1977年、スタンリー・クレイマー監督作品。
CSでやってた「駆逐艦ベッドフォード作戦」(レンタルで既見分)をDVD録画していたついでにチョロっと再見すると、超コワモテ偏執狂的なリチャード・ウィドマーク艦長にまたまた心底からの震撼をおぼえて、お口直しに何か…と引っ張り出したのが何故かコレ(コレも最近CSでやってた)。
いや、ウィドマーク様大好きなのですが、「ベッドフォード」だけは怖すぎです。トミー・ユードー(「死の接吻」の殺し屋)より怖いです。何しろ実人生でトミー・ユードー(のよーな人)に遭遇する可能性は、マジメに生きてりゃ限りなく低いでしょうが、ベッドフォード号のフィンランダー艦長(のよーな人)に遭遇する、ヘタするとその下につく可能性というのは案外低くはないかもしれない、とゆーかもしも職場の上司がこんなにも怖かったら!とか思うだけで胃が変になりそうです。
笑顔を浮かべていても冷え冷えとした空気がシッカリ伝わってくる、なまじ有能なのがまた始末に終えない…私のように気が小さく覇気もない人間には天敵ですな。ウィドマーク様はリベラルな方なので核兵器や冷戦について批判的な立場からこの役を熱演してらっしゃるんですが(製作まで兼ねてる)、核兵器よりも艦長の方が怖い私。ううう。
(参照http://13374.diarynote.jp/200805312258030000/)
…気を取り直して、…さて「ドミノ・ターゲット」。
大昔、映画館で見た時には、なんじゃこりゃ、と思った作品でした。
惚れた女キャンディス・バーゲンのDV夫を殺したとして入牢中の元狙撃兵ジーン・ハックマンが、謎の組織に脱獄させられ、暗殺計画の駒に使われる話。陰謀モノのつねとして、ナゾの組織はどこまでもナゾのまま絶大な力をふるう設定。根は悪人じゃない彼は、組織について探って逃げたり逆らったりしたいのだけど、組織は見せしめや口封じのために、彼が関わる人間を片っ端から消してゆく。勿論恋人も人質として利用される。
しかし!こんなに誰も彼も消していっていいのか?そして、死んだと思ってた人が…というのもお約束だが、何だかどんでん返しのためのどんでん返しになっていないか?そして何より主人公、こんなに何にも考えずに動いてていのか?(脱獄させてもらいーの恋人と素敵山荘に住まわせてもらいーのしてから何の策もないまま「狙撃はイヤ」と言ってみたり、せっかく二人で逃げ出したのに誰も知らない所へ行く代わりに素敵山荘に帰っちゃったり…)という気持ちで、果てしない?とともに見終えた、私的には正直スカサスペンスでありました。
ただ…ハックマンをスカウトするナゾの組織の一員、リチャード・ウィドマーク様が、この映画では組織の中で一人だけみょーに人間的な温かみをじんわりにじませているのですね。彼だけ、ハックマンとなんだか心の交流ができちゃってんですね。もういい年になってるんですが知的でほかほかして魅力的。暗殺とか企画してる連中の仲間なのになぜ?これもまた果てしない?のひとつですが、とりあえずこの点だけは歓迎できる(爆)
実は先日Google.books で過去の洋雑誌を検索中、この作品についての一文に遭遇しました。曰く「駄作というものは、説得力のない前提から出発してえっちらおっちらありえない結末へとなだれこむ。コレもソレだ。ただ、リチャード・ウィドマークを見るのは常に目に楽しい。彼が別に何もしていない時ですら。(大意)」。
うむむむ、なんて説得力のある批評なんだ!!!
