桑原水菜著。

読み始めてから、ひょっとしたらシリーズ一冊飛ばしてるのかなあと思い至った。うーん…。図書館で借りて読んでるシリーズなのでスグには確かめられない(爆)

話もイマイチ。敵がえらく強くなってて、武田信玄が冥府からよみがえってくるなんて話も出て、バトルがインフレするだけで質が上がってかない、悪い意味でジャンプ的な展開な気が…
どうしよう、前の巻を借りなおしてみようか、それとも切ろうか…
1959年、メルヴィル・シェイヴルソン監督作品。カラー。
ビデオの画像が出ないのでサントラCDの画像を。

1920年代、若き日のグレン・ミラーやトミー・ドーシー、アーティ・ショーなどそうそうたるメンバーを引き連れる売れっ子バンドリーダーだったコルネット(トランペットをちょっと小さくしたような楽器)奏者レッド・ニコルズをダニー・ケイが演じた伝記映画。

ユタの田舎から出てきたレッド(ケイ)は、自分が作曲・編曲した楽譜を山ほど持ち歩く、自信と野望にあふれた青年。歌手のボビー(バーバラ・ベル・ゲデス)と結婚し、結成した自分のディキシーランドジャズバンドは人気沸騰、娘ドロシーをも得て、順風満帆…と思われたが、小児麻痺にかかり歩けなくなった娘の看病に専念すべく音楽を捨てる(家庭を顧みることが足りなかったとの自責の念のせいもある)。が、やがて彼は、十年余のブランクを乗り越え、妻と娘の励ましで奇跡のカムバックを遂げるのだった。

序盤、巷で大評判のルイ・アームストロング(本人)の店に演奏を聴きに行き、酒の勢いでつい舞台に上がりこんで強引にセッションしてしまう場面がいい。上がった途端に気分が悪くなりトイレに駆け込むのだが、ボビーに実力を見せたくて再挑戦、コルネットで「リパブリック賛歌」を吹きつつ客席の端から舞台目指して進んでゆく。ここはちょっとゾクゾクしましたねー(*^^*)

ただ、ここを越える場面が、私にとってはいまひとつ無かった。あまつさえ、奥さんの留守中に娘を夜中に連れ出して「教育上悪い」と怒られたからって、いきなり娘を寄宿学校に放り込む話になる?さっき"魂の兄弟"とか盛り上がってた娘をですよ?まだ「何が何でも巡業につれてく」とダダをこねるなら分かるのですが…。奥さんも一度は娘とブルックリンに引っ込むとか言ってたくせに結局夫について回って、娘に淋しい思いをさせる。そーゆー中途半端をするなー。と、どうもこの夫婦の人間性になじめないものを感じたのでした。音楽と家族愛の感動の名作、というのが一般的な評価なのですが、ひねくれすぎでしょうか私。幼い娘が「パパに裏切られた」という思いに捕らわれるのも無理もない。それを悔んで自らコルネットを海に投げるニコルズですが、娘の為にと、挨拶もなくいきなり楽団も解散してびゅっと新居にこもってしまう。…楽団員たち困らなかったんか、とコレも気になったりする。

父親の過去の栄光を覚えていない娘が大きくなって無邪気にグサッとくる言葉を…とか、奇跡のカムバックへ繋げる終盤はうまくジリジリさせますが、いったん主人公から離れた気持ちが最後まで完全には戻りきらなくて(音楽を捨てたニコルズは悟りきってるわけでもなさそうでイラつき気味だし)、中くらいな映画、としか結局私の中には残りませんでした。残念。

ここ数日のコメント欄のやりとりもあって、ついちょっとドナルド・オコナーと比べながら観そうになったりするのもよくないのだろうけど、まともに見比べるとそんなに似てるわけでもない…多分。個性はかなり違う。歌声はやっぱオコナーの方が好みだな、などと余分なことを思いがちだけど、ケイのモノマネ(サッチモの歌の)は上手いですね。ただ、英語ネイティブな人でないとケイの芸の真の実力は判定しきれないのかも(訛って見せたり変な声出したり)。ケイのせいというより、シナリオの人物設定にけつまずきました。
今度は「虹を掴む男」でも見てみようっと。
ついに、初めて、musicをファイル買いしてしまいました。

起きぬけ、出勤前にAmazon.ukから輸入盤サントラ一枚買って("Call Me Madam")、でもそれが届くのいつ?と思い始めたらたまんなくなってダウンロード販売に手を出した。Amazonのほうが安いかと思ったけどAmazonは結局日本向けにmp3ダウンロード販売してくれないみたいだからiStore。

しかもなぜかiTuneの設定が米国店舗になっていて日本店に変える方法がなかなかわからなくてムカついたし(他国店舗からは買えない仕様)、変えられたら変えられたで、なんで米国店で0.99ドルの曲が、150円なんだーーーーーーーーーー! とさらなるムカつきに襲われました。為替相場と大違いじゃん。日本のアマゾンで欲しい曲入りの輸入盤のサントラCDが激安で売ってるのを知っていたので、ちょっと迷ったけれど「今欲しいスグ欲しい」の衝動に負けました。
あれこれ苦労すると逆に意地でもスグ欲しいと思ってしまうのが人のサガ。ここんとこ毎日AmazonやiStoreで試聴ばっかしてたしな…(←病膏肓)
アルバム中一曲だけですが、強引に購入しちまいました。二度と購入しないかもしれんけど。
0.99ドルって、高いのか安いのかわからん。と、思ったけど、それが150円は高価いと思うぞ(爆)←貧乏人根性。

まっとにかく、これで私のiPodにドナルド・オコナーの“A man chases a girl”が♪

「雨に唄えば」でダンスのうまさは知っていたけど、彼の歌の素晴らしさには「ショウほど素敵な商売はない」のこの曲で初めて気付きました。
「雨に…」ては、コミックソングしか歌わなかったからなあ彼。(恋愛は、全部ジーン・ケリーにおまかせだったし)。しかーし!一見地味ィなオコナーだが、ロマンチックな歌を歌わせると、意外なくらい良いノドなのだ。
なんかこのナンバーには大変に、虚を突かれた。
人間、見た目通りなものよりも、思いがけず☓☓、という意外性にこそ、グラリと揺らぐものなのである。

さあ、iPodでいつでもどこでもウットリだ~♪ ("Call Me Madam"も早く来ないかな…)

