Call me Madam
Call me Madam
Call me Madam
1953年、ウォルター・ラング監督、日本未公開作品。カラー。

ドナルド・オコナー見たさに手を出した、英語字幕のみの米盤DVD。
「ショウほど素敵な商売はない」でも共演したエセル・マーマンが、ブロードウェイで主演し大当たりを取った舞台の映画化だという。音楽はアーヴィング・バーリン。

物語は簡単。ワシントンでもてなし上手、パーティ上手ともてはやされた気のいいアメリカの成金未亡人が、欧州の小国の大使に任命されて騒ぎを起こすラブコメディ。半世紀も昔だが民間活力の導入ってのでしょうか。具体的には思い出せないが、実在のモデルもいるのではなかったかな。「黄色いロールスロイス」でもイングリッド・バーグマンが「突然外交官に任命されて欧州へ赴いた富豪未亡人」という設定だった。こんなウソ臭い設定、元ネタがなければそんなに何度も使うまい。未公開だしネタバレで行きます。

エセル・マーマン、声量は凄いが日本人うけは悪そうなとっても「濃い」肝っ玉オバちゃんである。今回も、「ショウほど…」以上に、トコトン天然で俗っぽい。映画冒頭の記者会見でも「光栄です、アメリカとリヒテンブルク公国のために頑張りますわ!」と元気な歌を披露したあと「リヒテンベルクへの赴任はいつですか?」「さあいつかしら。リヒテンベルクってどこにあるの?」
…アメリカ人って、「悪気がなくて気前がよい俗物」がそんなに好きなのね…

それでも何とか公国入りして、「握手」と手を差し出したところ、外相コンスタンチン将軍(サンダース)にいとも優雅に手の甲にキスなぞされた日には、一瞬で固まってしまう。オバちゃんでも乙女である。彼が帰った後のオコナーとのやりとり「今、コンスタンチン将軍が来られてたの」「ほう、どんなでした?」「…WOW!(ワーオ!)」
やれやれ、と思いつつも、次第にオバトメちゃんの可愛げに打たれる私だった。赤・黄・ピンクのドレスをバリバリ着こなすアグレッシブなファッションにも力づけられる(?)。私だってもうイイ年だしなあ。それでも長く引きずる正装の裳裾の扱いには爆笑した(いくら扱いにくいとはいえ、アレ、一瞬女捨ててないか?)。すごい、すごすぎる…

一方補佐官ケネス(オコナー)は、街で偶然お忍びの公女マリア(ヴェラ=エレン)と出会う。恋に落ちかけてからプリンセスと気づいてガックリするが、大使館のレセプションで一緒に踊ってもう止まらなくなる。ややこしい恋に悩むオコナーのラブソングに、それを励ますマーマンが一見(一聴?)別の歌をかぶせると一段と素敵なデュエット"You’re Just in Love"になり、この曲は後刻パートを入れ替えて再現されるがとてもイイ。マーマンとオコナーの個性が対照的なぶん、とてもよく合っていた♪

公女には既に王族の婚約者もいて、ヤケ酒のケネスが酒場で歌い踊るソロナンバー、お城の秘密の通路で逢引するケネスとマリアのデュオなど、今回オコナーの踊りは結構ボリュームもあり見ごたえ十分。彼のダンスは若々しい軽やかさとユーモアが身上で、アクロバティックもやるけど(酒場で何度もモロにブッ倒れる振り付けが凄い。あれでケガしないのか…)、ジーン・ケリーのように筋肉とか質感を感じさせないのが逆に私の好みです。アステアもほんとに軽やかだもんなあ(あまり若々しくないけど)。そしてふわふわ降り注ぐ風船を見上げる、なんとも無垢なさまといったら、ちょっと他に無い味わいかも。
そして、声がいい。ボーイソプラノがヘンな濁りが入らずスルっとテナーに昇華したような、少年めいて甘くさわやかな声なのだ。うっかりするとシナトラよりクロスビーより私好み。基本的には頼りなげなボーヤキャラなので、このキャラで中年以降はどうなるか、と思わせぬではないけど、彼がオッサンになる頃にはどうせミュージカルの世界も様変わりしているから結局どうでもよくなったわけで(泣)。

さて、身分違いの二人は「国にお金が足りないから結婚式なんて当分ない」と考えていたが、「将軍のために」とサリー(マーマン)が米国への借款のネマワシをしたため事態が混乱する。公国の首相・蔵相は借款を期待していたのだが、将軍自身は「借金などせず国政改革のみでの財政再建計画を行いたい」と考えていたのだ。サリーも聞いていたのだが、大使館のイヤミな一等書記官(ビリー・デ・ウォルフ)が『あれは外交的戦略、欲しいものを欲しくないと言って見せているだけ』と彼女に吹き込んだのだった。サリーは「素直に信じていれば」と後悔する。

将軍は激怒するし、首相は米大使館のネマワシで国政が混乱したなど米大統領に苦情を言うしで、サリーとケネスは失意のうちに帰国する。やがて彼らのもとに、なんと将軍が新任の駐米大使として(しかも美女同伴で)赴任してくるというニュースが入ってきた。落胆するサリー。が、同伴の女性は王位継承権を放棄しケネスを追ってきたマリアだった!「何とか借款なしで済ますことができた」と、将軍も笑顔でサリーの手を取るのだった。

ハイ、そんな都合のいい…というのはナシです。ミュージカルなんですからね(~~;)
「The West Point Story」の劇中劇なみのプロットですが、欧州の小国がアメリカに借金するか否か?という要素が時代性を感じさせます。冷戦の頃だし、きっと世界中への金のバラまきで(返済など考えない!)米国の影響力を強めたくて仕方がなかった時代なんでしょうな。サリーの俗っぽさも含め、ちょっぴり政治的な皮肉も秘めているような。

それはさておき、ジョージ・サンダース、こんなに100%善人でヒネてなくて、しかも歌う役なんて!とビックリです。なにせ、代表作がアディソン・デ・ウィット(「イブの総て」の邪悪な劇評家)だし、「セイント」みたいなヒーロー役する時でも9割方皮肉屋だし。非常にレアな役どころ。
それでも押し出しの良さは元々だし(コメカミの少し白くなったところが何とも優雅)、歌も案外イケてました。ソフトなバリトンはなかなかです。多才な人だなあ。

ヴェラ=エレンはお姫様にしては庶民的だが、シド・チャリシーみたいなクールビューティではオコナーの手が届かないかも(^^;)。十分踊れる人だし、ま、いいやって感じかな私には(笑)

バーリンの音楽は、舞台が欧州なせいか?いつもよりあっさりめでシャンパンの泡のよう(笑)

http://www.amazon.com/Call-Me-Madam-Ethel-Merman/dp/B0001FR55C/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1275147992&sr=8-1

とにかく、素晴らしく楽しめました。見終わるとミュージカルナンバーだけ再度つまみ見。やっぱオコナー見に「夜は夜もすがら」の海外盤も注文しようっと(オコナー以外の出演は、ビング・クロスビー、ミッツィ・ゲイナー、ジジ・ジャンメール)。


ご参考までに、YouTubeリンクをいくつか。素晴らしいDVD画質には及びもつきませんが…

http://www.youtube.com/watch?v=lSFtZ34ZW40
Marrying For Love - George Sanders

http://www.youtube.com/watch?v=1FBDp0g-0_4
Donald O’Connor"What Chance Have I With Love"

http://www.youtube.com/watch?v=ZtO8qs5bYQk
Vera Ellen - Donald O’Connor "Something to Dance About"

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