2007年、ジェームズ・マンゴールド監督作品。
ご存知デルマー・デイヴィス監督の「決断の3時10分」のリメイクである。
「決断…」が良かったので(http://13374.diarynote.jp/201007062330121233/)、ふと見比べてみる気になった(スカパーで視聴)。

グレン・フォード演じる強盗団ボスと、家族のための金欲しさにそれを護送するヴァン・ヘフリン演じる貧乏牧場主は、それぞれラッセル・クロウとクリスチャン・ベールが担当。
西部劇らしい美しい風景はたっぷり味わえるが、やっぱり今の映画ですな。リアル志向のためか全員ひげ面だ(笑)

悪党だが、ただ残虐なだけではない、ちょっと変わった“魅力的な”ボス設定はほぼそのまま引き継がれ、更に絵心のある悪党になっていた。なるほど、心を惹かれたものを絵に残すわけである。わかりやすい。「家族愛」へのほのかな憧れはわかりやすすぎるくらいだ。
ストーリー展開も、牧場主の息子がこっそりついてくること以外はラスト近くまではあまりかわらない。
牧場主は、異相でゴツい(しかし神経質な)ヘフリンとは一転して、髭はあれどもちょっと線の細い二枚目なベール、しかも片足が義足(戦傷)、14歳の長男には見下されてる。このへんが今風なんでしょうか。昔はもっと親って絶対的な存在だったよね(内実はともかく)。足もアレなのにかわいそすぎると思う。何かココがくやしくて映画に最後までつきあってしまった(笑)

西部劇といっても“リアル西部劇”で、先に抜かせて早撃ち、みたいなのは無いのだが、義足の割にあれ程すばしっこい牧場主ってありなのかな。最近の義足は高性能なんだろうけど西部劇だよ…
息子の存在(彼の回心やヘルプ)はストーリーにそれなりの変化をつけてくれてるが、この義足と、ラストの極端すぎるボスの行動、ちょっとなー、ありえないんじゃ、と思った。牧場主、撃たれるのは前作よりリアリズムなんだろうが、激したボスが…てのは、それを相殺どころか超えちゃってる。

オリジナルだって、“いつしか牧場主を死なせるに忍びなくなる”ボス、という「ありえないんじゃ」と言われた物語だったわけだけど、ヘフリンの神経質な熱演と、フォードの善人顔(笑)と、なによりラストにかぶる雨で“奇跡”を感じさせてうまくまとめてた。

どこまでリアルで、どこまでファンタジーであるべきか。リメイクだから余計だろうが、匙加減てのは難しいと思う。

シナリオに裏切られたがクロウは悪くない。鉄道会社に雇われた老賞金稼ぎもいい感じ、と思ったらピーター・フォンダだった(なんかジョン・マッキンタイヤみたいな感じになってた)。鉄道会社重役ダラス・ロバーツ、獣医のアラン・テュディックも手堅さを感じさせた。
ほんと、ラストがちょっと残念。せめて「重傷」にとどめてくれてたらなあ。

コメント

nophoto
たけだ
2011年2月15日12:15

ボースン様

リメイクだけれどリメイクではない、と考えた方が良いのかなと思います。
デイビス版とこちらは、同じ原作を元にした別々の映画ということです。

デイビス版は、大人の男対男の映画、こちらは父親対息子の映画。

父親という存在が消えることは、息子の成長への最大の貢献では有ります。

ボースン
2011年2月15日22:04

たけだ様、こんばんわ。

息子視点、というのはもちろん新しい軸、オリジナルになかった大きな主題の筈なんですが、その割にちょっと描き方が中途半端で軽いです。息子、もっといくらでも描き込みようがあるのに、結局目立つのはボスのほう。

なので、駅でのシーンも、父親が撃たれたあとのボスの逆上?の非リアル感が強まってしまう。
死なせるならせめて、形だけでも瀕死の父親がボスを列車に乗せて(ボスの協力の上であっても)から倒れるべきですね。息子に見せ付けるためにも。

父親は使命が完遂できてないですよあれじゃ。かといって、父親があと一歩届かなかった使命を息子が完遂したわけでもない。
息子の成長を強調するために父親をあっさり死なせたのかもしれませんが、結果的にはクライマックスを余計に中途半端にしただけだと感じました。

nophoto
たけだ
2011年2月15日22:36

ボースン様

別の比較をすると、デイビス版では、フォードは、ヘフリンがあのような妻を持っていることがうらやましいし、そのことで一目を置いている。

ゴールドマン版では、クロウは、ベールの愚直なまでのひた向きさがうらやましい(というか、こういう男が友達/相棒として欲しかった)。

どちらも「俺にもこういう真っ当な生き方ができたかもしれない」という心情がそれぞれの結末での行動をとらしたのではないかと。

私は両方ともDVDを持っていて、両方とも2回観た現段階では、デイビス版がやや勝っているとの評価です。

ゴールドマン版ではピーター・フォンダの存在が結構評価に貢献しています。

ボースン
2011年2月16日0:37

うーん…

>どちらも「俺にもこういう真っ当な生き方ができたかもしれない」という心情がそれぞれの結末での行動をとらしたのではないかと。

そこのところは同感なんですが、ゴールドマン版で、ベールがやられてから部下を殺しまくって自ら列車に乗るクロウ、しかも馬を呼びつけてるところからすると適当に逃げ出す算段をしてるようにも思える…というのは、なんだか不自然に思えてなりません。ベールを殺していなければまだしもですが…私には、デイヴィス版のあっさりしたまとめのほうが説得力があります。

あと、ベールについては父子ともちょっと描写不足、男惚れを誘うには足りないような。クロウの生い立ちがやたら詳しいことで「家庭人として生きるベール」への憧れを強調しているのでは。

フォンダは良かったですね。彼がいなかったらだいぶ西部劇らしい味わいが落ちたかも。

nophoto
たけだ
2011年2月21日0:04

ボースン様

あっちのBBSで以前少し話題になった『アパルーサの決闘』は、ご覧になっていましたっけ?

こちらはついに一般公開されなかったのですが、私はこっちの方が好きです。
原作は、あのロバート・パーカー。

今回はドーハ経由でエジプトに入りましたが、ドーハの免税店で売っていたマーロン・ブランドBOXに『シェラマドレの決闘』(原題Appaloosa)が入っていたので買おうかどうか迷ったのですがリージョン1だったことと他の3作に今ひとつ食指が動かなかったので見送りました。

そのエジプトですが、公務員のストライキが流行っているようです。
公務員の場合、上の偉いさんと下の一般公務員との給料額が雲泥の差だったのでこの種のストは今後も続く可能性があります。


ボースン
2011年2月21日0:26

いやあ、実は見ていません、『アパルーサの決闘』。新作だし(爆)☆(゚゜;)バキッ\(--;

公務員のストライキですか…ストしたくなる事情もあるようですが、部外者にはほんとハタ迷惑でしょうね。大変ですね…

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