ロベール・アンリコ監督、1971年作品。
この日記には珍しくフランス映画です(笑)
DVDは廃盤で画像出ない…。
多分、この監督、日本では「冒険者たち」(アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス)が一番有名なはず。独特のロマンティシズムが持ち味ですが、この「ラムの大通り」も、大人のおとぎ話とも言うべき、不思議な魅力を持つ作品。
リアリズム尊重派には特にオススメはしませんが。全編かなりコメディ色は強いです。
沿岸警備隊はキーストン・コップみたいだし(車で来る時は特に)、恋のライバルはとてつもなく英国的趣味人というか大変人で、帆船とか海賊とか大好きらしくヨットの上は常にコスプレ状態(うらやましい…)。ハリウッド仲間は「ドッキリ」が大好きみたいだし。殴り合いとなるとすぐ西部劇のようにどんどん規模が広がってゆくし。舞台がカリブ海の島々ゆえ、カラフルな音楽と景色が溶け合ってスグお祭り状態になるし。
時は1925年、禁酒法の時代。当然、キューバやハバナなどカリブ海沿岸の街から、酒壜満載の密輸船が米国めざしてちょこちょこ往来しておりました(命がけで)。コルニー船長(リノ・ヴァンチュラ)もそんな密輸業者のひとり。沿岸警備艇に船を沈められた彼は、「暗闇撃ち」というとんでもない賭けの的役に志願します。
暗闇撃ちというのは、小屋の中、電気を消して10数えた後、参加者が銃を一発撃つ!的になった者は生き残るたびに大金を得る(撃つ人数が多いほど金額は跳ね上がる)。一定の距離は置くし、暗い間にこそっと動いたり姿勢を変えたりはできるのだが、無茶です本当(^^;)
これを十回も頑張って、傷だらけになって新しい船をゲットした豪胆な船長。パリッと身なりを整えれば結構モテモテ状態ですが、ふと入ってみた映画館で主演女優リンダ(ブリジット・バルドー)の魅力にボウッとなります。勿論無声映画、念のため。そして、ヒロインたちが危機一髪!の瞬間、映写室が火を吹いて(昔のフィルムって燃えやすかったんですよね)、お客は一斉に映画館から避難!コルニーは船に戻ると、即出港を命じます。映画館のある別の島へ行って一刻も早く続きを見るため。先日請け負った仕事のことは忘れてる様子(爆)
彼女の映画を追いかけ見まくり、自室には切り抜きを貼りまくり。リンダの大ファンと化した彼が、偶然ハバナでバカンス中のリンダ本人に出会ってしまい…。はじめは面白半分、コルニーを弄んでいたリンダも、やがて無骨だが本物の男らしさを持つ彼に惹かれるようになる。密輸航海にまで同行し、銃撃戦の中でも大活躍。ところが…?
***ネタバレ***
二人の恋は順風満帆と思いきや、「美女が乗っているから」と、沿岸警備艇から逃げるのを助けてくれた酔狂なヨットの主、英国貴族ハモンド侯爵(クライブ・レヴィル)がリンダ争奪戦に立候補します。なんとリンダは「だって“侯爵夫人”よ〜♪」とアッサリ侯爵のプロポーズを受け、そのくせまたコルニーの所へひょいと戻ってきたり…決闘だ!といきまく侯爵のせいで、コルニーまで、とばっちりで逮捕の憂き目に!
実はその間リンダの方は、ハリウッド仲間に拉致(笑)されて、さあまた映画を作ろうよ、あらイイわね〜☆とかやっているのである。ははは…
数年後、禁酒法は廃止され、コルニーら密輸業者はすべて釈放される。数年ぶりに映画館に入ったコルニーの見たものは、トーキー映画の中で「愛の歓び」を歌うリンダの姿…。幕が下り、明るくなった映画館の中、コルニーはいつまでもいつまでも、微笑みながら椅子にもたれているのだった。
***ネタバレ終了***
ラブコメとしては破格なラスト。
なのに、どんな恋愛成就シーンとも違った不思議な満足と感動が胸にこみあげる。
多分、見たことがない人にはピンとこないことでしょう(私の文章力では…)。
でも、なぜか「愛の歓び」が銀幕に流れると、泣けるんですよ私!!