体育祭

2010年6月6日 日常
次男の中学校の体育祭を見に行った。バテた。

午後一番の応援合戦で出番が最後だというので、そこまでで先に帰りましたゴメン。
しかし、小学校のようなダンス系の出し物がないと思ったら、この応援合戦がソレだったんですね。選曲と演出も生徒たち自身によるものらしく(私学なんでかなり自由ぽい)、各組かなり出来ばえや傾向が色々で、私のようなミュージカル好きにはかなり楽しめました。小道具(全員に赤いハンカチ)を取り入れたりえらく凝った全体演出をやりとげている組、ギャグをまぜた組、「応援らしさ」が強調されてる組などなど。凝ってるとこはテレプシコーラの六花ちゃんのような、センスのある子(の男の子版)がいる組なのかなあなどと、ほほえましく鑑賞しました。ちょっと真横の位置から見たので、もう少し角度のつく場所にすればよかった。などと、なんか来年も行きたくなったなあ。
1947年、ノーマン・Z・マクロード監督作品。カラー。

大衆向け出版の編集者ウォルター・ミティ(ダニー・ケイ)は、母親(フェイ・ベインター)と二人暮らしの気弱な青年。上司にはアイデアを盗られ放題、毎日口うるさい母親の言うまま通勤途中は買い物に励み、母親の友人の娘(アン・ラザフォード)と婚約中だがイマイチ尊重されていないような…(彼女のペット犬と比べても扱いがビミョー)。冴えない日常のせいか、仕事で読みまくる娯楽小説類の影響か、何かにつけて白昼夢に捕らわれる癖がある。

空想の中のウォルターは嵐と戦う船長だったり天才外科医だったり撃墜王だったり、常に英雄的で洒落者で、傍にはウットリ彼を見つめる美女(ヴァージニア・メイヨ)がいる。ところがある日、夢の美女にそっくりなロザリンド(メイヨ)に出会って以来、ウォルターは妙な事件に巻き込まれる。怪しい組織に狙われている彼女と伯父を、ウォルターは助けることが出来るのか?

最初は逃げ腰だった主人公が、次第に肚が座ってきて彼女のためにと頑張り始めるのだが、組織に捕まり「美女も陰謀も白昼夢の中だけの存在だったのだ」と騙されそうになるクライマックスがいい。空想と現実の入り混じる話というのは基本的に大好きで、点も甘くなりがちな私なのだが(「パリで一緒に」や「おかしなおかしな大冒険」もTVでだが複数回見ている)、空想と現実の入り混じる演出を、逆に必然性のあるものと感じさせる可笑しくて巧妙なシナリオ展開だ(序盤のロザリンドの行動は、ちょっとわかりにくいが)。
そんな陥れられ方をした後でもなお、真相に気づいて再度敵のアジトに駆けつける主人公が、信号待ち中にまたまた空想の中で西部劇ヒーローになってたりするのがまたイイですね。空想してる場合じゃないってのに(笑)。筋金入りの空想家。素敵だ。

敵側では組織のボスより、部下のボリス・カーロフが、ドクターと称するだけに知的で目立つ。メイヨはまあ特にどうということも。母親役ベインターの方が印象に残りました。結構溺愛してるんだけど結果的に支配しちゃってる母親、深刻にもなりうるだろうが軽く描いてる。

ダニー・ケイは、ままならぬ日々に憂い顔なのが可愛かった。白昼夢の中では二曲ほど歌って芸達者を披露。そして特に"Symphony For an Unstrung Tongue (The Little Fiddle)"は、東欧訛(ユダヤ訛?)の偏屈教授カリカチュアと思ったら楽器の恋物語の歌で「その正体はグロッケンシュピール!」のくだりにはわけもなくバカ受けしました。なぜグロッケンシュピール!!名前がぎょうぎょうしいからかしら。コレといいフランス人ぽくまくしたてる"Anatole of Paris"といい、やはりこの人は基本「口の芸人」だなーとも再認識。全身を使う芸ではないんですね。作品によってはもっと体使って踊っているのかもしれないけど。
ただ、面白いのは面白いけど、どアップを多用しすぎるのは芸の見せ方としてはクドい気もします。ぼけーとただ憂い顔で車運転してる時のほうが魅力があるような気も…(爆)

図書館のVHSで視聴。画像がかなりボワワンと滲んできていたので、カラー撮影の美しさで知られたこの映画は、レンタルでもいいからDVDで見たほうがよかったのかもしれません。
実は同時に予約した「ヒット・パレード」も借りているのですが、ケイが2本続いておなか一杯になったので、いつでもタダなんだし一度返して間を空けよう。「ヒット・パレード」は「教授と美女」のリメイクのようだから期待できそうな気はするんですが。

ケイの芸よりシナリオのうまさで★4。
久々にネットレンタルしてみよっかなっと、朝からツタヤDiscusで検索して回っていたら、「あなたへのオススメDVD」欄に「プライベート・バッカルー」が並んでいるのに気がついた(DVD画像出ないのでVHSの画像)。
ぎょわー!

この手の「オススメ」欄に掘り出し物が出たためしはないのだが(アマゾンとか)、こんどばかりは掘り出し物。ビックリしました。だってこのDVD、出演者が多すぎて?10代の頃のドナルド・オコナーなんか出演しててもツタヤのデータ上は出てきてないんだもん(だから人名検索ではひっかからなかった)。
そもそも日本盤が出ていたとは知らなんだ、てんでさっそくレンタル。主演は名のみ知るアンドリュー・シスターズ、オコナーは多分ほんのちょびっとしか出てないけど楽しみです。ふふ。
とにかく日本盤DVDってほとんどないんだもんな、オコナー。

多少まとめて借りる方がオトクなので、コレのほかにもキャグニーやレックス・ハリスンやウィドマーク様(購入する気になれん分)などもレンタル。
…忙しくなるな…
プライベート・バッカルー
プライベート・バッカルー
プライベート・バッカルー
1942年、エドワード・F・クライン監督、日本未公開作品。モノクロ。
典型的な戦意高揚ミュージカル?アメリカの戦意高揚映画ってホントに日本とノリが違うようですね(日本のソレに詳しいわけではないけど)。ハリー・ジェームズ楽団の看板歌手プレンティス(ディック・フォラン)やハリー・ジェームズ本人なんかが軍隊に入って新兵キャンプに行って、でも行く前も行ってからも歌いまくり。アンドリュース・シスターズやH・J楽団や、その他のタレントさんたちも歌いまくり演奏しまくり。トップ・ビリングは三姉妹なんですが、フォランて人も結構いいノドですね。
歌の合間には強引にヘンな軍曹とワガママな大女のカップルがギャグをかましまくり。新兵にしちゃ態度の悪いプレンティスが偉いさんの娘に恋をして反省したりとかもあるけど、どこから見てもどこで切っても構わなさそうな、通常のミュージカル以上に、音楽とギャグを見せるためにてきとーに繋いでる感強し。ちなみに映画の題はフォランの歌のひとつで「カウボーイ一等兵」てな意。
最後には「みんなで兵隊さんを支えましょう」な歌とドキュメンタリー風映像が入って終わります。お約束通りに。

