10日出がけにスカパーで録画していて、字幕で、えッ!という所があったので、予定を変えて今日はこちらを見ました。
字幕の件はまたあとで…
えー、西部劇の王者、ジョン・ウェイン。
…私としては、特に好きなスターではないけれど、「赤い河」の彼はイイです。彼の西部劇の中で、また西部劇全体の中でも、この作品は一番好きなもののひとつ。
さて…
青年ダンスン(ウェイン)は、自分の牧場を持つため幌馬車隊から別れ、未開のテキサスを目指そうとする。同道するのは相棒のグルート(ウォルター・ブレナン)のみ。
その彼を、呼び止める娘(コリーン・グレイ)がひとり。一緒に連れて行ってと懇願するのだが、「女には無理だ、後できっと呼び寄せるから」と、母の形見の腕輪を与えて去ってゆくダンスン…
辛い別れに立ち尽くす恋人の、風にはためく白いドレスが目にも鮮やかな、詩情あふれるオープニングである。
しかし、この後すぐ、幌馬車隊はインディアンに襲われ全滅してしまうのだ。
唯一生き残った少年マットを連れて、ダンスンらはテキサスへ。
14年後。
艱難辛苦を乗り越え大牧場主となったダンスンは、戦後の不況を切り抜けるため、一万頭の牛を隣のミズーリ州まで連れてゆく決意をする。頼もしい片腕に育ったマット(モンゴメリー・クリフト)とグルート爺さんは勿論、近隣の中小牧場主やガンマンのチェリー(ジョン・アイアランド)も同道する。
前人未到の長い距離、行く手を阻む厳しい自然、インディアンや野盗も警戒せねばならない。困難な旅は次第に、ダンスンを頑迷固陋な独裁者へと変えてゆき、彼の行き過ぎに耐えられなくなったマットはついに、怪我をしたダンスンを置き去りにして、他の仲間たちと牛を連れアビリーンの町へと先行する。――「追いついたらお前を殺す!」ダンスンの誓いを背負いながら。
雄大な自然、キャトル・ドライブ、ガンファイト、男の意地、家族(擬似的家族でも)の情愛と葛藤。西部劇ならではの魅力に骨太の人間ドラマがガッチリ噛み合わさって最高です。そして、…とてもとても男っぽい作品に見えて、実は恋――というか「女」の役割が実は大きいのもよろしい。
新リーダーとなったマットは、途中で勝気な娘テス(ジョーン・ドルー)に出会い恋に落ちるが、すぐまた発ってゆく。残されたテスと、マットを追ってきたダンスンとの出会いが素晴らしい。全ての事情を知っていながら、マットを追いたい、一緒に行かせて欲しいとダンスンに言う彼女。映画が進むにつれ鬼の形相となっていたダンスンが、置いてゆかれる辛さを嘆くテスの言葉に、反射的に「ナイフで切り裂かれるような」とつぶやく。それは昔、ダンスンが置き去りにし、死に別れた恋人が別れの日に発した言葉。
こんな頑なな男になってしまったダンスンが、それでもあの恋を、あの別れを心の底に深く刻み付けていたという哀切が…この一言でちょっと彼を「許してもいいかな」という気にさせる(あんなに色々と酷い振る舞いをしていたのにね)。
そしてテスも即座に気付く「あなたも同じように恋人と別れたことがあるのね?」
鋭いにも程がある(笑)…凄い女だわほんと。
二人の心が一瞬リンクし、今よりもまだずっと柔らかい心を持っていただろう過去のダンスン、本来のダンスンの蘇る気配が閃くのだ。結局ダンスンはテスが付いてくる事を認めてしまう。まだまだ「マットを殺す」というつもりではいるのだが、もはや観客の眼には、二人の和解の可能性がぐっとふくらんできている。
…実際、ラストでは、テスの猛然たる横槍が、ダンスンとマットの最後の意地の対決を綺麗に粉砕してしまうのだ(笑)
地べたにへたり込んだまま、呆然とした顔でマットに「お前、あの娘を嫁にしろ」と言うダンスンの可愛らしいったら!!!
意外に女心にジャストミートする西部劇なのでした「赤い河」!
