シャーロック・ホームズの冒険
2008年1月5日 映画
ビリー・ワイルダー監督作品(1970年)。
とにかくワイルダーにはハズレがない。
大傑作でなくても決して損はしない。
ワイルダーには珍しく、カラー&ワイドスクリーンで描いた名探偵ホームズの冒険と私生活。ホームズを演じるのはロバート・スティーヴンス。あまり他の作品で見たことはない。そのぶん垢もついていないが、微妙に長めで茶色がかった髪に、ホームズとしてはどこか柔らかく「フツー」な印象がある。
Dr.ワトスン役はコリン・ブレイクリー。ホームズと並ぶと背は低いし、立派な口ヒゲと丸みをおびたおデコが、帽子をかぶるとちょっとポワロを思わせる(脱げば、ハゲてないのでポワロ風味は消える)。さてこのワトスン先生、意外と軽くて女好きで序盤から結構笑わせてくれる。ホームズに言わせれば「小説にする際、結構好きなように脚色してる」とかで、二人のやりとりはとても可笑しい。ワイルダー映画の会話がユーモアとウィットに溢れて楽しいのはいつものことだが、バレエ鑑賞後のパーティで四人の白鳥と腕組んで踊りまくる先生の姿はますますもって爆笑モノ♪
軽いようでも底流にある人の良さ、ホームズとの友情と信頼の絆は確かなのだが。
霧のロンドン、重厚な建築と独身男たちの気楽な下宿、そして美しい依頼人(ジュヌヴィエーヴ・パージュ)と共に訪れるスコットランド・ネス湖周辺の自然と、英国情緒満載に加え、ホームズを導く様々な手がかりが(死んだカナリアや小さな棺や)、どことなくお洒落?感があるのもよろしい。じっくりゆっくり描かれる世紀末の風景と華麗な小物類をのんびり楽しみましょう。ついでに兄のマイクロフト(クリストファー・リー!)がえらくスマートでカッコイイ。もっと太ってると思ってたんだがお兄さん。
ただ、意外な真相とさらに意外なその結末を見てみると、事件の性格にもよるのだが、必ずしもホームズ大活躍〜!という印象は強くない(いかにも鋭くウィットにも富んだ魅力的な人物として描かれてはいるのだが)。
むしろ、事件が終わったあとの、しっとりとした情感、ほろ苦いロマンティシズムこそが、見終わった後にどーんと残ります。なにせ原題は“THE PRIVATE LIFE OF SHERLOCK HOLMES”ですものねえ。
そして、ほのかな退廃と憂愁の翳りが、世紀末の魅惑とノスタルジーをいっそう盛り上げるエンディング。
ホームズという神話に心からの愛と敬意を表しつつ、なおかつワイルダー独自の切り口で料理した素敵なホームズ映画でした。監督が撮ったフィルムのうち、実はかなりの分量がカットされてるらしいのですが(残念!)。
まあ、ホームズに対して思いいれや思い込みの強い人には、ひょっとしたら不満が残るかもしれませんが。超人的ヒーローが快刀乱麻の事件解決!というより、ここにあるのはひとりの人間・ホームズのロマンスですし。誤謬ひとつない「ホームズ神大活躍」のみを期待すると、ちょっと評価は微妙になりそうです。あと一時間くらいかけて(ノーカットで♪)前半にもうひとつくらい別の事件やって完璧解決してくれてたら両方の要素をフルにやれてサイコーだったのかも?
多分、今一番主流なホームズ像はジェレミー・ブレットのクールな(人間的でないわけでは決してないけど)ホームズだと思うので、それに比べるとスティーヴンスは意外なくらいウェットな印象。でもこの映画では、それも納得かな。そして軽いようでもやっぱりDr.ワトスンはイイ奴だ…!
私はスカパーで観たが、正規版DVDには、カットされた部分が一部収録されているらしい。こだわる人はDVD買うほうがいいかな?
