極楽特急

2008年7月14日 映画
1932年、エルンスト・ルビッチ監督作品。モノクロ。

高級ホテルの裏、ゴミ捨てのオッサンが数歩歩くと水辺に出る。水上にはゴンドラ(ゴミの捨て場までゴンドラ…)、どこからか聞こえるカンツォーネ。
…なるほど、ヴェニスね。

ついこないだまでサイレントの時代だったという気配はあるが、とにかく大変流れが分かり易い。ホテルで起きた盗難事件から、同じホテルの別の部屋で、お洒落な男と女の逢引場面、そしてドロボウの正体まであっと言う間(もちろん犯人が分かるまでは導入にすぎない)。そして、意気投合した紳士泥棒(ハーバート・マーシャル)と女泥棒(ミリアム・ホプキンス)は、次にはパリの女社長(ケイ・フランシス)を狙うが、秘書に化けてもぐりこんだら美人の女社長と三角関係になって…
こう書くとドタバタに思えるかもしれないけど、とても上品なコメディ。女社長にはおかしな求婚者が二人もいて、その気になればもっと笑わせることはできるんだろうけど、あえてロマンチックに力点を置いてる感じ。
前半はのんびりしているが、後半は、泥棒の正体はバレるのか、彼はどちらの女性を取るのか、の二重の引っ張りで結構身を乗り出して見てしまいました…

とにかく主役三人がみんなお洒落で魅力的。「生活の設計」でも可愛かったホプキンスはここでもキュートな泥棒娘。ハーバート・マーシャル、とびきり美男てほどでもないが「りゅうとした」という表現がピッタリの、小粋でスキのない着こなしがカッコイイ。いかにもデキる男のようでいて、そのくせ、眉毛を八の字に下げて微笑むと、ソコハカとない優雅さとロマンチックがにおいたつ(勿論、適度なうさんくささも(笑))。「白昼の決闘」とかの“昔は男前だったろーなーなお父さん”しか見たことがなかったが、うむむ、なるほど男前だわ本当に。
そして、ケイ・フランシス!彼女がまた凄く魅力的。大金持ちの綺麗な未亡人、女泥棒とは対照的に、オトナでありながらおっとりとした可愛らしさと上品な色っぽさを見せつけて圧巻。
ルビッチ・タッチとはこれか…という、ノン・アルコールでほろ酔い気分にさせてくれる芳醇なオトナのロマンチック・コメディでした。

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