1954年、ウォルター・ラング監督作品。

「雨に唄えば」を見て以来、ぜひもう一本、なにかドナルド・オコナーを!と思っていたのだった…のでコレ。

物語は、ある芸人一家の年代記。(モンローは脇役!)
モリー(エセル・マーマン)とテリー(ダン・デイリー)夫婦はヴォードヴィルの旅芸人。子供たちが生まれると、小さい頃から当たり前のように歌や踊りを仕込み、やがて「ドナヒュー一家」として一緒に舞台に立つ。家族仲良く舞台をつとめることこそが夫婦の夢であり幸せだ…が、人生どこにも山あり谷あり。それをひたすらアーヴィング・バーリンの名曲とショー場面の連続で語ってゆくのだ。

子どもたちは、生真面目な長男スティーブ(ジョニー・レイ)、可愛くてしっかり者の長女ケイティ(ミッツィ・ゲイナー)、そしてお調子者の末っ子ティム(ドナルド・オコナー)。
全員が成人し、「アレキサンダーズ・ラグタイム・バンド」を「ドナヒュー五人組」として舞台にかけるのが最初のクライマックスか。スイス風、スコットランド風、フレンチ風等とアレンジが楽しいナンバー。「ドナヒュー五人組」の前途は洋々、と思いきや、ある日長男が「芸人より神学校へ行って神父になりたい」と言い出して両親は大ショック。それでも、「立つ舞台が変わるだけ。神父こそ天職と思うんだ」と訴える長男を、一家はあたたかく送り出す。さよならパーティで、かつて両親の演じた「夜行列車はアラバマ行き」をケイティとティムが歌い踊るのも時の流れを感じさせてイイです。一方ティムが恋に落ちる相手が、歌手のビッキー(マリリン・モンロー)。巡業先で曲目がバッティングしたのを譲ってやったりするのだが、まもなく彼女はブロードウェイで主演のチャンスをゲット。彼女の口ききでケイティとティムも(両親と離れて)共演することに決まるものの、初主演のチャンスに必死なあまり恋人を顧みる間もないビッキーとティムは大ゲンカ。酔って事故を起こしたティムは初日に穴を開けてしまいます。

ティムの代役は母モリーが埋めたけれど、無責任さをテリーに一喝されたティムは、警察病院から失踪。なかなか見つからない末息子に、テリーもまた、あてもなく息子探しの旅に出てしまい…。

そんな中、伝統あるヒッポドローム劇場のサヨナラ公演が行われた。思い出多い劇場で、万感の思いを胸に「ショウほど素敵な商売はない」を熱唱するモリー。
「しまった、やられた…」歌の途中で既に泣かされてしまいましたよ〜(T^T)。しかしまだまだ!袖で見守るケイティとスティーブの背後から、そっと姿を現したのは…

わーん、まいりました(涙)ベタと言われてもどうにもならない。
エセル・マーマンのパワフルな歌にこちらのガードはボロボロで。さすが「ブロードウェイの女王」と称されただけのことはある。ほとんど、フツーのオバサンなのに。

久々に五人そろった一家は、思い出の曲「アレキサンダーズ・ラグタイム・バンド」を披露して華麗なるフィナーレ!けれど、あくまでも明るく華やかなエンディングで、幸せに儚さが同居しているとのがさらに感興を深いものにしているのでした。実は戦争がはじまっていて、スティーブは従軍神父としてすぐ出征が決まっているし、ティムも何と水兵服姿。次に五人が揃う時は、いつ?
けれども家族の絆と舞台への愛は、きっと永遠…

元々ミュージカル大好き、それも古典的な「芸」を楽しむタイプのが好きなのですが、これは濃かった!一家五人とも実に芸人らしい芸人で。マーマンの主題歌は圧巻。
そしてミッツィ・ゲイナー。ドラマ的には優等生で一番見せ場がないのですが、スタイルも動きも良く、どのナンバーでも凄く魅力的で、見直しました〜。昔見た「南太平洋」はそんなに良く思わなかったんだけど。ま、ロジャース=ハマースタインのミュージカルは、私は大抵もったりと感じてあまり好きじゃないから…

