃除後の裸のオッサンたちが踊り狂う所なんか楽しかったなあ。
続いて白面貴公子のヒーローを、深窓の姫君とおきゃんな町娘が取りあう三角関係場面。町娘が勘十郎さん。ちょっと勝気で積極的なお三輪、ちょー可愛らしい。「新版歌祭文」で遣った“おみつ”と似たキャラですね。なんでこんなに可愛らしい娘さんになれちゃうんだろう。
可愛いのに、いじめ抜かれていたぶられて、思う人とも結ばれず、悲しい悲しいヒロインなんだけどね…
(まあ、むちゃやん!というような設定や展開は文楽にはてんこもりのようですけどさ)

勘十郎さん、八重垣姫のまさに神がかりな狐遣いにノックアウトさせられて以来、なんかファンです~。

だいぶ大夫さんや人形遣いさんの顔がわかるようになっちゃったし、どのくらいの位置の席が自分にとって好みなのかは一年かけてだいたいわかった。(去年のサマーレイトショーが私の文楽初体験だった)

国立文楽劇場「心中天網島」
四月公演、演目の二つ目を見に行って来ました。
まさかここまで忙しくなろうとは思っていなかったので…とはいえ、ひとつのピークを越えたといえば越えたとこなので、ちょうどよかったかも?
しかし、過労気味だったせいか、四月初めの「伽羅先代萩」とほぼ同じ席、かなり前の方の席だったのに、最初ちっともよく見えなくて、人形のカオも人形遣いさんのカオも焦点が合わなくて、愕然としました…
目薬さして、二つめの段からは、四月なみに見えて来たのですこし胸をなでおろしましたが。眼精疲労たまってたんかな…やだな…

作者は近松門左衛門。
去年のサマーレイトショー「曽根崎心中」で初めて文楽を見て大ハマリした私だが、心中系のいわゆる世話物が嬉しいというわけでは必ずしもない。だって、心中する男って、たいがいイマイチどーしょーもなさげな男だもん。(時代物の“英雄”だって、今の目で見ると『義理』を通すための無茶と無理でできあがってるようなもんだけどサ)

紙屋治兵衛は、できた奥さんと二人の子供もいるのに、遊女小春と深い仲。身請けまではままならず、心中を約束したものの、周囲の説得で小春は黙って身を引こうとする。裏切られたと思って見苦しく荒れる治兵衛だが…

ほんとにどーしょーもない男だ。彼を死なせぬよう妻おさんに頼みこまれて黙って泥をかぶる小春、彼女の誠意を知るからこそ、どたんばで「一人で死ぬ気の小春さんを助けてやって!あなたのプライドを優先して!」と、なけなしの家財を自ら夫に差し出すおさん。

女二人のほうがよっぽどデキた人間だし、ここに至って治兵衛は(おそらく)両方の女にホレ直す。けれども、時すでに遅し。彼は結局、小春とともに死んでやることくらいしか出来ない。しかもしっかと互いを帯で結びつけてからこと切れた曽根崎心中とは違い、小春を手にかけたあと、治兵衛は一歩離れて首を吊る。心中なのに?でも、おさんを思うと、甘甘に二人くっついて死ぬこともできなかったのではないか…と、しみじみ哀しくみじめな死にざまだ。
それにしても最後まで、中途半端なダメ男、治兵衛。

でもそれが案外と納得がいっちゃうのは、治兵衛の周囲に妙に濃厚な情愛が満ちすぎているという設定によるのではなかろうか。おさんが小春に文を送るのはわかるけど、小春に意見しようと変装までしてしゃしゃり出てくる治兵衛の兄孫右衛門。…お兄さん、ちょっとブラコンなことないですか。妻おさんは従妹、姑は叔母、きっと幼い頃から知った仲。
治兵衛はダメな奴だけど、周囲がかまいすぎたから悪所通いで遊女相手に「これぞ恋!」と盛り上がっちゃったんではなかろうか。

などと、主人公のダメっぷりに、何故か説得力が漂ってくるのはやはり近松の偉さなのかな。

前に座っていたヒトが信じられないくらい頭を高くして見ていたのでかなり見づらく、苦労しながら見たせいか、ギリギリまで涙は出なかったが、なんというか感心した。
最後の中途半端さには、ホロリとさせられたが…。若々しさが先に立つ、甘美な「曽根崎心中」とはまた違った、ほんとにほろ苦い、ホロリであった。