この一文が、この、どーでもいい映画を私に再見させたと言ってもいい。
http://books.google.co.jp/books?id=QeQCAAAAMBAJ&pg=PA17&dq=Widmark+Richard+Domino&as_brr=3&ei=NRANS5bYFojakAT7ob3bAQ#v=onepage&q=Widmark%20Richard%20Domino&f=false
「あったかみのあるウィドマーク様を見る」
「可能であれば、以前?と思った部分を自分の中で解決する」
と、二つの目的のうち、前者は果たした。けど、やっぱり?はすべて?のまま。はは…
ハックマンは朴訥な中に憂愁を漂わせて悪くないけど、とにかく脚本がね…
中盤、久々に再会した彼女とひたすらいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃを撮ってるくらいならもう少し脚本練って欲しいな。ミッキー・ルーニーだのイーライ・ウォラックだの、渋い曲者役者を他にも色々取り揃えてるのに。
スタンリー・クレイマー老いたり、としか思えぬヌルい映画でした。ふぅ。
CSでやってた「駆逐艦ベッドフォード作戦」(レンタルで既見分)をDVD録画していたついでにチョロっと再見すると、超コワモテ偏執狂的なリチャード・ウィドマーク艦長にまたまた心底からの震撼をおぼえて、お口直しに何か…と引っ張り出したのが何故かコレ(コレも最近CSでやってた)。
いや、ウィドマーク様大好きなのですが、「ベッドフォード」だけは怖すぎです。トミー・ユードー(「死の接吻」の殺し屋)より怖いです。何しろ実人生でトミー・ユードー(のよーな人)に遭遇する可能性は、マジメに生きてりゃ限りなく低いでしょうが、ベッドフォード号のフィンランダー艦長(のよーな人)に遭遇する、ヘタするとその下につく可能性というのは案外低くはないかもしれない、とゆーかもしも職場の上司がこんなにも怖かったら!とか思うだけで胃が変になりそうです。
笑顔を浮かべていても冷え冷えとした空気がシッカリ伝わってくる、なまじ有能なのがまた始末に終えない…私のように気が小さく覇気もない人間には天敵ですな。ウィドマーク様はリベラルな方なので核兵器や冷戦について批判的な立場からこの役を熱演してらっしゃるんですが(製作まで兼ねてる)、核兵器よりも艦長の方が怖い私。ううう。
(参照http://13374.diarynote.jp/200805312258030000/)
…気を取り直して、…さて「ドミノ・ターゲット」。
大昔、映画館で見た時には、なんじゃこりゃ、と思った作品でした。
惚れた女キャンディス・バーゲンのDV夫を殺したとして入牢中の元狙撃兵ジーン・ハックマンが、謎の組織に脱獄させられ、暗殺計画の駒に使われる話。陰謀モノのつねとして、ナゾの組織はどこまでもナゾのまま絶大な力をふるう設定。根は悪人じゃない彼は、組織について探って逃げたり逆らったりしたいのだけど、組織は見せしめや口封じのために、彼が関わる人間を片っ端から消してゆく。勿論恋人も人質として利用される。
しかし!こんなに誰も彼も消していっていいのか?そして、死んだと思ってた人が…というのもお約束だが、何だかどんでん返しのためのどんでん返しになっていないか?そして何より主人公、こんなに何にも考えずに動いてていのか?(脱獄させてもらいーの恋人と素敵山荘に住まわせてもらいーのしてから何の策もないまま「狙撃はイヤ」と言ってみたり、せっかく二人で逃げ出したのに誰も知らない所へ行く代わりに素敵山荘に帰っちゃったり…)という気持ちで、果てしない?とともに見終えた、私的には正直スカサスペンスでありました。
ただ…ハックマンをスカウトするナゾの組織の一員、リチャード・ウィドマーク様が、この映画では組織の中で一人だけみょーに人間的な温かみをじんわりにじませているのですね。彼だけ、ハックマンとなんだか心の交流ができちゃってんですね。もういい年になってるんですが知的でほかほかして魅力的。暗殺とか企画してる連中の仲間なのになぜ?これもまた果てしない?のひとつですが、とりあえずこの点だけは歓迎できる(爆)
実は先日Google.books で過去の洋雑誌を検索中、この作品についての一文に遭遇しました。曰く「駄作というものは、説得力のない前提から出発してえっちらおっちらありえない結末へとなだれこむ。コレもソレだ。ただ、リチャード・ウィドマークを見るのは常に目に楽しい。彼が別に何もしていない時ですら。(大意)」。
うむむむ、なんて説得力のある批評なんだ!!!
