フロッグメン
1951年、ロイド・ベーコン監督作品。モノクロ。

米海軍の特殊潜水部隊の活躍を描く戦争映画。米盤DVDで鑑賞。
上陸作戦の尖兵として、沿岸や海中の障害物の偵察や破壊を行う彼らの姿が、セミ・ドキュメンタリータッチで描写される。特に水中での映像はほとんど無音状態で、その静けさが逆に強い印象を残す。

かけがえのない存在だが、縁の下の力持ち的ではある。
映画のストーリーも、華々しい戦果ではなく「新しく着任したフロッグメン部隊の指揮官が、前任者に心酔しすぎてなじもうとしない部下たちを掌握し、チームが無事再生・成長をとげるまでの紆余曲折」というものが骨子だ。

親分肌だったらしい前任者は戦死後も部下たちに熱愛されている。特殊部隊ゆえのプライドの高さや仲間意識の強さもあり、部下たち(ダナ・アンドリュース、ジェフリー・ハンターら)は、クールで堅苦しい感じの新司令ローレンス少佐(リチャード・ウィドマーク)に最初から反発気味。
リーダーは、時に全体のため、何かを後回しにする決断を下す。また、全体を見ず目先のこと、勇敢さの誇示のために他に危険を及ぼす選択をしてしまった部下は、叱責するしかない。リーダーの責任とはそういうものだろう。だが、めぐりあわせの悪い事件も重なって、少佐の「正しさ」はソッポを向いている部下たちにはなかなか通じない。

自分の行動選択には揺らぎのない少佐も、それがうまく通じていないことには内心では悩んでいる。前任者を意識せずにもおれないが、自分が前任者に似たタイプでない事は、どうにもならない。少佐には社交ベタというか根がシャイというか、不器用なところがあるのも確かだ(本人にも自覚はある)。でも部下どものコドモっぽさといったら!
だが、ともに困難や危機を乗り越えるうち、部下たちにも漸く彼の責任感の強さや誠実さが理解されてくる。クライマックスは日本の潜水艦基地への潜入・爆破だ(小さい基地だが)。

最後で部下たちが少佐への認識を改めるくだりが、あと少しメリハリをもって描かれていれば更に良かったとは思う。地味ながら目先の変わった題材を取り上げた戦争映画だが、…地味なのは否めない。

強烈な悪役演技や、良くて西部劇でのタフガイぶりが世間での第一印象だろうが、若い頃の戦争映画でのウィドマークは、意外と内省的な軍人を演じていることが多い。「地獄の戦場」の元教師な少尉もそうだった(これも良かった)。
知的で繊細な(しかし勇敢な)ウィドマーク様を見たい人は満足できるだろう。水中でも彼の演技力に揺るぎはない。深いところではスタントかもしれないが(笑)

苦悩する彼の唯一の理解者というか、愚痴をきいてやったり軽くアドバイスしたりという美味しい役が彼らを移送する艦の艦長ゲイリー・メリル。この人は「イブの総て」の大女優ベティ・デイヴィスの年下の恋人役くらいしか目立つ作品ないと思うのだが(実際今回も役が美味しい割には…って感じもある)、どっちでも「癒し系?」

女っ気は皆無。リーダーシップ論みたいなところもある、静かな男性映画でした。

海外盤に興味のあるむきは↓

http://www.amazon.com/Frogmen-Richard-Widmark/dp/B0007PALP2/ref=pd_bbs_sr_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1224995995&sr=8-1

Youtubeにあるトレイラー↓

http://jp.youtube.com/watch?v=XDUSZKFwvI4

コメント

nophoto
なにわすずめ
2008年10月26日16:06

こんにちは、ボースン様。ウィドマークの文字に反応してしまう私。(笑)
>知的で繊細な・・・  やー、もうどんなウィドマーク様も見たいので、これはやっぱりDVD入手しなければ・・・。「あの高地を取れ」もこんなかんじだったかしら?あの作品もまだDVDになっていませんね。見たい、見たい。
 今一番見たいのは「愛のトンネル」なんですけどね。ボースン様のレビューには有難くもトレーラーやらスチールの紹介があって、今はあれで我慢しています。 それからたぶん、このDVDと一緒に「RoadHouse」も入手されていると思いますが、あの作品のレビューも楽しみにしてますよ~ あの作品はよかったです!

