生きるべきか死ぬべきか
2008年1月7日 映画
待ちに待ったルビッチ監督代表作(の一つ)、1942年作品。
年末届いたDVDが漸く見れました。お得意の艶笑喜劇と抗ナチサスペンスの奇跡の融合!噂にたがわぬ面白さに満足。
1939年、ボーランドの首都ワルシャワ。
前触れもなく、平和な街角にあらわれたヒトラー総統と随行員の姿にどよめく市民たち。ところがコレは、実は次のオリジナル作品を稽古中の劇団員たちなのだった!(ヒトラーのそっくりさん俳優はコレで一発当てようと考えたらしいが…)
さて、劇団の座長はジョゼフ・ツラ(ジャック・ベニー)。妻は美貌の看板女優マリア・ツラ(キャロル・ロンバード)だが、彼女がいささか浮気性とあって苦労は絶えない。
が、彼女の浮気や彼の嫉妬など当然膾炙することなく、やがて戦争は勃発する。あっと言う間にナチスドイツにワルシャワは蹂躙される。マリアの浮気相手の若い空軍将校(ロバート・スタック)は一旦英国に亡命したものの、ナチのスパイを追って(彼女への慕情も手伝って)、危険を冒してワルシャワへと舞い戻ってきて…
大義名分もあるとはいえ、明らかに間男(笑)を匿うマリアにカリカリしながらも、祖国のため、自分がスパイをやっつける!と、ジョゼフは仲間の劇団員ともども立ち上がる。情けなさ可笑しさと「妻に振り回されてても、最低限の男の意地は貫きたいぜ」のけなげさのブレンドが何とも♪
ゲシュタポに支配されたワルシャワで、己の武器は演技力のみ。劇団事務所をゲシュタポ本部に見せかけ、なんとかスパイを騙して連れ込んだ!しかし…?
とにかく笑えて、とにかくサスペンスフル!!たまりません。
事態の流動にあわせて役柄も演技もシナリオもアドリブで変わってゆく。ほとんどノンストップコン・ゲーム状態と化した終盤に、団員の一人グリーンバーグ(フェリックス・ブレサート)が叫ぶ「ヴェニスの商人」の名セリフが…「くすぐられたら笑うだろ?傷つけられたら、復讐するだろ?毒を盛られたら、死ぬだろう?…どこが違う?(一部略)」ナチスの兵士達に面と向かって命がけで投げつけられると、ほんとどーんと胸に迫ります。実は元々このセリフは彼の好きな物らしく劇中三度目にもなるんですが。
ドイツ出身、ユダヤ系のルビッチが、ヒトラーとナチの所業を憎まないわけがない。それでも、自分の言葉そのものでなくシェークスピアを使い、それも三回も使うことで逆にある種のユーモアをにじませて緩和と強調を同時にやってのけるという、手の込んだやりくちが流石です。反ナチな主張を込めても「演説」なんか可能な限り避けてあくまでも艶笑喜劇とからめ続けるのが、きっと監督の美学なんだろうなあ。
主人公が、基本的には善人だろうけど、あくまでもどこまでも俗っぽい男として描かれるのも、多分そう(ラストは、あーやっぱりって感じでけちょんけちょんです(笑))。しかし噂どおり、キャロル・ロンバードってカッコいいな〜初めて映画で見ましたが。セクシーであると同時に頭の回転もいかにもよさげで。マリアのワガママ勝手もたくましさも、そのまんま愛すべき存在として肯定されちゃってます。
そして、ルビッチ自身の言葉を拾うと「私たちの目標は幸福な世界を作ること」と偉そうに言うナチのスパイに、マリアが「不幸になりたい人には居場所がない世界だわ」と返す所かな。お見事。「幸福な世界」は押し付けられるべきものじゃない。
堪能しました。
…ただ…字幕が時々ヘンだったのだけ、残念だった(「〜ですわ」って女言葉じゃないのか。それとも爺言葉として当てたのか。とにかく引っ掛かっただけで有罪。惜しい)1500円だからって…
それとついでに開巻早々、ゲシュタポ芝居の場面で、「ハイル・ヒトラー!」の大合唱に迎えられて部屋に入ってきたヒトラー役者が「ハイル・マイセルフ!」と返した(そして、しょーもないアドリブ止めろと演出家に怒られる)のには吹いた。
…コレかいメル・ブルックス!「プロデューサーズ」のクネクネヒトラーの歌「ハイル・マイセルフ」の元ネタは!!
