オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション
2008年6月22日 映画 コメント (8)
オールスターキャストでクリスティ・ミステリーを…の先鞭をつけた作品と言ってよいだろうか。
オールスターにしておけばキャスティングから「俳優の格からいくとこのあたりが犯人だなあ」等とミステリーに非論理的に取り組んでしまうこともある程度防止できるし(笑)
予算はかかるだろうが…
1920年代を象徴するアール・デコなクレジットタイトルに始まり、ひたすらゴージャスな列車の旅に、様々な国から乗り込んでくる多彩な乗客たち。
友人の鉄道会社重役(マーティン・バルサム)のおかげで、予約もしてなかったのに寝台車に乗せてもらえた名探偵ポワロ(アルバート・フィニー)が遭遇したのは、またしても殺人事件だった…
ポワロといえば口髭と卵型のアタマと大仰な口調仕草が売り物の小柄なベルギー人。
小柄でもなんでもない上当時まだ30代だったフィニーは特殊メイクの上に体をかがめて、原作通りのビジュアルを頑張って表現している。キザというよりかなりアクの強い演技で、鼻につく人もあるだろうが、そもそも原作のポワロ自体アクの強いキャラなので仕方がないよ(笑)
それに、並みいるオールスターな容疑者たちの中で、容疑者たちの鼻面つかんで引きまわす「名探偵」を張らないといけないのだ。むしろ、十ン年ぶりに再見して、なんだ思ったほどクドくはないんじゃないかコレ、と思いましたねぇ。後ろ姿とかで本来の広い肩幅を見るたび、うーん体力要ったろうなと同情も湧く。
また古典的なミステリーは、名探偵の尋問場面が相手を変えつつ繰り返し登場する。列車内(しかも雪で一時停止中、という、ミステリー用語でいう「嵐の山荘」タイプ)という密室で、ダラけずに最後までいくのは大変だろうが、見終えてみると123分をちっとも長く感じさせない(クラシック映画好きなので、普段私が見る映画は滅多に二時間を超えることはないのである(笑))。トリック自体より被害者加害者の過去がモノをいう事件なのでそのせいもあるだろうが、冒頭の「過去の事件」紹介のテンポよさといい、大変手堅くまとまっている印象。それに早く片付けないと「うちわでオトナの解決」ができない…
最後の乾杯(=カーテンコール)に至るまで、実にスムーズな流れです。ポワロの謎解き場面は、あえて少し乱暴な口調でドライに進めるのですが、最終的な話のオチがウェットだからわざとでしょうか。
これが日本だとね、ウッカリ捜査側が犯人に感情移入して泣きながら謎解きしかねないですけどね…(丹波哲郎版「砂の器」とか)
「実は極悪人だった被害者」役リチャード・ウィドマークは早めに退場してしまうが、賑やかなローレン・バコール、オトナの英国人カップルショーン・コネリー&バネッサ・レッドグレーブ、召使役の定番ジョン・ギールグッド、今にもコワれそうな老貴婦人役ウェンディ・ヒラー(本当はそこまでのトシじゃない筈だけど役者だ〜)、アンソニー・パーキンスにマザコンぽい役って、狙ってるのか?(笑)などと、ベテラン・スターたちを見ているだけでも飽きない。イングリッド・バーグマンは最初ヒラーの演じた伯爵夫人役をオファーされたのを断り「地味でおかしなスウェーデン女性」役を演じた。アカデミー助演女優賞まで取ったのだが、英語の聞き分けられない自分には、バーグマンだけでなく俳優たちが世界各国の人間を演じている(つまり当然、訛っている)このキャスティングと演技の面白みは十分にはわかれていないのかもしれない。
そして、それにも負けないほどの存在感があるのは、音楽だ。
ピアノをあしらった華麗なオープニング、そして豪華列車を踊らせる、重厚さと華やかさを併せ持ったワルツ。列車の出発シーンにあふれる高揚感は、この音楽なしにはありえなかっただろう。
DVDの特典メニューについても大変充実しており価値あり。
6/17日記参照→http://diarynote.jp/d/13374/20080617.html
オールスターにしておけばキャスティングから「俳優の格からいくとこのあたりが犯人だなあ」等とミステリーに非論理的に取り組んでしまうこともある程度防止できるし(笑)
予算はかかるだろうが…
1920年代を象徴するアール・デコなクレジットタイトルに始まり、ひたすらゴージャスな列車の旅に、様々な国から乗り込んでくる多彩な乗客たち。
