1960年、ケン・アナキン監督作品。モノクロ。
これまたKEEPの英国映画2枚目。コミカルな脱走モノとのことで、昔和田誠氏が「お楽しみはこれからだ」シリーズでとりあげていたはず、と手を出した。
オープニングは「人に歴史あり」みたいな(古いか?)TV番組のセット。英国きっての天才科学者であるらしい大兵肥満のヒゲ男・ピーズ卿(ジェームズ・ロバートスン・ジャスティス)に、司会者が彼の略歴を辿りつつ、次々とサプライズゲスト(要するに昔の知り合い)を紹介してゆく。子ども時代のしょーもないエピソード出されて憮然としてるのはワカランでもないが、、主人公ピーズ卿は結構エラソーで無愛想な感じ。
大戦中の話が出てきたところで過去場面になる。
軍からの依頼により(詳細はよくわからない)、ピーズ卿は海軍将校との触れ込みでドイツ上空へ飛ぶ飛行機に同乗するが、被弾してあいた穴から落下し、捕虜になる。依頼を受ける時もエラソーだったが、捕虜になったらなったで、捕虜収容所内の英国将校のトップに「真っ先に脱走させてもらいたいが」と頭ごなし感たっぷりのマイペース。一時は裏切者ではないかと総スカンを食いかけるが、必ずしも無茶言ってるわけでもなく首相直々の暗号通信で「彼を最優先脱走させろ」と指示が来たりするもんで、結局収容所あげて彼の脱走を支援することになる。
割とお気楽な収容所仲間たちとは対照的に、中盤までは主人公にヤな奴感が漂うのだが、収容所生活が長引きなじんでくると愛想がないなりに、自信家であってもヤな奴なだけではない、不思議な主人公像が見えてくる。
人をくった勢いの、堂々としてるのが武器、みたいな脱走計画のさらに後、後日談的部分が急にホッコリとした後味をドドドと醸し出して、見ている間より見終わる頃に嬉しくなるという珍品。
見終わったとたん、「ヘンな映画だったなあ!」と叫びました。
ゲラゲラ爆笑するというのでなく、ヘンなおじさんたちの描写(誰もかれもがヘンなおじさんです。唯一の色男は敵スパイだし…)にニヤニヤ…という、イギリス的にひねた辛口のユーモアが持ち味。潔いくらい女っけないですしね。秘書の一人は若い美人ですがチラっとしか使わない。そもそも主人公、女嫌いみたいですし。少し悔しいけどイギリス的ユーモアって“男のもの”みたいな所があるよなあ。なんだけど、アメリカ映画と違って、マッチョな雰囲気は全然ないんですね。
フツー主役なんかやるか、の名脇役ジェームズ・ロバートスン・ジャスティスは、こっちの意表をつくくらいに徹底したエラソー無愛想っぷりで快演。
主人公の同室の面々も全部変でよろしい。エロい事しか考えてなさそうなヒゲオヤジのクーパー(レスリー・フィリップス)、彼と漫才コンビを組みステージ(収容所内の)を目指すボンゾ(ジェレミー・ロイド)、攻撃的だけど実は気の小さいエヴェレット(スタンリー・バクスター)など…みんな妙に可愛くてだんだん愛着がわいてくるんですよね。特に二役頑張ってるバクスター氏は良かったなあ!
「お楽しみ…」に出てきたセリフも、その場面の直前くらいになっていきなり思い出しました。
「お楽しみ…」は繰り返し読みつつ、見ていない映画の内容を知りすぎたくない、いや、覚えていたくはないというジレンマにあって、ここぞという所はナナメ読みを心がけていたのですが、手頃に忘れていて丁度良かったです(笑)えらいぞ私!?
