1940年、アナトール・リトヴァク監督作品。
図書館でかりたVHSでン十年ぶりに視聴(昔TVで見た)。
1939年のニューヨークを舞台にした人間群像。
日本版DVDは出ていないしVHSは絶版だし。いい話なのにな。
http://www.amazon.com/City-Conquest-James-Cagney/dp/B000FI9OB8/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1266938984&sr=1-1
下町育ちの二人、運転手のダニー(ジェームズ・キャグニー)と美人のペギー(アン・シェリダン)は恋人どうし。が、ダンサーとしての成功を夢見る彼女は、売れっ子ダンサー・バーンズ(アンソニー・クイン)にパートナーにと誘われると、我慢できずに共に巡業へと旅立ってしまう。ダニーはいたって無欲な性格なのだが、作曲家を目指す弟エディ(アーサー・ケネディ)の学費を稼ぎたいのと、「ニューヨークっ子なら夢と野心を持たなくちゃ駄目」とけしかける彼女のために、優れた素質を生かしてプロボクサーに転向する。ダニーはチャンピオンへの道を順調に駆け上がってゆくが…
夢と野心に駆り立てられ、ひとときの成功に酔いしれつつ、また地上にたたき落とされる…それは人間として、ごくあたりまえの姿でもある。映画は、そんな人間の姿を否定することなく、ただ哀感を込めて描いている。
夢を追おうとして他人に食い物にされる娘もいれば、貧しさから這い上がろうとギャングの世界を選ぶ男もいる。落ち度はおろか野心すら無くたって、不運に見舞われる者もある。
そんな中で「大都会ニューヨークの美しさと醜さ、そこで生き、夢と野望にあがく人々の姿をありのまま交響曲に織り上げたい」と念じるエディ。一時はポップスの作曲家として人気を博すが、兄の励ましもあって、遂には本願であったクラシックでカーネギーホールに立つ。
いかにもガーシュイン風なキャラクターで、曲のほうもあまりにもガーシュイン調に出来ているのだが、「この曲を兄に捧げます」とのスピーチは、分かっていてもやっぱり泣かせる。
ちなみに作曲はマックス・スタイナーだが、さすが大御所、器用なもんだ。ガーシュイン自体好きだし、綺麗な曲なので私は全く文句はない!
どこまでも無欲で誠実で純情な、ありえないくらいイイ人の主人公を軸に、テンポのいいストーリー運びにはあっという間に引き込まれる。キャグニーは自伝で、「すばらしい原作を出来るだけそのまま形にしてカメラに収めてもらった筈が、編集後の完成版はお涙頂戴のメロドラマになってしまっていた」と愚痴っているが、まあ特に後半のペギーのやたら泣いてるとことかそうだと思うが、それでも音楽やキャグニーの存在感に胸にぐっと来る作品になっていると思う。ジョン・フォード伝などを読むと、この時代の監督の権限は今ほどでなく、作品を編集室でプロデューサーに切り刻まれたらしいから(だからフォードは、フィルムは「それ以上切りようがないよう」最低限しか撮らないという主義だったらしい)、リトヴァクのせいではないのかも。
ここんとこ忙しくて愚痴っぽくなっていた自分だったのですが、こんなにイロイロあるのにキャグニー、なんて清々しくも前向きなんだ!!!と、妙に心の洗われる心地に。ううう、私も愚痴なんかたれてないで頑張るぞ。
キャグニーは勿論元気で愛嬌があるのだけれど、いつもより抑え気味にしっとりと優しさ純情さを表現し、出来杉君なイイ人を説得力をもって演じていました。やはり凄い。
アン・シェリダンも綺麗。ボクシングのプロモーターにドナルド・クリスプ(「わが谷は緑なりき」のお父さんから一転、都会的でしたねえ。役者だ)、あとお友達役にフランク・マクヒュー、珍しい役者のエリア・カザン、など。
心のカンフル効果を買って★5つ、でもマイナス点は、クインの色悪ダンサーぶりがイマイチ光らなかったのと(キャグニーの方が踊りもうまかろう)、アーサー・ケネディの指揮がイマイチ格好よくなかったこと。玉木宏を見習え!!!