ウェインはとにかく素晴らしい。どういうわけか、たまに老け役をすると普段と違うイイ味出すんですよねーこの人。また、大らかでパワフルなヒーローが一番多い役どころでしょうが、苛烈壮絶な鬼な役って意外と合うし。「捜索者」も凄かった。
ウェインの西部劇で好きなのというとコレと「リオ・ブラボー」あたりが一番かな。おや?両方ハワード・ホークス監督だし両方「ライフルと愛馬」だ…(笑)
クリフトはねー、この人もあまり好きではないし、この役もなんかちょっと西部男な香りが不足なんだけど、ウェインとのバランスとしては合っているかなあ。あまり頼もしすぎてもアレですもん。最後の殴り合いも、ウェインが一発撃たれていて丁度いいとか巷では言われているけど同感。
そのぶんそのライバル兼友人なチェリー役ジョン・アイアランドがいかにも西部男的にカッコよくていい味出てる。ちょっと濃い目でチョイ悪臭いイイ男って感じで。最後ウェインに手を出して一蹴されるのは気の毒すぎるけどまあ必要なんだろう、あの一発が…(^^;)
ウォルター・ブレナンはいつも通りに笑いを取って、ナレーションでドラマ演出にも一役かって、達者です。
ヒロイン二人はそれぞれにたくましく(死んだ方も)、女というものを「生きることの素晴らしさ」の象徴のように描かれている。イメージ的には似ているのだが、真っ白な衣装のコリーン・グレイと、黒っぽいジョーン・ドルー、服装で描き分けているのもいい感じ。
…で…最初に言ってた字幕の件。
なんと、オープニングの恋人との会話、字幕に「ナイフ」のナの字も出てこない。
うそォ!(恋人の最後のセリフ、確かにナイフがむにゃむにゃと言ってたのに…)
それじゃ、1時間以上もあとになってウェインがナイフがどーたら言ったからといって、それで彼の「昔の悲恋」がわかってしまうジョーン・ドルーは霊能者なみだよ!あ、いや「ナイフ」は観客しか聞いてないのか。じゃ観客も霊能者なみになれというのか。
確かに聞き取りにくいけど、それに字数が入れにくかったのかもしれないけど…
許せん〜(泣)
考えたら私が以前見たのは、TVで吹き替えだったんだろうな。だから、ちゃんと、ナイフで心を刺されるようにとかなんとか、厳密にではないけど「ナイフ」をはっきり聞いて覚えていて、しかも印象深かったわけなんです、が…
はああああ…
すごく、すごく、思いいれのあるシーンだったんですが。でも字幕は清水俊二とあった。うーんベテラン大御所の一人ですねえ。今売ってるFOXのDVDもこの人の字幕?
…吹き替え、付いてないのかなあ…
字幕の件はまたあとで…
えー、西部劇の王者、ジョン・ウェイン。
…私としては、特に好きなスターではないけれど、「赤い河」の彼はイイです。彼の西部劇の中で、また西部劇全体の中でも、この作品は一番好きなもののひとつ。
さて…
青年ダンスン(ウェイン)は、自分の牧場を持つため幌馬車隊から別れ、未開のテキサスを目指そうとする。同道するのは相棒のグルート(ウォルター・ブレナン)のみ。
その彼を、呼び止める娘(コリーン・グレイ)がひとり。一緒に連れて行ってと懇願するのだが、「女には無理だ、後できっと呼び寄せるから」と、母の形見の腕輪を与えて去ってゆくダンスン…
辛い別れに立ち尽くす恋人の、風にはためく白いドレスが目にも鮮やかな、詩情あふれるオープニングである。
しかし、この後すぐ、幌馬車隊はインディアンに襲われ全滅してしまうのだ。
唯一生き残った少年マットを連れて、ダンスンらはテキサスへ。
14年後。
艱難辛苦を乗り越え大牧場主となったダンスンは、戦後の不況を切り抜けるため、一万頭の牛を隣のミズーリ州まで連れてゆく決意をする。頼もしい片腕に育ったマット(モンゴメリー・クリフト)とグルート爺さんは勿論、近隣の中小牧場主やガンマンのチェリー(ジョン・アイアランド)も同道する。
前人未到の長い距離、行く手を阻む厳しい自然、インディアンや野盗も警戒せねばならない。困難な旅は次第に、ダンスンを頑迷固陋な独裁者へと変えてゆき、彼の行き過ぎに耐えられなくなったマットはついに、怪我をしたダンスンを置き去りにして、他の仲間たちと牛を連れアビリーンの町へと先行する。――「追いついたらお前を殺す!」ダンスンの誓いを背負いながら。
