二冊となったケルーベ編も終了。

会話もすぐ心理戦になるし、微妙にもってまわってわかりにくい、素人っぽいところがある語り口だが、このシリーズの場合一種のリアルさにもつながっていると思う。自分が何を緊張し何を焦っているのか本当はどの程度のあぶなさの中にいるのか、人が生きるほんとのリアル日常というのは、こういう答えの出ない不透明な迷宮であるともいえるだろう。

通常、物語の中では(特にライトノベルやエンタメでは)、ソレが分かりやすくメリハリのきいた構造になっていて読めばスカッとさせてくれるわけだが、このシリーズの展開は、必ずしもスカッとしきらない。でも登場人物があれこれ四苦八苦して不安な事態をのりきりながら、最後には人の心のつながりにホッと息をつくという「あたたかさ」がある。小手先な心理戦会話(面白いが)の奥には絆を確かめ合うじゃれあいの嬉しさがあって、読む者をここちよくさせてくれるのは結局そっちの部分。天下国家や宿命どうこうでなく中世的日常な商売がメインという経済風味もだが、こういう要素のブレンドでなりたつラノベは珍しいかな、やはり。

そして、「ちっぽけな、いち旅商人」として生きるロレンスの日々の「一喜一憂」ぶり、そして、ちょっとしたことで結構どーんと自己嫌悪しちゃう根本的な「人の良さ」が可愛い。いや、可愛いってヘンかな、等身大な身近さがいとおしいです。
この表紙どおり、今回のホロはいつもにも増して堂々と、いつにない「大きな組織」との駆け引きに挑むハメになるロレンスを引っ張っていました。さすが賢狼、と、あらためて見直し(笑)

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