仏果を得ず

2008年10月19日 読書
三浦しをん著。

文楽に打ち込むイマドキ青年の物語。
面白いよ面白いよときいていて、確かに面白いんだけど、ちょっと主人公キャラに「頭で動いている」感がなくもないのが惜しい。おなじ古典芸能青年モノ(?)である田中啓文の笑酔亭梅寿シリーズの破天荒な人間臭さにくらべるとね…。梅寿師匠のムチャクチャぶりはちょっとマネできないものがあるしなあ(お笑い…古典落語とはいえ)。

ただし、これまで縁のなかった、文楽というモノを一回見てみたいなあ、という気にさせてくれるパワーは確かにある。頭で理解しないと動かないみたいな主人公のおかげで、この小説は文楽の有名ネタの解説・入門書としては素晴らしく楽しく読めるものになっている。
作者の文楽への思い入れがズンと伝わってくる。

…ただまあ…。文楽への思い入れが、主人公そのものより印象的というのは、手術は成功したが、患者は死んだ、のクチになってしまうのではあるまいか?
主人公も、イイ子なんだけどねえ。イイ子すぎて、これで28歳?とかこれで元ヤンキー?とか、なんか設定に納得しきれないものがあるんだなあ(梅寿シリーズの竜二も元ヤンキーだった…設定がかぶると余計に不利である)。
イイ子ならイイ子でいっそ徹底させて国宝級のオクテ君にしときゃよかったのに(苦笑)

ただ、周囲の兄弟弟子たちはそれぞれによかった。主人公の相方、兎一郎の意外なツッコミ上手や迷セリフの数々など、関西弁連中の中で標準語というのが余計にクールで効いてた(笑)
梅寿読んでいなかったらもっと感心していたかも?面白く読めるのは確かだ。
★3にしたけど実際は3.5はあるだろうな。

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