雄大な自然、キャトル・ドライブ、ガンファイト、男の意地、家族(擬似的家族でも)の情愛と葛藤。西部劇ならではの魅力に骨太の人間ドラマがガッチリ噛み合わさって最高です。そして、…とてもとても男っぽい作品に見えて、実は恋――というか「女」の役割が実は大きいのもよろしい。
新リーダーとなったマットは、途中で勝気な娘テス(ジョーン・ドルー)に出会い恋に落ちるが、すぐまた発ってゆく。残されたテスと、マットを追ってきたダンスンとの出会いが素晴らしい。全ての事情を知っていながら、マットを追いたい、一緒に行かせて欲しいとダンスンに言う彼女。映画が進むにつれ鬼の形相となっていたダンスンが、置いてゆかれる辛さを嘆くテスの言葉に、反射的に「ナイフで切り裂かれるような」とつぶやく。それは昔、ダンスンが置き去りにし、死に別れた恋人が別れの日に発した言葉。
こんな頑なな男になってしまったダンスンが、それでもあの恋を、あの別れを心の底に深く刻み付けていたという哀切が…この一言でちょっと彼を「許してもいいかな」という気にさせる(あんなに色々と酷い振る舞いをしていたのにね)。
そしてテスも即座に気付く「あなたも同じように恋人と別れたことがあるのね?」
鋭いにも程がある(笑)…凄い女だわほんと。
二人の心が一瞬リンクし、今よりもまだずっと柔らかい心を持っていただろう過去のダンスン、本来のダンスンの蘇る気配が閃くのだ。結局ダンスンはテスが付いてくる事を認めてしまう。まだまだ「マットを殺す」というつもりではいるのだが、もはや観客の眼には、二人の和解の可能性がぐっとふくらんできている。
…実際、ラストでは、テスの猛然たる横槍が、ダンスンとマットの最後の意地の対決を綺麗に粉砕してしまうのだ(笑)
地べたにへたり込んだまま、呆然とした顔でマットに「お前、あの娘を嫁にしろ」と言うダンスンの可愛らしいったら!!!
意外に女心にジャストミートする西部劇なのでした「赤い河」!
ウェインはとにかく素晴らしい。どういうわけか、たまに老け役をすると普段と違うイイ味出すんですよねーこの人。また、大らかでパワフルなヒーローが一番多い役どころでしょうが、苛烈壮絶な鬼な役って意外と合うし。「捜索者」も凄かった。
ウェインの西部劇で好きなのというとコレと「リオ・ブラボー」あたりが一番かな。おや?両方ハワード・ホークス監督だし両方「ライフルと愛馬」だ…(笑)
クリフトはねー、この人もあまり好きではないし、この役もなんかちょっと西部男な香りが不足なんだけど、ウェインとのバランスとしては合っているかなあ。あまり頼もしすぎてもアレですもん。最後の殴り合いも、ウェインが一発撃たれていて丁度いいとか巷では言われているけど同感。
そのぶんそのライバル兼友人なチェリー役ジョン・アイアランドがいかにも西部男的にカッコよくていい味出てる。ちょっと濃い目でチョイ悪臭いイイ男って感じで。最後ウェインに手を出して一蹴されるのは気の毒すぎるけどまあ必要なんだろう、あの一発が…(^^;)
ウォルター・ブレナンはいつも通りに笑いを取って、ナレーションでドラマ演出にも一役かって、達者です。
ヒロイン二人はそれぞれにたくましく(死んだ方も)、女というものを「生きることの素晴らしさ」の象徴のように描かれている。イメージ的には似ているのだが、真っ白な衣装のコリーン・グレイと、黒っぽいジョーン・ドルー、服装で描き分けているのもいい感じ。
…で…最初に言ってた字幕の件。
なんと、オープニングの恋人との会話、字幕に「ナイフ」のナの字も出てこない。
うそォ!(恋人の最後のセリフ、確かにナイフがむにゃむにゃと言ってたのに…)
それじゃ、1時間以上もあとになってウェインがナイフがどーたら言ったからといって、それで彼の「昔の悲恋」がわかってしまうジョーン・ドルーは霊能者なみだよ!あ、いや「ナイフ」は観客しか聞いてないのか。じゃ観客も霊能者なみになれというのか。
確かに聞き取りにくいけど、それに字数が入れにくかったのかもしれないけど…
許せん〜(泣)
考えたら私が以前見たのは、TVで吹き替えだったんだろうな。だから、ちゃんと、ナイフで心を刺されるようにとかなんとか、厳密にではないけど「ナイフ」をはっきり聞いて覚えていて、しかも印象深かったわけなんです、が…
はああああ…
すごく、すごく、思いいれのあるシーンだったんですが。でも字幕は清水俊二とあった。うーんベテラン大御所の一人ですねえ。今売ってるFOXのDVDもこの人の字幕?