でも音楽を楽しむためのものと割り切ると、そこそこ楽しいです。飽きる前に69分でササッと終わるし。ハリー・ジェームズのトランペットもカッコいいし。

さて、コレをレンタルした動機といってもいいドナルド・オコナー、まだ16才でチョイ役です(年を誤魔化して友達と一緒に入隊してくる男の子)。面影もあるし、美少年とかでは全然ないけど、なんかカワイイ(笑)。あの独特のなで肩が母性本能をかきたてるのだろうか。当時はThe Jivin’ Jacks and Jills というミドルティーンの少年少女ダンスチームの一員で売り出されていた時期で、ただしその中では彼とペギー・ライアンのコンビが人気があったので少し扱いが大きかったという。まあ、チーム中でも徴兵検査ごまかせる容姿年齢ということもあろうが、思ったよりセリフもあるし、確かに彼(と彼女)だけ名前もクレジットされてる。

そして、最後の方にこのチーム10人5組が踊る所もあるのだけど、驚くべきは、このなかなか達者なダンス集団の中での「あの」オコナーの下手さ加減…(^^;)たいがいの子がちょっとくらいは順番にスポット当たってるというのに(ペギーちゃんも上手い!)、彼だけずっとロングで撮られてる。何やってんだドニー!(注:役名)。が、コミカルな演技とかダンス前のマイムはやっぱ上手い、てか、そういう部分から売れたんでしょうか。

まあ勿論、そういう部分くらい上手くないと、ハリウッドで生き残るわけないんですが、うーむドナルド・オコナー、キミ何歳までがサナギで何歳からがチョウチョなんだー!!!50年代の彼はアステア、ケリーにも迫る魅力あるダンサーと思えるのに!!!(歌だけは全く歌わなかったのでこの時点でのレベルは不明…)
そして、彼以外の早熟神童ダンサー君たちは、いったいどこへいったのかな…まあ、少女マンガなどでは“一番ヘタ”と思われていた子が大化けするって、定番ですが(追記:後で調べると、この集団にはトミー・ロールもいたらしいです)。

それでも若いオコナーを見れたのは楽しかったし(「雨に唄えば」「ショウほど素敵な商売はない」以外ろくに日本盤DVD出てない人だし、そもそも日本未公開が多い)、珍品でした。
しかし、やっぱり日本盤が出るなんて、…フシギですこの映画。
高城高著。

明治24年の函館。
維新のどさくさに様々な人物が流れ込んだそこは、欧米や中国の船が多数寄港する、国際港湾都市でもあった。湾岸部を担当する水上署には、いきおい外国語に堪能な者が求められる。
署長は、ロシア語は巧いが山形弁の抜けない元士族。実質的に所轄を率いる"次席"こと五条警部は、若い頃アメリカ西部を放浪し、そこで知り合ったボヘミア貴族にフェンシング(サーベル)の奥義を教わったという経歴を持つ変り種。部下たちも語学力には腕に覚えあり。
多彩なのは船籍だけではない。ラッコやオットセイを狩る密漁船も来れば一国の東洋艦隊も避暑にと立ち寄る。事件が起こると各国公使館にお伺いをたてつつ、苦労しながら進めることも…

登場人物の設定は一見派手だが、実録風に地味ィに当時の雰囲気描写を追及した、連作歴史警察小説。一話目ではあまりの地味さにちょっとグラついたが二話、三話と読み進むうちに次第に引き込まれる。最後には四話しかないのが残念な気持ちに。あと一本収録されている中編は、シリーズの数年前の設定で函館を訪れた(これは史実)軍医森林太郎(鴎外)の視点による物語。
カナダの密漁船の話は、ちょっとグレゴリー・ペックの「世界を彼の腕に」を思い出した(時代だって近い)。いや、ペックみたいなカッコイイ密漁船船長なんて現実にはありえないんだよな、という意味で…(笑)
パメラ・クレア著。

たまに、ふとヒストリカル・ロマンスを手に取ってしまう。タイトルから明白なようにハイランダーもの?なんだけど、幼少期をアメリカでインディアンと仲良く育ったヒーローは現在フレンチ・インディアン戦争中の新大陸でレンジャー部隊の隊長を(無理やり)させられてます。ハイランダー+開拓期アメリカという欲張り設定につい手が出てしまった。

陰謀で奴隷状態に落とされた不幸な元箱入りお嬢様の危機を救ってから、お互いの対立的な出自にもかかわらず、というかたいして相手がわからないうちからラブラブです。ベタだなあ、と思いつつもどんどこ読み進めているところ(笑)ヒロインもオボコななりに「頑張ろう」という気持ちがあるコだから許せるわな。
とはいえ、弟二人にも相手を見つけてシリーズ化する予定ってのは、やめてほしいかも…ありがちすぎですよ最近。

<追記>
後半に入ると、キレやすすぎるヒーローにちょっとNG感が。ヒロインは引き続き頑張っていて、悪役と見えた貴族のウェクスフォードがサポートにはいったりして面白い役回りになる。なんか少女漫画みたいだ。
1946年、ジョン・クロムウェル監督作品。モノクロ。
コレのミュージカル化リメイクがあの「王様と私」です。

19世紀後半、シャム(現在のタイ)のモンクット王(レックス・ハリスン)は王国の近代化をはかるべく英国人女性アンナ(アイリーン・ダン)を王子王女らの家庭教師として招聘する。未亡人のアンナは幼い息子とともに、右も左も分からぬ異国に足を踏み入れるが、風俗習慣や人権感覚の違いから時には王と衝突し、時には手を取り合いつつ、シャムの未来のために長い年月をこの地で教育に打ち込む。二人の心の触れ合いをじっくりと描いた作品。