治兵衛と小春は玉女さんと勘十郎さん。ふるふるとチワワのようにふるえてばかり、泣いてばかりの小春は可愛かった…
治兵衛は、何かと言うとものかげから覗いたり、ものかげに隠れたりしてばっかりの情けない奴(内蔵助とかとエライ違いだ!)。ものかげから玉女さんと治兵衛の人形がする~と頭をもたげてくるところなど、妙に可愛かった。(←多分まちがった観賞…)
清十郎さんのおさんの、「できた妻」っぷりも良かったなあ。己の恵まれぶりに気づいていない治兵衛ってアホだよ。でも、こういうアホな状況って…きっとあるよなあ。説得力あるよ、うん。
義太夫方面では、咲大夫さんのメリハリのきいた語りが特に印象的でした。
(しろーとなんで、あまり真に受けすぎず読んで下さい)

夏の公演のチラシもできてた。さあ、また、切符申込むゾ~
なんかまちがってるんじゃないか、という行程だが、とりあえず明日の準備的なシゴトはなんとか一区切り。
朝ちょっと職場寄って、ヒトと打合せしてあわわわ用事に遅れるんで~と、飛び出す。
(もともと休みの日でサービス休日出勤だからいいのだ)

昨夏からのにわか文楽ファン、それでもこれで文楽劇場は6回目になるなあ。

文楽4月好演は、平日だけどそこそこ入ってた。9割いってるかな?
いつものように、多少予習して、でも予習しすぎない程度で。
わりとまんなかへんの3列目。このあたりに座るのは初めて。語り床にも近くてよく聞こえるし、舞台がそうとう近く迫って見える。最前列に座ったこともあるけど、その時はわりは端の方でしたからね、まんなかへんを試せて満足。しかし、真ん中だと三列目でも舞台の上部
字幕はかなり見づらいな。いや、見なくてもある程度はわかるけど、両方見えると安心感があるから…。技芸員さんたちは字幕なんか見ないでほしいかもしれないけど(^^;)
時たまチラっと見るだけなんですよ。

まず「伽羅先代萩」。
最初の竹の間の段は、義太夫語りの大夫さんが何人も並んで、しかもけっこう若々しい布陣。若君と乳兄弟が咲寿大夫さん小住大夫さんとか、二人の人形を遣ってる玉翔さん紋秀さんも、けっこうキリリとお若く見えます(大夫さんたちほど若くはないと思うんですが)。人形も美少年いや美幼児二人組なんだろう(笑)←間違った観賞。

とはいえやっぱりずーんと引き込まれるのはそれに続く御殿の段と政岡忠義の段でしょぅ。
毒殺を警戒するあまりなかなかゴハンも食べられない、幼い若君と乳兄弟(=自分の息子)を見て涙する乳母政岡。彼女が自分でゴハンを炊くので何かと時間がかかり、それでも一生懸命「武士だから、大名の嗣子だから」とガマンする子どもたち。可笑しいやらかわいそうやら。
もう生煮えでもいいから、さっさと食べさせてやろうよ!若君をお慰めしろって息子に電線音頭とか歌わせてないでさ!と内心ツッコむ私。いや、なんだか雀が三羽、木にとまっていてどーとかいう歌詞で(爆)…いや、この段は結構コミカルなところもあって(笑)

ゴハンたくのに凄く時間がかかって、子どもたちのいたいけさと政岡との心の結びつきがこれでもかというくらい描かれたあとで、「忠義の段」。若君を守るため、母の教えに従い毒入り菓子を自ら口にした幼い子。敵の前では顔色も変えずに堪えても、一人になると狂乱する母…。

素直な良い子であればこそ、親の教えを守っての死がいたましい。忠義のためといってもそれはないでしょ、と思いつつ、予想外に滂沱の涙を誘われてしまった。芸の力だなあ…

孝行をしたい時には親はなし、というのがあるが、その逆だってある。この一年、シゴトがいっそう忙しくなったため、ウチの息子(こんど高一)にはずいぶん苦労をかけたなあと思っている。とくにここ1カ月はヒドイ。ろくにゴハン作ってやれず(エンゲル係数うなぎ上り!)、作っても外食でも、帰り自体が遅いので夕飯がえらく遅くなり…
(朝作りおきしたらという考えもあるが、私も十分早起きできない上、本人も「つくりおきのおかずはあまり…」とか言うのでたまにしかやらない)
「腹が減ってもひもじゅうない」とまでは言わないけど、文句も言わずに食べれた時に食べて恬淡としてくれている…スマン、ほんとにスマン、息子よ…(T^T)