ボースン
2008年10月26日19:51

こんばんわ!
タフな中にも、常に知性と繊細が見え隠れしてる所がいいんですよねウィドマーク様は!今回は、いつもにも増して、厳格なようでソフトな人物造形です(おなじみの高笑いなど一回もナシ)。
「あの高地を取れ」は私は未見なんです。情報やトレイラーで見ると新兵訓練所の鬼教官らしいですが。となるとタフガイぶりが売りでしょうが、まったく脳ミソなしでも、良い教官ではありえないでしょうし。DVD出てほしいですねー。

TCMデータベースで"Take the High Ground"を検索すると、動画とスチルが三件ヒットしますのでリンク書いときますね(Richard Widmarkで検索すると更に色々…)。

http://www.tcmdb.com/search.jsp?methodName=allwwwSearch&keyword=Take+the+High+Ground&Go.x=15&Go.y=8

ついでに本文中に、フロッグメンのトレイラーのYouTubeアドレスも追加しておきました。もうご存じかもしれませんが…。

Road Houseも、見たら必ず日記に書きますよー。でも連日で見るのはもったいないので(笑)、少々お待ちくださいね。m(__)m

nophoto
なにわすずめ
2008年10月26日23:16

情報いっぱい有難ありがとうございます。さっそく見ましたよ!なんて充実してるんでしょうね、このサイト。なんかよくよく見ていると、今年の夏にウィドマーク様の特集上映(?)やっていたんではないですか。「蜘蛛の巣」なんてめったに見られないものまで。逃した魚は大きかったわ、ううう・・・。

ボースン
2008年10月27日17:07

そうなんですよ、TCMって凄いんですよね!でも、日本在住な私には、指をくわえて見ているしか…で…。
更によーくよーく探すと“TCM Asia”なんてリンクがあって、そちらの予定表には“TCM Japan”なんて枠まであるけど、それっていったいどうすりゃ見れるの…いったい誰が見ているの…と、謎は深まるばかりです。スカパーのリストにも出てこないし。でも英作文してメール問い合わせをする度胸はまだありません。どうせ字幕ないような予感がするから(笑)

昔の映画でもちゃんと需要があって専用ケーブルテレビがあるって、欧米は羨ましいですねホントに。

nophoto
なにわすずめ
2010年2月15日2:14

ようやく見ました!!時期的に、海が舞台の本作は寒かったですが(笑)、ウィドマーク様の活躍は見ものでした。地味な作品ですが、めったに見られないウィドマーク様の海パン姿、いまいちなウエットスーツ、大変貴重な画像多しでした。(何を見てるんだ)
しかし、地味ながら、きめ細かい海軍の仕事ぶりがけっこう丁寧に映されていて、大変興味深く見ました。海中の兵士を拾っていく場面とか、少なからず、戦闘以前に、相当な訓練が要るだろうなと感じさせる場面が多かったです。
この作品の特徴は、キケンな任務でも、結構、淡々と描かれてることですよね。なので、なおさら、画面に集中できました。
ウィドマーク様は、決してスーパーヒーローではなく、相変わらず、怪我したり、日本兵と格闘の末、傷ついたりと、人間的な役どころですが、彼にはそれが似合いますね。苦しそうなときの演技がやっぱり上手いです(笑)
ゲイリー・メリル、ダナ・アンドリュースは安定感のある演技でしたね(なので、おもしろくはないのですが・・・爆)
それにしても、日本兵の字幕「Domo Arigato」とそのまま出ていたので、これは、もはや万国共通後なんでしょうか(笑)

ボースン
2010年2月15日9:36

この季節では、寒かったでしょう~!(笑)
地味な映画ですし、みどころはやっぱりウィドマーク様の若さ(相対的に)、かな。
これはじめて見た時は、「八甲田山死の彷徨」「戦艦デファイアント号の反乱」など、軍隊と規律やリーダーシップについてキビシめの小説や映画を同月内に続けて見たあとの観賞だったので、部下たちがアホに見えて仕方がありませんでした。いや、今でもアホだと思うけど(特に前半)…アメリカンですよねえ。

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