昔TVで見たときも泣けた。
断片として語られるぶん、逆に映画中映画のロマンがよりピュアに、あるいはコルニーの純情(恋人として以上にファンとしての純情?)が、なんだかドドーンと沁みるのか。
自分でもちょっと分析し辛いのですが、以前どこかでコレは「映画」と「映画ファン」との恋物語なのだ、との解釈を見かけました。
なるほどね…
何度も翻弄され、ようやくわかった気になり、完璧な一致を見、突然おいていかれ、けれどもやはり足を運ぶと最高に素敵な作品に出会うこともあって、そんな時は語り尽くせぬような至福の瞬間…
ありえるかもソレ。
リノ・ヴァンチュラ、いかつい顔とずんぐりごつい体で普段は怖いギャング役でブイブイ言わせていますが、こうしたコミカル⇔ペーソスと幅のある役もイイ感じで演じてる。
フランス人てブコツなオッサンにロマンチックさせるのが好きだなあ…
そしてリンダ、ワガママで気まぐれでどこまでも自由な銀幕の妖精を、ちょっと年食ったぶん貫録が増して説得力出たブリジット・バルドーが好演。
結婚式で彼女が突然歌いだす大変印象的な場面がある。“海が恋人”な船乗りへの恋歌なので、「本当はコルニーが本命よ」という風にもきこえるのですが(コルニーもそう思ったかも)、あれは「私はどこまでも自由」と歌っていたのでしょうね。ほっそりした手足に20年代ファッションも凄ーく似合ってて良かった。
クライブ・レヴィルは怪演とでもいうか…笑かしてくれます。
そして特筆すべきは音楽!これも大きい!
「冒険者たち」等で何度も監督とコンビ組んでる、フランソワ・ド・ルーベがここでも素晴らしい音楽をモノしてます。この人の映画音楽は、個性的かつ繊細で、そのくせ意外と耳に残りやすいというフシギな魅力あり。重厚なオーケストレーションより民俗音楽とかポピュラーミュージックのノリ主体ですが、アンリコ監督のロマンティシズムと凄く相性がいいのでしょうね。
これも後日、本サイトでもとりあげ直したいと思っています…
(実は何度もオークションで競り負け、買いそびれていたDVD。即決分が出品されたのをやっと落しました。隠れたファンが多いのね)
<追記>
本サイトにも記事アップ済。あと、絶版ですがここにもAmazonリンク追加…
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0002ZEVEO?ie=UTF8&tag=boatswascot-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=B0002ZEVEO
この日記には珍しくフランス映画です(笑)
DVDは廃盤で画像出ない…。
多分、この監督、日本では「冒険者たち」(アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス)が一番有名なはず。独特のロマンティシズムが持ち味ですが、この「ラムの大通り」も、大人のおとぎ話とも言うべき、不思議な魅力を持つ作品。
リアリズム尊重派には特にオススメはしませんが。全編かなりコメディ色は強いです。
沿岸警備隊はキーストン・コップみたいだし(車で来る時は特に)、恋のライバルはとてつもなく英国的趣味人というか大変人で、帆船とか海賊とか大好きらしくヨットの上は常にコスプレ状態(うらやましい…)。ハリウッド仲間は「ドッキリ」が大好きみたいだし。殴り合いとなるとすぐ西部劇のようにどんどん規模が広がってゆくし。舞台がカリブ海の島々ゆえ、カラフルな音楽と景色が溶け合ってスグお祭り状態になるし。
時は1925年、禁酒法の時代。当然、キューバやハバナなどカリブ海沿岸の街から、酒壜満載の密輸船が米国めざしてちょこちょこ往来しておりました(命がけで)。コルニー船長(リノ・ヴァンチュラ)もそんな密輸業者のひとり。沿岸警備艇に船を沈められた彼は、「暗闇撃ち」というとんでもない賭けの的役に志願します。
暗闇撃ちというのは、小屋の中、電気を消して10数えた後、参加者が銃を一発撃つ!的になった者は生き残るたびに大金を得る(撃つ人数が多いほど金額は跳ね上がる)。一定の距離は置くし、暗い間にこそっと動いたり姿勢を変えたりはできるのだが、無茶です本当(^^;)
これを十回も頑張って、傷だらけになって新しい船をゲットした豪胆な船長。パリッと身なりを整えれば結構モテモテ状態ですが、ふと入ってみた映画館で主演女優リンダ(ブリジット・バルドー)の魅力にボウッとなります。勿論無声映画、念のため。そして、ヒロインたちが危機一髪!の瞬間、映写室が火を吹いて(昔のフィルムって燃えやすかったんですよね)、お客は一斉に映画館から避難!コルニーは船に戻ると、即出港を命じます。映画館のある別の島へ行って一刻も早く続きを見るため。先日請け負った仕事のことは忘れてる様子(爆)
彼女の映画を追いかけ見まくり、自室には切り抜きを貼りまくり。リンダの大ファンと化した彼が、偶然ハバナでバカンス中のリンダ本人に出会ってしまい…。はじめは面白半分、コルニーを弄んでいたリンダも、やがて無骨だが本物の男らしさを持つ彼に惹かれるようになる。密輸航海にまで同行し、銃撃戦の中でも大活躍。ところが…?
