1951年、ウィリアム・ワイラー監督作品。モノクロ。
スカパー録画で視聴。
ニュヨーク市警の一分署、物語の大半はこの建物内で進行する。事件は次々に起こり、それを並行して次々と処理してゆく刑事たちと、犯罪者たち、そして時には犯罪者よりめんどくさい一般市民が分署に出入りしそれぞれのドラマをアピールする。
生活のニオイがぷんぷんする群像劇として始まる映画だが、やがてその焦点は、分署きっての鬼刑事マクラウド(カーク・ダグラス)個人へと移ってゆく。
誰よりも正義感が強く厳格な彼は、犯罪者などは別人種と断言する。違法堕胎医も、窃盗常習犯も、失恋から魔がさし横領をしてしまった青年も同じだ。この青年だけは、雇用主や仲間の刑事すら「告訴せず、やり直させたい…(幼馴染の娘が自腹を切ってまで盗んだ金を建て替えると申し出ているし)」と思うのだが、なら「俺が告訴してやる」とマクラウドは一蹴する。
異常なまでの厳しさは、「悪党」であった父、優しい母親を痛めつけ狂わせた自分の父親への憎悪から来ているのだが、ここで思いがけず事件のひとつが愛する妻の過去と関わってきて、マクラウドを打ちのめす。
父と同じ狭量さ残酷さが自分のうちにもあると気付いた彼の懊悩は…
ガチガチに厳格かつ激しい鬼刑事のカーク・ダグラスがハマリ役。息子よりもっとゴツゴツした顔と体だしねえ。
いかにも舞台劇的な、キッチリととのった脚本と演出。ワイラーにハズレなし、という感じだ。イマイチコレといった個性はない気がするけど優等生なワイラー。
結末は古典的といえるだろうが、せわしなく様々な案件が進行する『刑事ドラマ』なシーンは現代のそれとあまりかわらないとすら思える。
出演者たちは、ダグラスを囲む他の刑事たちににじむ人間味(特に、横領青年の世話をやく人情家刑事ウィリアム・ベンディックス!)も、出会う前の出来事を許せそうにない夫に絶望する楚々とした美しい妻エリノア・パーカーも、犯罪者たちもみんないいけど、特に目立つのは万引き女のリー・グラント。軽く取り調べられたあと裁判までの時間待ちで署内に残っているのだが、出来ごころの初万引きらしく激しくキョドりつつも、妙な野次馬精神を発揮し、周囲の出来事をシッカリジックリ観察して結構楽しんでいるさまが何とも可笑しい。みなさん、さよ~なら~、と妙に明るい顔で彼女が退場していったとたん、ドラマは百%悲劇モードに走り出すのだが。
ウェルメイド・プレイ、という感じで、面白く見れました、ハイ。
スカパー録画で視聴。
ニュヨーク市警の一分署、物語の大半はこの建物内で進行する。事件は次々に起こり、それを並行して次々と処理してゆく刑事たちと、犯罪者たち、そして時には犯罪者よりめんどくさい一般市民が分署に出入りしそれぞれのドラマをアピールする。
生活のニオイがぷんぷんする群像劇として始まる映画だが、やがてその焦点は、分署きっての鬼刑事マクラウド(カーク・ダグラス)個人へと移ってゆく。
誰よりも正義感が強く厳格な彼は、犯罪者などは別人種と断言する。違法堕胎医も、窃盗常習犯も、失恋から魔がさし横領をしてしまった青年も同じだ。この青年だけは、雇用主や仲間の刑事すら「告訴せず、やり直させたい…(幼馴染の娘が自腹を切ってまで盗んだ金を建て替えると申し出ているし)」と思うのだが、なら「俺が告訴してやる」とマクラウドは一蹴する。
異常なまでの厳しさは、「悪党」であった父、優しい母親を痛めつけ狂わせた自分の父親への憎悪から来ているのだが、ここで思いがけず事件のひとつが愛する妻の過去と関わってきて、マクラウドを打ちのめす。
父と同じ狭量さ残酷さが自分のうちにもあると気付いた彼の懊悩は…
ガチガチに厳格かつ激しい鬼刑事のカーク・ダグラスがハマリ役。息子よりもっとゴツゴツした顔と体だしねえ。
いかにも舞台劇的な、キッチリととのった脚本と演出。ワイラーにハズレなし、という感じだ。イマイチコレといった個性はない気がするけど優等生なワイラー。
結末は古典的といえるだろうが、せわしなく様々な案件が進行する『刑事ドラマ』なシーンは現代のそれとあまりかわらないとすら思える。
出演者たちは、ダグラスを囲む他の刑事たちににじむ人間味(特に、横領青年の世話をやく人情家刑事ウィリアム・ベンディックス!)も、出会う前の出来事を許せそうにない夫に絶望する楚々とした美しい妻エリノア・パーカーも、犯罪者たちもみんないいけど、特に目立つのは万引き女のリー・グラント。軽く取り調べられたあと裁判までの時間待ちで署内に残っているのだが、出来ごころの初万引きらしく激しくキョドりつつも、妙な野次馬精神を発揮し、周囲の出来事をシッカリジックリ観察して結構楽しんでいるさまが何とも可笑しい。みなさん、さよ~なら~、と妙に明るい顔で彼女が退場していったとたん、ドラマは百%悲劇モードに走り出すのだが。
