1958年スタンリー・クレイマー監督作品。モノクロ。

雨の夜、囚人護送車が事故をおこし、その隙をついて手錠につながれた囚人二人が逃走した…。白人のジョニー(トニー・カーティス)と黒人カレン(シドニー・ポアチエ)だ。いがみあいつつも、逃げ続けるには呼吸を合わせて動くしかない二人。泥だらけになりながら森を抜け、川を越え…。

サスペンスフルな良作と聞いていたけど、スカパー録画分を何度も中断しながら見るハメになったせいもあり、中盤までは、「困った。なんでこうBLくさいのだ」と気になったりもして、なんか集中できませんでした(逝)

BGMも廃してひたすらリアリズム演出の中、色男トニー・カーティスも頑張っているんですが、色男だからいけないのか。いや、私の好みではないんですがこの人は、念の為。目元なんかアラン・ドロンばりに派手なんですけどねぇ(笑)
ポアチエの方も、私某日の日記で「なんか優等生的なのでイマイチ」とか書いたことがあり、たまには優等生的でないのを見てやらないと不公平かなあという気がしてきたのが、この映画に手を出したキッカケでした。
自分にとって興味のない同士が主演する映画というワケで。

また、字幕がどのくらい会話のニュアンスを伝えきっているのかもちょっと難しいところもありました。人種問題もからんでいるし、アメリカ人があの映画のあの演出や会話を見て「わかる」だけのものが、簡単に私に伝わりきったかどうか疑問です。

とはいえ、最後の三分の一くらいまで来て、子連れ未亡人宅に転がり込んだあたりからは素直に「良かった」ですが。犯罪者どうしのトゲトゲしい関係、偏見をぶつけあいつつの道行だったけれど、何十時間も苦難を共にするうち、ぽつりぽつりとお互いの過去や気持ちを語り合うようになっていた二人。気が付くといつしか互いが大事な「仲間」になってしまっていて…。カレンを犠牲にして助かるなんて我慢できない、と飛び出すジョニー。弱っているジョニーも共に乗せようとこだわらなかったら自分だけは汽車で逃げ切れていたかもしれないカレン…。定石かしれませんが、いいものですね、やはり。

そして最後、追手の接近を知りつつ歌いだすポアチエは、流石に良かったです。ええ。

…でもやっぱり、あまり犯罪者らしくなくて割と「いい子」だったよなあポアチエ。まあ、根っからの犯罪者というより、社会の偏見にさらされ貧乏と不幸から人に暴力をふるったぽい設定なようですが。ホントのワルの邪悪な闇とかの表現はなかったですね。「野のユリ」とか見たほうがいいのでしょうか。あれは無責任男と聞いたような気もします(いい加減な記憶だけど)。

トニー・カーティスも、偏見をもっと強烈に表明するのかと思ったら期待?した程ではなかったし(普通の市民のほうが酷い!)、そんなに悪人(犯罪者)としてもディープな二人ではなかったのね、という感じでもありました。
あまり長すぎないのも○(97分)。

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コメント

nophoto
オンリー・ザ・ロンリー
2008年3月20日4:16

製作された時代は口でこそ人種差別はと欺瞞的に人は言う。今でこそ黒人スターはひとつも珍しくない。が、あの時代に黒人を主役にした製作者は実に偉い!(笑)。「ジャイアンツ」でロック・ハドソンとエリザベス・テーラーが黒人と結婚した息子夫婦とレストランに入り店主にハドソンがこてんぱんにやられる・・。「当店は客を選ぶ権利がある」。と同様に考えさせられる台詞が「手錠の」にもあったが残念失念。確か音楽はなくポワチエが唄いましたよね?。もし、トニー・カーチスでなくウイドマークがやってたら・・。復習鬼、これ、長い、駆逐艦、まだありましたかね?。

ボースン
ボースン
2008年3月20日9:17

全くです。黒人の「名優」はいてもあくまで脇役(ハティ・マクダニエルとか)、主役を張りスターと呼ばれるようになったのはポアチエが初めてですしね。んー、「ジャイアンツ」も、ありましたね。最後にハドソンが株を上げる(奥さんに対して)場面。

「復讐鬼」のウィドマークの役は差別意識むき出しで、そりゃもう汗とともに滴り落ちるるような悪意の表現が凄かったです。その分、口先だけかもしれないけど「俺は別に差別なんてしないぜ」と言う強盗・カーティスの設定はどうなのかな、と感じました。貧乏な白人の最下層は「自分より下な奴を探す」のが普通⇒黒人嫌い確定、だったのでしょうに。駐車場でペコペコ腰を低くして働き続けて、連発する「有難う」と言う言葉が大嫌いになった、とか言ってましたが、それってとことん貧乏で犯罪者になったってのでもなかったのかな。
そんなわけで、敵対⇒友情のドラマを盛り上げるのにはカーティスよりポアチエの方がより貢献度高かったかと思います。
音楽も彼の歌と、追手の持ってるラジオだけでしたし(笑)

