パトリシア・ライリー・ギフ著。
児童書、せいぜいがYA本だが、胸に迫る物語だった。

かたくなな態度で、何度も里親の家を飛び出しては別の里親に回される11才の少女ホリス・ウッズ。
今度の里親は元美術教師の老女ジョージーだ。
自分も絵を描くのが大好きな(才能もあるらしい)ホリスは、芸術家肌でおおらかなジョージーに、少しずつ心を開きはじめる。
それでも、何かにつけて思い出すのは、ひと夏だけ一緒にすごした、優しいリーガン家の人々。だけど彼らにはもう会えない。ホリスは唇をかみ締める。
…何故?
やがて、さる事情からジョージーとの暮らしさえも危うくなりはじめ…

カットバックを多用して、伏せられた過去の謎で引っ張る。そしてまた繊細で透明感のある生活描写が素晴らしい。夏の出来事は明るく切なく、そして終盤の厳冬は雪と氷の輝かしさと不安がないまぜに…
淡々としているようでいて、アメリカの田舎の季節の移ろいが、とても鮮やかに物語をいろどっている。
全編、アート系の上質の映画(家族がテーマ)を見た時のような感じがした。「普通の人々」とか。
いやぁあなどれませんわ児童書も(当然のことだが)。

ISBN:437800786X 単行本 さえら書房 2004/04 ¥1,680

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