キートンの決死隊
キートンの決死隊
キートンの決死隊
1930年、エドワード・セジウィック監督作品。
図書館のVHSで見たので(元々古いが)画質も劣悪。

第一次世界大戦中。金持ちのボンボン・エルマー(キートン)は間違って徴兵事務所に入り込み、一兵卒として欧州に送られることになる。社長のパパに手を回してもらって…と思ったものの、「贅沢な生活を投げ出して、一から頑張ろうだなんて立派だわ」と、以前は冷たかった憧れのメリーさん(サリー・エイラース)が言ってくれたので、とりあえず兵隊生活を継続することにする。婦人部隊のメリーさんとの心のすれ違いや 厳しくも可笑しい訓練(ありがちだけど)で引っ張りつつ、ほぼ運だけで戦争を乗り切る主人公。敵ドイツ軍のど真ん中に取り残されちゃった~!と思った途端に終戦との知らせが。
昨日の敵と喜び合いつつ別れの手を振るキートンの、"また、どこかの戦場で会おうな!"との結構ブラックな挨拶は、…なんか後で効いて来るパンチだった(笑)。

まだトーキー二作目なので、割とキートンの思うような映画作りができてたという説もあるが、ものすごく面白いというほどでもない。「エキストラ」同様、トーキーなりたての頃によくあるギクシャク感もある(音や音楽の使い方が滑らかでないため、場面転換がどことなくスムーズでない)。ただ、印象的なシーンはいくつかある。私がミュージカル好きなせいか、音楽がらみの場面がいい。後半すっかりレビュー映画だった「キートンのエキストラ」より良い!

この映画には、キートンの半ば"相棒"という感じで"ウクレレ・アイク"ことクリフ・エドワーズも出ている。って、昔「雨に唄えば」を最初にヒットさせた人としかイメージないんですが、ここでもウクレレ持って慰問のステージに立ったり兵舎でちょこっと唄ったり。
そんな中、兵舎でくつろぐ兵隊たちのワンシーン、なぜかウクレレの弦はキートンが押さえて、エドワーズはドラムスティックでそれを叩きながら唄って(同時にキートンが低音部をハミング)、もう一人の兵隊が銃剣を即席楽器みたいに使って伴奏つけて、みんなで横山ホットブラザーズ?…という場面が。ここだけ妙に素な感じのキートンでびっくり。脈絡もなくポン、と放り込まれてた場面だけど不思議に印象的。あと、キスされて舞い上がったキートンが窓辺に登ってウクレレ抱えて"You are meant for me"を唄いだす、という場面も。一瞬で他の連中に「煩い」と叩き出されたけど、もう少し聞きたかったよう(笑)キートンと音楽は意外と相性いいと思う。
ちなみに"You are meant for me"も、「雨に唄えば」でジーン・ケリーが唄ってましたね(^^;)

最後の慰問ステージのダンス(女役も全部男の兵隊たち)もなかなか。誰かの代役ってんで、振りも怪しいままに踊らされる、女役で黒いワンピのキートン(足元はゲートルとズボンが見えてる)。凄くヘンで、ダイナミックで(ぶんぶん回ってる)、でもタマに色っぽかったりして(笑)

http://www.youtube.com/watch?v=J3Dmr_xAr2Q

後半3分が特に見ものです。
apache dance(アパッシュダンス)っていうらしいですね、こういう荒っぽいの。
ウクレレ持ってるのがエドワーズ、合わせて踊るのがエイラーズ(舞台上で唯一の女性?)。


なぜかそのあと「キートンの白人酋長」(1922)も、ネットの無料動画にフルであったので視聴。
約20分の短編なのでお気楽(オチもスッキリ決まった)。こんなことしてると、寝不足直らない…

http://www.imdb.com/video/internet-archive/vi2728067609/

コメント

nophoto
なにわすずめ
2010年9月22日16:01

こんにちは。
>apache dance(アパッシュダンス)っていうらしいですね、こういう荒っぽいの。
映画CanCanのなかで、シャーリー・マクレーンが乱暴に叩きつけられたり、引っ張られたりしながら踊る場面があり、なんちゅう踊りやとあきれて見てましたが、こういうジャンルがあったとは知りませんでした。まさに、それの原型みたいな場面ですね。
もともとはパリのやくざが始めたらしいのですね。

nophoto
たけだ
2010年9月22日19:01

今晩は、

ジャック・ベッケルの『肉体の冠』は、このapache(アパッシュ/アパッシェ)と娼婦の悲恋物語です。

ベッケルは、ルノワールの助監督の経験があり、ゴダールなどの兄貴分的な存在です。

この作品と『偽れる装い』『穴』『現金に手を出すな』はいずれも傑作ですので機会があったら是非ご覧になってください。
フランス映画の欠点である辛気くさい心理描写はありません。

ボースン
2010年9月22日21:33

こんばんわー。

>なにわすずめ様
シャーリー・マクレーンも踊ってたんですか。アパッシュダンスというのは私も今回初めて知った名前です。YouTubeでapache danceで検索すると意外といくつも古い動画が出てきて、案外「決死隊」での振付もオーソドックス?だったのかなと二度ビックリです。

ちなみにもうひとつの音楽シーン(横山ホットプラザーズというのはあくまでも冗談です!)も、これとはまた対照的にビックリするほどさらっとしたいい味わいでした。形は戦争コメディですが、戦場や兵士の生活の描写には変な英雄崇拝や愛国心鼓舞などが全くなく淡々としていて、そこは長所だと思います。キートンには従軍経験もあるせいか…。

>たけだ様
ベッケル…見ていません(^^;)
ゴダールの兄貴分とか言われると引いてしまう私ですが、ルノワールを信じて、そのうち機会があったら見てみることにいたしましょう。
「アパッシュ」ってヤクザっぽいお兄さん、みたいな意味なんですかね。

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