1948年ウィリアム・A・ウェルマン作品。
グレゴリー・ペックとアン・バクスターの…だが、私にとってはリチャード・ウィドマーク様の初西部劇ってんで購入(笑)
物語は、アルフレッド・ニューマンのえらく景気のいい勇壮な曲とともに始まる。

銀行を襲撃し、金を奪って砂漠へと逃げ込んだ六人の男。暑さと渇きで死にかけつつ、辿りついたのはゴーストタウン。
ところが、廃墟と見えた炭鉱町にも、老人と孫娘がひっそりと暮らしていた。二人が金鉱を掘っていると気付いた六人は金塊の横取りをたくらむが…

強盗団のボスがグレゴリー・ペック。面白半分に強引なキスで鉄火娘アン・バクスターに迫るのだが、やがて本気になってしまって、悪事から足を洗う気になる。登場時は悪党っぽく髭面なのだが、彼女の眼を気にして綺麗に髭を剃った途端にもう「良い役」にしか見えなくなるのが二枚目ペックならではで可笑しい。急に自分の生い立ちを彼女らに語って「両親はカタギだった」とか「子供の頃は教会に毎週通わせられた」だの、『そんなに悪くないんだよー』と上目遣いで売り込むのが、まるで育ちすぎた子犬のようだ。うん、犬型だなあ、この人(笑)。

対するウィドマーク(強盗団のNo.2)は、やはり猫系?隙のない身ごなしといい、どんな時でも自分のペースでひっそりとアレコレ探ったり企んだり、妖しさ不気味さを漂わせている。荒くれたちの中、ただひとりビシッと黒っぽい三つ揃い(ベストは柄付き)でキメてる洒落者なギャンブラー。タバコの吸い方などあいも変わらずカッコよろしい。
胸の古傷に弾丸が残ってるからとか言って一人だけ重労働には加わらないチャッカリぶりもヘンでよろしい(笑)。西部劇も似合うというのはこの映画で明らかになったわけだけど、まだどこか、フィルムノワールのノリを引きずってる感じもするな。
この映画、モノクロ映像がとてもシャープで、西部のおおらかさより、仲間割れのサスペンスの方が勝っているし…。

バクスターに惚れて正道に戻りたくなったペック。とにかく金を掴みたいウィドマーク。金もだがバクスターをもモノにしたい暴れ者のジョン・ラッセル。この三者を軸に、互いに腹の探りあいを続けていた強盗団はやがて完全な仲間割れを起こします。
クライマックスは、無人の酒場で三つ巴の決闘。
カウンターの陰に身を潜めるウィドマーク、靴を脱いで忍び寄るラッセル、匍匐前進で酒場へ近づき、一気に飛び込むペック!…のガンファイトが、銃声だけで経過を絵で見せてもらえないってのは、いささか残念無念。
そして、斃れた金髪のウィドマークの手元から、砂金がさらさらとこぼれ落ち、勧善懲悪のお約束をスタイリッシュに表現する。
風流ではあるんですけどねえ、実にサスペンスフルでもありましたがねぇ、
…そりゃないよ!

最後は改心したペックと強盗団の生き残りが銀行にお金を返しに行って、いいんか?ってくらい、ほのぼのハッピーエンド。
まあ、結構楽しめました。よかったよかった。

DVD ジュネス企画 2008/01/25 ¥5,040

コメント

nophoto
パトマグ
2013年4月24日20:09

 なんというか、アメリカ映画って起承転結がはっきりしていて、終盤のクライマックスに向かって大いに盛り上がるはずが全然盛り上がらず、とってつけたようなハッピーエンドにびっくり。まーダンディなウィドマークが見られたから良しとしましょう。「悪の花園」のもとになるようなキャラクターでしたね。

 グレゴリーぺっクって、大根だなあ。「白昼の決闘」でもそう思ったけど・・・でも長身だし、足は長いしハンサムだし、誠実そう。

 アンバクスターに「臭い」と言われて無精ひげそっちゃうし、彼女を甘く見てケガはするし、いい人だけどちょっとおバカですよね。それに女性も金も手に入れようなんて欲張りですね。「二兎を追うもの・・・」というではありませんか?

 そこ行くとウィドマークはひたすらお金でポリシーにゆるぎがありませんよね。大したもんです。愛した女性に去られた経験があるから、女性は信用できないんですね。どんな女性だったのか気になります。あの体にとどまった弾丸は、愛のメモリーでしょうか?

 ウィドマークはおじいちゃんと孫娘の行動やその他の様子から、金鉱を発見するわけです。頭いいですよね。切れ者です。

 こんな切れ者がどうしてリーダーにならなかったのか?頭のいい人は往々にして人望がないんですね。頭の回転の鈍い人を馬鹿にしがちです。

 だから、ペックとウィドマークが組んで「最強の二人」になるはずだったのに、ペックが泥棒としての節を曲げてしまったのが大誤算でした。

 魅力的な悪党が死に、ぼんくらの善人が生き残るめでたしめでたしの映画でした。



ボースン
2013年4月24日22:20

>そこ行くとウィドマークはひたすらお金でポリシーにゆるぎがありませんよね。大したもんです。

いやー同感です!

>愛した女性に去られた経験があるから、女性は信用できないんですね。どんな女性だったのか気になります。あの体にとどまった弾丸は、愛のメモリーでしょうか?

気になりますよね!裏切った女について夢見るように語るウィドマーク。ゾクゾクしますよね。
なのにちゃんと聞いてないんだペック!!まったく失礼な奴だ!

困ったもんです…

nophoto
パトマグ
2013年4月26日16:32

 全く、ペックには男気というか男同士の友情というものが存在しません。忘れたふりして昔の女性を忘れられないから、その女性の名前はルーシーだって明かすウィドマークの気持ちに無頓着ですからね。

「強盗稼業に疲れた」ってウィドマークが言ってるんだから、引退興行をぱっとやってあげればいいのに。親分としての器がないわよね。ま、若いから仕方ないか。(フランス映画だったら、ロベールオッセン主演で映画になりそう)

でも、ペックはハンサムだし、こと女性に関しては誠実そうですよね。彼なら殴らないでしょ。

nophoto
パトマグ
2013年4月26日16:37

 すみません。コメント途中で送信してしまいました。

 一方鼻先でふふんなんて、小馬鹿にしたように笑うウィドマークは魅力的ですが、危険です。うっかり近づいたら火傷、いや殴られそう。でも、たまらないですけどね。

ボースン
2013年4月27日0:06

ダンディで、危ない魅力です、どこまでも(*^^*)

お気に入り日記の更新

日記内を検索