幡大介著。
笑いながらサクサク読める、時代劇のパロディ的な味わいの「大富豪同心」はお気に入り。千両役者捕物帖も似たような軽さだが、今回ちょっと風合いの違う別シリーズを見かけたので手を出してみた。

独活(ウド)の大木、昼行燈と揶揄される無能な同心・田中丙内。しかし実は無外流剣術の達人で(ここらはよくあるパターン)、密命が下されると本来の「鬼」同心に立ち返り、ひそかに悪党どもの陰謀を斬りまくるのだ。
剣の腕がある(またはあった)ということは分かっているのに、なんでみんな簡単に無能だと騙されてるのかが少々腑に落ちない気がするのだが、「上から命じられているからしゃーない」と(そして病弱な奥さんの治療費も必要だから)無能者の仮面をかぶり続ける丙内のサラリーマン的憂愁の微妙なグダグダ感と、一転して凄絶(血と内臓がドバドバ!)で読み応えのある剣戟シーンは、これはこれで結構面白い。
江戸のサムライの閉塞感がなかなかリアルで心に迫る。
特に、敵方の手先として使い捨てられる、貧しい育ちの剣客の描き方など、心に残る。

主人公はひょろっとした長身で、顔が長くて、ルックスは全然かっこよくない。本気出した時でもそんなにシャープのなキレを感じないが、いたって常識的な中にもちょっと紗に構えたシニカルな所に現代的な味わいがある。
うん、悪くない。

あと、ワキとして江戸の首切り役人を代々つとめている山田浅右衛門も登場。
明治になっても○代目山田浅右衛門っていたらしいから、実在の人物とは言えるだろうけど、こんなにかぶいてたんですかね。予想外なキャラ設定でした(笑)

幡大介、こういう方向性もありなのね。
続き、読んでみよう!

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