ワーロック(1959年)
エドワード・ドミトリク監督作品。リチャード・ウィドマーク、ヘンリー・フォンダ、アンソニー・クインと個性派名優揃い踏み。

米国版DVDで鑑賞。英語字幕しかないけど…まあなんとか…
かなり昔にVHS借りてみたきりだったと思うが、昔受けた印象ともほぼ変わらなかった。うん。

近場の牧場から悪のカウボーイ軍団が訪れては暴れ回る西部の町・ワーロック。
繰り返される狼藉にウンザリした町民は、著名なガンマン(と相棒の賭博師兼酒場経営者)を雇う。一方、牧場で働くカウボーイたちの中にも、悪事に嫌気がさして正しく生きたいと、ひとり町へ残った男がいた…

カネで買う力による平和とは、理想を追えば追うほど虚弱にうつる正義とは。
ひねった人間ドラマと社会風刺の要素が、一筋縄でいかない西部劇を作り上げている。緊迫した展開に引き込まれる。特に後半は目が離せない!…が、素直に面白いと言い切れるかどうかは微妙かな〜(笑)

凄腕ガンマン・ブレイズデル役にフォンダ、これはもーどうしようもなく強そう。物静かだけど凄味が…さすがとしか。
彼に対してちょっと歪んだ妄執を見せる相棒クインもハマリ役。銃を取れば無敵のコンビなのだが、変化への予感がやがてクインを狂わせる。そして、倒れたクインの姿に、彼の狂気が乗り移ったかのような乱れをみせるフォンダがまた何とも…(クインをお姫様だっこするフォンダはそのスジの方には必見?…いやぁ、フォンダってちょっと見の印象よりよっぽど大男なんだよね…)

そしてずっとずっとずっと、悩ましい表情の抜けない「正義の側へ寝返った男」ギャノンが御贔屓ウィドマーク(トップ・ビリング)。
正直フォンダの方が目立つのだが、ここは誠実に抑えて演技すればするだけ、最初から損な役回りなのは仕方がないだろう。
だってギャノンは「普通の男」なんだから。
だいたい、ブレイズデルと比べて実力がどうこうという以前に、かつての悪仲間に利き手を傷つけられて、格好よく勝つなんて展開はハナから封じられているのである。普通の男にすぎないのに、どんなに勝ち目がなくても「基本はあくまでも説得で」とスジを通すことにこだわるのは、悪い仲間に引きずられて犯してしまった昔の罪への贖罪か、悪の道から救い出しきれなかった弟への思いか。泣かせます。
ちょっと崩れたカンジの、ブレイズデル達に「復讐を誓う女」ドロシー・マローンがあっという間に彼を慕う「ただの女」になってしまうという展開も無理ないか。

…愚直なまでの彼の行動は町の人々の心を動かすけれど、ブレイズデルとの直接対決はさすがにもう、「みんなで力を合わせて」なんてレベルを超えている。そんな、痛ましいような愚直さを、本来の“控え目な体格”(笑)を生かして、一種の弱々しさを漂わせつつ演じるウィドマークは、やっぱり真面目だ…。
(むしろ、あの体格で何故タフガイ役があんなにいつも上手いのか、とか思うべきか)

とはいえ、ミーハーとしての私が一番見たいのは、やっぱりタフでカッコイイヒーロー役なので、ホント「六番目の男」とか「太陽に向って走れ」とかを早くDVD化して欲しいよーというのが、最終的な感想でした(笑)
英語字幕しかなくても我慢するから…

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コメント

nophoto
なにわすずめ
2009年4月20日23:06

今頃ここにコメント入れるのもなんか時期はずれで申し訳ないのですが、たった今何十年ぶりかで、きれいな画像で見終わったところですので(BSで)一言。
これは、ファンとしては、あまりにも消化不良でした。気の毒なぐらい演技抑え気味で、彼の魅力が生かされてません!しかし、根がまじめな彼らしく、役に徹してましたね。手を傷つけられるシーンは、うまいです(こういうシーンは、見たいような見たくないような・・・)ホンマ、痛そう・・・

せっかく活躍したいところを、ヘンリー・フォンダにかなり封じられてましたしね。一時的に牢にいれられたり。あー、もったいない

トップビリングは、ウィドマーク様ですが、なんだかんだいって、ヘンリーフォンダとアンソニー・クインの妙な友情(愛情?)関係が際立ってましたね。
ホント、あのお姫様だっこはちょっと・・・。

