ウィドマーク訃報後まもなく半分だけ見て時間切れとなっていた(再見ですよ念のため)、「街の野獣」の後半を見てジュールス・ダッシン追悼ということにする。

原題は“Night and the City”。
夜の中でうごめく人々の野心や欲望。口先三寸で「大物」を目指す破滅型の男をリチャード・ウィドマークが熱っぽく痛ましく演じて息もつかせない。主人公は勿論のこと、誰も彼もが何かを失いつつ朝を迎えるラストは暗いとしか言いようがない筈なのだが、あがき続ける個性豊かな登場人物たちの姿に(太ったクラブの店主フランシス・F・サリヴァン、彼の手から逃れたくてたまらない女主人グーギー・ウィザース、『伝説のレスラー』スタニスラウス・ズビスコ、実はその息子でレスリング興行界のボスのハーバート・ロム、そして貧しく怪しい職業の人々、端役の端々まで)なぜかしら共感と哀しみが漂う、不思議に静かなエンディングが印象的。
卑しく醜い、けれどもそれが人生というものか…と。

(追記)また、解釈のしようで変わってくるエンディングだと思う。
恋人にも裏切られたと誤解し走りながら絶叫するウィドマーク。しかしよく見て欲しい。その直前、スッとひと呼吸、息を吸いこんでから駆けだす彼の表情を見ると、それは彼の最後の「パフォーマンス」だったようにも思える。迷惑ばかりかけてきた彼女に、あえて「もう、ダメな自分を切り捨てて、忘れて欲しい」とでもいうことなのか。少し前に「いっそ自分を密告して、賞金を受け取ってくれ」と恋人に言ってたばかりだったし。ただ、彼としては精一杯の裏返しの誠意かもしれないが、それが「良い」判断だったのかどうかは疑問。その無様さ、哀しさはいやますばかりであるが…。

コメント

nophoto
オンリー・ザ・ロンリー
2008年4月6日17:11

今度はベン・ハーことチャールトン・ヘストン死す。合掌。

ボースン
ボースン
2008年4月6日22:03

なんだか映画関係の訃報が続きますね。ヘストンは全米ライフル協会でちょっとイメージ下げたけど(^^;)

nophoto
オベリックス
2011年9月16日21:57

こんばんわ。
結構前にネットオークションで落札していたのに、内容がキツイと思って見ていなかったんですが、今日、ようやく見ました。
で、やはり見てて辛かったです(笑)。ウィドマークさんのキャラクターが、本当にもう“困ったくん”でして、最初から何だか切ないですねえ。でも、ウィドマークさん自身は演じがいがあったでしょうね。
ボースン様のおっしゃる通り、周囲のキャラクターもそれぞれ味があって面白いです。特にヒロインと同じアパートに住むアダムとかいう青年は、登場していきなりスパゲティ作りに失敗してるというのが面白かったです。その割に、それからあまり物語に絡んでこなかったのがもったいないと思いました。
それと、やはりハーバート・ロム。終始ポーカーフェイスで迫力があり、おいしい役でした。あの役をウィドマークさんが演じても面白かったかも。
エンディングの解釈について、ボースン様も書いていらっしゃいましたが、私は賞金をヒロインに渡したいためのパフォーマンスだったと思いました。そんなお金をあのヒロインが受け取るとも思わないのですが、そういう発想をしちゃうハリーがまた、切ないなあと思いました。

ボースン
2011年9月16日23:23

そう、ファンには辛い映画です(笑)名作と呼ばれて間違いない作品には違いないけど。

まさに救いようのない「だめんず」なんですね。それでも切なくて可愛いところもちらりちらり、というのがさすがというか困ったもんだというか(笑)
ボロボロになりながら「あと少しだったんだ」、なんて言うところ、「まだ言うか、このアホ!」と呟きつつキュンと胸が絞られます~(爆)

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