1953年、ジョージ・シドニー監督作品。カラー。
ずっと気になりながら、未見だったMGMミュージカル。何故か?
気になる趣向と、趣味じゃないのでは、ととためらう要素が入り混じってたからだ。安直に言うとそもそも贔屓のスターが出ていない。ミーハーと言われようと、私の映画の見方なんてそんなモンである。
ハワード・キール=キャスリン・グレイスンのオペラティックヴォイスの歌カップルは、確かに「MGMの顔」な実力派だが、私の好みはアリアをぶつけ合う歌劇タイプより、軽快なダンスたっぷりなミュージカル。
一方、確かに実力派のダンサーがいっぱい出てるのも確か。アン・ミラー以外はあまりちゃんと作品を見たことはないが、男性陣トミー・ロール、ボビー・ヴァン、ボブ・フォッシー、女性陣にキャロル・ヘニーと気になる名前が揃う。もう一人の女性ダンサー、ジーン・コインはジーン・ケリー夫人らしい。「ザッツ・エンタティンメント」で一部を見たのみで、気になるのは気になってた。
物語もひとひねりしたもの。シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」をミュージカル化して(「キス・ミー・ケイト」というタイトルで)舞台にかけようという連中のお話で、劇中劇とオフステージの人間関係が交錯する。そういう工夫はとてもソソられる。以前に、現実と空想が入り混じる話が好き、と日記に書いたがそれと同じで期待せずにはいられないネタだ。…ただし今時「じゃじゃ馬ならし」が素直に楽しめる話なのかというとビミョーだ。特に女性には。
そんなこんなで期待半分不安半分に見始めた。
タイトルバックの劇中曲メドレーでちょっと盛り上がる。コール・ポーター、佳曲揃いだ。
冒頭、座長のフレッド(キール)が"コール・ポーター"(ロン・ランデール)と前妻の女優リリー(グレイスン)を家に呼び、「キス・ミー・ケイト」への出演を打診する所でまず"So in Love"。ドラマチックでなかなか。
飛び込んできて"Too Darn Hot"を踊るのがもう一人の主演女優ロイス(アン・ミラー)。本命は共演ダンサーのトミー・ロールらしいが("Why Can’t You Behave""Always True to You in My Fashion")、座長にもベタベタするチャッカリ娘なのでリリーはイライラ。この元夫婦、多少は互いに未練がありそうだ。ケンカばかりだが開幕直前にふと新婚時代ドイツで共演した舞台を回想し"Wunderbar"を仲良くデュエット。これは素晴らしくノリのいいゴージャスなワルツ。
舞台美術や中世風の衣装はカラフルで実に目に楽しい。シェイクスピア劇だからみんなタイツだが、長身のキールを初めとしてさすがに男性陣皆スタイルいいですしね。どうでもいいがコッドピースはつけていない。時代考証より見た目重視だ(笑)。
芝居は賑やかにスタートするが("We Open in Venice")、借金取りのギャングが押し掛けてきたり、フレッドが花を送り間違えてリリーを激怒させたりと進行は波乱含み。舞台上で主役二人は本気でひっぱたきあい、「降りるわ!」と叫ぶリリーをフレッドはギャングまで利用しアドリブ連発で引きとめる(笑)
リリーを迎えに彼女の婚約者まで劇場にあらわれ、フレッドはついに強引な手を使うことを諦める。が、「代役を呼べ」と沈んだ表情で最終幕の舞台に歩み出たフレッドの前に、去った筈のリリーが衣装をつけて、笑顔で待ち構えていた。舞台は万雷の拍手とともに幕を閉じる。
せっかく人間関係が錯綜してるのに…説明不足(特に後半)が非常に惜しい。フレッドとロイスの関係がどの程度かも、リリーが何をきっかけに戻ることにしたのかもよく分からないし、また婚約者とロイスは知り合いらしいが、全然ソレも生かしてない。
私はミュージカル・ナンバーさえ楽しめる出来ならストーリー自体はあまり気にしない方だが、これはさすがに気になる。婚約者と去ったあと、何があったんだリリー!!!