うーん・・・これは、DVD買わなくてもいいかな・・・字幕あるし。
米版DVDには、何か特典ついてますか?
カラーだったので、ウィドマーク様のオグシがひときわきれいでした。"^_^"(スーツに着替えて、ドロシー・マローンのおうちでお食事する場面)

ボースン
2009年4月21日21:11

いいえ、時期などお気になさらず。コメントありがとうございます。

人物造形上「目立つ」のはやはり「最強のガンマン」かつ特殊な人間関係のオマケ付きのフォンダだし、ウィドマークファンにはちょっと悔しかったりする映画ですよね。ギャノンというキャラクターの良さというか味わいは、普通にヒーローするんじゃなくて、逃げずに立ち向かおうとする誠実さの裏に自分の弱さや足りないものを痛いほど自覚している諦念と悲哀を漂わせているところにあると思います。
が、そうなると一般的な人目を惹く「カッコよさ」からは自然と多少距離ができてしまう。「負けると分かっていても立ち向かう」というのは爽快さを生むことも多いのですが、あえてそっち方向にもっていかないのがこの映画のキモなのでしょう(好き嫌いは別にして)。母性本能はくすぐらないでもないでしょうけどね。ドロシイ・マローンを見よ!

これはこれで、なかなか難しい役だと見ていますが(主役三人の中でも最も難しいかも)、見ていてほの悲しくなるヒーロー…ちょっと困ったものです(苦笑)

それでも、おっしゃるとおり、カラー西部劇なのが嬉しい一作ですね。ふふふ。

海外盤特典はあまりなかったです。トレイラー集くらいでした。今度出る日本盤も同じみたいですね。私もこれは要らないかも…。

nophoto
オベリックス
2010年12月1日1:28

なぜかユーチューブで全編見れるので、字幕無しの英語音声ですが、20年以上振りに見てしまいました。ボースン様の日記では「面白いと言い切れるかどうかは微妙」「一番見たいのは、やっぱりタフでカッコイイヒーロー役」と、どちらかというとマイナスなご意見なので、あまり期待せずに見たのですが、私にはかなりの傑作に映りました。
前半、登場するなりうなだれてるウィドマークさんの姿は、確かにやるせないのですが、保安官になってから急に饒舌にしゃべり始めると、それなりに主人公に見えてきて(笑)、最初のクライマックスともいえる、昔の仲間との対決シーンでは、片手が怪我してるというハンデを乗り越えての辛勝に「カッチョいい~!」と心の中で叫んでしまいました。「約束したろ、フェアな対決にさせるって」とウィドマークさんを助けるドクター・マッコイもカッコ良かったです。というか、ここで映画終わってくれればいいのに、などと思ったりして。
そういえば、中学生のころ見た時も、徐々に主人公らしくなっていくウィドマークさんに魅せられていたような気がします。ホント、なぜその昔にファンとして覚醒していなかったのだろうと、不思議に思います。ファンだった記憶もないのに、通信販売でなぜかカーク・ダグラスのブロマイドを買ったりしているんですけどね。

ボースン
2010年12月1日23:20

こんばんわ、オベリックス様。
マイナス…というか、ウィドマーク様の役どころがちょっと痛ましいので、観終わったところでスカッとするのでなくちょっと複雑な余韻が残っちゃうんで、もろ手をあげて好き!と言えないんですよ。
ウィドマーク様はとても好演してると思いますが!

>というか、ここで映画終わってくれればいいのに、などと思ったりして。

まったくです!そしたらびみょーな気分にならないですむのに(笑)
要するに…身も蓋もなく言うと、"フォンダがジャマだ~"と(爆)

えーっと、フォンダも状況に流されて、気がつくと実際以上に「悪」を体現する立ち位置に立たされていくんですが、正義とか静かな暮らしへも惹かれていた本人の気持ちは、クインの行動に邪魔されてギャノンにも町の人にも十分に伝わらないんですよね。観客にだけ見える(ここ重要)。そして、その気持ちをぐっと飲み込んで、結局一人去ってゆく。
最後の決闘で、ドミトリクは映画をフォンダのものにしちゃってると思います。それがミーハーウィドマークファンの私には、ちょっと悔しいんですね。

役柄的にはやっぱ損なんですよ、ギャノン。うん。

nophoto
オベリックス
2010年12月1日23:53

こんばんわ、ボースン様。
フォンダ憎し(そこまで言ってないですか?・・・笑)は「刑事マディガン」といい、「ワーロック」といい、何かウィドマークに対して高圧的なんだよな、コンチクショー!な思いとして湧き上がってきます。
話題のクインお姫様抱っこですが、自分の記憶ではもっとはっきり、全体像が見えるように思っていたのですが、アップ気味で、それも数秒だったのが意外でした。が、何かフォンダの苦しそうな表情が「重い・・・」と言ってるようで(笑)。
フォンダとクインの感情の流れなどは日本語無しの無茶鑑賞で、よく分かりませんでした(大昔に見た記憶や、ボースン様の日記で“おおよそ”は分かりますが)ので、今月は何とか国内盤DVD購入しようと思います。