DVD 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント 2005/09/30 ¥4,179
(おまけ)
そんなこんなで、とっても見ごたえがあるけれど、ちょっと惜しいところもあるので…ホームズ・パスティーシュ映画としては、実はこれって「No.2」。私の一番のオススメは「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」なのでした。
コカイン中毒を治療してくれるフロイト(!)を交えて素敵な冒険を繰り広げるホームズとDr.ワトスン。これもスカパーでやらないかなあ。ニコール・ウィリアムソンのホームズと、ロバート・デュヴァルのワトスン。アラン・アーキンのフロイト、全員カッコよかったです♪音楽も良かったし♪
とにかくワイルダーにはハズレがない。
大傑作でなくても決して損はしない。
ワイルダーには珍しく、カラー&ワイドスクリーンで描いた名探偵ホームズの冒険と私生活。ホームズを演じるのはロバート・スティーヴンス。あまり他の作品で見たことはない。そのぶん垢もついていないが、微妙に長めで茶色がかった髪に、ホームズとしてはどこか柔らかく「フツー」な印象がある。
Dr.ワトスン役はコリン・ブレイクリー。ホームズと並ぶと背は低いし、立派な口ヒゲと丸みをおびたおデコが、帽子をかぶるとちょっとポワロを思わせる(脱げば、ハゲてないのでポワロ風味は消える)。さてこのワトスン先生、意外と軽くて女好きで序盤から結構笑わせてくれる。ホームズに言わせれば「小説にする際、結構好きなように脚色してる」とかで、二人のやりとりはとても可笑しい。ワイルダー映画の会話がユーモアとウィットに溢れて楽しいのはいつものことだが、バレエ鑑賞後のパーティで四人の白鳥と腕組んで踊りまくる先生の姿はますますもって爆笑モノ♪
軽いようでも底流にある人の良さ、ホームズとの友情と信頼の絆は確かなのだが。
霧のロンドン、重厚な建築と独身男たちの気楽な下宿、そして美しい依頼人(ジュヌヴィエーヴ・パージュ)と共に訪れるスコットランド・ネス湖周辺の自然と、英国情緒満載に加え、ホームズを導く様々な手がかりが(死んだカナリアや小さな棺や)、どことなくお洒落?感があるのもよろしい。じっくりゆっくり描かれる世紀末の風景と華麗な小物類をのんびり楽しみましょう。ついでに兄のマイクロフト(クリストファー・リー!)がえらくスマートでカッコイイ。もっと太ってると思ってたんだがお兄さん。
ただ、意外な真相とさらに意外なその結末を見てみると、事件の性格にもよるのだが、必ずしもホームズ大活躍〜!という印象は強くない(いかにも鋭くウィットにも富んだ魅力的な人物として描かれてはいるのだが)。
むしろ、事件が終わったあとの、しっとりとした情感、ほろ苦いロマンティシズムこそが、見終わった後にどーんと残ります。なにせ原題は“THE PRIVATE LIFE OF SHERLOCK HOLMES”ですものねえ。
そして、ほのかな退廃と憂愁の翳りが、世紀末の魅惑とノスタルジーをいっそう盛り上げるエンディング。
ホームズという神話に心からの愛と敬意を表しつつ、なおかつワイルダー独自の切り口で料理した素敵なホームズ映画でした。監督が撮ったフィルムのうち、実はかなりの分量がカットされてるらしいのですが(残念!)。
まあ、ホームズに対して思いいれや思い込みの強い人には、ひょっとしたら不満が残るかもしれませんが。超人的ヒーローが快刀乱麻の事件解決!というより、ここにあるのはひとりの人間・ホームズのロマンスですし。誤謬ひとつない「ホームズ神大活躍」のみを期待すると、ちょっと評価は微妙になりそうです。あと一時間くらいかけて(ノーカットで♪)前半にもうひとつくらい別の事件やって完璧解決してくれてたら両方の要素をフルにやれてサイコーだったのかも?
多分、今一番主流なホームズ像はジェレミー・ブレットのクールな(人間的でないわけでは決してないけど)ホームズだと思うので、それに比べるとスティーヴンスは意外なくらいウェットな印象。でもこの映画では、それも納得かな。そして軽いようでもやっぱりDr.ワトスンはイイ奴だ…!
私はスカパーで観たが、正規版DVDには、カットされた部分が一部収録されているらしい。こだわる人はDVD買うほうがいいかな?
DVD 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント 2005/09/30 ¥4,179
(おまけ)
そんなこんなで、とっても見ごたえがあるけれど、ちょっと惜しいところもあるので…ホームズ・パスティーシュ映画としては、実はこれって「No.2」。私の一番のオススメは「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」なのでした。
コカイン中毒を治療してくれるフロイト(!)を交えて素敵な冒険を繰り広げるホームズとDr.ワトスン。これもスカパーでやらないかなあ。ニコール・ウィリアムソンのホームズと、ロバート・デュヴァルのワトスン。アラン・アーキンのフロイト、全員カッコよかったです♪音楽も良かったし♪
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