列強に狙われる国の将来を憂えて近代化を目指し、非常に勤勉でありながら、古い「王=法律」の感覚を脱ぎ捨てきれないエキセントリックな国王と、正義感が強く意地っ張りな未亡人のやりとりは結構面白い。アイリーン・ダン、それなりのトシになっているがそれなりに綺麗だし、あれだけ勝気な女性が終盤突然の不幸にドーンと落ち込む所のめりはりなども好演。
女性陣では美しい侍女タプティムにリンダ・ダーネル、でも控えめだが非常にデキた第一夫人ゲイル・ソンダーガードが印象的。あと宰相をリー・J・コップが演じてたので驚いた。アンナが気に入らないのかと思うとそうでもないようで、腹に一物かと思ったら忠臣でした。これも熱演ですが、やっぱ東洋人には見えないね(笑)

レックス・ハリスンもちょっと妙な"東洋的"メイク。まだ結構若くてスリムで顔が大変細長い(メイクのせいで余計にかも?)。いつも以上にキンキン声の早口でまくしたて、笑いも取るがここぞというところの威厳や知性はさすが。この人、意外と世界中の君主を演じてきている人で、シーザーにローマ法王ユリウス二世に黒塗りでイスラムの英雄サラディン王まで…シャム王がその第一弾か。Rex(ラテン語で"王")なんて名前が効いてるのか?なんて思うと可笑しいですが、君主というレア存在の滑稽さと孤独、威厳と人間味を絶妙のブレンドで表現できる名優です。せっかく若いのに変なメイクがファンとしては少し残念(あのマユ毛はヤだ…)。

ちょっと上から目線なのが、今となってはアレですけどね(笑)(しょせん白人映画だし)。

あと、「王様と私」でユル・ブリンナーが唱えていた「エトセトラ、エトセトラ…」も既にハリスンが唱えていたので、なんだかびっくり。「王様と私」はすんごく昔にTVで見ただけですが。でもロジャース-ハマースタインミュージカルなんで、思い入れは全くないのでした(笑)

1933年、ロイド・ベーコン監督作品。モノクロ。
ジェームズ・キャグニーのミュージカルを見たくてレンタル。

時代はトーキー映画興隆期。これまで生のレビューを上演してきた劇場は、安価なため客を呼びやすい映画にどんどん乗換えつつあった。
舞台監督ケント(キャグニー)も、夫の将来に見切りをつけた妻に離婚届を突きつけられる。が、アイディアマンのケントは献身的な秘書ナン(ジョーン・ブロンデル)と共に、様々な工夫で安価で魅力的なレビューを作り続けようとする。

勿論問題は山積。ライバル会社が彼のアイディアを盗み続けるばかりでなく、共同経営者は帳簿をごまかしてケントのサラリーをピンハネし、その妻は自分の気に入りの青年を舞台に強引に売り込んでくる、まさに内憂外患。
おまけに性悪美女に引っ掛って婚約しかかるし、社運を賭けた大勝負な舞台直前、元妻が「婚約したそうだけど、離婚届はまだ出してなかったのよ」と強請にやってくる。女を見る目ないのね。秘書の献身と愛情にこたえる気になるまで、なんでこんなにかかるのか。
モノ凄いスピーディな演出で、キャグニーのワーカホリックぶりとピンチの連続が描かれて、息つく暇もない。

そして、舞台の直前に主演男優が酔いつぶれるのがキワメツケ。
が、もちろんコレはお約束でもある。
「しっかりしろ!」と袖でもみあったはずみに、最後の舞台に転がり出てしまったのは主演男優でなくケントのほう。肚を据えた彼は、そのまま自分で見事なステージ「上海リル」を演じきるのだった。(たまたまどちらもタキシード姿だった)

…ああ…
キャグニーin「上海リル」、めっちゃカッコイイです!ちょいと崩したタキシードは男の色気、途中乱闘シーンをはさんで(小柄なのに超腕っ節が強そうなんですねキャグニー!)、水兵服に着替えるとこれまたキュート。しかし、ここまで待たせて一曲だけって、とっても勿体ないような。練習場でタップの実力はちらちらっと見せてくれるんだけど、引っ張る引っ張る(^^;)。

まあそれだけ、当時のワーナーとしては結構豪華キャストのミュージカルなんですよね。キャグニーの相手役はブロンデルだけど、ワーナーのトップミュージカル女優ルビー・キーラーは歌手ディック・パウエル(共同経営者夫人の被保護者)とカップルになる。
キーラーは何故か最初はメガネの事務員で、パウエルにちょっかい掛けられて突然「舞台に戻るわ」とお洒落して戻ってくるという、フシギな設定。急に美人になる…といっても、序盤のメガネっ娘ぶりもとっても可愛い。小柄なのでキャグニーともマッチするし「上海リル」の「東洋風」メイクもなかなか可愛い。水中レビューまでやるのはビックリだが、エスター・ウィリアムズ以前にこれだけやれてたのね…水中レビューという手法はそんなに興味はないのだけど、振付のバスビー・バークレーは好きなんだろうな。幾何学模様も作り易いし。

でもやっぱり!最後の「上海リル」が一番素敵だったですね、ミュージカルナンバーの中では。
もっとキャグニーを踊らせてほしかった(まあその、何でも踊れるというタイプの人ではないのかもしれないけど。それに踊ってなくても常にリズミカルで勢いの良い印象の人だけど)。

あと、トーキー興隆期って、ほんとにこんな風に、映画本編上映のあいまに短いレビューを見せるなんてことがあったんだろうか。ウソ描いても仕方ないだろうが、今見ると全く驚きである。
海堂尊著。
代理母出産についてがんがんブチあげる「ジーン・ワルツ」の姉妹編(母娘編?)だった。

なぜだか緊張が抜けきらない、ちくちくする母と娘の関係性が面白い。私自身はオヤに敵意を抱いたことなどほとんどないぼーっとした子だったから、どちらかというとぼーっとしているのが母親のほうであるこの物語、主人公のみどり(母)の語りは読みやすくふにおちた。
「ジーン・ワルツ」と同じ話の裏側なだけなのに?一気読み。
ドナルド・オコナー @ YouTube
ドナルド・オコナー @ YouTube
iPodにドナルド・オコナーが、先日DL購入した一曲しかない!
(「ショウほど素敵な商売はない」の"A man chases a girl")。
海外注文中のサントラCDはまだ届かない。毎日聞いているが(オイ)さすがに淋しくなったので、YouTube内をうろうろして何かないか探す。さすがに11歳で映画デビューしただけあって 60年代以降はろくに映画に出てないのに、妙にいろんなモノがYouTubeにあって寝不足だ。