ちなみに「太陽に向かって走れ」「地獄と高潮」「コールミーマダム」「海賊映画ボックス」を注文したショップから「入荷したんで発送する」というメールを受信。ただ、12月、1月は運送繁忙期とかで、普通なら1~2週間で届くところ、もしかすると最長1ヶ月かかるのだそう。ムムム。
りあえず届いたら、まずは「地獄と高潮」の特典映像を見ますが、その後は外堀から攻めるといいますか、ジェフ・チャンドラーの海賊映画から見ようかと思いつつ。

ボースン
2010年12月2日0:15

そうそう、マディガンの時同様、邪魔なんですよねー(笑)
邪魔にならないのは「ジェットローラー・コースター」と「スウォーム」くらいですかね。ああもうどっちももはや主役じゃないような…

>話題のクインお姫様抱っこですが、

最初はフォンダとウイドマークの役は逆だったのがフォンダが「代わって」と言ったという噂を聞いていますが、最初のキャスティングだと、ウィドマーク様がクインを抱っこしてたんだろうか…

あまり考えたくない"IF"です(笑)

海外盤、はやく来るといいですね。
海外に注文すると、いつも「いつ来るかな、早いかな遅いかな凄く遅いかな~」とギャンブル的な気分になります。ある意味それだけ、届いた時の嬉しさはひとしお☆

nophoto
オベリックス
2010年12月2日14:48

えーっ!! フォンダとウィドマークの役が逆? ウィドマークさんがゲイのニュアンスがある役を演じるということには別に抵抗も何もないですけど(「ゴーストタウンの決闘」「悪の花園」など、西部劇における友情や男同士の愛憎は、いずれも深読みすればゲイ的ニュアンスがあると、何かで読みました)、ただ、いくらウィドマークさんでもクインを抱きかかえるのは無理じゃないかと。
それにしても、ホント、フォンダって・・・! 「スォーム」は未見ですが、「ジェットローラーコースター」は直接の絡みがないので安心です(笑)。
「刑事マディガン」は、暴言ですがあえて言わせていただくと、フォンダのパートが無くても物語としては成立しますからねえ。
と言いつつ、別にフォンダは嫌いな俳優ではありません。「ワーロック」でも、あの役はフォンダだからこそではないかと思います。

ボースン
2010年12月2日23:02

ゲイのニュアンスがある役を演じることには、私は少々抵抗ありますが、最近は深読みのしすぎだしと気にはしていません。いいじゃないですか「ちょっと歪んだ友情」で!(笑)
ただ「ワーロック」でそのニュアンスは、もっぱらクインの役に付属してると思いますが…。クインが演じるぶんには全然抵抗ない私(笑)

>「刑事マディガン」は、暴言ですがあえて言わせていただくと、フォンダのパートが無くても物語としては成立しますからねえ。

そうですね。原作のタイトルは「コミッショナー」で、むしろフォンダの役どころ主役らしいんですが、映画は完全にウィドマーク刑事のものです。

もちろん「ワーロック」のフォンダが上手いのは私も認めますが。かなり幅のある演技者ですよね。
最終的には、今の三人の役柄は入れ替えた所はイマイチ想像できないくらい、それぞれキッチリ演じきってるとも思います。

nophoto
オベリックス
2010年12月2日23:26

こんばんわ、ボースン様。
ゲイのキャラに抵抗はないですが、私も別に深読みはしないです。「男心に男が惚れる」ってのは日本にもありますが、そういうのも含めて何でも深読みしちゃうのはどうかと思うわけでして。「いいじゃないですか「ちょっと歪んだ友情」で!」には賛成です。
ただ、ブライアン・シンガーのようにカミングアウトしている監督さんの映画を見ると、ゲイ的なところを探してしまいますが。

ボースン
2010年12月3日20:45

そうそう、ちょっと歪んでるだけでいいんですよ(笑)

今の映画はろくに見ないので、誰と誰がカミングアウトしてるのか、実はよく知らない私でした…(^^;)

nophoto
パトマグ
2013年4月29日17:28

 子供のころ、ウィドマークを初めてテレビで見て(もちろん大塚さんの吹き替え)、ぞっこんになった作品です。見終わった後、父に名前を教えてもらいしっかり胸に刻みつけました。雑誌で彼がミネソタの生まれだと知り、行ってみたいと思ったものでした。