★4にするにはあまりに小味かなあ…だが、一見の価値ある珍品なのは確か。イギリス的ヘンなおじさんの好きなかたはぜひ。
これまたKEEPの英国映画2枚目。コミカルな脱走モノとのことで、昔和田誠氏が「お楽しみはこれからだ」シリーズでとりあげていたはず、と手を出した。
オープニングは「人に歴史あり」みたいな(古いか?)TV番組のセット。英国きっての天才科学者であるらしい大兵肥満のヒゲ男・ピーズ卿(ジェームズ・ロバートスン・ジャスティス)に、司会者が彼の略歴を辿りつつ、次々とサプライズゲスト(要するに昔の知り合い)を紹介してゆく。子ども時代のしょーもないエピソード出されて憮然としてるのはワカランでもないが、、主人公ピーズ卿は結構エラソーで無愛想な感じ。
大戦中の話が出てきたところで過去場面になる。
軍からの依頼により(詳細はよくわからない)、ピーズ卿は海軍将校との触れ込みでドイツ上空へ飛ぶ飛行機に同乗するが、被弾してあいた穴から落下し、捕虜になる。依頼を受ける時もエラソーだったが、捕虜になったらなったで、捕虜収容所内の英国将校のトップに「真っ先に脱走させてもらいたいが」と頭ごなし感たっぷりのマイペース。一時は裏切者ではないかと総スカンを食いかけるが、必ずしも無茶言ってるわけでもなく首相直々の暗号通信で「彼を最優先脱走させろ」と指示が来たりするもんで、結局収容所あげて彼の脱走を支援することになる。
割とお気楽な収容所仲間たちとは対照的に、中盤までは主人公にヤな奴感が漂うのだが、収容所生活が長引きなじんでくると愛想がないなりに、自信家であってもヤな奴なだけではない、不思議な主人公像が見えてくる。
人をくった勢いの、堂々としてるのが武器、みたいな脱走計画のさらに後、後日談的部分が急にホッコリとした後味をドドドと醸し出して、見ている間より見終わる頃に嬉しくなるという珍品。
見終わったとたん、「ヘンな映画だったなあ!」と叫びました。
ゲラゲラ爆笑するというのでなく、ヘンなおじさんたちの描写(誰もかれもがヘンなおじさんです。唯一の色男は敵スパイだし…)にニヤニヤ…という、イギリス的にひねた辛口のユーモアが持ち味。潔いくらい女っけないですしね。秘書の一人は若い美人ですがチラっとしか使わない。そもそも主人公、女嫌いみたいですし。少し悔しいけどイギリス的ユーモアって“男のもの”みたいな所があるよなあ。なんだけど、アメリカ映画と違って、マッチョな雰囲気は全然ないんですね。
フツー主役なんかやるか、の名脇役ジェームズ・ロバートスン・ジャスティスは、こっちの意表をつくくらいに徹底したエラソー無愛想っぷりで快演。
主人公の同室の面々も全部変でよろしい。エロい事しか考えてなさそうなヒゲオヤジのクーパー(レスリー・フィリップス)、彼と漫才コンビを組みステージ(収容所内の)を目指すボンゾ(ジェレミー・ロイド)、攻撃的だけど実は気の小さいエヴェレット(スタンリー・バクスター)など…みんな妙に可愛くてだんだん愛着がわいてくるんですよね。特に二役頑張ってるバクスター氏は良かったなあ!
「お楽しみ…」に出てきたセリフも、その場面の直前くらいになっていきなり思い出しました。
「お楽しみ…」は繰り返し読みつつ、見ていない映画の内容を知りすぎたくない、いや、覚えていたくはないというジレンマにあって、ここぞという所はナナメ読みを心がけていたのですが、手頃に忘れていて丁度良かったです(笑)えらいぞ私!?
★4にするにはあまりに小味かなあ…だが、一見の価値ある珍品なのは確か。イギリス的ヘンなおじさんの好きなかたはぜひ。
コメント
「イギリス映画は、ハリウッド映画と違って正義や感動を無理強いしてきませんし、屈折していて微毒の効いた笑いのセンスも秀逸です。ぜひイギリス映画を観てください」
と、あおりたてていました。
そういえばこの作品、今日の朝日新聞でとりあげられていましたよ。偶然目についたのですが。
『英国王のスピーチ』は、久しぶりにヒットしたヨーロッパ(英国)映画ですね。
イギリス映画に限らずヨーロッパ映画の興行成績の長期落ち込みは、どのあたりに原因が有るのでしょう?
アメリカ映画と比べるとヨーロッパ映画のDVDは、少ないというか貧しいですねえ。
最近、イーリングコメディのDVDが何点か発売されたことは奇跡に近いかもしれませんね。
イギリス映画はいいですよー!…最近のものは知りませんが。
ミステリーや冒険小説、ブラックユーモア(それほどブラックでない場合でも、アメリカの大味な笑いとは一味ちがいます)、そしてファンタジーが好きなら是非どうぞ。
>そういえばこの作品、今日の朝日新聞でとりあげられていましたよ。
ええーホントですか?とウチも朝日なので調べてみたのですが見つかりません。もしやその記事大阪版には載っていないのかしら。ま、いいや、明日図書館のデータベースで全国分の記事検索してみます(笑)
>たけだ様
>『英国王のスピーチ』は、久しぶりにヒットしたヨーロッパ(英国)映画ですね。
アメリカ人がいまだに王室好きだからではないでしょうか(あてずっぽ)。
>最近、イーリングコメディのDVDが何点か発売されたことは奇跡に近いかもしれませんね。
イーリング・コメディ、いいですね。ダブルエンダー様にもぜひオススメしたい英国映画群です。「マダムと泥棒」BD以外にも最近何か出てますか?数年前にユニヴァーサルがイーリングコメディを半ダースかそこら出してくれた時にも、正直我が目を疑いましたが…(笑)
私の「最近」は、4−5年の範囲です。
『ラベンダー・ヒル・モブ』『白衣の男』『カインド・ハート』『マダムと泥棒』くらいでしょうか?