最後のコンサート以外でピアノ弾いたり、兄弟愛にあふれた繊細な芸術家青年ぶりはよかったんですけどね。今月、のだめ映画も見たからなあ(笑)
図書館でかりたVHSでン十年ぶりに視聴(昔TVで見た)。
1939年のニューヨークを舞台にした人間群像。
日本版DVDは出ていないしVHSは絶版だし。いい話なのにな。
http://www.amazon.com/City-Conquest-James-Cagney/dp/B000FI9OB8/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1266938984&sr=1-1
下町育ちの二人、運転手のダニー(ジェームズ・キャグニー)と美人のペギー(アン・シェリダン)は恋人どうし。が、ダンサーとしての成功を夢見る彼女は、売れっ子ダンサー・バーンズ(アンソニー・クイン)にパートナーにと誘われると、我慢できずに共に巡業へと旅立ってしまう。ダニーはいたって無欲な性格なのだが、作曲家を目指す弟エディ(アーサー・ケネディ)の学費を稼ぎたいのと、「ニューヨークっ子なら夢と野心を持たなくちゃ駄目」とけしかける彼女のために、優れた素質を生かしてプロボクサーに転向する。ダニーはチャンピオンへの道を順調に駆け上がってゆくが…
夢と野心に駆り立てられ、ひとときの成功に酔いしれつつ、また地上にたたき落とされる…それは人間として、ごくあたりまえの姿でもある。映画は、そんな人間の姿を否定することなく、ただ哀感を込めて描いている。
夢を追おうとして他人に食い物にされる娘もいれば、貧しさから這い上がろうとギャングの世界を選ぶ男もいる。落ち度はおろか野心すら無くたって、不運に見舞われる者もある。
そんな中で「大都会ニューヨークの美しさと醜さ、そこで生き、夢と野望にあがく人々の姿をありのまま交響曲に織り上げたい」と念じるエディ。一時はポップスの作曲家として人気を博すが、兄の励ましもあって、遂には本願であったクラシックでカーネギーホールに立つ。
いかにもガーシュイン風なキャラクターで、曲のほうもあまりにもガーシュイン調に出来ているのだが、「この曲を兄に捧げます」とのスピーチは、分かっていてもやっぱり泣かせる。
ちなみに作曲はマックス・スタイナーだが、さすが大御所、器用なもんだ。ガーシュイン自体好きだし、綺麗な曲なので私は全く文句はない!
どこまでも無欲で誠実で純情な、ありえないくらいイイ人の主人公を軸に、テンポのいいストーリー運びにはあっという間に引き込まれる。キャグニーは自伝で、「すばらしい原作を出来るだけそのまま形にしてカメラに収めてもらった筈が、編集後の完成版はお涙頂戴のメロドラマになってしまっていた」と愚痴っているが、まあ特に後半のペギーのやたら泣いてるとことかそうだと思うが、それでも音楽やキャグニーの存在感に胸にぐっと来る作品になっていると思う。ジョン・フォード伝などを読むと、この時代の監督の権限は今ほどでなく、作品を編集室でプロデューサーに切り刻まれたらしいから(だからフォードは、フィルムは「それ以上切りようがないよう」最低限しか撮らないという主義だったらしい)、リトヴァクのせいではないのかも。
ここんとこ忙しくて愚痴っぽくなっていた自分だったのですが、こんなにイロイロあるのにキャグニー、なんて清々しくも前向きなんだ!!!と、妙に心の洗われる心地に。ううう、私も愚痴なんかたれてないで頑張るぞ。
キャグニーは勿論元気で愛嬌があるのだけれど、いつもより抑え気味にしっとりと優しさ純情さを表現し、出来杉君なイイ人を説得力をもって演じていました。やはり凄い。
アン・シェリダンも綺麗。ボクシングのプロモーターにドナルド・クリスプ(「わが谷は緑なりき」のお父さんから一転、都会的でしたねえ。役者だ)、あとお友達役にフランク・マクヒュー、珍しい役者のエリア・カザン、など。
心のカンフル効果を買って★5つ、でもマイナス点は、クインの色悪ダンサーぶりがイマイチ光らなかったのと(キャグニーの方が踊りもうまかろう)、アーサー・ケネディの指揮がイマイチ格好よくなかったこと。玉木宏を見習え!!!
最後のコンサート以外でピアノ弾いたり、兄弟愛にあふれた繊細な芸術家青年ぶりはよかったんですけどね。今月、のだめ映画も見たからなあ(笑)
コメント
この作品は見ていませんがYouTubeででも見る価値はありますか?