ウェルメイド・プレイ、という感じで、面白く見れました、ハイ。
コメント
『ベン・ハー』でヘストンの妹役を演じるキャシー・オドネルが結構重要な役で出ていますね。
オドネルは、後にワイラーにとって兄嫁になる女性です。
ワイラーは、戦前の作品の方が面白いと思います(ニーヴンが出ていますが『嵐が丘』は、除く)。
『孔雀夫人』やベティ・デビスと組んだ作品は、良いですよ。
戦後では、『黄昏』も良かった(オリビエが良かったけど、ジェニファー・ジョーンスは?)。
私にとっては、ファーリー・グレンジャーと共演した『夜の人々』(永年に本未公開でした)の彼女が一番印象的です。
>オドネルは、後にワイラーにとって兄嫁になる女性です。
横領青年に恋する純情娘さんですね。ワイラーとそんな縁があるとは知りませんでした。
戦前のワイラー作品でちゃんと見てるのは、まさにその『嵐が丘』くらいです(私も、それほどいいとは思いません)。『黒欄の女』は昔TVで見ましたがどうせカットだらけだったろうし。ベティ・デイヴィスの独り舞台な感じでした。
戦後作品もそんなに片端から見てる訳ではないですが『ローマの休日』が好きでした。ベタですが。
エリノア・パーカーって今ひとつ代表作がよく分からない女優ですね。
題名はなんだか面白そうなんですけど1940年代の作品が殆ど未公開のようです。女囚役でアカデミー賞候補になったCaged, 1950も勿論未公開。
私にとっては西洋チャンバラ映画の傑作『血闘』(スカラムーシュ)の鉄火肌(旧い!)の役が彼女の代表作なのでどちらかというと妖艶系かと思っていましたが、そもそもは清純系なんですね。
トントントン今晩は。
映画『嵐が丘』といえば自分にとってはレイフ・ファインズとジュリエット・ビノシュの作品が良いです。ワイラー作品も後で観ましたがやはり…。
ロシア版ハムレットを( ..)φメモメモします。
私もワイラー大好きです。やっぱ「ベン・ハー」なのよね~。ヘストン苦手だとう~ん・・かしら?。(笑)私ね、この映画ではメッサラを演じるS・ボイドも好きなのよね~。暑苦しさがたまりません。(笑)
あと、ワイラーだとリリアン・ヘルマンの戯曲を映画化した「偽りの花園」が凄く良かったですよ。ベティ・デイビスってどんだけ上手い役者さんなの!!と舌をまきました。「探偵物語」は未見なので機会があったら是非見たいです。
それと「マン・ハント」見ました!早速、拙い記事にしてみましたのでお暇な時にでも読んでいただけると嬉しいです。またまたサンダースに萌えました。(笑)最後の死に方が可哀想で泣けました。
なかなか手広く見てらっしゃいますね!
しかし、シェイクスピアにしろブロンテにしろ、いつになっても手を変え品を変え映画化され続けているのですね(例によって、新しいものは見てないんですが…(爆))。
最近やたら多いリメイクよりは、まだ古典にリトライ、の方が期待できる気がします。
>ごみつ様
>私もワイラー大好きです。やっぱ「ベン・ハー」なのよね~。ヘストン苦手だとう~ん・・かしら?。
あ、「ペン・ハー」はいいと思いますよ!ヘストンはやっぱ史劇が一番だし、彼だけだと飽きるかもですが(爆)ボイド演じるメッサラの「濃ゆさ」がやはりグッジョブです!ジャック・ホーキンスもいいです。
ハズレがなさそうなワイラー作品で唯一大きく違和感感じるのは、「大いなる西部」ですね。でもヘストンがダメないんじゃなくて、ペックの演じるキャラが納得できないんです。
>あと、ワイラーだとリリアン・ヘルマンの戯曲を映画化した「偽りの花園」が凄く良かったですよ。
>ベティ・デイビスってどんだけ上手い役者さんなの!!と舌をまきました。
「偽り…」は未見です。デイヴィスの存在感はいつも凄いですし、これも一度は見なくちゃですねえ。
>それと「マン・ハント」見ました!早速、拙い記事にしてみましたのでお暇な時にでも読んでいただけると嬉しいです。またまたサンダースに萌えました。(笑)最後の死に方が可哀想で泣けました。
わーい♪さっそく「ごみつ通信」へおうかがいしますね!嬉しいな。
サンダースに萌えられる人には見てソンはない映画ですよね「マン・ハント」(笑)
「カーク・ダグラスさんでは?」
と問いかけられたことがあったそうです。うまくごまかしたそうですが(さすが俳優)
なかなか楽しい話ですね。ダグラスは、案外コミカルな演技もできる人だと思っています。
どんなふうにごまかしたのでしょうね(笑)