1940年、サム・ウッド監督作品。モノクロ。
この「恋愛手帖」と、やはりジンジャー・ロジャースがケイリー・グラントと組んだ「恋の情報網」が二枚組500円でヤフオクに出ていたのを、ウッカリ落としてしまった。いや、何か忘れたが欲しいモノから目を離していたら最後の数分で他人に持ってかれたショックのあまりつい入札したのだったような気がする。
だってジンジャー・ロジャース、別に好きでもなんでもないんだもん(爆)…グラントは結構好きだけど。

とはいえ、アステアとコンビを組んで踊りまくった十作品はあるし、ビリー・ワイルダーの「少佐と少女」ではコメディエンヌとしての実力を十分に見せてくれた。その彼女がオスカーを獲った作品なんだから見ても損はあるまいと思ったのだったが…やはり、見せてくれましたね。ユーモラスなエピソードを交えながらも二人の男性に愛されて波乱万丈なワーキング・ガールの恋物語。まさに女性映画…このジャンルも私はあまり興味がないのだけれど、1時間48分、みっちり見てしまいました(笑)

映画の前フリは20世紀初頭の女性の姿。電車に乗れば男どもが先を争って席を譲り、控えめな求愛を受けただけで失神寸前。ければ今では参政権も勝ち取って(すると誰も席など譲らない)、バリバリ働き夜遊びにも励む。そんな「新しい女性」の恋物語ですよ、とわざわざ字幕が入るのである。当時はかなり新しっぽかったということだろうかこの話。

そして本題。NYのおしゃれな婦人雑貨店で働くキティ・フォイル(ロジャース)が付き合っているのは真面目な医師マイク(エドワード・クレイグ)。デートの筈が往診に付き合わされたりしながらも、彼のプロポーズに彼女の瞳は輝く。ところが、新生活へ向け荷物をまとめる彼女のもとへ現れたのは昔の恋人で大富豪の御曹司ウィン(デニス・モーガン)。「妻と別れて南米へ発つから一緒に来て」と口説くウィンに、キティの心はグラリと揺れる。病院で待つマイク、波止場で待つというウィン、彼女はどちらを選ぶのか?舞い上がるキティに向って、鏡の中からもう一人のキティが「ちょっと待って、しっかり考えるのよ。あなたはオトナでしょ」と声をかける。
…ここから先は怒涛の回想シーンになる。というか映画の大半が回想だ。

初めにキティに秘書として働く場をくれたのは雑誌社の社長ウィン。顔良し趣味良しお金持ちの彼はまさに『夢の王子様』だが、キティの父が心配した通り、自分の世界から飛び出すだけの気概は不足している。ヒロインは家柄の釣り合わなさに何度も心を打ち砕かれ、一時は未婚の母として強く生きようと決意もするが、死産の憂き目に合う。一方、根は理想主義者で仕事熱心なのだが、出会った時からどこかヘンな人、マイペースな医師マイクについては、「うーむ、あと少しロマンチックをあげればいいのに…」と思えるところがある。「いつ、自分が恋に落ちたって分かるの?」「僕はお金がないしね、この娘のために10ドル使ってもいいと思えた時かな」。…正直だが、正直すぎるゾ。女性にはなかなか厳しい二択かもしれない(笑)

メロドラマには違いないが、ロジャースのワーキングウーマンぶりには独特のリアルな手ごたえがある。思えばアステアとのコンビが見事にハマッたのも、この世のものとも思えぬアステアの踊りと、可愛いのだけど妙に地に足がついて現実家くさいロジャースの個性との、バランスが良かったからではないか。「少佐と少女」で、"12歳の少女に変装して、しかもなかなかバレない"というトンデモ展開も、序盤の「都会に幻滅して田舎に帰ろうとする"現実に負けちゃったワーキングガール"」ぶりが完璧だったから通じるのだと思う。
しかし、実は「恋愛手帖」でも、回想シーンで"恋に恋する15歳の少女"が出てくる。セーラー服姿だ。「モンキー・ビジネス」でも幼女に戻るらしいし…好きだったんだろか若作り演技…

エンディングはちょっぴりイキナリ感があったが、それなりに面白く見れたので良しとしよう。

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