飛べ!フェニックス (1965年)
2008年1月14日 映画石油会社の輸送機がサハラ砂漠を横断中、砂嵐に遭い不時着。無線は壊れ、灼熱の砂漠を歩くことも不可という極限状況の中、航空技師ドーフマン(ハーディ・クリューガー)は輸送機を単発機に改造して飛ばすことを提案。はじめはとりあおうとしなかったフランク機長(ジェームズ・スチュアート)だが、やがてそれしか生存の道はないことを悟り…
極限状態の男たちの意地の張り合いとサバイバル。
スチュアートもだいぶトシくってて、ベテランパイロットといえば聞こえはいいが、もうロートル。あと、リチャード・アッテンボロー、アーネスト・ボーグナイン、ピーター・フィンチ、クリスチャン・マルカン、ジョージ・ケネディなど、渋く実力あるオッサン役者がズラリ揃い踏みです。女っ気、見事なまでにゼロ。
女性がいれば、オッサンどもも、むしろもっと格好付け合うのかもしれませんが(こじれる危険もあるけどね)、極限状況に男だけ、国籍も色々とあって、かなり身もフタもなく各人の個性がぶつかりあいます。
見ながら何度、オイそこまで言うか!そこで殴るか!と、内心突っ込んだことやら(笑)
機長は自分を責めるのに忙しくて意外と役立たず。最初は気弱で酒に逃避気味だった副長アッテンボローが、途中から頑張りを見せ「希望を捨てちゃだめだ、力やアイデアを出し合わせないと」モードに入って機長と技師の仲介役に。いい味出してましたねぇ。この人は鼻が短く独特のベビー・フェイス。こういうルックス、のっぺり二枚目よりむしろ好きかも知れません私。有名なのは「大脱走」の脱走組織のリーダー役かな?体格は中背で平凡ですが、今回と違い、堂々として実にカッコよかったです。
フランス人の真面目な医師(クリスチャン・マルカン)、仕切りたがりだが非常に意志も責任感も強い立派な英軍将校ピーター・フィンチなども印象的(将校のテーマのように時々、チラリと流れる曲はリリブレロ?…昔「バリー・リンドン」でも聞いた気が)。が、立派だから助かるとも限らないハードな状況。次第に上官の頑張りについてゆけなくなる軍曹ロナルド・フレイザーの存在なんか実に皮肉で、骨太のドラマになっていました。
そして何たってオイシイのは、孤高のドイツ人技師ハーディ・クリューガーか。
最初っから「この若造が」という目で機長が見てるせいで余計に、というのはあるんでしょうが、自分の世界自分の執念にひたりきってその分モノ凄いパワーを発揮する。機長含めて皆が呆然となる中、誰よりも早く自分なりに「どうしたら脱出できるか」の計算を始めていた男。機長曰く「人間コンピュータ」…プライドが高くてあくまもでクール、皆を助けることより「自分の計算が正しいと証明すること」にこそ燃えているような男。
普段からコレだったら「かなりヤな奴」だが、彼の合理主義精神と知性と執念がなければ、脱出の可能性はゼロ以下だった、という、ちょっとダークサイド寄りのヒーロー?
しかも銀縁メガネの、まさにオタキッシュ!な風情が、妙に現代的な味わいがあってナイス(*^^*)
オタクの語が生まれるまでに、あと四半世紀はあるのですが(笑)
「シベールの日曜日」の戦争で心に傷を負った青年役とは対照的な傍若無人ぶりですが、いやー演りがいあったでしょうなあ。
あれこれ道具も工夫して(その工夫は寝る間も削って技師がやってるんですが)、水や食物(そして体力)が無くなるまでのカウントダウンしつつの、全員での突貫工事。
大改造が完成して、いよいよ明日は、という時に、技師の勤務先の詳細が判明して(別に隠していたとかではないんだけど)、機長&副長ヒソカに愕然、というのも凄いシナリオでしたねー(笑)。
さすがにこれで誰も助からないってのは無いだろう、と思いつつ、最後の30分は手に汗握りっぱなしで見てしまいました。
技師にやられっぱなし、終盤までいいとこなしだった可愛そうな機長が、土壇場「ベテランならではの着想」でやっと1ポイント(でも大きな1ポイント)稼いでくれて、ホッ。
あれだけモメましたが、ラストはさっぱりと気持ちよくエンディング。
やー、面白かったです。
リメイクでは、この技師、何人になってるのかな…(見る気はないが)
多分、ドイツ人じゃないんだろうな。カンですが。
映画の中で、技師に対して他の乗客が「お前みたいなのがいたのに何でドイツは戦争に負けたんだ」と揶揄、「従軍はしなかった(若すぎて)」「なるほどな」なんて会話がありました。60年代ならでは、ですかね。
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