1933年、ロイド・ベーコン監督作品。モノクロ。
ジェームズ・キャグニーのミュージカルを見たくてレンタル。

時代はトーキー映画興隆期。これまで生のレビューを上演してきた劇場は、安価なため客を呼びやすい映画にどんどん乗換えつつあった。
舞台監督ケント(キャグニー)も、夫の将来に見切りをつけた妻に離婚届を突きつけられる。が、アイディアマンのケントは献身的な秘書ナン(ジョーン・ブロンデル)と共に、様々な工夫で安価で魅力的なレビューを作り続けようとする。

勿論問題は山積。ライバル会社が彼のアイディアを盗み続けるばかりでなく、共同経営者は帳簿をごまかしてケントのサラリーをピンハネし、その妻は自分の気に入りの青年を舞台に強引に売り込んでくる、まさに内憂外患。
おまけに性悪美女に引っ掛って婚約しかかるし、社運を賭けた大勝負な舞台直前、元妻が「婚約したそうだけど、離婚届はまだ出してなかったのよ」と強請にやってくる。女を見る目ないのね。秘書の献身と愛情にこたえる気になるまで、なんでこんなにかかるのか。
モノ凄いスピーディな演出で、キャグニーのワーカホリックぶりとピンチの連続が描かれて、息つく暇もない。

そして、舞台の直前に主演男優が酔いつぶれるのがキワメツケ。
が、もちろんコレはお約束でもある。
「しっかりしろ!」と袖でもみあったはずみに、最後の舞台に転がり出てしまったのは主演男優でなくケントのほう。肚を据えた彼は、そのまま自分で見事なステージ「上海リル」を演じきるのだった。(たまたまどちらもタキシード姿だった)

…ああ…
キャグニーin「上海リル」、めっちゃカッコイイです!ちょいと崩したタキシードは男の色気、途中乱闘シーンをはさんで(小柄なのに超腕っ節が強そうなんですねキャグニー!)、水兵服に着替えるとこれまたキュート。しかし、ここまで待たせて一曲だけって、とっても勿体ないような。練習場でタップの実力はちらちらっと見せてくれるんだけど、引っ張る引っ張る(^^;)。

まあそれだけ、当時のワーナーとしては結構豪華キャストのミュージカルなんですよね。キャグニーの相手役はブロンデルだけど、ワーナーのトップミュージカル女優ルビー・キーラーは歌手ディック・パウエル(共同経営者夫人の被保護者)とカップルになる。
キーラーは何故か最初はメガネの事務員で、パウエルにちょっかい掛けられて突然「舞台に戻るわ」とお洒落して戻ってくるという、フシギな設定。急に美人になる…といっても、序盤のメガネっ娘ぶりもとっても可愛い。小柄なのでキャグニーともマッチするし「上海リル」の「東洋風」メイクもなかなか可愛い。水中レビューまでやるのはビックリだが、エスター・ウィリアムズ以前にこれだけやれてたのね…水中レビューという手法はそんなに興味はないのだけど、振付のバスビー・バークレーは好きなんだろうな。幾何学模様も作り易いし。

でもやっぱり!最後の「上海リル」が一番素敵だったですね、ミュージカルナンバーの中では。
もっとキャグニーを踊らせてほしかった(まあその、何でも踊れるというタイプの人ではないのかもしれないけど。それに踊ってなくても常にリズミカルで勢いの良い印象の人だけど)。

あと、トーキー興隆期って、ほんとにこんな風に、映画本編上映のあいまに短いレビューを見せるなんてことがあったんだろうか。ウソ描いても仕方ないだろうが、今見ると全く驚きである。

お気に入り日記の更新

日記内を検索