ミュージカル・ナンバーについては、結構イイとは思う。ただ、好みに合ったものを上から数え上げると、"Wunderbar"と飛び入り出演体験が気に入ったらしいギャング二人組が歌い踊る"Brush Up Your Shakespeare"が最右翼。次が"So in Love"そして劇場の看板が映った時に流れた曲が良かったなあ。…って、なぜ全てオフステージの曲(爆)
しいて舞台上での曲で一番楽しいものを選ぶとオープニングの"We Open in Venice"…というのは、なんだか気持が尻すぼみ。
舞台での歌は、悪くはないんだがオペラ調なので、私は少し飽きるんですね。特にキールの"I’ve Come to Wive It Wealthily in Padua"、"Where Is the Life That Late I Led?"なんか、結構いいんですがもう少し短くしておくれ。
ダンスについては、レベルは高いと思うんですが、やっぱり私はあまりアン・ミラーが好きになれないなあ…。もうちょっとスマートさとか軽やかさが欲しい。トミー・ロールは確かに凄いです、ジャンプの滞空時間が妙に長い。フォッシーとヘニーのダンスもとても斬新でカッコいいのはわかります、ただ、好みに合うかといわれるとそうでもない、凄いなあとは思いつつも。トミー・ロールはミラー以外の相手と踊る所を見てみたい気もちょっとはしますが…
ダンスには素人のギャング(キーナン・ウィンとジェームズ・ホイットモア)の素朴な歌と踊りが一番楽しかったりするのは、どうしたもんなんでしょうね。不思議なもので、ダンスナンバーの好感度、ウットリ度は、技術の高さだけで決まるものでもないんですよね(少なくとも私には)。
というわけで、とても楽しめるナンバーがいくつもありましたが(キールとグレイスンのコンビは期待以上だったし。ガタイのいいキールは役にぴったり、“小娘”臭くみえがちだったグレイスンも堂々たるもの)、やっぱりビミョーさも残す作品でした。いやー、もったいないなぁ!
ずっと気になりながら、未見だったMGMミュージカル。何故か?
気になる趣向と、趣味じゃないのでは、ととためらう要素が入り混じってたからだ。安直に言うとそもそも贔屓のスターが出ていない。ミーハーと言われようと、私の映画の見方なんてそんなモンである。
ハワード・キール=キャスリン・グレイスンのオペラティックヴォイスの歌カップルは、確かに「MGMの顔」な実力派だが、私の好みはアリアをぶつけ合う歌劇タイプより、軽快なダンスたっぷりなミュージカル。
一方、確かに実力派のダンサーがいっぱい出てるのも確か。アン・ミラー以外はあまりちゃんと作品を見たことはないが、男性陣トミー・ロール、ボビー・ヴァン、ボブ・フォッシー、女性陣にキャロル・ヘニーと気になる名前が揃う。もう一人の女性ダンサー、ジーン・コインはジーン・ケリー夫人らしい。「ザッツ・エンタティンメント」で一部を見たのみで、気になるのは気になってた。
物語もひとひねりしたもの。シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」をミュージカル化して(「キス・ミー・ケイト」というタイトルで)舞台にかけようという連中のお話で、劇中劇とオフステージの人間関係が交錯する。そういう工夫はとてもソソられる。以前に、現実と空想が入り混じる話が好き、と日記に書いたがそれと同じで期待せずにはいられないネタだ。…ただし今時「じゃじゃ馬ならし」が素直に楽しめる話なのかというとビミョーだ。特に女性には。
そんなこんなで期待半分不安半分に見始めた。
タイトルバックの劇中曲メドレーでちょっと盛り上がる。コール・ポーター、佳曲揃いだ。
冒頭、座長のフレッド(キール)が"コール・ポーター"(ロン・ランデール)と前妻の女優リリー(グレイスン)を家に呼び、「キス・ミー・ケイト」への出演を打診する所でまず"So in Love"。ドラマチックでなかなか。