>復習鬼、これ、長い、駆逐艦、まだありましたかね?。

復讐鬼、長い船団、駆逐艦ベッドフォード作戦。この三本だけですね、ウィドマーク・ポアチエの共演作は。
あと、ポアチエ監督作品「ハンキー・パンキー」にウィドマークが脇で出てあげてるみたいです(笑)

nophoto
オンリー・ザ・ロンリー
2008年3月20日10:48

「ハティ・マクダニエル」なんて突然おっしゃるからびっくりしました。「家政婦は見た」・市原悦子ですね(笑)。

ボースン
ボースン
2008年3月20日10:56

マミー!ですよ(笑)
ポアチエより昔で黒人の名優ってまず誰だっけと考えると、やはりハティおばさんが思い浮かびましたんで。家政婦と言っちゃうとセルマ・リッター☆
私は彼女を見るたび菅井きんを連想するのですがどうでしょう?(ハティさんならぽっちゃりの市原悦子でよいかもしれませんが)

nophoto
オンリー・ザ・ロンリー
2008年3月20日11:35

セルマ・リッターが菅井きん、なーるほどなー。笑いますね。ボースンさんはたとえがうまいですね。それにしても脇の黒人スターもよくご存知ですね。感心します。ではちょっとお尋ねしたいです。大した問題ではないのですがカーク・ダグラスの「スパルタカス」に出ていた丸坊主の眼がぎょろっとした黒人男優は何と言うのですか?。剣闘士としてダグラスとバトルする。昔はTVの「ローハイド」、「ボナンザ」なんかにたまに出て。J・フォードのどこかにもいたような。未だに名前知らないのです。ただ名脇ほどではなく目立つだけかも。

ボースン
ボースン
2008年3月20日15:01

や、申し訳ない。「スパルタカス」未見です。とはいえここは先日本サイトの映画リンクにも上げたIMDbで…、と。ふむふむ。

http://www.imdb.com/title/tt0054331/

ウッディ・ストロードではないでしょうか?「ローハイド」にも二回の出演実績があるようです。「ボナンザ」はないけど。「バファロー大隊」や「リバティ・バランスを撃った男」「大海賊」等にも出演。「馬上の二人」にもインディアン役で出演。もはやジョン・フォード一家?

もし、もっともっと端役だったら分かりませんが…

nophoto
オンリー・ザ・ロンリー
2008年3月20日19:16

ピンポーンでした。ボースンさん凄いですね。大正解でした。40年間!名前を知りたく追いかけていました(笑)。ありがとうございます。
「スパルタカス」に対して槍で向かい壮絶な死を遂げる役が俳優人生最大の役だったようです。重ねて御礼申し上げます。

ボースン
ボースン
2008年3月20日20:46

どういたしまして。凄いのは私ではなくIMDbです(^^;)
「スパルタカス」では相当印象的な登場(退場?)だったみたいですね。印象深い俳優に出会えることは、見る者の幸せでもありますね。

nophoto
オンリー・ザ・ロンリー
2008年3月21日23:22

「もしかしたらあるはず、いや、きっとあるはず」と根性で探しました。ありましたね、カビもはえず。20余年も前にNHKで録ったVHSテープが。
まあー、色々矛盾点ありそうだが名作の部類に入れましょうか。「真昼の決闘」を撮ったクレーマー監督は(順番は失念)この「手錠のままの」、核戦争による地球最後を描いた我がペックの「渚にて」、戦犯を描いた「ニュールンベルグ」と社会ドラマに続く訳です。「手錠のままの」はモノとしての手錠は外れてもヒトとして「心の手錠」で繋がれていると強く言いたかったのだろう。ハリウッドの「良心」を感じさせる作品に仕上がっている。ポワチエは正義感の強い高校教師とかの清いイメージはこの際忘れる事にした。

ボースン
ボースン
2008年3月22日8:08

クレイマーというと毎回社会問題を取り入れた骨太な問題作、というブランドのような感じですね。「心の手錠」は言いえて妙です。終盤、鎖は外したけれど一緒に逃げる二人の場面で、「もう駄目だ」とよろめくカーティスにポアチエが「手錠が繋がってるつもりで(頑張ってついてこい)」と励ますセリフがありました。心の手錠となると、「手錠」のマイナスイメージが逆転しているんですね。

「真昼…」はプロデュースですが西部劇の割に社会問題的な見地も入ってるのはクレイマーだから?(町の人々の日和見とか)。実はコレも未見ですが(笑)多分クーパーに興味がないから…

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