ドナルド・オコナーも期待通りの楽しさ。舞台上のナンバーが多いこの映画で、唯一映画ならではの工夫のあるソロ「男というものは」を貰ってて素敵でした。恋しいモンローの部屋の外で歌い踊るうち、庭の噴水の彫像(女性像)たちが命を持って追いかけてくる、ファンタジックでユーモラスなもの。しかも声は案外美声のテナーだし〜(ちょっとびっくりした)。もっとこういうのがあると更にうれしかったな。カウチに寝そべるモンローの周囲でゲイナーと跳ねまわる「レイジー」のダンスもとてもキレがよくてオシャレ。ちょっと頼りなく情けない可愛らしさがあるのですが、プロフィールを調べると芸人一家の七人兄弟の末っ子だという…この映画のキャラとあまりにかぶってるので驚いた(笑)

ダン・デイリーの芸も手堅く、存在感のあるアメリカンなお父さんぶり良かったし(出来すぎお父さんじゃなくて、普通にいいお父さん♪)。歌メインのジョニー・レイは…私はR&Bはあまり知りませんのですが(エ?)、まあいいんじゃないですか。

そして、問題は、マリリン・モンロー、ですね…
3曲も披露してくれます。いかにもな「純血芸人一家」に伍して頑張ってます。モンローの好きな人なら満足できるでしょう。
でも、昔ながらのミュージカルを見たい人には「モンローだけ異質だなあ」と…。
まあ異質なのは一応正しいのですが。ケンカした時、「芸人一家に生まれて自然に舞台に立ってた貴方には、すべて自分一人でやってきて役を貰うのに必死な私の気持ちがわからないのよ!」とティムに言う所があります。これはティムにもちょっとコタえた模様…ただ、それを言うのがモンローじゃ、現実味がちょっと、その…(^^;)
あれほど強烈なスター性を持ちながら、心を病んでプロ意識どころじゃなかったヒトだしねえ…
それに、あんなにハリのない歌声でブロードウェイの主役を張れるのかしらん。
…映画なら大丈夫だけど。色っぽいのは認めるし。

でも、モンローを差し引いても、十分に感動してしまいましたし、好きな人も一層感動できるだろうから、とにかく誰にでもオススメ(ミュージカル嫌い以外には)。なんと、即日DVDも購入してしまいました。実は、図書館で古いビデオタダで借りて見てたから、凄く画質悪かったし。それに、見たいナンバーをとばし見しやすいから、ミュージカルは最もDVD向けなジャンルなんですよね。
はぁ、やっぱり、いいミュージカルはいいなあ♪

コメント

nophoto
オショーネシー
2008年4月12日20:43

実は私、エセル・マーマンが苦手なんですよ。
あの大きい顔、ずんぐりした体、あの声…ダメなんです。
舞台じゃずいぶんと映えるんでしょうが映画向きの人じゃないと思っております。
ロジャース=ハマースタインのミュージカルが好きではないというのは同じですね。
ドナルド・オコナーは好きです。
「ハリウッドのピーターパンたち」という本があるのですが(随分古い本です。1987年発行)彼は子役から出発した人なんですね。それに本当は随分と控えめな人だったようです。最後の章のホワイトハウスのショーのシークエンスに、涙。

ボースン
ボースン
2008年4月12日22:56

いやー、エセル・マーマンのあの濃ゆさは日本人なら苦手で普通かも?この映画でも、娘と二人水兵服で歌うナンバーなどは、私もしんどいと感じました(笑)
ただ、ラストの「ショウほど…」の歌は、小細工なしに直立不動で高らかに歌いあげる、それも様々な悩みを背負いながら…というあたりが、ストンと心に響きましたね。曲そのもののパワーも大きいでしょう。アーヴィング・バーリン、大好きです。ガーシュウィンのスタイリッシュな魅力もいいですが、いい意味で庶民的な懐かしさ慕わしさをかきたてる曲がバーリンには多いと思います。「アレクサンダース…」しかり「イースター・パレード」しかり。

そして、ロジャース=ハマースタインについてまで意見が一致しましたか!嬉しいですね。

そして書籍の情報ありがとうございます。図書館でチェックしてみよう。「控え目な人」というのも納得できます。トボけた演技とダンスですが、押しつけがまさがなく、むしろ上品ですもん。
ミュージカルについても語れて、とても嬉しいです!

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