悪魔の美しさ

2021年7月24日 映画
悪魔の美しさ
1949年、ルネ・クレール監督作品。フランス映画(モノクロ)。

ジェラール・フィリップなんか好みじゃない、と言っていたのだがなぜ録画していたのだろう。(むかーしに1本位しか見てない)
フランス映画もあんま好きくない、とか言っていたのだが以下略。

なのだが、連休だし久々にクラシック映画鑑賞、最近デッキの調子が悪く、ダビングもままならないので、一応見ておこうかなと思ったのね。
したらば…あれ?面白いじゃないか。ジェラール・フィリップもイケてるじゃないか。なんでや…

えーと、この映画が「ファウスト」の話だというのは聞いていました。
舞台は中世(多分。国名など明らかにはせず)、まず紹介されるのは大学の教授として50年もの貢献を大学で称えられる老ファウスト博士(ミシェル・シモン)の弱弱しい姿、それを見守る妖しい美男(悪魔らしく髪を少し逆立てたジェラール・フィリップ)。ヨボヨボと住居に戻ってきた博士に、悪魔は魂の契約を持ち掛け、ノってこないと見るや「これはサービス、若さを楽しんで」と青年(G.フィリップ二役)に変身させてしまう。悪魔の方は代わりに博士の姿をとる(M.シモン二役)。

肉体的な老いの悩みが一瞬で消えた博士は、街に飛び出し、酒を飲んだり綺麗なジプシー娘マルグリット(ニコール・ベナール)と親しくなったり。すっかり舞い上がるが、気づけば金も職もないし、博士を殺したと誤解されて処刑されかける所を博士のふりをした悪魔に救出されたりする。やがて彼は悪魔の誘惑に屈し、「ファウスト博士の友人の若き天才学者アンリ」として様々な研究(錬金術含む)で国に貢献して賞賛を浴びたり、宮廷に出入りして主君の若い妻に手を出したりするように。
だが己の堕落した姿、それがエスカレートした未来が更に恐ろしいものになると気づいた博士は、悪魔との契約や己の所業を後悔するが、国は瓦解し、荒れ狂った群衆が宮殿になだれ込んでくる…

と書くとかなりシリアスに聞こえるけど、実際は軽快なファンタジー・コメディに仕立てられている。ジェラール・フィリップは妖しいのは最初だけで(まあ最初がちゃんと妖しいのも大事ですが)、老人から若いアンリとなって、戸惑いながらハジケていく軽妙さがすばらしい。この人かなり運動神経いいんじゃないか(ベルモンドみたいに)。ミシェル・シモンも、めっちゃヨボヨボの博士だったのが「偽ファウスト博士」となったらえらく元気で俗っぽい老人となり、悪魔だからワルいんだけと愛嬌たっぷりで目が離せない。この二人の知恵比べ、駆け引きがまた楽しいんですねー。
なので、最後に案外さくっと急転直下ハッピーエンドになるのも、えー意外とカンタン?と思いつつ、絶妙のバランスなのかもしれません。まあゲーテのファウストだって、魂的には女性の愛によって救われるんだし。
かろやかで、おとぎ話的な印象の残るファウストでした。
でもただコドモっぽいわけでもない。
博士の研究が毒ガス戦、原爆戦を連想させたり、追い詰められた悪魔が「人間の方が残酷だ!」と叫んだり、戦後すぐらしい風刺も入ってて、納得。

それにしても、ファウストの最期(おどろおどろしい悲鳴とか)、の場面は、1953年映画の「バンドワゴン」を思い出してしまった。あの映画の演出家もファウストをやろうとするけど絶対「悪魔の美しさ」を見てるよナー、なーんてね。

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