…吹き替え、付いてないのかなあ…
コメント
こう言う骨太の「赤い河」観たら、マカロニ・ウエスタンなんてとても観られたもんじゃねぇ。マカロニは確かに中がないな。東乃森さん、ある種立派だがハリウッドをあの頃悪くした戦犯だな。それと自動車の原型が出て来るのももはや「西部劇」じゃないな。ブルーフォードさんよ。以上お叱りを受けるの覚悟の独断と偏見。
『赤い河』は、思いいれがある作品なのでついつい長文になっちゃいました。
「これぞ西部劇!」の代名詞、至言と思います私も。ブレナン爺さんのナレーションには西部開拓の「歴史」がにじみ、マカロニ・ウェスタンにはありえない神話性の輝きが人間ドラマを照射します。リアルでなくてもいいんですよ、物語そのものが美しければ…(*^^*)
ウィンタース、いーえ気がつきませんでした(^^;)
だいたい女性ってほとんど出ませんよね。幌馬車隊かアビリーンのモブでしょうか。ご教示よろしくお願いします。
IMDBデータベース今見てみたけどやっぱり、彼女のフィルモグラフィには私が見た映画って見当たらない〜(汗)こんなに出演作多いのに。ちなみにこのデータベースによると役はDance Hall Girl in Wagon Train(クレジットなし)、だそうです。
「ジャイアンツ」の自動車好き青年はあまり好きになれませんけれどもねえ…(だんだん意味不明なやりとりになってきましたね(笑))
ちょっぴりホッとしました。やはりコリーン・グレイの時点で「ナイフ」発言は必須ですよ。うん!
今年は所謂名作西部劇を4本ほど観ました。…ですが去年暮れに再見した あの「ガンファイターの最後」の感動感涙をいまだに引きずっているせいか?どれもどーもピンときませんで困ったもんです(’_’)
でもこの映画はラストのテスの熱弁とか、結構感激しました。主役2名もいいですが脇役さんがいいですね。ジョン・アイアランド!ウォルター・ブレナン!アメリカの良心代表みたいな雰囲気のハリーケリーお父さん!冒頭部分でコリーン・グレイのアップもよかったス。
ハリーケリーお父さんは見た後に調べて初めて名を知りました。
ジョン・ウェインを初めて観たのは小学校の頃(多分)観た「騎兵隊」でした。紺の軍服が黄葉の光に映えてカッコ良かったことを覚えてます。後に観た3部作以上に!ボースン様は観てますか?未見なら古い記憶ですが…おすすめです(^O^)
「赤い河」は私けっこう好きなんですよ。やっぱりウェインはやさぐれると迫力があってよいですね。
「騎兵隊」はあいにくと見ていません。そのうちスカパーでやったら録っておきましょうか(前にやってたような気がする。スカパーはちょこちょこ再放送をしますからね…)。
昨日ネットで発見したのですが「クライマーズハイ」の監督原田眞一さんも大のウィドマークファンだそうです。知ってましたか?
同氏の2008年3月31日のブログが嬉しかったのでつい…(^O^)
正しくは原田眞人さんでした。
すみません!
原田監督が映画監督になる以前に出した本「ハリウッド インタVュー<俳優篇>」というのを、たまたま読んでたいたためです♪学生時代にウィドマーク関連部分だけ立ち読みしてあったのですが(ソレはたまたまとは言わんな…)、三年ほど前にヤフオクで買いました。懐かしさに負けて…
もしさがみひいす様が原田監督ファンなら、探して見られるのもまた一興かと。但し絶版ですので新刊書店にはないですが。
虚実日誌中でも、一度ネタにしました。よかったらご参照下さい。
⇒13374.diarynote.jp/200908270054347600/