1938年、フランク・キャプラ監督作品。モノクロ。

自由を愛するバンダーホフ家は、各人が盛大にやりたい事を追及する、陽気な変人一家。家長である祖父(ライオネル・バリモア)は何かやりたい事があるが出来ない人を見ると気軽に仲間として招き入れてしまうので、家はいつでもにぎやかを通り越して大騒ぎ。金儲けには興味がないので、地上げ屋に大金を積まれても家族の思い出深い家を引っ越す気はない。ところが孫娘アリス(ジーン・アーサー)と恋仲のトニー(ジェームズ・スチュアート)の父親カービー(エドワード・アーノルド)が、地上げ計画の黒幕の銀行家だったことから、トラブルが雪だるま式に膨れ上がり…

闊達な祖父とそれぞれ趣味に邁進する家族たちは魅力的。ただ、今じゃなかなか、ワークライフバランスとか言っても、生活費稼ぐための仕事を最低限にしておいてやりたい事にうちこむ、なんてことが実現するかどうかはあやしいけれど。
国に払ってちゃんと使われるか納得できないから所得税を払わない、なんてのも、今見るとどうかと思うけど、当時の観客は「そんなセリフ役人に言ってみたい!」なんてことで大受けしたのかもしれない。なかなかアナーキーです。時代の違いは否めないなぁ。

そういう違和感をさしおいても、「素晴らしき哉人生」(映画としてはこちらの方が上と思う)でオールタイムベストな悪役演技をモノしながら、こんなチャーミング爺さんもサックリ演じるバリモアはさすが。凄いねえ。
勿論、彼らに共感し両親に「ありのままのバンダーホフ一家を見せたい」と考えるスチュアートも若くて可愛いし、最初は強く反発しながら、次第にバリモアの人間性に降参してしまう銀行家アーノルドも更にいい。
でも、一番いいのは、ちょこちょこっとした脇役たち、市井の人々の点描が光ってるところかな。バリモアにスカウト?されて、おもちゃ作りに集中するためバンダーホフ家にやってくるドナルド・ミーク。変人揃いの周囲に最初ひたすらキョドってるのが次第になじんでくる所などえらく可愛い。バンダーホフ家・カービー家が揃って審理される夜間法廷の裁判長ハリー・ダヴェンポートも、出番はわずかだが酸いも甘いも噛みわけてって風情が凄くイイ。
アリスの妹がアン・ミラー(ダンサー志望。絶えずクルクル回ってる)だったのにはビックリした…

少し納得いかないのは若きカップルの片割れアリスの言動。祖父までカービー一家をかばおうとしてくれてるのに、真っ先にキレて家出して、ちょっと後先考えなさすぎなんでは…?
何か趣味があるのかどうかわからない唯一の人物だし、自由人一家の中では一番体裁を気にしてるような気がした。困ったものだ。

映画の主役はカップル以上に爺さんだが、スクリューボールコメディとも言えるかも…

コメント

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ごみつ
2011年10月13日23:47

今晩は!

「我が家の楽園」かなり前に見ました。実はこの作品や、「素晴らしき哉人生」「オペラ・ハット」あたりのキャプラ作品は今ひとつしっくりこなくって・・。
若きJ・スチュワートやクーパーの演技を見れるのは楽しいんですけどね。

そうそう、ライオネル・バリモアの税金払わない発言は、「何て事言うんだ!お前!」と思ったので(笑)忘れられません。
それとアン・ミラーが出てたんだ~!こういう情報を聞くとまた見直したくなちゃう・・。(^_^;)

やっぱりキャプラの最高傑作は「ある夜の出来事」だな~。これを超えるラブコメはいまだに作られてない!って感じ。(^^♪

ボースン
2011年10月14日0:20

こんばんわ、ごみつ様。コレは私多分(笑)、初見です。
税金発言を筆頭に、名作と言われているけど時代とともに結構感覚がズレてきている感じのある作品ですね。今だと、税金、福祉関係もあるのに~って思うのですが、1930年代の米国は、案外今ほどそっち方面にお金使ってなかったんじゃないかと思ったりもします。

それに比べると今年久々に再見した「素晴らしき哉人生」は、もう少し辛口な描写で時の流れを乗り切れてた気がしますね(天使とか出るけど)。「ある夜の出来事」も、相当前に見たっきりなので、今見たらどうかしら。ドキドキです。(「オペラハット」はクーパーに苦手感があるもんで、最近録画したんだけどやっぱりまだ見ていません(^^;))。

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