手を出そうか迷ってる“Something in the Wind(1947)”(オコナーとディアナ・ダービンの共演)まで、HQ画質で丸々あった。しかし、字幕無いしな~。米盤ディアナ・ダービン・ボックス(六作品入り)を買えば字幕は手に入るわけなのだが…値段は安いが、うーんうーん。見たいのはそのうち一作だけなのにボックス買いして他のは放ってるモノが既にいくつも家にあるし…。でもとりあえずDL。

TVショーでも案外良いものが拾える。60年のジーン・ケリーとのスペシャル番組など、綺麗画質のDVDで誰か出してくれないんだろうか。Sitting danceは素晴らしい。私なら絶対買う。

http://www.youtube.com/watch?v=fnFiqRiZh1s (二人だけのショートバージョン)
http://www.youtube.com/watch?v=9fotT7IlQZg (頭にケリーのソロが2~3分入ったフルバージョン。画質はこっちのが良い)

しばらく前にDL済だったが、最近改めてオコナー熱が上がって彼に詳しくなってから見直したら一層楽しめた。ダンスの合間にお互いの持ち歌を歌ったりするのだが曲がみな分かるようになっており、何と「喋るラバ・フランシス」ネタまで入っていてニヤリ。オコナーが歌う「雨に唄えば」も素敵です(ほんのちょびっとだけだが)。

iPod shuffleにはサントラCDにない筈の「ショウほど…」の“Midnight Choo Choo”オコナー&ゲイナー版と、なぜかドリス・デイとレコーディングしてる“No two people”(ダニー・ケイの「アンデルセン物語」の曲らしい)をmp3変換して投入。
…しかしなんでソロ曲がないんだ…
あの(意外な)美声があってこそオコナー。ダンスや小芝居は上手くても、それだけではまだまだ、真の彼、実力全開の彼じゃない。…早く注文商品来ないかな…

でもま、これでしばらく耐えられる、でしょう(笑)。


<追記>
これは"Pontiac Star Parade"というケリーのTVスペシャルの一部だったのですが(振付もケリー)、なんと、約2カ月後、iOfferでDVDをゲット出来ました!画質は悪いけど、超珍品~!
ケリーとデュオ"Shall we dance?"、もう一人のゲストキャロル・ローレンスも交えて三人の"BimBem"、ヴォードヴィルメドレーなど盛りだくさん。オコナーのソロとしてTV版"Make’em Laugh"なんてのも入ってました。違う曲(Smile, Darn you, Smile)なんだけど"Make’em Laugh"とだいたい同じ振付。ナマだからかさすがに壁上がり宙返りは割愛されていましたが…

殺人幻想曲

2010年6月15日 映画
1948年、プレストン・スタージェス監督作品。モノクロ。

レックス・ハリスンだし、プレストン・スタージェスだしで気になっていたけどなかなか見なかったのは、珍しいハリスンの口ヒゲのため。彼は結構お気に入りだがこのヒゲはどーかなー…と…。まあ、見ているうちに次第にそれほど気にならなくなったけど(よくいえばエロール・フリン風)。

世界的に有名な英国人指揮者アルフレッド(ハリスン)は若く美しい妻ダフネ(リンダ・ダーネル)にベタ惚れ。ところが彼の海外公演中、若くハンサムな秘書の部屋を彼女が深夜に訪れていたらしいという話を聞く。アルフレッドは指揮をしながら、演奏会が終わったら二人をどうしてくれようと、危険な空想妄想をたぎらせる。曲が変わるたび気分も変わって、完全犯罪の計画を練ったり許す気になったりと忙しいが、演奏自体はなぜかどの曲も絶好調。熱狂してアンコールを求める聴衆を放り出し、自宅に飛んで帰ったアルフレッドは…

リンダ・ダーネルは綺麗だけれど(ただ私の趣味ではない)、もう全編ハリスンの独り舞台。冒頭の愛妻ベタベタぶりはもう呆れるしかないザマなのだけれど、オケのリハーサルに出ると一変して見事にカッコイイ指揮者ぶりを見せてくれ、私はここですっかり嬉しくなってしまいましたね。結構子供じみた人物なんだけど「指揮者としてはホンモノです」感を抜かりなく示してくれる一幕で、コレがないとタダのアホ中年ですからね。指揮棒振りつつ景気よく指示を飛ばし、髪も振り乱し、ノリノリ感が凄いです(曲はロッシーニのセミラーミデ)。やっぱ上手いなハリスン。ここでは主人公まだ不倫疑惑に至ってないですしね。

不倫疑惑へ至るまでだけでも大騒ぎ。プライドの高い彼は、義弟が探偵を雇ったと聞いて怒り心頭、報告書は読もうともせず、破って焼いてボヤを出すわ、文句を言いに探偵社まで乗り込むわ。探偵社の社長がクラシックマニアなのが更に笑わせますが、それで調子を崩されたスキに、聞きたくなかった報告書の中身をサラッと口に出されてしまう。

ショックを受けた指揮者の豹変ぶりがまた極端、現実と妄想を自由に行き来するハイテンションなコメディだ。スタージェス監督、達者なハリスンにもう好きなだけ突っ走らせてる感じ(笑)

妻と間男を葬り去る完全犯罪計画に高笑いしながらロッシーニを振り切ると、二曲目はワグナーのタンホイザー序曲。突然「二人の愛を許そう」と毅然と身を引くパターンの妄想に浸りはじめるアルフレッドがまた可笑しい。スタージェス、タンホイザー好きなんだなあ…、「レディ・イヴ」でもバーバラ・スタンウィックがハネムーン中突然「乱れた過去の懺悔(大ウソなのだが)」を始めるシーンでバックに切々とタンホイザーが流れていた。欧米人には「分かりやすいギャグ」なのだろうか。肉欲の愛と清らかな愛、そして許しがテーマなんだっけこのオペラ…きちんと見たことはないけれど(笑)

三曲目(チャイコフスキー!)の妄想は未見の人のために伏せておくとして(笑)、まあご想像通り、妄想の実行はなかなかスムーズにいきません。ドタバタがエスカレートする終盤はちょっとダレそうになるけれど、最後までハリスンの演技にメリハリが効いているので割と急転直下なエンディングもストンとはまって気持ちよく見れました。

