魔女とほうきの正しい使い方 (創元推理文庫)
2010年10月12日 読書ママが言った。「あなたの妹は魔女なの」うそ!!!! 気を取り直したレイチェルが 魔女修行中の妹をいいくるめて願ったこととは? 魔法的ハイスクール・ファンタジー第1弾!
サラ・ムリノフスキ著。ちょっとジュブナイルっぽいがテンポの良い語り口が楽しいハイスクール・ファンタジー(ファンタジー、なのか?)。
主人公レイチェルの望みはふたつ。
ひとつ。校内のモテモテグループ"Aリスト"に入ってファッションショー(ダンスショー)に出たい(かつ、そのグループに入って疎遠になっちゃった親友とも再び親密になりたい)。
それが全くうすっぺらな、情けない「夢」なのは実は本人にも分かっている。でも、自意識過剰で妄想過多で、自分のダメな部分を皮肉でばさばさぶった斬りつつも「コカ・コーラのコマーシャルみたいな人生を送りたいと思うのは、そんなに間違ってる?」と自問自答するレイチェルは、憎めないし、親近感をおぼえずにはいられない、目を離すことができないヒロインだ。女子高生のちゃちいけれども切実な夢は、結構誰にも覚えがあるはず。
自分には(残念ながら)魔力がないとわかったものの、妹を何とか丸めこんで…と奮闘するジコチューぶりを、くだけた一人称を駆使して魅力的に描写してゆく著者(あるいは訳者?)はなかなかの手練れ。
そしてもうひとつの望みは、パパの再婚を阻止すること。ママはまだパパを愛してるみたいだし、パパの結婚式は大事なファッションショーともバッティングしちゃうし。14才という年相応の、子どもっぽい、けれども姉妹ともに切実な望み。レイチェルと妹ミリの傍迷惑な奮闘には笑いとともに同情心をそそられる。
けれど、ジコチューに使った魔法だけでなく、よかれと思って使う魔法も、やっぱり事態をめちゃくちゃにして、むかえる結末はやっぱりカタストロフ。
…でも、後味は決して悪くない。
一気に読んでしまったが、ヒロインをはじめ、登場人物たちが小気味よく書けているからだろう。二作目も邦訳が出た模様。こちらも期待大!
自信がないくせ調子のいい、他力本願ヒロインの再起が楽しみだ。
コメント