飛び込んできて"Too Darn Hot"を踊るのがもう一人の主演女優ロイス(アン・ミラー)。本命は共演ダンサーのトミー・ロールらしいが("Why Can’t You Behave""Always True to You in My Fashion")、座長にもベタベタするチャッカリ娘なのでリリーはイライラ。この元夫婦、多少は互いに未練がありそうだ。ケンカばかりだが開幕直前にふと新婚時代ドイツで共演した舞台を回想し"Wunderbar"を仲良くデュエット。これは素晴らしくノリのいいゴージャスなワルツ。
舞台美術や中世風の衣装はカラフルで実に目に楽しい。シェイクスピア劇だからみんなタイツだが、長身のキールを初めとしてさすがに男性陣皆スタイルいいですしね。どうでもいいがコッドピースはつけていない。時代考証より見た目重視だ(笑)。
芝居は賑やかにスタートするが("We Open in Venice")、借金取りのギャングが押し掛けてきたり、フレッドが花を送り間違えてリリーを激怒させたりと進行は波乱含み。舞台上で主役二人は本気でひっぱたきあい、「降りるわ!」と叫ぶリリーをフレッドはギャングまで利用しアドリブ連発で引きとめる(笑)
リリーを迎えに彼女の婚約者まで劇場にあらわれ、フレッドはついに強引な手を使うことを諦める。が、「代役を呼べ」と沈んだ表情で最終幕の舞台に歩み出たフレッドの前に、去った筈のリリーが衣装をつけて、笑顔で待ち構えていた。舞台は万雷の拍手とともに幕を閉じる。
せっかく人間関係が錯綜してるのに…説明不足(特に後半)が非常に惜しい。フレッドとロイスの関係がどの程度かも、リリーが何をきっかけに戻ることにしたのかもよく分からないし、また婚約者とロイスは知り合いらしいが、全然ソレも生かしてない。
私はミュージカル・ナンバーさえ楽しめる出来ならストーリー自体はあまり気にしない方だが、これはさすがに気になる。婚約者と去ったあと、何があったんだリリー!!!
ミュージカル・ナンバーについては、結構イイとは思う。ただ、好みに合ったものを上から数え上げると、"Wunderbar"と飛び入り出演体験が気に入ったらしいギャング二人組が歌い踊る"Brush Up Your Shakespeare"が最右翼。次が"So in Love"そして劇場の看板が映った時に流れた曲が良かったなあ。…って、なぜ全てオフステージの曲(爆)
しいて舞台上での曲で一番楽しいものを選ぶとオープニングの"We Open in Venice"…というのは、なんだか気持が尻すぼみ。
舞台での歌は、悪くはないんだがオペラ調なので、私は少し飽きるんですね。特にキールの"I’ve Come to Wive It Wealthily in Padua"、"Where Is the Life That Late I Led?"なんか、結構いいんですがもう少し短くしておくれ。
ダンスについては、レベルは高いと思うんですが、やっぱり私はあまりアン・ミラーが好きになれないなあ…。もうちょっとスマートさとか軽やかさが欲しい。トミー・ロールは確かに凄いです、ジャンプの滞空時間が妙に長い。フォッシーとヘニーのダンスもとても斬新でカッコいいのはわかります、ただ、好みに合うかといわれるとそうでもない、凄いなあとは思いつつも。トミー・ロールはミラー以外の相手と踊る所を見てみたい気もちょっとはしますが…
ダンスには素人のギャング(キーナン・ウィンとジェームズ・ホイットモア)の素朴な歌と踊りが一番楽しかったりするのは、どうしたもんなんでしょうね。不思議なもので、ダンスナンバーの好感度、ウットリ度は、技術の高さだけで決まるものでもないんですよね(少なくとも私には)。
というわけで、とても楽しめるナンバーがいくつもありましたが(キールとグレイスンのコンビは期待以上だったし。ガタイのいいキールは役にぴったり、“小娘”臭くみえがちだったグレイスンも堂々たるもの)、やっぱりビミョーさも残す作品でした。いやー、もったいないなぁ!