ハリスンの独特のセリフ回しや演技が嫌いな人には薦められないが、面白かったです。
1953年、ジョージ・シドニー監督作品。カラー。

ずっと気になりながら、未見だったMGMミュージカル。何故か?
気になる趣向と、趣味じゃないのでは、ととためらう要素が入り混じってたからだ。安直に言うとそもそも贔屓のスターが出ていない。ミーハーと言われようと、私の映画の見方なんてそんなモンである。

ハワード・キール=キャスリン・グレイスンのオペラティックヴォイスの歌カップルは、確かに「MGMの顔」な実力派だが、私の好みはアリアをぶつけ合う歌劇タイプより、軽快なダンスたっぷりなミュージカル。
一方、確かに実力派のダンサーがいっぱい出てるのも確か。アン・ミラー以外はあまりちゃんと作品を見たことはないが、男性陣トミー・ロール、ボビー・ヴァン、ボブ・フォッシー、女性陣にキャロル・ヘニーと気になる名前が揃う。もう一人の女性ダンサー、ジーン・コインはジーン・ケリー夫人らしい。「ザッツ・エンタティンメント」で一部を見たのみで、気になるのは気になってた。

物語もひとひねりしたもの。シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」をミュージカル化して(「キス・ミー・ケイト」というタイトルで)舞台にかけようという連中のお話で、劇中劇とオフステージの人間関係が交錯する。そういう工夫はとてもソソられる。以前に、現実と空想が入り混じる話が好き、と日記に書いたがそれと同じで期待せずにはいられないネタだ。…ただし今時「じゃじゃ馬ならし」が素直に楽しめる話なのかというとビミョーだ。特に女性には。
そんなこんなで期待半分不安半分に見始めた。

タイトルバックの劇中曲メドレーでちょっと盛り上がる。コール・ポーター、佳曲揃いだ。
冒頭、座長のフレッド(キール)が"コール・ポーター"(ロン・ランデール)と前妻の女優リリー(グレイスン)を家に呼び、「キス・ミー・ケイト」への出演を打診する所でまず"So in Love"。ドラマチックでなかなか。
飛び込んできて"Too Darn Hot"を踊るのがもう一人の主演女優ロイス(アン・ミラー)。本命は共演ダンサーのトミー・ロールらしいが("Why Can’t You Behave""Always True to You in My Fashion")、座長にもベタベタするチャッカリ娘なのでリリーはイライラ。この元夫婦、多少は互いに未練がありそうだ。ケンカばかりだが開幕直前にふと新婚時代ドイツで共演した舞台を回想し"Wunderbar"を仲良くデュエット。これは素晴らしくノリのいいゴージャスなワルツ。

舞台美術や中世風の衣装はカラフルで実に目に楽しい。シェイクスピア劇だからみんなタイツだが、長身のキールを初めとしてさすがに男性陣皆スタイルいいですしね。どうでもいいがコッドピースはつけていない。時代考証より見た目重視だ(笑)。
芝居は賑やかにスタートするが("We Open in Venice")、借金取りのギャングが押し掛けてきたり、フレッドが花を送り間違えてリリーを激怒させたりと進行は波乱含み。舞台上で主役二人は本気でひっぱたきあい、「降りるわ!」と叫ぶリリーをフレッドはギャングまで利用しアドリブ連発で引きとめる(笑)
リリーを迎えに彼女の婚約者まで劇場にあらわれ、フレッドはついに強引な手を使うことを諦める。が、「代役を呼べ」と沈んだ表情で最終幕の舞台に歩み出たフレッドの前に、去った筈のリリーが衣装をつけて、笑顔で待ち構えていた。舞台は万雷の拍手とともに幕を閉じる。

せっかく人間関係が錯綜してるのに…説明不足(特に後半)が非常に惜しい。フレッドとロイスの関係がどの程度かも、リリーが何をきっかけに戻ることにしたのかもよく分からないし、また婚約者とロイスは知り合いらしいが、全然ソレも生かしてない。
私はミュージカル・ナンバーさえ楽しめる出来ならストーリー自体はあまり気にしない方だが、これはさすがに気になる。婚約者と去ったあと、何があったんだリリー!!!

ミュージカル・ナンバーについては、結構イイとは思う。ただ、好みに合ったものを上から数え上げると、"Wunderbar"と飛び入り出演体験が気に入ったらしいギャング二人組が歌い踊る"Brush Up Your Shakespeare"が最右翼。次が"So in Love"そして劇場の看板が映った時に流れた曲が良かったなあ。…って、なぜ全てオフステージの曲(爆)
しいて舞台上での曲で一番楽しいものを選ぶとオープニングの"We Open in Venice"…というのは、なんだか気持が尻すぼみ。
舞台での歌は、悪くはないんだがオペラ調なので、私は少し飽きるんですね。特にキールの"I’ve Come to Wive It Wealthily in Padua"、"Where Is the Life That Late I Led?"なんか、結構いいんですがもう少し短くしておくれ。

ダンスについては、レベルは高いと思うんですが、やっぱり私はあまりアン・ミラーが好きになれないなあ…。もうちょっとスマートさとか軽やかさが欲しい。トミー・ロールは確かに凄いです、ジャンプの滞空時間が妙に長い。フォッシーとヘニーのダンスもとても斬新でカッコいいのはわかります、ただ、好みに合うかといわれるとそうでもない、凄いなあとは思いつつも。トミー・ロールはミラー以外の相手と踊る所を見てみたい気もちょっとはしますが…
ダンスには素人のギャング(キーナン・ウィンとジェームズ・ホイットモア)の素朴な歌と踊りが一番楽しかったりするのは、どうしたもんなんでしょうね。不思議なもので、ダンスナンバーの好感度、ウットリ度は、技術の高さだけで決まるものでもないんですよね(少なくとも私には)。

というわけで、とても楽しめるナンバーがいくつもありましたが(キールとグレイスンのコンビは期待以上だったし。ガタイのいいキールは役にぴったり、“小娘”臭くみえがちだったグレイスンも堂々たるもの)、やっぱりビミョーさも残す作品でした。いやー、もったいないなぁ!

