華麗なる激情

2007年11月19日 映画
ルネサンスの巨人・ミケランジェロと、彼に「天地創造」を描かせた教皇ユリウス二世を描いたドラマ。
140分の長尺ですが、最初の15分はミケランジェロの業績紹介なので見なくても可。
チャールトン・ヘストンのミケランジェロというのは見る前から既に微妙ですが(笑)、レックス・ハリスンの教皇が見たくて買いました(少数派か?)。1964年、キャロル・リード監督作品。

さて本編が始まると、石切り場から切り出された大理石の塊を運ぶ人夫たちの荷車の列。その脇を、甲冑に身を固めた騎士や歩兵の一団がささっと駆け抜けたかと思うと、いきなり戦闘が始まる。まあルネサンスって乱世ですしね。
そして軍隊が街へ帰還すると、先頭切って駆けていた、特に美々しい青と金の甲冑の騎士が兜をはずす――と、レックス・ハリスンである。ユリウス二世は、教会の権威のためとあらば自ら軍を率いて戦う、言わば軍人教皇なのだ。

教皇は、ミケランジェロの才能を買ってシスティナ礼拝堂の天井に絵を描かせようとする。ところがミケランジェロ自身は、絵より彫刻のほうが得手だし高級だと思っている。
しょっぱなからケンカしている2人。一度は天井に聖人の絵を描き始めたものの、ノれないミケランジェロは突然筆を捨てて逐電したりする。ところが逃げて山に登り、空や雲を眺めるうちに、霊感が降りてきてしまった…
しょうがないから「新しいプラン(創世記)なら描くから復帰させて」と自ら出頭する。
自分の好きなように(なら)描きたい芸術家と、なんとかその手綱を取りたい、でも迎合だけされるよりは、より凄い作品に仕上げてほしいパトロンと。
でもしょせんは人間どうし、たかが給料の支払いでモメることもしばしば…

ひげもじゃで絵の具だらけになって頑張るヘストンには、朴訥不器用なだけでなく、あと少し芸術家のデモーニッシュなところも見せて欲しいところですが、狸オヤジなハリスンが達者なので、2人の意地の張り合いと微妙な友情の展開は結構楽しく見れます。
為政者としては多分一流なんでしょうが、芸術のパトロンとしては時に子供のようになっちゃう教皇が激しく可愛い!ミサのたびに「どこまで進んだかなあ」と見上げる目線が、画家にはウザいでしょうがなんとも可笑しい。


以下、ちょっとネタバレ?


終盤、珍しく弱気になり寝付いた教皇を、(ちょうど以前自分が体壊した時に「早く回復するように」と教皇にヤラれたように)ミケランジェロがこそっと挑発するのですが、「天井画、仕上げなかったら牢にぶち込むぞ、わが子よ!」と、病人がイキナリ飛び起きるもんだから大爆笑。いいのかハリスン、ここまでコメディにしちゃって…しかし彼のおかげで楽しい映画になってんだし、わはははは。
また、ここまでやっちゃってるからこそ、あとヘストンがずーっと半分ぶすたれたようなつまらなそうな苦笑を浮かべたままって所に味が出てくるってのもあるかな。

天井画の完成するエンディングでは、ちっぽけな人間の抱く憧れや理想や、真剣に生きることへのあたたかな共感がしみじみ伝わってきて、結構いい感じに終わりました。
コスチューム以外は、地味といえば地味な映画ですけどね。
オッサンばっかの映画なんて、という向きは見なくていいです(笑)

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