この一文が、この、どーでもいい映画を私に再見させたと言ってもいい。
http://books.google.co.jp/books?id=QeQCAAAAMBAJ&pg=PA17&dq=Widmark+Richard+Domino&as_brr=3&ei=NRANS5bYFojakAT7ob3bAQ#v=onepage&q=Widmark%20Richard%20Domino&f=false
「あったかみのあるウィドマーク様を見る」
「可能であれば、以前?と思った部分を自分の中で解決する」
と、二つの目的のうち、前者は果たした。けど、やっぱり?はすべて?のまま。はは…
ハックマンは朴訥な中に憂愁を漂わせて悪くないけど、とにかく脚本がね…
中盤、久々に再会した彼女とひたすらいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃを撮ってるくらいならもう少し脚本練って欲しいな。ミッキー・ルーニーだのイーライ・ウォラックだの、渋い曲者役者を他にも色々取り揃えてるのに。
スタンリー・クレイマー老いたり、としか思えぬヌルい映画でした。ふぅ。
コメント
まったく持って同感です。この表現は、私の気持ちをそのまま物語っています。
しかし、意にも留めてなかったこの作品に、こんな見所があったとは。
油断なりませんね。
哀しみのマディガンを見終わった後なので、怖いウィドマーク様がどんなのか、想像がいまひとつつきかねますが、楽しみにしています・・・
けだし名文ですね。
「ドミノ・ターゲット」は未見ですか?あるいは大昔に見たきりってとこでしょうか。
映画自体はスカなので覚悟がいりますが、ウィドマーク様はとーーーってもいい感じですよ。いつにないほどほかほかしています(笑)
いい感じーーーと思っていたのですが・・・・うーん・・・・。
77年くらいになると、映画のつくりが、こんなもんなのかな。骨格弱く、贅肉多しな印象ですね。半分くらいの長さに編集して、謎の組織と、ターゲットを狙う意図をもう少し明らかにすれば、画面が締まったでしょうね。
このとき、ウィドマーク様63才、貫禄ですね。彼が登場するときだけ、画面がぴりりと引き締まりました(贔屓目ではなく)。声も、話し方も若かりし頃と変らないのもうれしかったです。イヤー、ジーン・ハックマンって、けっこうおっさんくさいけど、ウィドマーク様と並ぶとヒヨッコですね(笑)
不気味さをはらんだ謎の組織の中心人物なんだけど、どことなく人間的なやさしさがにじみ出るウィドマーク様が、唯一救いの映画でした。
ウィドマーク様だけ、です。彼の出演場面のみ、ピンポイントで観て下さいまし(爆)
貫禄十分なのに、いつにないほどまったりまろやか(*^^*)
>77年くらいになると、映画のつくりが、こんなもんなのかな。骨格弱く、贅肉多しな印象ですね。半分くらいの長さに編集して、
そうですね、70年代頃からぐんぐん映画の平均上映時間が長くなりましたね。
4~50年代の作品のように90分切ると短いかなと思うこともあるけど、最近の「2時間超えるのが『普通』」というのはそもそも間違いではないかと思います。
まあ、「ドミノ」は実際の長さは101分とむしろ手頃なので、このウスィ~感は、シナリオ作ってる方の問題でしょうね。展開のいちいちが何だか納得いかないし。「説得力のない前提から出発してえっちらおっちらありえない結末へ」。言い得て妙です。
ウィドマークがジーンハックマンに対して「カフカ知ってるか?」とかなんとか言うんです。あそこで私、ドキッとしちゃいました。不条理ってことなんですかね?わけのわからない世界に巻き込まれちゃうというのか?なぜかあそこだけ、妙にアメリカを離れて、ヨーロッパ世界にぶっ飛んだみたいで、あれウィドマークのアドリブかしら?どうなんでしょう。
>なぜかあそこだけ、妙にアメリカを離れて、ヨーロッパ世界にぶっ飛んだみたいで、あれウィドマークのアドリブかしら?どうなんでしょう。
アドリブかどうかは、わからないです。撮影状況に関する記事もあまり読んだことがないので、なんとも…
政治陰謀話だから、作る方も、グローバルな感じは出したかったかもしれませんね。
>リチャードウィドマークを見るのは楽しい。
本当にそうです。まさにいぶし銀の演技でしたね。味があるんですよ。
最初は、ハックマンを将棋の駒にしか思ってなかったのに、段々彼に寄り添うようになってくんですね。
ハックマンの女で失敗した人生に共感したのか、はたまた組織に長くいることに飽きたのか?
ウィドマークはわざわざ、車から降りてハックマンとバーゲンが乗る飛行機を見送りますね。二人が組織により殺害されるのをウィドマークはわかっているのでしょう。ひよっとしたら、さっさと二人を始末できなかった失態の責任を取らされることをウィドマークは覚悟していたのかもしれません。そう考えたら、悲しくなってきました。彼も将棋の駒なんてね。
ウィドマークはずいぶんたくさん映画で死にましたが、悲しい死の一つです。
誰もが駒にすぎない、というのは、この映画のテーマだろうと思います。ハックマンが撃たなくても構わないくらいに計画重層的に組んでたってのを見て、私は「そこまでもって回らんでも…」と思いましたが(笑)