Anything Goes

2010年6月18日 映画
Anything Goes
ついに…“Anything Goes”こと「夜は夜もすがら」dvdが届いてしまった。

「ついに…しまった」などというのは、コレが、『50年代のミュージカルで』、字幕付(英語字幕であっても)で手に入るドナルド・オコナー作品の最後の一枚だからである。あと『I love Melvin』の米盤が出てるが字幕なし。買う度胸はまだない。

観るのが惜しい。それでもちょっとだけ見ちゃった。
明日にでもあらためて全部見ます。ふぅ…(嬉しいのかさびしいのかフクザツ)

http://www.amazon.com/Anything-Goes-Bing-Crosby/dp/B000A6T1I6/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=dvd&qid=1277011259&sr=8-2

エデン

2010年6月19日 読書
近藤史恵著。
「サクリファイス」の草食系ロードレーサー、白石誓が帰ってきた!(違)

いやまあほんとに続編なんですが。ミステリ風味は薄くなっていますが、やはり長丁場のツール・ド・フランスや、海外で戦う日本人の様子が面白くてどんどん読まされる。でももう一作は出ないかもな。相変わらずあまりモテてないようです。私は、こういう控えめなのにほんとはえらく実力が…というキャラが大好きなんですが、世の中はそうとばかりではないようです(^^;)
夜は夜もすがら
夜は夜もすがら
夜は夜もすがら
1956年、ロバート・ルイス監督作品。カラー。

ブロードウェイのベテラン・ビル(ビング・クロスビー)とTVショーで人気が出たテッド(ドナルド・オコナー)は、次の舞台で共演することになった。あとは主演女優(一人)を決めるだけだが、ビルは英国でパッツィ(ミッツィ・ゲイナー)を、テッドはパリでギャビー(ジジ・ジャンメール)をほぼ同時に見出し主演を約束したからさあ大変。NYへ向かう豪華客船の中、頭を悩ませる男二人と何も知らない女二人、4人の思惑と恋心が錯綜する。

米盤DVD(英語字幕あり)で鑑賞。数少ない日本公開済ドナルド・オコナー出演ミュージカルだが、正直この脚本、もって回ったセリフが多い。曲名だって"Anything Goes"だの"I Got a Kick of You"などと、そのへんの日本人(=私)には「どーゆー意味?」と戸惑うような題のものが多い。いつになく字幕の読み取りに手間取り特に前半もたついた。(辞書片手ではねえ…)。パッツィの父親も官憲に睨まれている気配だが詳細が理解できない。多分、脱税容疑だと思うんだけど。日本盤、…出ないかなあ(泣)

舞台からの二度目の映画化だが、元の脚本に大好きなP.G.ウッドハウス(英国のユーモア作家)が噛んでいるのが原因でセリフが凝っていたり口語的だったりするのかもしれない。AがBに言った言い回しをBがCに対して使うという繰り返しのクスグリも、じっくり観直すと散見されるイイ台詞も思えばウッドハウス調なような。話自体はたわいもないし、たわいもない話で爆笑させるのがウッドハウスの筆力なのだが(少なくとも小説はそうだ)、イマイチ物語がダラダラして面白くならないのは脚色のシドニー・シェルダンのせいか監督のせいか。

舞台オリジナルのコール・ポーターの曲(あまりキャッチーでないものが多い)に、サミー・カーン&ジェームズ・ヴァン・ヒューゼンの3曲が追加されている。
何はともあれキャストは豪華で、楽しいナンバーは多い。最初のナンバーは、クロスビーとオコナーが初顔合わせで歌い踊る"Ya Gotta Give The People Hoke"。定番ギャグ(パイ投げとか)を称えるコミックソング。
ちなみに初対面のテッドはビルに「こんなに(自分の腿のへんを示しつつ)、小さい頃からファンだったんです」と熱く語りかけ、ビルを渋面にする。「バンド・ワゴン」のチャリシー&アステアの初対面シーンを連想した(笑)実は子役出身のオコナー、12才の時既に一度ビング(当時35才)と共演済なのだ。兄弟役だが「父親的なイメージが出来てしまっていたので「夜は…」の"友人兼パートナー役"は最初やりづらかった」との話も読んだことがある。

続いては主演女優候補たちのお目見え。まずゲイナーがタイツでピチピチと歌い踊る"Anything Goes"。キュートだ。スタイルいいなぁゲイナー。柔らかそーな背中のライン、キュッと締まったウェストとまあるい腰つき、それと相反する?親しみやすい笑顔で、セクシーでかつ可愛いぞ!パリのジャンメール"I Got a Kick of You"はボーイッシュな黒い衣装でポージングが格好いい。ただ、このテのモダンバレエっぽさ(ローラン・プティの奥さんだったんですね)やシャンソンぽいアルト声は、あまり私の趣味ではない、スミマセン。シャツ襟は似合うが肩の開いたドレスは似合わないし…(だって肩ガッチリしてるから)

"You’re The Top"は船内の隣り合うジム二室で、ビルとパッツイ、テッドとギャビーが隣室の様子に気づかぬまま同時に歌い踊る。クロスビー一人が踊れないというナンバー(笑)ジャンメールはここの踊りが一番さらっとして好み。

漸く4人が揃ってみると、テッドとパッツィ、ビルとギャビーの間に恋の灯がともり、主演女優を一人に絞るのが一層難しくなる。甲板でオコナー&ゲイナーの踊る"It’s De-lovely"は明るい中にも初々しいロマンチックさがあり魅力的。恥じらうゲイナーはピンクの薔薇のつぼみのよう、テレっとしたオコナーも可愛いし、私はこういう清潔感のあるダンスが好きなのだ。クロスビーはエキゾチックな旋律の"All Through The Night"を歌い(意味不明の邦題はこの歌から来たか?)、ジャンメールはチュチュ着て(空想の中で)踊る。ただ、この手のバレエっぽさ以下略。

オコナーには"You Can Bounce Right Back"という楽しいソロもある。遊戯室の子供たちとゴムボールを投げっこしながらのタップの妙技には見惚れるしかない。

"A Second Hand Turban And A Crystal Ball"は、誤解や何やで引きこもってしまった女性陣を引っ張り出すべくビルとテッドが船内で企画する特別ショー。歌う似非マジシャンに扮したクロスビーが、珍道中シリーズ以来定評ある胡散臭さ全開で飛ばしまくり(笑)、それをおとなしくボケ役に徹したオコナーがガッチリ支えて、あまり意味もなくダラダラした場面…と思いつつも妙なおかしさに満ちている。
案外ラストの"Blow Gabriel Blow"より良いかも。四人が歌い踊るエンディング曲だが、羽の動く帽子が可愛い(それだけか)。