 明日は、フォンダとの決闘、でも右手は思うように使えないし、使えたとしても銃の腕では到底かなわないのを承知しているウィドマーク。彼が抑えに抑えてきたものを吐き出すようにドロシーマローンに抱きつくシーンに胸が痛くなったのを覚えています。

 最近、ウィドマーク作品を見まくって、久しぶりにワーロックを見ると(正直ちょっと見るのが怖かったです。)「やっぱりフォンダってうまいなー」というのが正直な気持ちです。

 子供のころは、クィンやフォンダには全然興味もなければ覚えてもいませんでした。

 あの銃をすてて去っていくラストシーン悔しいけど、ウィドマークに「まだまだ青いよ、若いよ」って言っているみたいでした。

 これがトラウマになったわけではないけど、「マディガアン」でもウィドマークはフォンダにパーティで会ったらしどろもどろでしたもんね。

「ワーロック」とは関係なく、「マディガン」のフォンダの部分はないほうがより味わい深くなったと思います。


 ところで以前、スペイン版DVDを話題にされてらっしゃいましたよね。

 私は、ジョゼフコットンが好きで彼の作品DVDを調べるとスペイン版とかドイツ版などで入手することが多々ありました。

 アメリカでは今一つの評価でも、ヨーロッパでは人気があったりするんですよね。

ウィドマークの「暗黒街の特使」もドイツだとvhsになってますものね。


ボースン
2013年4月30日0:25

フォンダにドギマギさせられる役、「ワーロック」に「マディガン」、確かに二つもありましたね。「マディガン」の警視総監はウザイけど、原作ではずっと大きい、中心的な役らしいので仕方がないかも。我慢できなきゃ「西部開拓史」を見て、フォンダもジョージ・ペパードも振り回す強気のウィドマーク様@鉄道会社を見て溜飲をさげましょう(笑)

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パトマグ
2013年5月3日20:16

 あの「西部開拓史」のセリフはすごかぅたですよね。「赤ん坊の泣き声は未来をもたらす」とかなんとか・・あの面構えもすごかった。でも目は確かに未来を見てたかも。
 ああいう役の方と仕事はしたくありませんが、ああいう憎まれ役を演じるウィドマークにはほんとしびれます。

 それから「襲われた幌馬車」「六番目の男」「ワーロック」と私はひそかに、マゾ三部作とよんでおります。西部劇に詳しくないのですが、西部劇のヒーローってああいうように、けがをしたり、縛られたりするもんなんでしょうか?

>控え目な体格
 本当に、大柄なアメリカ男優続出の戦後のハリウッドで頑張ってましたよね。大型スクリーンだとやっぱりあの体格(大きな筋肉がつきにくい)は不利なんでしょうね。その不利な点をきれの良い動きでカバーしてましたよね。セリフも動きもメリハリが効いてるんですね。画面がピシって引き締まるんですね。そこがとても魅力でした。


nophoto
さがみひいす
2013年5月5日22:07

パドマグ様

>西部劇に詳しくないのですが、西部劇のヒーローってああいうように、けがをしたり、縛られたりするもんなんでしょうか?

他もあるとは思いますが、ウィドマークの場合それを印象強く感じさせる演技力のような気がしますね。
敵役をやってもヒーローをやってもひねりが良いですよね。
確か1960年代のメンズクラブという雑誌でウィドマーク自身が「…より何かを強く考えさせる役を演じたい」みたいなことを語っていたのを読んだ記憶があります(^O^)

ボースン
2013年5月5日22:34

パトマグ様、さがみひいす様

50年代くらいから、それまでよりもハードボイルドな、あるいはニューロティックで暗い内容や演出の西部劇が増えてきたという気がします。
あのノンキ者キャラなジェームズ・スチュアートでさえ、アンソニー・マンと組んでハード系西部劇を連発していたり。

そういう緊迫したドラマに、ウィドマーク様の繊細な演技力はよく合いますね。心身ともに傷つくときの表現にたけている演技者だと思います。
うっとり☆

nophoto
パトマグ
2013年5月7日20:04

>さがみひいす様、ボースン様、西部劇に関してご教示ありがとうございます。
 ピンチに陥って苦悩する姿を見ると、私が助けてあげなきゃって気になりますよね。まー助けられるわけじゃないんですけど・・・

「六番目の男」の感想はそちらのコーナーにおじゃまいたします。

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