リトヴァクよりもジョン・スタールあたりの方が向いていたかもしれませんね。
リトヴァクはもうちょっと影のある内容に合っているような気がします。
ミリアム・ホプキンスの元ダンナですね。
旧ソ連、ドイツ、フランス、ハリウッドと渡り歩いて彼自身はアカデミー監督賞は獲得していませんがハビランドやバーグマンがアカデミー賞を獲得するに貢献しています。
もうちょっと影のある内容、というのはどうでしょう(登場人物の性格に影を、ということなら、ノワールではないので仕方ないというしか。ただ脇筋にはノワール要素もなくはないかな)。ネタバレを避けて書いていますが、めでためでたのハッピーエンドというわけでもなく、結構厳しい展開の話です。
キャグニーのリングネームが“ヤング・サムソン”というのも象徴的?
監督よりついスターで見てしまう私は、キャグニー、やっぱいいなあ、てなことで、図書館で次は「いちごブロンド」を予約しました(笑)
コメディー作品が有るかどうか確信はないのですが、様々なジャンルの作品を器用にこなす監督だと思いますが、スリラーがリトヴァクの得意分野ではないかと思うのです。
「影」了解です。私は実は「栄光の都」以外ほとんどリトヴァク監督作品を見ていないのですが、フィルモグラフィからなんとなくドラマチックな恋愛or人間ドラマが中心の人かなと思っていました(そうなると女優をクローズアップする作品が増えても不思議ないですよね)。
見たいと思ってパッと見れる作品は少ないでしょうが、おすすめのスリラーはありますか?最近「蛇の穴」を見逃しましたが再放送があるから見てみようかな(スリラーというのとは少し違うかも。精神病院の話ですね)。
私も見ておりませんが是非見たい作品です。
バーグマンが出た『追想』は、例のアナスタシア皇女をめぐるお話で、かなり昔テレビで見ましたがあまりよく憶えていません。
やはりリトヴァクが監督した『旅』の方がジェイソン・ロバーツやアヌーク・エメといったお気に入りの俳優がでていたせいなのか記憶が鮮明ですね。
私もリトヴァク作品は、余り見ていないのですが最晩年の『将軍たちの夜』は、なかなか興味深い映画でした。
製作サム・スピーゲル、オトゥールとシャリフが共演で、音楽がジャールという取り合わせです。シャリフはここではポーランド人を演じています!
シャリフは、たしかドイツ人将校ではなかったでしたっけ。この人、シリア系エジプシャンなのに、ロシア人やら、トルコ人やら、「うたかたの恋」では、ルドルフ王子を演じていたし、すごく多国籍な俳優です。私は「ファニーガール」の彼が好きなんですが、「マッケンナの黄金」ではたぶんメキシコ人を演じていたとおもいますが、このときは、オールヌードにまでなっていました。「結婚詐欺師は殺さない」というレアな作品の中でもオールヌードに・・・・。たしかにセクシーではありますが、ちょっと、濃すぎるわなあ・・・
ふふふ、「将軍たちの夜」のタイトルが出たので期待しましたが、やっぱりご覧になってるんですねー(笑)
シャリフ、あまり私は作品見てないんですが「黄色いロールスロイス」ではユーゴスラヴィア人でした。またひとつ国籍コレクションが。濃いとは思うけどもしかしてもしかしたら、「エジプト人の割には」濃くない顔立ちなのかもしれませんね…(^^;)
>たけだ様
「蛇の穴」、今度は早めに録画予約をセットしておくことにします。ハヴィランドはともかく、ちょっとレオ・ゲン(精神科医役らしいですね)が気になります。
ところで話変わりますが、たけだ様、ブリジッド・オショーネシー様のところでコメントつけておられましたね。私ここ一週間ほど、あちらでコメントつけようとするたび「コメントスパムと判定されました」とハネられるんですよ。なんでだろう…(T^T)
ご指摘の通りドイツ人でした。
私はシャリフのエジプト時代の作品も数本見ています。
デビュー当時は結構ナイーブな青年みたいな役も演じていました。
ボースン様
レオ・ゲンですか!渋いですね。
オショーネシーさんのサイトの件ですが、最近パソコンを変えるとかネット環境に変化が有りましたか?
レオ・ゲンは「白鯨」でペックの副長を演じているのを見てちょっと気になるなと思った俳優さんでした。
>オショーネシーさんのサイトの件ですが、最近パソコンを変えるとかネット環境に変化が有りましたか?
