「ニノチカ」を鑑賞(初見)。「桃色の店〜街角」が良かったから。

これをリメイク&ミュージカル化した「絹の靴下」は既に見てる。
DVDも持ってる。私はフレッド・アステアのファンだから♪
でも、アステア(&シド・シャリース)の踊りと華やかなテクニカラーを差し引いても、さすがはルビッチ。堂々の見ごたえ!
セリフ回しや言葉遣いは「絹の靴下」って結構オリジナルからまんま引用してるものが多いけれど、諷刺的なギャグや人間関係の複雑微妙さは、オリジナルにこそ深みがあるなあ。
うーんなるほどー、なるほどー、と頷きながら笑っていました。

舞台は第一次大戦後のパリ。
ゴージャスな恋の都♪
そこへ見るからに不似合いでおマヌケなソ連の共産党員三人組がやってくる。
どうとかこうとか自分たちに言い訳しながら、政府指定の安宿でなく、高級ホテルのロイヤルスイートをとってしまうのは、人間のサガですわね(笑)

実は彼らは、政府が亡命貴族から没収した宝石類を「人民のため」売りさばくべくパリに来たのだが、ホテルから宝石商と電話でやりとりを始めると、それをホテルのウェイターの1人がみるからに怪しく盗み聞き!するりと職場を抜け出した彼が走った先は…(ここらの流れるような状況説明的展開は見事。すわ、何者!?とゾクゾクしました)
さて、今こそ素寒貧でウェイター稼業だが、実は、彼は元ロシアの亡命貴族だった!
一瞬驚いたが、そういやこの時代、激動の20世紀前半、パリはまさに、亡命者たちの坩堝だったのだ!レマルクの小説「凱旋門」(イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエで映画化もされた)などでも知られている歴史的事実である。
いわば亡命者仲間であるウェイターのご注進を受け、宝石の元の持ち主の大公妃(現パリ在住)は、元々私の物だったのよ!と、さっそく行動開始する。

何しろロイヤルスイートが気に入る連中ですからね、大公妃の代理人(兼恋人。ヒモかも?)レオン(メルヴィン・ダグラス)による資本主義的大攻勢=酒池肉林と可愛いメイドさんたちに、三人組はあっというまに篭絡され、当然、ソ連当局は怒って新たな監督官を三人組のもとへ派遣する。

それが、共産主義の理想に燃える冷厳かつ美貌の「同志」ニノチカ(グレタ・ガルボ)。
大公妃との全面対決に備えて法令を研究するかたわら、祖国のために公共施設や建築物の見学もしておこうというデキる女。
その彼女にたまたま道を聞かれたレオン、彼女の正体を知らぬまま、「なんて美しくなんて風変わりな女性なんだ!」と熱烈に口説き始めたのだが…?

カチコチの共産主義信奉者で、パリで見るもの全てが資本主義的堕落に見えて、恋なんて化学反応よ、と言ってはばからないニノチカと、軽薄そのもの(但し愛嬌はある)な遊び人レオンのロマンスはかなり笑える。ガルボの硬質な美貌が、チラとも笑顔を見せないトンデモ系美女としてピッタリで、そのくせ「化学的には共鳴している」とかいって満更ではないのか?な展開、「艶笑喜劇ならルビッチ」の評判に恥じず楽しいです。
そして、ソ連の代表者と大公妃の代理人という、「実は敵対関係」な二人だった、という仕掛けや、その敵対関係を乗り越えても大公妃との三角関係というもう一つのヤマが待っている。この人間関係、ドラマの力学の面白さはさすがだ。

ちなみに、駅へ顔も知らない「新たな上司」を迎えに出かけた三人組が、「あの人かな?」と思って追いかけた男が「ハイル・ヒトラー!」と挨拶して相手と抱き合って(あっ違った)、というシーンもあってたまげました。おかしくも怖い時代背景です。
ルビッチも確かユダヤ系だったはず。
社会へのシニカルで冷徹な目線とロマコメが共存している。凄い…

「絹の靴下」は、もっとお気楽だった。時代背景が50年代になってただけでなく…
まあアステアが踊るだけで一定の価値が生まれるのでそれはそれで良いのだが。

うーん、こりゃ12月発売予定の「生きるべかき死ぬべきか」も予約だな。幸いお安いみたいだし(爆)←1500円

実はニノチカも画像の版でなく500円DVDで見たワタシ(笑)

コメント

nophoto
だぶるえんだー
2007年10月20日15:35

 おお、これもおもしろそうです。しかし・・・・39年製作?ずいぶんと危ない時期の作品なんですね。
  両大戦の狭間は色んな作品の舞台になっているようですね。戦後の作品ですが「エースの中のエース」も楽しかったですよ。脳天気なアクションコメディなのですが、いかにも正統派でね。

ボースン
ボースン
2007年10月20日20:48

ええ、楽しかったです。まあ、4〜50年代あたりのモノクロ映画をあまり見ない人だと、テンポに違和感を感じたりするのかもしれませんが。

ちなみに「エースの中のエース」って、なんだっけ、とぐぐってみて(80年代以降、映画知識ががくりと減ってますんで)…

不覚!
うわ、ベルモンドだったの!とビックリしました。

実は私、ジャン=ポール・ベルモンドも結構好きなんですよね(*^^*)
能天気アクション・コメディならますます良し。彼の若い頃(60年代)の「男」シリーズは、とんでもなく能天気でハイテンポで大好きでした。
社交辞令でなくそりゃ見たいデス(多少老けてきてからのものであっても)。でも日本じゃDVDは出てないみたいですね。彼のDVDって、ヌーヴェル・ヴァーグやフィルム・ノワールばっかり。
男シリーズですら出てないんだもんなあ…(-"-;)

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