若草の頃

2020年9月2日 映画
若草の頃
1944年、ヴィンセント・ミネリ監督作品。
舞台は1903年から1904年にかけてのセント・ルイス(この地は1904年に万博開催を控えている)。とりたてて事件もないが、地方都市ならではの豊かさを感じさせる中流家庭の四季を、ノスタルジックな雰囲気で描くほっこりした家族愛の物語。

スミス一家は一男四女におじいちゃんにメイドさんの大所帯。
長女(ルシル・ブレマー)と次女(ジュディ・ガーランド)の恋模様、ご近所づきあいやパーティ、小さい子供たちの(ちょっと今と違う(^^;)ハロウィン、いろいろ「ちょっと昔」の違いやのどかさが、面白く新鮮。
ミュージカル仕立てになっていて「A boy next door」「The trolly song」「Have yourself a merry little Christmas」と名曲がならび、ジュディ・ガーランドの歌も皆素晴らしい。この映画のジュディはコメディエンヌとしても歌手としても大変魅力的です。

そんな楽しい毎日が、ある日父親が「ニューヨークに栄転だ!年が明けたら皆で引っ越しだ!」と笑顔で帰宅したとたんに、一挙に崩れてしまう。突然恋人やボーイフレンドと離れないといけなくなる上の娘たちはもちろん、生まれ育った家や町が大好きな下の子たちも涙目に。妻にさえ「そんないきなり!どうして先に相談してくれなかったの?」と言われて憮然となるお父さん。まあ、仕事中心で家にいる時間が少ない、昔ながらのお父さんですね(^^;

何せ100年も前のこと。ネットやメールどころか、遠距離電話も簡単にはかけられないし(冒頭に恋人からの遠距離電話が来そうでソワソワ、という場面もある)、ニューヨークへ引っ越すというのは、まったく別の世界へ行ってそれきりになってしまうようなものなのだろう。特に小さい子にとっては、生まれ育った家を離れるというのは根幹を揺すぶられるほどのことかも。
末っ子を演じるマーガレット・オブライエンの名演技には泣かされました。
ついにお父さんも、家族の思いを尊重して栄転話を蹴ってしまいます。
(これはなかなかできない気が…日本だと昔のお父さんだともっとできないかも…)

喜ぶ娘たちはともかくとして、夫の突然の決意表明にはらはらと落涙しつつ彼に寄り添うスミス夫人(メアリー・アスター)に、一番ほろりとさせられました。子供たちの気持ちを思うと引っ越しの中止は嬉しいけれとも、夫の心中も一番分かるし辛いとこですよね。オトナとしては、なんだか最後に、奥さんにもっていかれてしんみりしました。
メアリー・アスターというと私には「マルタの鷹」のハードボイルドの悪女の印象が強いのですが、案外普通のいい奥さんも上手いのですねえ。

一方男性陣はというと、姉妹のボーイフレンドたちは全然印象薄くて、一番カッコよかったのは(というか終盤一気に株をあげたのは)、同居のおじいちゃん(ハリー・ダヴェンポート)でした。むこうのおじいちゃんは老け込んだようでも結構ダンディの種を隠し持っていて素晴らしい。若いのなんて目じゃないですよ、うん。

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