1934年、エルンスト・ルビッチ監督作品。モノクロ。

レハール作曲のオペレッタ「メリイ・ウィドウ」は元々好きだった。
甘々すぎて切なさとほのかな頽廃すらにじむワルツと、素敵に調子のよい「女、女、女のマーチ」や「マキシムの歌」。マキシムの歌なんかドイツ語歌詞で歌えちゃうよ、もう。ダァ・ギィ・イッヒ・ツゥ・マキシーム♪ドート・ビン・イッヒ・ゼア・インチーム♪(訛りまくり!)

おまけに監督は艶笑喜劇の帝王ルビッチだ。国一番のプレイボーイ・ダニロ伯爵(モーリス・シュヴァリエ)の手練手管が面白く描かれていないわけがない…

ただし、元々のオペレッタとは相当ストーリーは変わっていた。
なまじオペレッタを知ってる人は、全く別物と思って見るべし。

ヨーロッパの極小国マーショヴィア(勿論架空)きってのプレイボーイは、近衛大尉のダニロ。村娘から女王陛下まで、彼の勇名を知らぬ女性や憧れない女性は滅多といない。今日も今日とて黒いヴェールに半ば顔を隠した美しい未亡人の、ベランダに強引に侵入して口説きをかける。
根が真面目な未亡人ソニア(ジャネット・マクドナルド)ははねつけるが、遠ざかっていたロマンスの香りに内心揺れる。ところが恋多き男ダニロはあっさり引き下がってそれっきり…なんだか悔しい気分になったソニアは気晴らしを求めてパリへと発つ。
ところが、ソニアが他国人と再婚して財産が国外流出したら、国自体が破産しかねない(極小国だから)。心配した王と大使は、そんな事態を防ごうと「マーショヴィアで一番の色男」をパリへ派遣することに。当然白羽の矢が立つのはダニロ。

が、任務そっちのけでキャバレー「マキシム」へ出かける彼を、たまたま見かけたソニアは悪戯心を起こし、新しいグリゼット(踊り子)の振りをして近づく。ダニロはソニアに夢中になるが、一夜の遊びでなく真剣な恋こそ欲しいと思う彼女は、結局彼を振り切って逃げだしてしまう。翌日、大使館のパーティで正式にソニアに引き合わされたダニロは呆然…

原作のオペレッタでは、莫大な財産の存在が、相愛の恋人たちの邪魔をするのだが(財産目当てと思われたくない男と財産のせいで男の愛を信じきれない女の意地張り合いドラマだ)、映画ではむしろ、遊びの恋か永遠の愛か、で、男と女の駆け引きが繰り広げられる。

…いかにもルビッチだなあ
おバカな王と大使のムチャな「陰謀」に、腹を立てつつも結局ノってしまうダニロとソニア。いいじゃないの♪幸せならば…ですね。
ミュージカル仕立てなのでかなりギャグも多めです。
マキシムのテーブルについた彼と彼女の、おすまし顔でバストショット固定のまま、「…手を離して」「蹴るのはやめてくれないか」「私の靴、返してよ!」のあたりなど、あーもうやってくれるね、です。画面の外テーブル下でナニが進行してるのか。間接話法が逆にエロくて可笑しい。何でもそのまま映せばいってもんじゃないですね。

シュヴァリエの本当に若い時期の映画は初めて見たけど、期待通りに小粋でカワイイです。たいして美男じゃないけど(フランス男は美しくなくて普通だね)、とにかく愛敬があって憎めない。マキシムに繰り出して女の子に埋もれつつ踊りまくるところとかカワイイ!男も愛敬、なんですよね。
マクドナルドのソプラノも、有名なアリア「ヴィリアの歌」など聞きどころたっぷり。
楽しかったです~☆

話を戻すと、原作オペレッタはウィーン・フォルクスオパーの舞台(TV放映)を見て好きになったのでしたが、この時のダニロ役がペーター・ミニッヒという人。なんだか実に、ウィーン製シュヴァリエとでもいうような笑顔のカワイイ小粋なオジサマで、即ファンになったのでした。
「ミスター・フォルクスオパー」なんてCDも出してるようですが、やー、ホントに男は愛敬で…

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