といいながら、文楽でうっとりした後職場にもう一度打合せで聞き漏れたことないかと戻ったら、やっぱりそんなに早くはごはんが出来上がらなかった。


ムチャな話でも、母心にはズキズキ、ウルウルと来る話であった…

そして、政岡忠義の段のあと、続いて床下の段というのもあった。

床下に大鼠。うとまれ遠ざけられた忠臣が、政岡たちのいる城の床下で巻物くわえた大鼠と格闘すると、なんと鼠はどろんぱっと忍術使いか何かになっちゃって。
突然伝奇アクションになったのでびっくり。予習を中途半端にとどめておくと、こういうびっくりができて楽しいのです(笑)
しかし、今では普通、全ての「段」を一度に通して上演するのではないから、これが何なのか、パンフを読まないと全く意味がわからない(笑)

今日の演目の半分以上がこの「伽羅先代萩」で、二本目は「新版歌祭文」の野崎村の段。
老父母をまめまめしく世話をする田舎娘おみつの所に、婚約者久松が帰ってくるが、久松を愛する大店のお嬢さんお染(当然久松との恋は親に反対されている)が彼を追ってきて…。二人は心中してしまうのか?…てな話。

勘十郎さんのおみつが凄い可愛い。病気の母を看病する家事手伝いの真面目な子と思ったら、祝言の話が出たとたんにふわふわポーッとなっちゃって、包丁で大根切っててポーンとヘタを飛ばしたり、指先ケガしてキャッ、てな感じでパッと口に指を含む。ドジっ子か!
お染の到来を知り、家に入れまいと奮闘する女の戦いも結構笑える。玉女さん(おみつの父久作)、蓑助さん(お染)と、気がつけばこれも豪華な顔合わせ。

育ちがいいからこそ積極的な、情熱的なお嬢さんを蓑助さんがあでやかに。「もののわかった老人」の玉女さんも存在感十分。

ただ…平均睡眠時間がここんとこずーっと5時間程度、というのが…心配していたが、中盤で一瞬意識が飛んでた。あーあもったいない(爆)

しかし今日は、一か所黒子さんが大夫さんの名前を間違えて読みあげてたぞ。
「えっ呂勢さん?ついさっきも出てたぞ?」と出語り床を見たら、大夫さんもエッという表情で舞台を振り返ってた(怒った顔まではしてなかったけど)。場内もざわ…ざわ…
集中力をそぐかしれないから、気をつけてあげてほしいな。文字久大夫さんお気の毒でした。(ききごたえのある語りを披露してくれましたが)

最後は「釣女」。狂言を人形浄瑠璃にした短い演目で、太郎冠者とか出て来ました。えべっさんにお願いして結婚相手を探す話(笑)

うっとりスッキリして劇場を出ると…

…朝行っただけで片付ききらなかったので…もう一度職場へ(しくしく)

まあ8時には帰りましたが…

はぁぁぁ、でもここまでやったから、明日からは色んな事が何とかなる、はず。たぶん。
明日はもう少し息子にちゃんとゴハンを作ってやろう。
(今日も作ったが9時になってしまった…)

4月文楽は、下旬にもうひとつの演目「心中天網島」に行く予定。こちらは寝ないですむよう体調をもっと整えとこ(爆)


あぶなかった

2013年3月2日 文楽
あぶなかった
あぶなかった
今日はドでかい買い物もしたし、タップのレッスンも行ったし、あやうく国立文楽劇場4月公演の友の会会員の申込開始日ということを忘れるところであった。11時過ぎてからあわてて申込んだが、そこそこ良い席が取れて、良かった…(^^;)

そのくせ昼間に、子ども文化センターの文楽入門イベントにインターネット申込をしたりしていたのだ。本末転倒だよねえ。子ども文化センター、1000円とは素敵な値段。コレは家族で行くことに。席は選べないけど(会場側で勝手に決めるらしい)、文楽劇場よりは小さいコヤだから、そんなにひどく遠くはならないよねきっと。

http://www.ko-bun.jp/event/detail.php?PID=595&OFS=0

この春は、いろいろと悔しい季節。
帆船あこがれが、そしてなにわの海の時空館が…
(時空館はあとしばらくは開いているらしい。久しぶりに、最後にもう一度行ってみようかな。
あ、あこがれもまだ南港にいてるかな。そうだ来週、オフの日に、南港帆船行脚に出かけてみようか。超出不精の私だけれど…)

文楽は、大阪を去らないでよね…
市長がいくらアホなことをいってもね…
たのんます。

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