***ネタバレ***
二人の恋は順風満帆と思いきや、「美女が乗っているから」と、沿岸警備艇から逃げるのを助けてくれた酔狂なヨットの主、英国貴族ハモンド侯爵(クライブ・レヴィル)がリンダ争奪戦に立候補します。なんとリンダは「だって“侯爵夫人”よ〜♪」とアッサリ侯爵のプロポーズを受け、そのくせまたコルニーの所へひょいと戻ってきたり…決闘だ!といきまく侯爵のせいで、コルニーまで、とばっちりで逮捕の憂き目に!
実はその間リンダの方は、ハリウッド仲間に拉致(笑)されて、さあまた映画を作ろうよ、あらイイわね〜☆とかやっているのである。ははは…
数年後、禁酒法は廃止され、コルニーら密輸業者はすべて釈放される。数年ぶりに映画館に入ったコルニーの見たものは、トーキー映画の中で「愛の歓び」を歌うリンダの姿…。幕が下り、明るくなった映画館の中、コルニーはいつまでもいつまでも、微笑みながら椅子にもたれているのだった。
***ネタバレ終了***
ラブコメとしては破格なラスト。
なのに、どんな恋愛成就シーンとも違った不思議な満足と感動が胸にこみあげる。
多分、見たことがない人にはピンとこないことでしょう(私の文章力では…)。
でも、なぜか「愛の歓び」が銀幕に流れると、泣けるんですよ私!!
昔TVで見たときも泣けた。
断片として語られるぶん、逆に映画中映画のロマンがよりピュアに、あるいはコルニーの純情(恋人として以上にファンとしての純情?)が、なんだかドドーンと沁みるのか。
自分でもちょっと分析し辛いのですが、以前どこかでコレは「映画」と「映画ファン」との恋物語なのだ、との解釈を見かけました。
なるほどね…
何度も翻弄され、ようやくわかった気になり、完璧な一致を見、突然おいていかれ、けれどもやはり足を運ぶと最高に素敵な作品に出会うこともあって、そんな時は語り尽くせぬような至福の瞬間…
ありえるかもソレ。
リノ・ヴァンチュラ、いかつい顔とずんぐりごつい体で普段は怖いギャング役でブイブイ言わせていますが、こうしたコミカル⇔ペーソスと幅のある役もイイ感じで演じてる。
フランス人てブコツなオッサンにロマンチックさせるのが好きだなあ…
そしてリンダ、ワガママで気まぐれでどこまでも自由な銀幕の妖精を、ちょっと年食ったぶん貫録が増して説得力出たブリジット・バルドーが好演。
結婚式で彼女が突然歌いだす大変印象的な場面がある。“海が恋人”な船乗りへの恋歌なので、「本当はコルニーが本命よ」という風にもきこえるのですが(コルニーもそう思ったかも)、あれは「私はどこまでも自由」と歌っていたのでしょうね。ほっそりした手足に20年代ファッションも凄ーく似合ってて良かった。
クライブ・レヴィルは怪演とでもいうか…笑かしてくれます。
そして特筆すべきは音楽!これも大きい!
「冒険者たち」等で何度も監督とコンビ組んでる、フランソワ・ド・ルーベがここでも素晴らしい音楽をモノしてます。この人の映画音楽は、個性的かつ繊細で、そのくせ意外と耳に残りやすいというフシギな魅力あり。重厚なオーケストレーションより民俗音楽とかポピュラーミュージックのノリ主体ですが、アンリコ監督のロマンティシズムと凄く相性がいいのでしょうね。
これも後日、本サイトでもとりあげ直したいと思っています…
(実は何度もオークションで競り負け、買いそびれていたDVD。即決分が出品されたのをやっと落しました。隠れたファンが多いのね)
<追記>
本サイトにも記事アップ済。あと、絶版ですがここにもAmazonリンク追加…
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コメント
面白かったです。純情無骨男リノ・ヴァンチュラが良いですねえ。バルドーにパーティに呼ばれ、何か場違いにちょこんと座るヴァンチュラがオカシかったです。「イタリア系フラ公」とか言われて、相手を殴るお約束も楽しかったです。それと、バルドーに拳銃を乱射されても、全く動ぜずのヴァンチュラがツボでした。
脇役では、ボースンさんお気に入りの侯爵さんがやはりいい味出してますねえ。それにバルドーの無声映画の相手役のヒゲの人は、最初写った時は“典型的なスケベ顔”に見えたのですが、歌ったり踊ったりするシーンでは意外と歌や踊りがうまくて、ちょっとびっくりでした。
ヴァンチュラ、意外に味わいに幅がある人ですよね。
重厚なばっかりのヴァンチュラは脂っこくかんじるので、「ラムの大通り」みたいにコミカルに料理されたものが好きです。
>脇役では、ボースンさんお気に入りの侯爵さんがやはりいい味出してますねえ。
侯爵さんというより、あのコスプレ帆船ライフスタイルがお気に入りです。羨ましい…!