海外ではEaling Studios Comedy CollectionというDVD BOXが出ていますね。
白状すると見ていないのですが、ユニヴァーサルで出た「歩兵の前進」や「労働組合宣言」もイーリングかその周辺ではなかったでしょうか…
「カインド・ハート」で素敵だったデニス・プライスも出ているしそのうち見ようかな(レンタルで)と思いつつ、まだ引っ張っています(笑)
借りるとなると近所の店舗などでは見つけにくいし、かといってネットレンタルは何枚かまとめ借りしないとなんだか損な気がして、時間に余裕があると思える時しか借りれません、また時間に余裕なんてなかなかないんだよなー(涙)
この2本は、イーリングスタジオ作品ではないようです。
イーリング・コメディの周辺作、といった表現が使われているサイトが有りました。
私も観ていないので、何となくですが、この2本の出来は、ちょっと落ちるような気がします。イーリング・コメディの模倣作、便乗作の感じがします。
昨年出版された「英国コメデイの黄金時代」と題した本もずーっと書店で気になりながら、「マダムと泥棒」を見てからでないと興味が半減かも・・・・と思い、手が出ません。
イーリングスタジオ作品ではなかったですか?失礼しました。
まあ、何にしろイギリス映画のノリは基本割と好きなので(この「謎の要人…」もそうですが)、そのうち試してみたいと思います。「歩兵…」はWiki“英国映画”には意外と目立つ形で紹介されていたりするし。Imdbでの評価はそこそこですけどね。よっぽど英国的だったのかも(笑)
>なにわすずめ様
未見な映画にかかわる本を読むのは難しいですよね(ちなみにその本はワタクシ、現在図書館で予約しています)
「マダムと泥棒」は英国的ブラック・ユーモアの典型的作品じゃないかという評価ですが、この英国的ノリがなにわすずめ様に合うのかどうかは、まだ分からないわけですよね。地味は地味ですから、ミーハー心は刺激しないと思います。私は大好きですが。
BDはリマスターもされていて特典映像もいっぱいあるとかで心をそそられますが(私はかなり昔にTVで見たきりなので)、ここのところ気になるDVDが多くてなかなか手が回りません。うーんどうしよ。
『マダムと泥棒』は、イーリング・コメディの傑作だと思いますよ。
リメイク版が『レディ・キラー』です。
こちらは観ていませんが、アレック・ギネスとトム・ハンクスでは、勝負にならないと思います。
そうなんですね。では、近いうちに見てみます。
アレック・ギネスって、器用に多国籍な役をこなせる人ですね。
日本人にもなったらしいのですが、どんなかんじだったのか見てみたいです。
たけだ様は「夢の中の恐怖」はご覧になっていますか・・・?
『夢の中の恐怖』は、断片しか観ていません。
同趣向のハマーフィルム作品『テラー博士の恐怖』、『残酷の沼』は、観ております。
しかも、怖そう・・・・。特に後者のタイトル、すごく、怖そう・・・。
怖いけど見たい・・・・(爆)
訂正:
『テラー博士の恐怖』は、ハマー・フィルムではありませんでした。
ハマーの後続的な製作会社アミカス・プロダクションの作品です。
オムニバス・ホラー もしくは 映画、アミカス で検索すると詳しい情報が入手出来ます。
こんばんわ。オムニバス・ホラー見てきました。
この中に紹介されていて知っているのは、「世にも怪奇な物語」と、「人生模様」だけでした。(前者は、昔よくTVでも放送されていましたし、後者は、ウィドマーク様がらみです(笑))
オムニバスは、けっこう気軽に楽しめますので好きです。
ホラーのオムニバスは拾い物が見つかりそうですね。
ここで紹介されているものを読んでいたら、やはり「夢の中の恐怖」、そして「残酷の沼」も興味深いです。
教えていただき、ありがとうございました。
ホラーでなくオムニバスというと昔はやっぱりジュリアン・デュビビエ、てなイメージの強い私です。このくらい古くなるとあまりヨーロッパ映画アレルギーも出ないんで(笑)昔TVで見たきりの「運命の饗宴」がまた見たいなあ…。「世にも怪奇な物語」は、やっぱりというか何と言うか、三作目のフェリーニの話が最後まで見れなくてついに挫折です。あの人の映像のぐちゃぐちゃ感が私はどうも苦手で…()なので巨匠なのにろくに見ていません(^^;)
話を「謎の要人悠々逃亡!」に戻すと、やっとわかりました。新聞の記事って。
三谷幸喜が朝日の連載コラムの中であげていたらしいんですね。
そりゃ、毎日のように「謎の要人…」で検索してウチへ来る人が出るわけだ…(そろそろ沈静化してきましたが)
そちらは涼しいでしょうね、いいな~。リフレッシュしてきてくださいね!
三谷効果で、このDVDがすごく売れてるみたいですね(笑)
この映画のタイトルも、長いくせに一度聞いたら忘れられませんが、
どんな記事なのか、ソッチの方も気になります。
クセのあるフェリーニ映画の中では、「悪魔の首飾り」は、わりと見やすい作品かもですよ。不気味な少女(あまり顔がよく見えない)が、すごく強烈で、テレンス・スタンプの狂気も納得でした。書いてたら、また、見たくなりました・・・。
ありがとうございます。そこそこ涼しいですが、夏は夏、基本的には半そで一枚がちょうどいいです。
>クセのあるフェリーニ映画の中では、「悪魔の首飾り」は、わりと見やすい作品かもですよ
あれで見やすいのでしたらフルレングスの代表作はこわくて見れません(笑)
困ったものです。