My Pal Gus (1952年)
2008年2月25日 映画 コメント (7)
“My Pal Gus”。訳すなら『我が友ガス』?本編はモノクロ。
ロバート・パリッシュ監督、日本未公開作(なのでネタバレ全開)。
リチャード・ウィドマークが困ったちゃんな五歳児に手を焼く父子家庭の父を演じる話。なんてレアな。
秘書と弁護士を引き連れ各地を飛び回る敏腕ビジネスマンのデイヴ(ウィドマーク)は飛行場へ向かう途中、自宅方向へ向かう消防車に気付き、すわ火事か!とUターン。実は彼の息子ガス(ジョージ・ウィンスロウ)が浴室に立て込もって風呂水を溢れさせてた為の出動でした。ドアを叩き壊してガスは何とか救出?されるが、これではもう子守の来手がない、と評判の良い保育園を探す事になります。
秘書の選んだ保育園(nursery school)に面接に出向くと、園長のリディア(ジョーン・ドルー)は彼に、「入園したら月に一日は親も園へ来て子供達と遊んで貰う決まりです」と言い渡す。数日後、忙しいのに!と文句たらたら義務を果たしに来た彼は、子供慣れしていない事もあり、粘土を食べさせられたりびしょ濡れになったり、散々な一日の終わりには、もうこんな保育園は止めだ!と叫ぶ一幕も(笑)
殺し屋役でのデビューから5年たったかどうか。
「キンダガートン・コップ」でシュワちゃんを幼稚園で働かせたようなものかな(笑)…いや、「キンダ…」は見てないんですがホントは。
しかし、「親も定期的に来い」という指導には、なかなか鋭いものがある。アメリカでも半世紀前には、保育園に子供を預ける親は今ほど多くはなかったろう。片親家庭や共働きで、仕事に追われるなどで子供と接する時間の短い親に、強引に子供に集中する時間を作らせて「親としての成熟を促す」というのは納得だ。実際、ガスの無茶は父親の気を引きたいからってのが見え見えだもの。
そして、「醜態を演じさせられた」と気分を害してしまったデイヴに対して、リディアは「子供たちをあなたの工場へ見学に行かせたい」と持ちかける。実はデイヴはお菓子の工場を持っているのだ。ガスは勿論、子供たちは大はしゃぎで工場見学を楽しみ、デイヴへ尊敬のまなざしを注ぐ。息子の可愛さは倍増だし、これで落ちない父親はいるまい。仕事人間のデイヴも、ようやく息子のために時間を取ることが当たり前になり始め…。
鮮やかです、園長(笑)
リディアに懐いてすっかりお行儀がよくなったガスに続き、やがてデイヴも才色兼備のリディアにゾッコン夢中に。熱烈さとぎこちなさの入り混じった求愛のシーンは、結構しっとりとイイ感じ☆
ところが、ようやく彼女への思いも通じてみんなハッピー、と思った途端、突然デイヴの元妻ジョイス(オードリー・トッター)が4年ぶりに出現。
そして「あの離婚手続きは無効だった」と主張し、金を要求する(何か手続きに微妙な部分があったらしい)。
事業で失敗して一番大変な時に、赤子のガスを残し、もっと金持ちの男を捜して出て行った欲深な悪女…とあって、デイヴは逆に恨み骨髄、びた一文もやりたくない!とはねつけ、裁判になるが、これがエライことになってしまう(^^;)
示談を蹴ったデイヴに対して、ジョイスは法廷で「デイヴは既婚者なのに息子の保育園の園長と不義密通中」とぶち上げる(実際はまだキス止まりな模様)。リディアまでスキャンダルに巻き込まれると予期していなかったデイヴは愕然。示談の話も聞いておけばよかったと悔やむが、その言葉を聞いて今度はリディアが怒る。「示談の可能性もあったのに、ガスや私のために、大ごとにならないよう示談で収めようなんて全然考えなかったの?お金がそんなに大事?」と。保育園も休校にして姿を消すリディア。そして、意外な判決がデイヴに追いうちをかける。
さっきまで、コメディなんだと思っていたのに…
離婚問題については全面的にデイヴの主張が認められたが(当然不義密通にはならない)、ガスの養育権は母親であるジョイスに、と決まったのだ(母親重視の傾向は昔からあるようだ…)。
悲しみをこらえて、ジョイスのホテルへガスを送ってゆこうとするデイヴ。
が、最後の最後ホテルの前まできて、涙目で「パパといたい」と訴えるガスの言葉に、デイヴは吹っ切れる。「養育権が欲しけりゃお金で手を打つけど、裁判前と違って高くつくわよ!」とせせら笑うジョイスに、デイヴは「OK、何にでもサインする!決まりだ!」と即答し、驚く彼女を尻目に意気揚々とガスのもとへ駆け戻る。
リディアも突然姿を見せて、「判決を聞いたわ、可哀想に!一緒にガスを取り戻しましょう」と声を掛ける。デイヴは笑顔で「もう取り戻したよ!」
三人は手を繋いで去ってゆき、The END。
…え…
