兄の名は、ジェシカ
ジョン・ボイン著。
英国に住む13歳の「ぼく」の母は首相の座も狙える位置の閣僚、父はその秘書、17歳の兄ジェイソンはサッカー部の主将で人気者。ところが大好きな兄が「自分は本当は女だと思うんだ」と言い出してから一家は大揺れ。ジェイソンの気持ちを受け付けられず、愛しているのに遠ざけたり傷つけるような言葉を吐いてしまう。

難読症で友人がおらず、内省的ながらも子供っぽさを残す「ぼく」の目を通して描かれる騒動は(彼もまた兄の「変化」をなかなか受け入れられない)、説得力があり、痛ましい。同じ立場に立てば、同じように混乱したり傷つけあったりしてしまうことはいくらでもおこりうるだろう。だが、家族それぞれが苦しみを経た末に、ようやく心が通い合うクライマックスは爽快で心を打たれた。

辛い場面が続いたりもするが、ちょっと特殊な家庭事情もあって、身勝手だったり偽善的だったり、それでも一面的ではない大人たちの描写には、英国らしい辛口のユーモアがあふれていて、独特の魅力がある。
映画になると凄くいいんじゃないかな。

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