ありがとうございます。
パソコン環境もネット環境も変わっていません。ひとつ気になるのは、たしかあちらには送信時パスワードを入れる必要があったと思うのに、それが表示されないことです。「送信」ボタンを押した後でパスワード画像が表示されるんだったかなと思って「送信」を押すといきなりコメントスパム扱いに…(;-;)
パスワード画像、どこのタイミングで出ていましたっけねえ(久々なので)。
ココログのほうも、ツイッターボタンが増えて少し新しくなっているようですね。
以前、アラビア語講座を視聴していたら、彼のデビュー作を数分だけ放映してくれましたが、まだ、ヒゲもなくて、若々しい感じでした。ちょっと、日活系みたいな作品でした(笑)そういえば、シャリフは、ダントツヒゲが似合うイイ男のひとりなのでは・・・。おとどしあたりに日本のアテネフランセかどっかで上映していたと思うのですが、何とか、見れないかなあ・・・・「谷間の戦い」でしたっけ・・?ほかにも「黒い水(?)」とか、面白そうな作品がけっこうあるんですよね・・・・
送信ボタンを押すとパスワードを入れる場面が現れる場合と、現れない場合がありますね。
現れない場合でもコメントスパム扱いになったことは一度も有りませんが・・・・。
なにわすずめ様
Omar Al Shareefなどのエジプト時代の芸名+ DVDで検索するとエジプト映画DVD販売サイトが出てきますね。2人共演した作品のなかでも『私は眠れない』(英語タイトルSLEEPLESS)は、面白かったです。
これってどんなお話ですか?家事に追い回されて寝る間がない奥さんの話でしたっけ?(笑)
IMDbでNO TOMORROWを検索してください。
現在自宅に居ないのでエジプト映画の資料にあたれないのが残念です。
「日活映画っぽい」というご意見に私も同意します。
カラーのエジプト映画にしては珍しく色彩設計がちゃんとしていたという記憶が有ります。
パスワード画面の件、ありがとうございます。…ますますわからないですが(^^;)
>なにわすずめ様
エジプト映画情報はたけだ様がバッチリのようでよかったですね~★
米アマゾンデビューも、しっかり画面を読んでおけば大丈夫ですよ。がんばってください。
[A man in our house]なんかを見ていると、古き良き時代の日本映画とだぶりまくりですねえ。英語字幕が私でも十分理解できるやさしさなのがまたうれしい・・・。クラシックエジプト映画っていいいですねえ・・・
米アマゾンでお買い物が無事出来るようになったら、財布の紐をきっちり閉めておかないと危なそうな私です・・・(笑)
エジプト映画は50年代から60年代前半までのモノクロ映画が良いですね。
このことはインド映画にも言えるんです。カラー化してから両国の映画は質が落ちたというか、俗化し過ぎというか、映画の「神話性」みたいなものが消えてしまったように思います。
エジプト映画は、アラブ圏では、ハリウッド映画に似た地位を獲得しており、製作本数もエジプト映画がダントツでした。
シャリフのデビュー作の監督ユセフ・シャヒーン(残念ながら亡くなりました)は、超有名監督でした。
仕事でカイロに8ヶ月ほど滞在し、テレビでエジプト映画を大量に見られた事は大変好運でした(というかエジプト映画が見られるだろうという目論見でカイロに赴任したのですが)。
一時、本気で行きたくてアラビア語講座を視聴してましたが、ぜんぜん身につきませんでした(笑)シャヒーン監督作品は、紀伊国屋DVDの「炎のアンダルシア」だけ持ってます。もっと、日本でも紹介してくれたらいいのにな。
この監督の作品ではなかったかもしれませんが、「人形遣い(?)」だったか言うタイトルのシャリフの作品を見てみたいのですが、ご覧になったことありますか?
残念ながら『ロレンス』以降のエジプト映画出演作は、みた記憶が有りません。
シャヒーンの初期の代表作はIMDbでTHE IRON GATEのタイトルで紹介されている作品です。GARE CENTRALE(中央駅という意味のフランス語タイトル)、英語ではCAIRO STATIONというタイトルになっている場合もある、人間の暗い情念を描いた傑作です。
ちなみにアプリケーションはIEですか?別のアプリでアクセスしてみるのも一つの手だとおもいます。
なるほど!ありがとうございます。とりあえずPCにはFirefoxも入ってるので試してみましょう。書き込めないままだと寂しいし。