That Midnight Kiss
That Midnight Kiss
1949年、ノーマン・タウログ監督作品。未公開。
先日訃報を聞いたばかりの、キャスリン・グレイスン追悼を兼ねて観賞(2/17死去とのこと)。特別好きなスターというわけでもなかったのですが、MGMミュージカルには欠かせない「顔」と「声」のひとつでしたね。
“Toast of New Orleans”と二枚で一ケース入りの米盤DVD、正確に言うと米盤ミュージカルDVDボックス、"Classic Musical from the Dream Factory volume 2" 収録分より視聴(英語字幕付/リージョンALL!)。

夭折の名テナー・マリオ・ランザのデビュー作でもある。この映画が好評だったのか、彼の二作目“Toast...”も、ランザ&グレイスンコンビ。

お話はといいますと…
大金持ちの祖母(エセル・バリモア)の肝いりで、また才能も認められオペラデビューが決まったプルーデンス(グレイスン)。まだプロ意識の薄い彼女は相手役として呼ばれた中年太りの一流テナーにはちょっと不満。ところがある日、若いトラック運転手ジョニー(ランザ)がとてつもない美声で歌っているのを見かけ…

互いに夢中になる二人ですが、そこはそれ、ちょっとした三角関係とか誤解とかにかきまわされ、それでもラストは舞台で受ける万雷の拍手。お話はたわいないけれど、小柄でちょっとチンクシャ顔のソプラノ・グレイスンと、希有な『実力があってかつ若くてルックスのいいテナー』ランザが寄り添って朗々と歌いあげると、オペラの曲というのは通常ポップスよりよっぽど重ったるいものなのですが、不思議に清々しいデュエットになるのです。オトナとしては中年テナーがちょっと気の毒に感じたりもするけれど(えらくアホに設定されてるが一応ベテランの一流歌手なんだし)、ストーリーなんかもう気にせず、二人の若々しいケミストリーにここちよく圧倒される一作。
この若さパワーでは、「エビ漁師の田舎者だが美声」という設定がややクドい“Toast of New Orleans”(http://13374.diarynote.jp/200908242326369305/参照)よりも、こちらの方がストレートで好もしいかもしれません。

当時人気だった指揮者兼ピアニストのホセ・イタービ(本人役)の軽妙なパースナリティ、ヘンなアシスタントのジュールス・マンシン(指揮者の代振りで妙な芸を見せたり、お笑い担当)、ジョニーの父にJ.キャロル・ナイシュ、友人にキーナン・ウィン、とそれなりに手堅いキャスト。お父さん、イタリア食堂の下町テナーでいい味出してましたね。あと執事がアーサー・トリーチャー(以前ジーヴズを演じてた!)だったのにびっくりしました。いや、驚くようなキャスティングではないワケですが。

グレイスン、これまで見た映画の中で、一番可愛く見えました。オペラティックなソプラノだから相性は最高、まさにゴールデン・コンビと思えるのにこの二作きりだなんて、まことに残念。
追悼で甘くなって★4つ。(ミュージカルやオペラ嫌いな人には受けないでしょうが)

それにしても…キャスリン・グレイスンというと常に、小林信彦の「オヨヨ大統領」シリーズを思い出さずにおれないのは私だけか。(グレイスンの大ファンの刑事が登場するので)

コメント

nophoto
たけだ
2010年2月22日9:00

ボースン様

キャサリン・グレイスンって余り好きではないんです。
彼女を見ていると「ソプラノ歌手は頭が悪い」という俗説を信じたくなるのですね(俗説に信憑性を与えているもう一人はマリア・カラス)。
『キスミー・ケイト』は、そんな彼女の持ち味を巧く生かした作品でした。

ボースン
2010年2月22日10:05

おはようございます!
余り好きではないというコメントが返ってくるような気がしていました(笑)
だって私自身も余り好きではないんですから。
そんなにはネット上でも話題が広まっていないような。

そもそもこんなオペラ調のソプラノは、私好みのダンス主体な(アステア好きですから)ミュージカルでは少し浮くんですよね。そんなに踊れないみたいだし。
頭が悪く見えるのもオペラティック・ボイスだからこそでしょう(笑)
ただ、ランザとのコンビはいい味出てると思うんですよ!オペラを上演するミュージカルだし。ランザの力なのかもしれないけど…

とりあえず手元に未見のコレがあったので追悼上映に使いましたが、「キスミー・ケイト」もそのうち見たいと思っている作品です。何故まだ見ていなかったかというと好きなスターが出てないからです(笑)が、こちらも中身には期待できそうですね。

nophoto
たけだ
2010年2月22日11:30

ボースン様

『キスミー・ケイト』の見所の一つは、後半の3カップルの踊りですね。
特にボブ・フォッシーにご注目。

ボースン
2010年2月22日17:27

もともと劇中劇は好きですのでその部分には興味を引かれ、「一度見てみたい」と思いながらも逃し続けていた作品です(二重構造なんですよね?シェイクスピアを基にした)。ただ、グレイスンとハワード・キールとのデュエット(あるんでしょうねどうせ)にどうも興味が持てなくて(^^;)。「ザッツ・エンタティンメント」シリーズで、ほんの一部だけは見ているわけですが。
機を見てレンタルしてみます…。

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