メロドラマティック西部劇大作(1946年)。
ジェニファー・ジョーンズは好みじゃないけど(それにインディアンの血が混じってるということでやや不自然に黒塗りなんだけど)、見始めると結構一気に見ちゃったな。
西部劇の爽快さより家族の悲劇、愛欲愛憎の悲劇って感じが勝っているが、キャストが豪華だからとにかく楽しい。
両親を亡くしたヒロインが引き取られる先の、大牧場の息子たちがジョセフ・コットンとグレゴリー・ペック。
優しく知的な兄がコットン、我儘奔放な色男の弟がペックである。
ついでに兄弟の両親…車椅子に乗った気難しい牧場主がライオネル・バリモア、優しく上品なその妻にリリアン・ギッシュ(サイレント以来の名優コンビだ!)。この二人にも、なかなかのドラマが隠されている。二人の心の行き違いから、夫は真面目な兄を疎んじ不良の弟を甘やかすという良くない状況が生まれた模様。
土壇場になって、彼らの心は再び通じ合うのだが、時は戻らない。
遅すぎた和解に、悲劇は生まれるべくして生まれる。
グレゴリー・ペックって、「いい人」ばっかじゃなく、ちょっとワルの入った役柄やるとかえって味の増すキャラだよなあと、前から思ってた。この作品はその好例のひとつ。
ヒロインは優しい兄に惹かれながら、弟の強引な求愛にはすぐ負けてしまうし(母親も多情な女という伏線がある)「最低の男!」と思っていながら何かあるとつい「あなたしかいない」とペックにしがみついてしまうのだが、それだけの妖しい魅力が、ペックの甘いマスクにはある(笑)
歪みを秘めた家庭で目一杯甘やかされて育ち、規則や人情に縛られるなんてまっぴら!と言って憚らず、倫理観なぞ薬にしたくもないのだが、ふとした時に見せる子供っぽい素直な表情が(子供っぽい表情でダメな行動取ったりもするが)、余計に可愛い。
本気を出せばカウボーイとしての技量もなかなかのもので、きちんと育てられていたら余程イイ男になっていたのだろうに…と思わせるところが、ヒロインをだめんずうぉーかーにしてしまうのだろうなぁ(うぉーかーといってもこのペック1人だけだが)。
ラストは西部劇としても異色の、ペックとヒロインとの決闘(殺し合い)となるのだが(古い映画だし今更ネタバレもなかろう)。壮絶かつ衝撃的な、愛憎の結末だが、まさかと思った彼女に撃たれ、撃ち返したあと、「殺しちゃったか?」と一瞬慌てた可愛い顔になる所とか、もう重傷で自分が死ぬと覚悟した時点で、もはや恥も外聞もなく「こっちへ来てくれ!時間がない!あと一度顔を見せてくれ!」とひたすら哀願の叫びを重ねるあたりも女心をくすぐります。それに応えるジェニファー・ジョーンズも大熱演。
ヒロインに対する行動はもう自分本位としかいいようのないバカ息子なのですが(自分は遊びだと言う癖、彼女に近づく男を情け容赦なく撃ち殺したり)、ちゃんと人を愛するやり方を教えられてこなかったんだろうなあという感じで…。
対する兄コットンが、また意外なくらいイイ感じ。
彼なりの正義感から、父親に批判的な行動を取ったばかりに勘当を食らうのだが、「バカな子(次男)ほど可愛い」モードに入ったきりの父親への愛がないわけでは決してなく、憂愁のかげりをただよわせたインテリぶりがなかなか(*^^*)
なまじヒロインを大事に思っていたがゆえに、不良の弟に横からさらわれ、それを強引に取り返すだけの骨はないのだが、それは要求しすぎかもしれない。
結局恋の相手としては、母親似のロマンティスト(多分)には、彼女は向いていなかったのだろう。
真のインテリは他人だけでなく自分にも厳しい。あえて損な方向へ黙々と踏み込む所は彼なりの筋の通し方である(弟との「決闘」は普通の西部劇ではありえない展開)。
最後の最後、この映画が終わったあとには、ようやく父とも和解し幸せな家庭を築けているのではないかと思われる。それだけの価値のある男として描かれているし、だからこそメロドラマのバランスが美しく整うのだ。
ちなみに唯一、西部劇的な感興を感じられたのは、鉄道会社と牧場主がモメる場面。広大そのものの風景の中、膨大な人数の配下のカウボーイたちが、四方八方から馬を駆ってかけつけてくる。
ディミトリ・ティオムキンのスケールの大きい音楽にのせて、ここはスカッといい感じだった。牧場主の意図自体は偏狭なものなのだが(それで長男ともモメる)。
やっぱり西部劇と家庭悲劇の掛け合わせは、これくらい豪華なキャストが要るのね。
西部劇×家庭悲劇という仕掛け自体に、私は結構そそられるものがある。
なのに、「折れた槍」という、リア王もどきな西部劇(「他人の家」なる現代劇のリメイクらしいが)が、私のご贔屓ウィドマーク様が出てる割に物足らなかったのは、父スペンサー・トレイシーはOKとして、長男リチャード・ウィドマークもまあ多分いいとして(スイマセン)、肝心の三男にロバート・ワグナーというのが格オチしすぎだったのではという気がしますな。せめてモンゴメリー・クリフトとか呼んでこい、です。個人的にはクリフト好きじゃないけど、存在感としてはそのくらいの役者が要るのでは。はは…
DVD ファーストトレーディング 2006/12/14 ¥500