かなりビックリしました。全財産失いかねないんですかお父さん。めちゃくちゃサバサバして嬉しそうですけど。
アメリカ的大胆さだなあ。
とはいえ、ようやく築いた息子との絆を失いかけて苦しむリチャード・ウィドマークの演技には泣けましたよ。ほんとに。ううううううう。
今回、珍しくド悪漢でもなければ正義のヒーローでもないわけですが、ちょっと拝金主義?な仕事人間ぷりにはハードな持ち味が生かされるとともに、息子への愛に目覚めた父親像もソフトに情感豊かに演じ分けております。幼児まみれなカワイイお姿や、ロマンチック場面、説得力ある父性愛演技などレアな見所非常に多し♪
何でこういうのを輸入しなくて、冷血漢な作品ばっかとりあげるかなあ日本(泣)
ジョーン・ドルーもびっくりするくらい良かった。「赤い河」とか、西部の勝気な娘役が多いかと思うんですが、とても知的でキビキビした職業婦人(死語)で、しかも、知性派ゆえに自意識と恋心とのせめぎあう風情なんかがまた魅力的。
子役も当時はそれなりに人気の子だったみたい(George‘Foghorn’Winslow)。「紳士は金髪がお好き」とか「モンキー・ビジネス」とかにも出てる模様(私は初めて見ました)。美幼児というほどではなくて普通のコだけど、実に自然な演技ができるのね。
写真は2/23日記(http://diarynote.jp/d/13374/20080223.html)参照。
しかし、マジどのくらい財産奪われるんだろう。見る前はコメディだと思っていたけれど、意外とキビシイ作品でしたね。
キレても無理ないくらい元妻はワルなんですが、それでもまずお金を優先するような判断をしてしまっただけで(決してリディアや息子を傷つける気はなかったのに)、コレほどの金銭的不幸が待っているとは。すごーくデキる男のようなので、ひょっとしたら、再婚後に再びひと財産作ってみせるかもしれないけど…これからは家族優先で、ささやかな幸せでもう十分だよ、なことになるんだろうなあ。全財産より息子だから(笑)
…こないだまで、滅茶苦茶いい家に住んでたんだけどね(苦笑)
最終的にはコメディというより、ハート・ウォーミングな人間ドラマというべき佳作でした。
いやぁ本当に、見ることができて良かった!この映画。
ロバート・パリッシュ監督、日本未公開作(なのでネタバレ全開)。
リチャード・ウィドマークが困ったちゃんな五歳児に手を焼く父子家庭の父を演じる話。なんてレアな。
秘書と弁護士を引き連れ各地を飛び回る敏腕ビジネスマンのデイヴ(ウィドマーク)は飛行場へ向かう途中、自宅方向へ向かう消防車に気付き、すわ火事か!とUターン。実は彼の息子ガス(ジョージ・ウィンスロウ)が浴室に立て込もって風呂水を溢れさせてた為の出動でした。ドアを叩き壊してガスは何とか救出?されるが、これではもう子守の来手がない、と評判の良い保育園を探す事になります。
秘書の選んだ保育園(nursery school)に面接に出向くと、園長のリディア(ジョーン・ドルー)は彼に、「入園したら月に一日は親も園へ来て子供達と遊んで貰う決まりです」と言い渡す。数日後、忙しいのに!と文句たらたら義務を果たしに来た彼は、子供慣れしていない事もあり、粘土を食べさせられたりびしょ濡れになったり、散々な一日の終わりには、もうこんな保育園は止めだ!と叫ぶ一幕も(笑)
殺し屋役でのデビューから5年たったかどうか。
「キンダガートン・コップ」でシュワちゃんを幼稚園で働かせたようなものかな(笑)…いや、「キンダ…」は見てないんですがホントは。
しかし、「親も定期的に来い」という指導には、なかなか鋭いものがある。アメリカでも半世紀前には、保育園に子供を預ける親は今ほど多くはなかったろう。片親家庭や共働きで、仕事に追われるなどで子供と接する時間の短い親に、強引に子供に集中する時間を作らせて「親としての成熟を促す」というのは納得だ。実際、ガスの無茶は父親の気を引きたいからってのが見え見えだもの。
そして、「醜態を演じさせられた」と気分を害してしまったデイヴに対して、リディアは「子供たちをあなたの工場へ見学に行かせたい」と持ちかける。実はデイヴはお菓子の工場を持っているのだ。ガスは勿論、子供たちは大はしゃぎで工場見学を楽しみ、デイヴへ尊敬のまなざしを注ぐ。息子の可愛さは倍増だし、これで落ちない父親はいるまい。仕事人間のデイヴも、ようやく息子のために時間を取ることが当たり前になり始め…。
鮮やかです、園長(笑)
リディアに懐いてすっかりお行儀がよくなったガスに続き、やがてデイヴも才色兼備のリディアにゾッコン夢中に。熱烈さとぎこちなさの入り混じった求愛のシーンは、結構しっとりとイイ感じ☆
