1948年、デヴィッド・リーン監督作品。モノクロ。

イギリス映画~♪

何度も映画化されている、チャールズ・ディケンズの有名な物語。19世紀、救貧院育ちの孤児オリヴァ(ジョン・ハワード・デイヴィス)は、虐待されてロンドンへ逃げ出すが、孤児たちを集めて窃盗団を組織しているファギン(アレック・ギネス)の手に落ちる…
オリヴァの出生の秘密や、悪党たちの様々なたくらみのスリル。

リーンの悠揚せまらぬ、そして時にはサスペンスフルな演出と美しいモノクロ映像にガッチリ心を鷲掴みされる。クラシック調の音楽には品格があるし(そしてここぞという所では思いきって音楽を切り捨て、無音で緊張感を極大に…)。
そして英国の名優たちがズラリとガン首そろえて(子役たちだけでなく犬まで名演技を披露している!この犬一見の価値ありですよ!)、国民作家ディケンズの世界を銀幕に焼き付ける。
いやー堪能しました。「大いなる遺産」もよかったが、こちらも予想以上によかったな…

トップビリングは意外やアレック・ギネスではなく悪党仲間のロバート・ニュートン(ギネスまだ映画デビュー後そんなにたってないよね)。もちろんどっちもうまいんだけど、ギネスの付け鼻は大きすぎかも…そうか、そんなにメイクが好きだったんだな最初から!(笑)
悪人だけど、前半はほんのりおかしみもあって、少年たちを束ねる奇妙な魅力はある。ニュートンは野獣のような乱暴者だが、情婦(ケイ・ウォルシュ)を殺す場面など、工夫を凝らした演出もあり圧巻。どちらもコッテリ濃い目の演技だけど、昔の小説だからそれがむしろハマる感じですね。
偽善者で情けなさ全開の救貧院の院長にフランシス・L・サリヴァン(やっぱ上手い)、作中唯一といっていいほど優しい老紳士ブラウンロー氏にヘンリー・スティーヴンソン。この人がまた、レックス・ハリソンにドナルド・ミークを掛け合わせて老けさせたよーで、なんとも心癒される「優しい老英国紳士」っぷりで目に優しかった!(←オジサマ好き)。

ジョン・ハワード・デイヴィス君は、美少年というには痩せこけてるけど、救貧院そだちなんだから仕方がないね。とことん無力な存在として描かれているのが説得力。画像はあえて、彼のカオがわかる廃盤の廉価版を選んでみました。彼を助けて、でもスリ仲間に引き込んでしまう「先輩」ドジャー少年はなんとアンソニー・ニューリーだった!最後にクレジット見て驚いた。

最終的には主人公、ラッキー(出生の秘密)に救われてメデタシメデタシな物語で、私も昔子供むけバージョンを読んだだけだけど、大衆の描きかたがいたって辛口なあたりが、ちゃんと大人の味である。原作、ちゃんと大人むけの翻訳を読みなおしてみようかな~

しいて文句をつければこの映画、「大いなる遺産」でも思ったけど、多少はしょってる感がある。が、そもそも長尺で人物描写もコッテリなディケンズ小説を、二時間程度にキッチリ入れられるわけはないのだ。ただ、私の英語ヒアリング力はたいしたことないし、日本語字幕はどうしても文字数の制限で、省略気味にしか付けられない。原作を読むのを先にしたほうが、本当はよかったのかもしれない…

コメント

nophoto
ごみつ
2012年10月7日0:59

こんばんは!

拙ブログにコメント有難うございます!
私もおじゃまさせていただきました~。

そうですよね、やっぱ、どうしても2時間程度の枠にディケンズのストーリー
はおさまりきるはずもなく、かなりはしょってるだろうとは思うのです。
ドラマのミニシリーズとかにするとホントは丁度良いんでしょうけどね。

私も早く原作読もうと思います。どうはしょってるかも知りたいし。

あのワン公の演技はホント見事ですね。私、チャップリンの「犬の生活」を思い出しちゃいましたよ。(笑)(*^^)v

ボースン
2012年10月7日9:29

こんばんわ!さっそくお越しありがとうございました。

なんかね、「大いなる遺産」に比べると、期待していなかったぶん、よけいに楽しめた感じです。ヘタにジュブナイルで流布しているぶん、あっちよりお子ちゃまむけかなと先入観がありました。でも、都市の衆愚や暴力が結構ストレートに描写されているので(貧しく娯楽もないぶんリンチ大好きな大衆がコワイです)、甘い結末もそれなりのバランスに。

やはりよくできている映画でした。デヴィッド・リーン、巨匠ブランドながら実は、これまで特に好きとも何とも思っていませんでしたが(そもそも数本しか観てないかった)、さすがです。文藝映画はこうでなくちゃですね。

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