ジェニファー・ジョーンズは好みじゃないけど(それにインディアンの血が混じってるということでやや不自然に黒塗りなんだけど)、見始めると結構一気に見ちゃったな。
西部劇の爽快さより家族の悲劇、愛欲愛憎の悲劇って感じが勝っているが、キャストが豪華だからとにかく楽しい。
両親を亡くしたヒロインが引き取られる先の、大牧場の息子たちがジョセフ・コットンとグレゴリー・ペック。
優しく知的な兄がコットン、我儘奔放な色男の弟がペックである。
ついでに兄弟の両親…車椅子に乗った気難しい牧場主がライオネル・バリモア、優しく上品なその妻にリリアン・ギッシュ(サイレント以来の名優コンビだ!)。この二人にも、なかなかのドラマが隠されている。二人の心の行き違いから、夫は真面目な兄を疎んじ不良の弟を甘やかすという良くない状況が生まれた模様。
土壇場になって、彼らの心は再び通じ合うのだが、時は戻らない。
遅すぎた和解に、悲劇は生まれるべくして生まれる。
グレゴリー・ペックって、「いい人」ばっかじゃなく、ちょっとワルの入った役柄やるとかえって味の増すキャラだよなあと、前から思ってた。この作品はその好例のひとつ。
ヒロインは優しい兄に惹かれながら、弟の強引な求愛にはすぐ負けてしまうし(母親も多情な女という伏線がある)「最低の男!」と思っていながら何かあるとつい「あなたしかいない」とペックにしがみついてしまうのだが、それだけの妖しい魅力が、ペックの甘いマスクにはある(笑)
歪みを秘めた家庭で目一杯甘やかされて育ち、規則や人情に縛られるなんてまっぴら!と言って憚らず、倫理観なぞ薬にしたくもないのだが、ふとした時に見せる子供っぽい素直な表情が(子供っぽい表情でダメな行動取ったりもするが)、余計に可愛い。
本気を出せばカウボーイとしての技量もなかなかのもので、きちんと育てられていたら余程イイ男になっていたのだろうに…と思わせるところが、ヒロインをだめんずうぉーかーにしてしまうのだろうなぁ(うぉーかーといってもこのペック1人だけだが)。
ラストは西部劇としても異色の、ペックとヒロインとの決闘(殺し合い)となるのだが(古い映画だし今更ネタバレもなかろう)。壮絶かつ衝撃的な、愛憎の結末だが、まさかと思った彼女に撃たれ、撃ち返したあと、「殺しちゃったか?」と一瞬慌てた可愛い顔になる所とか、もう重傷で自分が死ぬと覚悟した時点で、もはや恥も外聞もなく「こっちへ来てくれ!時間がない!あと一度顔を見せてくれ!」とひたすら哀願の叫びを重ねるあたりも女心をくすぐります。それに応えるジェニファー・ジョーンズも大熱演。
ヒロインに対する行動はもう自分本位としかいいようのないバカ息子なのですが(自分は遊びだと言う癖、彼女に近づく男を情け容赦なく撃ち殺したり)、ちゃんと人を愛するやり方を教えられてこなかったんだろうなあという感じで…。
対する兄コットンが、また意外なくらいイイ感じ。
彼なりの正義感から、父親に批判的な行動を取ったばかりに勘当を食らうのだが、「バカな子(次男)ほど可愛い」モードに入ったきりの父親への愛がないわけでは決してなく、憂愁のかげりをただよわせたインテリぶりがなかなか(*^^*)
なまじヒロインを大事に思っていたがゆえに、不良の弟に横からさらわれ、それを強引に取り返すだけの骨はないのだが、それは要求しすぎかもしれない。
結局恋の相手としては、母親似のロマンティスト(多分)には、彼女は向いていなかったのだろう。
真のインテリは他人だけでなく自分にも厳しい。あえて損な方向へ黙々と踏み込む所は彼なりの筋の通し方である(弟との「決闘」は普通の西部劇ではありえない展開)。
最後の最後、この映画が終わったあとには、ようやく父とも和解し幸せな家庭を築けているのではないかと思われる。それだけの価値のある男として描かれているし、だからこそメロドラマのバランスが美しく整うのだ。
ちなみに唯一、西部劇的な感興を感じられたのは、鉄道会社と牧場主がモメる場面。広大そのものの風景の中、膨大な人数の配下のカウボーイたちが、四方八方から馬を駆ってかけつけてくる。
ディミトリ・ティオムキンのスケールの大きい音楽にのせて、ここはスカッといい感じだった。牧場主の意図自体は偏狭なものなのだが(それで長男ともモメる)。
やっぱり西部劇と家庭悲劇の掛け合わせは、これくらい豪華なキャストが要るのね。
西部劇×家庭悲劇という仕掛け自体に、私は結構そそられるものがある。
なのに、「折れた槍」という、リア王もどきな西部劇(「他人の家」なる現代劇のリメイクらしいが)が、私のご贔屓ウィドマーク様が出てる割に物足らなかったのは、父スペンサー・トレイシーはOKとして、長男リチャード・ウィドマークもまあ多分いいとして(スイマセン)、肝心の三男にロバート・ワグナーというのが格オチしすぎだったのではという気がしますな。せめてモンゴメリー・クリフトとか呼んでこい、です。個人的にはクリフト好きじゃないけど、存在感としてはそのくらいの役者が要るのでは。はは…
DVD ファーストトレーディング 2006/12/14 ¥500
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