戦艦デファイアント号の反乱
1962年、ルイス・ギルバート監督作品。イギリス映画。

今日、英国密林から届いたDVDの一枚♪
一応大昔にTV放映で見たものだけど、ちょっと映してみたら止まらなくなってしまった。
さすがですデファイアント号。買ってよかった…

ナポレオン戦争時代の帆船=英国海軍ドラマ。このジャンルは英国では小説がたくさん出ているのだけれど、映画として骨のある出来の作品は限られている。代表格のホーンブロワー・シリーズも、ハリウッド製作分は(グレゴリー・ペックの「艦長ホレーショ」)華やかで楽しい出来ではあるのだが、リアルな英国っぽさという点は僅かに不満が残った。
日本でホーンブロワー・シリーズを映画好きに知らしめたのは、むしろ1998年スタートのBBCのTVドラマだろう。また、2003年の「マスター・アンド・コマンダー」も、リアルな帆船時代の再現が感涙ものであった(こちらはオーブリー・シリーズが原作)。

つまり10年前までは、リアルな英国帆船海軍の描写が味わえる映画というのは、この「デファイアント号の反乱」しかなかったと言っても過言ではない。
今見直しても、改めてこの映画の格調と、こまやかな描写にはシビれる(リアリズム勝負では「マスター・アンド・コマンダー」には一歩譲るだろうが、時代が違う。技術力が違う!)。


18世紀後半の帆走軍艦。海に出て、しかも艦隊から外れて独立航行となれば、全くの孤独な存在だ。陸地や他の艦と連絡を取るすべなどない、数百人の大所帯からなる密室。
それゆえに、階級制度の国イギリスならずとも、鉄の軍規と命令系統が要求される。だが、権威をふりかざし下を圧迫しすぎれば内部崩壊が起こるのも当然。

デファイアント号の艦長(アレック・ギネス)は人間的な、立派な人物だ。新しい副長(ダーク・ボガード)に悪評があると知っても、「自分で判断したいので」とあえて聞こうとしない。が、この副長(コネをかさにきて独断専行と鞭打ちが大好き)は、艦長と衝突し退けられると、なんと部下を使って、士官候補生として乗り組んでいた艦長の息子(まだローティーン)をいじめ抜くのである。息子を特別扱いするわけにはいかない。しかし、これでは下手すると息子は殺されかねない、と悟る場面が怖い…。さすがの艦長も一旦副長に対する手を緩める(勿論反撃のチャンスを待ちながらだが)。組織・集団のなかで「指導」と偽装したイジメの恐ろしさが胸に迫ります。

一方、この時期英国では実際に、劣悪な待遇改善を求める水夫たちの大規模な反乱が起こるのだが、それと同調してデファイアント号の水夫たちも、水面下で動いていた。副長の横暴は水夫たちの恨みを必要以上にかきたてて、慎重に確実に待遇改善要求を通してもらいたいリーダー(アンソニー・クェィル)はむしろ暴発寸前の仲間たちに苦慮するほど。
そして当然、フランス艦との戦闘も控えている。

戦時下、独航中の帆船という特殊事情のなか、二転三転する集団の力学が重奏的におりなすサスペンス。
そして、相容れない筈の、だがどちらも悪くない、艦長と反乱水夫たちの運命は…。

このジャンル独自の「お約束」をきちんと踏まえているからこそ、帆船小説に縁のない人には逆に、わかりにくい部分もあることでしょう。しかし帆船小説好きには宝物。
ありがとうルイス・ギルバート監督。
007なんかどうでもいいけど、この映画は宝物だよ~。
ちなみに、プロデューサーがジョン・ブラボーンなのにも気づいてびっくり。「オリエント急行殺人事件」や「ピーターラビットと仲間たち/ザ・バレエ」の人じゃないか。さすがだな~。

親サイト内にも以前書いた感想文があります。興味のあるかたはどうぞ。
(http://homepage3.nifty.com/Boatswain/door/defiant.html)


英国Amazonの商品ページは、

http://www.amazon.co.uk/H-M-S-Defiant-Alec-Guinness/dp/B00005U0JV/ref=pd_bxgy_d_h__img_a

えー、念のため。基本的に、海外盤DVDはリージョンフリー機がないと見れませんので。ただし、英国などヨーロッパ盤(リージョン2)はTVに映すのは無理でもPCでならそのまま見れます。コレは英国盤♪

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