ところが、ようやく彼女への思いも通じてみんなハッピー、と思った途端、突然デイヴの元妻ジョイス(オードリー・トッター)が4年ぶりに出現。
そして「あの離婚手続きは無効だった」と主張し、金を要求する(何か手続きに微妙な部分があったらしい)。
事業で失敗して一番大変な時に、赤子のガスを残し、もっと金持ちの男を捜して出て行った欲深な悪女…とあって、デイヴは逆に恨み骨髄、びた一文もやりたくない!とはねつけ、裁判になるが、これがエライことになってしまう(^^;)
示談を蹴ったデイヴに対して、ジョイスは法廷で「デイヴは既婚者なのに息子の保育園の園長と不義密通中」とぶち上げる(実際はまだキス止まりな模様)。リディアまでスキャンダルに巻き込まれると予期していなかったデイヴは愕然。示談の話も聞いておけばよかったと悔やむが、その言葉を聞いて今度はリディアが怒る。「示談の可能性もあったのに、ガスや私のために、大ごとにならないよう示談で収めようなんて全然考えなかったの?お金がそんなに大事?」と。保育園も休校にして姿を消すリディア。そして、意外な判決がデイヴに追いうちをかける。
さっきまで、コメディなんだと思っていたのに…
離婚問題については全面的にデイヴの主張が認められたが(当然不義密通にはならない)、ガスの養育権は母親であるジョイスに、と決まったのだ(母親重視の傾向は昔からあるようだ…)。
悲しみをこらえて、ジョイスのホテルへガスを送ってゆこうとするデイヴ。
が、最後の最後ホテルの前まできて、涙目で「パパといたい」と訴えるガスの言葉に、デイヴは吹っ切れる。「養育権が欲しけりゃお金で手を打つけど、裁判前と違って高くつくわよ!」とせせら笑うジョイスに、デイヴは「OK、何にでもサインする!決まりだ!」と即答し、驚く彼女を尻目に意気揚々とガスのもとへ駆け戻る。
リディアも突然姿を見せて、「判決を聞いたわ、可哀想に!一緒にガスを取り戻しましょう」と声を掛ける。デイヴは笑顔で「もう取り戻したよ!」
三人は手を繋いで去ってゆき、The END。
…え…
かなりビックリしました。全財産失いかねないんですかお父さん。めちゃくちゃサバサバして嬉しそうですけど。
アメリカ的大胆さだなあ。
とはいえ、ようやく築いた息子との絆を失いかけて苦しむリチャード・ウィドマークの演技には泣けましたよ。ほんとに。ううううううう。
今回、珍しくド悪漢でもなければ正義のヒーローでもないわけですが、ちょっと拝金主義?な仕事人間ぷりにはハードな持ち味が生かされるとともに、息子への愛に目覚めた父親像もソフトに情感豊かに演じ分けております。幼児まみれなカワイイお姿や、ロマンチック場面、説得力ある父性愛演技などレアな見所非常に多し♪
何でこういうのを輸入しなくて、冷血漢な作品ばっかとりあげるかなあ日本(泣)
ジョーン・ドルーもびっくりするくらい良かった。「赤い河」とか、西部の勝気な娘役が多いかと思うんですが、とても知的でキビキビした職業婦人(死語)で、しかも、知性派ゆえに自意識と恋心とのせめぎあう風情なんかがまた魅力的。
子役も当時はそれなりに人気の子だったみたい(George‘Foghorn’Winslow)。「紳士は金髪がお好き」とか「モンキー・ビジネス」とかにも出てる模様(私は初めて見ました)。美幼児というほどではなくて普通のコだけど、実に自然な演技ができるのね。
写真は2/23日記(http://diarynote.jp/d/13374/20080223.html)参照。
しかし、マジどのくらい財産奪われるんだろう。見る前はコメディだと思っていたけれど、意外とキビシイ作品でしたね。
キレても無理ないくらい元妻はワルなんですが、それでもまずお金を優先するような判断をしてしまっただけで(決してリディアや息子を傷つける気はなかったのに)、コレほどの金銭的不幸が待っているとは。すごーくデキる男のようなので、ひょっとしたら、再婚後に再びひと財産作ってみせるかもしれないけど…これからは家族優先で、ささやかな幸せでもう十分だよ、なことになるんだろうなあ。全財産より息子だから(笑)
…こないだまで、滅茶苦茶いい家に住んでたんだけどね(苦笑)
最終的にはコメディというより、ハート・ウォーミングな人間ドラマというべき佳作でした。
いやぁ本当に、見ることができて良かった!この映画。
コメント
…まあ、21世紀の今からみると大した違いはないかもですが(爆)
しかしほんとに、輸入しておいて欲しかったです!
そしてDCPさまには、是非ジョーン・ドルーを見せたかったなあ…ほんとに知的できりりと魅力的でしたよ。
なにはともあれお気をつけて、行ってらっしゃいませ。