いやきっとそうだ。絶対そうだ。そもそも「生きるべきか死ぬべきか」をリメイクした奴なんだもんなブルックスは(「メル・ブルックスの大脱走」)。
うーん、「メル・ブルックスの大脱走」(1983年)も、見たくなってきたな…
きっとルビッチ師匠のより泥臭くなってるには違いないけど(笑)
DVD ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2007/12/13 ¥1,500
年末届いたDVDが漸く見れました。お得意の艶笑喜劇と抗ナチサスペンスの奇跡の融合!噂にたがわぬ面白さに満足。
1939年、ボーランドの首都ワルシャワ。
前触れもなく、平和な街角にあらわれたヒトラー総統と随行員の姿にどよめく市民たち。ところがコレは、実は次のオリジナル作品を稽古中の劇団員たちなのだった!(ヒトラーのそっくりさん俳優はコレで一発当てようと考えたらしいが…)
さて、劇団の座長はジョゼフ・ツラ(ジャック・ベニー)。妻は美貌の看板女優マリア・ツラ(キャロル・ロンバード)だが、彼女がいささか浮気性とあって苦労は絶えない。
が、彼女の浮気や彼の嫉妬など当然膾炙することなく、やがて戦争は勃発する。あっと言う間にナチスドイツにワルシャワは蹂躙される。マリアの浮気相手の若い空軍将校(ロバート・スタック)は一旦英国に亡命したものの、ナチのスパイを追って(彼女への慕情も手伝って)、危険を冒してワルシャワへと舞い戻ってきて…
大義名分もあるとはいえ、明らかに間男(笑)を匿うマリアにカリカリしながらも、祖国のため、自分がスパイをやっつける!と、ジョゼフは仲間の劇団員ともども立ち上がる。情けなさ可笑しさと「妻に振り回されてても、最低限の男の意地は貫きたいぜ」のけなげさのブレンドが何とも♪
ゲシュタポに支配されたワルシャワで、己の武器は演技力のみ。劇団事務所をゲシュタポ本部に見せかけ、なんとかスパイを騙して連れ込んだ!しかし…?
とにかく笑えて、とにかくサスペンスフル!!たまりません。
事態の流動にあわせて役柄も演技もシナリオもアドリブで変わってゆく。ほとんどノンストップコン・ゲーム状態と化した終盤に、団員の一人グリーンバーグ(フェリックス・ブレサート)が叫ぶ「ヴェニスの商人」の名セリフが…「くすぐられたら笑うだろ?傷つけられたら、復讐するだろ?毒を盛られたら、死ぬだろう?…どこが違う?(一部略)」ナチスの兵士達に面と向かって命がけで投げつけられると、ほんとどーんと胸に迫ります。実は元々このセリフは彼の好きな物らしく劇中三度目にもなるんですが。
ドイツ出身、ユダヤ系のルビッチが、ヒトラーとナチの所業を憎まないわけがない。それでも、自分の言葉そのものでなくシェークスピアを使い、それも三回も使うことで逆にある種のユーモアをにじませて緩和と強調を同時にやってのけるという、手の込んだやりくちが流石です。反ナチな主張を込めても「演説」なんか可能な限り避けてあくまでも艶笑喜劇とからめ続けるのが、きっと監督の美学なんだろうなあ。
主人公が、基本的には善人だろうけど、あくまでもどこまでも俗っぽい男として描かれるのも、多分そう(ラストは、あーやっぱりって感じでけちょんけちょんです(笑))。しかし噂どおり、キャロル・ロンバードってカッコいいな〜初めて映画で見ましたが。セクシーであると同時に頭の回転もいかにもよさげで。マリアのワガママ勝手もたくましさも、そのまんま愛すべき存在として肯定されちゃってます。
そして、ルビッチ自身の言葉を拾うと「私たちの目標は幸福な世界を作ること」と偉そうに言うナチのスパイに、マリアが「不幸になりたい人には居場所がない世界だわ」と返す所かな。お見事。「幸福な世界」は押し付けられるべきものじゃない。
堪能しました。
…ただ…字幕が時々ヘンだったのだけ、残念だった(「〜ですわ」って女言葉じゃないのか。それとも爺言葉として当てたのか。とにかく引っ掛かっただけで有罪。惜しい)1500円だからって…
それとついでに開巻早々、ゲシュタポ芝居の場面で、「ハイル・ヒトラー!」の大合唱に迎えられて部屋に入ってきたヒトラー役者が「ハイル・マイセルフ!」と返した(そして、しょーもないアドリブ止めろと演出家に怒られる)のには吹いた。
…コレかいメル・ブルックス!「プロデューサーズ」のクネクネヒトラーの歌「ハイル・マイセルフ」の元ネタは!!
いやきっとそうだ。絶対そうだ。そもそも「生きるべきか死ぬべきか」をリメイクした奴なんだもんなブルックスは(「メル・ブルックスの大脱走」)。
うーん、「メル・ブルックスの大脱走」(1983年)も、見たくなってきたな…
きっとルビッチ師匠のより泥臭くなってるには違いないけど(笑)
DVD ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2007/12/13 ¥1,500
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