クロスビーのパラマウントでの最後の映画だそうな。最後の二曲は特に彼をたててる感強し。
私はオコナー見たさでDVD買ったのだが、誰のためにもあと少し、脚本や演出がしゃきっとしていればなぁ。そんなに長々と悩まなくても、二人もタレントを見つけたなら脚本を書きかえればいいじゃん、って、誰でも思いつくし。まあそれでも、出演者の芸が見たい、と思えば見てソンはないだろう作品(ミュージカルナンバーがなければ★2)。

ただ、オコナーとクロスビーの間のケミストリーは期待ほどでない。テナーどうし、音域声質が比較的近いのが裏目に出たか、デュエットだとオコナーの味が目立たなくなる傾向が。私はオコナーの声の方が好きなくらいなのだけど。彼はダンサーにしては非常に綺麗な声とテクの持ち主だと思うが、天下のビング・クロスビーと全く同じ土俵に上がれというのは酷でしょう(もっとヘタだったり声質がかけ離れている方が味が出たろう)。勿論一緒に踊ればオコナーの身ごなしが目立つのだがそれは当り前、引き立て合ってこそ“ケミストリー”。大歌手との競演でも"Call me Madam"でのエセル・マーマン(アルト。舞台版Anything Goesにも主演したとか)との歌のケミストリーは素晴らしかったのだが。
ベルンハルト・シュリンク著。

15歳の頃夢中で恋し、体を重ねた10歳以上も年上の女性。会うたび彼女に様々な本を朗読してあげるのも楽しい習慣になっていた。ある日突然消えた彼女の姿を、大学生になった「ぼく」は何年ぶりかで偶然に発見する。それは、戦時中のユダヤ人捕虜収容所の女性看守たちを裁く公判の被告席だった。
戦争を、ナチスを直接知らない若い世代が思いがけない形でつきつけられた過去のこだまは、彼の人生をどう変えるのか…?


ひと昔以上前のベストセラーを、今頃読むことになったのは、とあるかたから「登場人物たちがウィドマーク出演映画の話をする場面がチラッとあるらしい」と教えていただいたせい(笑)
でもさすがに面白かったです、話題作だっただけはある。面白いと簡単に言ってしまうにはややこしい物語で、うまく感想をまとめられませんが、後半は一気に読んでしまいました。映画にもなったらしいけど(「愛を読むひと」)、映画を見る気にはあまりなれません…

ちなみに、小説中の映画は、タイトルは書いてないけど明らかに「ワーロック」でした(笑)
レディL
レディL
レディL
1963年、ピーター・ユスティノフ監督作品。

大昔に一度TV放映を見た作品ですが、BS放映を録画してもらいました。いやー、なかなか綺麗画質ですなー。必ずしも満足いかない所もあった微妙なコメディですが、もう一度見直してみたかった作品。

英国きっての大貴族未亡人、"レディL"こと80歳のレンデール公爵夫人ルイーズ(ソフィア・ローレン)は、貴女の伝記を書きたい、と請われて自分の半生を回顧する。
フランス人のルイーズは若い頃、パリの貧しい洗濯女だった。"理想の王子様"を待つ純情な彼女は、ある日義賊として庶民に人気の泥棒アルマン(ポール・ニューマン)と出会い、一目ボレ。二人はスイスへ逃げて愛の巣を営むが、やがてアナーキストの仲間に入ったアルマンは、バイエルン王暗殺計画に加わろうとする。
妊娠したルイーズは子供のためにも、と暗殺計画を阻止すべく別行動を取るが、そんな彼女を見染めたレンデール公爵ディッキー(デヴィッド・ニーヴン)は、アルマンを逃がすのを手伝う代わりに、自分と(お腹の子ごと)結婚してくれと"取引"を持ちかけるのだった。以降三人の人生は、奇妙に絡まり合って進行してゆく……

…うーん…
二時間足らずの映画で、ディッキー(ニーヴン)登場がちょうど真ん中あたりですが、そこまでの長かったこと…
粋でエキセントリックな貴族を演らせて右に出るもののないニーヴンとは対照的に、ニューマン…どうもミスキャストとしか思えなくって。ルイーズが一目ボレするだけ十二分にハンサムだし、結構好きな人なんだけど、大昔は勉強部屋に「明日に向かって撃て!」のポスター貼ってたくらいに好きだったんだけど…この人、ソフィスティケイテッド・コメディだと妙に重ったるい気がする。随所にちりばめられたスラプスティックな演出が盛り上がらない。
ローレンもやや重いが、頑張ってる感じではある。ま、ルイーズは素朴な頑張り屋でOKだし。

義賊のアルマンは言うなれば"永遠の子供"であり、アナーキスト志願は"永遠の少年"。が、シナリオの説明不足もあって何考えてるのか分からないし、この映画中のニューマンは「頭悪いんじゃない?」と思えて仕方がない…。今時アナーキストってどうよ?てのは別にしても。

元々リアリズムとは縁のない、ゴージャスでファンタジーな物語で、最後のオチなど、いいんかソレ?とツッコミたくなるようなぶっ飛んだ話。ニーヴンはいつも通りに素晴らしい。彼はぶっ飛んだ話を得意としているスターですね。伝統の闇に捕らわれていながらルイーズのシンプルな純愛に心惹かれる、洒脱でスマートな中にも陰影ある複雑な人物をユーモアたっぷりに演じて魅力的。セリフもいちいち心憎い(要するにこの映画、彼を再見したかった私)。なんでこんなに魅力的で、ありえない程親切な公爵よりも頭悪そうなアルマンがいいのか、とつい思ってしまう。恋とは理屈を超越するものではあるが、しかし、…もう少しなんとかならんかったのかニューマン。
これがジャン=ポ-ル・ベルモンドあたりならきっと楽々と、魅力たっぷりに演じてのけただろう。何考えてるのか分からなくても魅力的、というのは全く表現不可能なわけではない(誰にでも出来るわけではなかろうが)。

結局、せっかく見直したけど、大昔見た印象と完全に同じ印象しか受けず。やれやれ(笑)

それにしても、最後の仮装舞踏会でドでかい角つきカブトをかぶる公爵の性格って、やっぱ歪んでいるよねえ(自ら頭に角を生やすとは…)。

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