友人の鉄道会社重役(マーティン・バルサム)のおかげで、予約もしてなかったのに寝台車に乗せてもらえた名探偵ポワロ(アルバート・フィニー)が遭遇したのは、またしても殺人事件だった…
ポワロといえば口髭と卵型のアタマと大仰な口調仕草が売り物の小柄なベルギー人。
小柄でもなんでもない上当時まだ30代だったフィニーは特殊メイクの上に体をかがめて、原作通りのビジュアルを頑張って表現している。キザというよりかなりアクの強い演技で、鼻につく人もあるだろうが、そもそも原作のポワロ自体アクの強いキャラなので仕方がないよ(笑)
それに、並みいるオールスターな容疑者たちの中で、容疑者たちの鼻面つかんで引きまわす「名探偵」を張らないといけないのだ。むしろ、十ン年ぶりに再見して、なんだ思ったほどクドくはないんじゃないかコレ、と思いましたねぇ。後ろ姿とかで本来の広い肩幅を見るたび、うーん体力要ったろうなと同情も湧く。
また古典的なミステリーは、名探偵の尋問場面が相手を変えつつ繰り返し登場する。列車内(しかも雪で一時停止中、という、ミステリー用語でいう「嵐の山荘」タイプ)という密室で、ダラけずに最後までいくのは大変だろうが、見終えてみると123分をちっとも長く感じさせない(クラシック映画好きなので、普段私が見る映画は滅多に二時間を超えることはないのである(笑))。トリック自体より被害者加害者の過去がモノをいう事件なのでそのせいもあるだろうが、冒頭の「過去の事件」紹介のテンポよさといい、大変手堅くまとまっている印象。それに早く片付けないと「うちわでオトナの解決」ができない…
最後の乾杯(=カーテンコール)に至るまで、実にスムーズな流れです。ポワロの謎解き場面は、あえて少し乱暴な口調でドライに進めるのですが、最終的な話のオチがウェットだからわざとでしょうか。
これが日本だとね、ウッカリ捜査側が犯人に感情移入して泣きながら謎解きしかねないですけどね…(丹波哲郎版「砂の器」とか)
「実は極悪人だった被害者」役リチャード・ウィドマークは早めに退場してしまうが、賑やかなローレン・バコール、オトナの英国人カップルショーン・コネリー&バネッサ・レッドグレーブ、召使役の定番ジョン・ギールグッド、今にもコワれそうな老貴婦人役ウェンディ・ヒラー(本当はそこまでのトシじゃない筈だけど役者だ〜)、アンソニー・パーキンスにマザコンぽい役って、狙ってるのか?(笑)などと、ベテラン・スターたちを見ているだけでも飽きない。イングリッド・バーグマンは最初ヒラーの演じた伯爵夫人役をオファーされたのを断り「地味でおかしなスウェーデン女性」役を演じた。アカデミー助演女優賞まで取ったのだが、英語の聞き分けられない自分には、バーグマンだけでなく俳優たちが世界各国の人間を演じている(つまり当然、訛っている)このキャスティングと演技の面白みは十分にはわかれていないのかもしれない。
そして、それにも負けないほどの存在感があるのは、音楽だ。
ピアノをあしらった華麗なオープニング、そして豪華列車を踊らせる、重厚さと華やかさを併せ持ったワルツ。列車の出発シーンにあふれる高揚感は、この音楽なしにはありえなかっただろう。
DVDの特典メニューについても大変充実しており価値あり。
6/17日記参照→http://diarynote.jp/d/13374/20080617.html
コメント
私の方こそいっぱいお手数をおかけしているんですから…
ところでホントにピーターラビット買ってしまいました。あっちはさすがに興味ないですか?あればひと声お掛け下さい(笑)
ぜひとも!貸して下さいまし♪
ただ、お父さんはパイじゃありませんでしたっけ?とはいえ、実はピーターの出番は少ないんですよね、この「ピーター・ラビットと仲間たち」。ピーターがキャベツをむしりながら踊るシーンなどもありますが、バレエにはまとめにくかったのかも。ねずみやリスや、アヒルやキツネやカエルや…ビアトリクス・ポター・キャラのオンパレードって感じです。
楽しみにしています。
そうそう、お父さんはパイに、でした。
当時のパンフレットを見ると、監督のシドニールメットを中心に男優女優さんたちの集合写真が載っています。でもそこにはウィドマークの姿はありませんでした。
犯人だから、仕方ないか。
特典映像見ると、ウィドマークは喜んでこの役を引き受けたようですね。名だたる悪役スターたちの中から選ばれたONLY ONEですから名誉なことですかね。
列車がトンネルに入って、出たとたんに席から消えていたあたり、ちょっとフシギな人ですが(笑)