Time Limit
2010年4月25日 映画 コメント (7)
1957年、カール・マルデン監督作品。モノクロ。
朝鮮戦争時、収容所での反逆行為について調査する男が辿りついた、いっそう醜い真実とは。法廷ドラマではないがそれに近い雰囲気の、渋い社会派ミステリ?映画。主演のリチャード・ウィドマークは制作も兼ね、友人である俳優マルデンが珍しくもメガホンを取っている。気合いの感じられる作品だ。…地味だけど。
日本未公開だし(TV放映はあったらしいが。「祖国への反逆!第5捕虜収容所」)、今回、ストーリーはもうネタバレ全開とします。
北朝鮮の米軍捕虜収容所で、逃げようとした捕虜が射殺されるシーンから映画はスタート。
タイトルロールを挟み、舞台はNYに(多分)。隙のない態度、悠然たる足取りでオフィスへ向かう米軍の調査官エドワーズ大佐(ウィドマーク)をカメラは映し出す。彼の調査対象は、収容所内で様々な利敵行為を行ったとされるカーギル少佐(リチャード・ベースハート)。迅速に進めろと煩い上司コナーズ将軍(カール・ベントン・レイド)の圧力に悩まされながらも、エドワーズは「すべてを明らかにする」ことにこだわり、捕虜十数名の証言を慎重に吟味するが、カーギルは「真実に何の価値がある」と非協力的で、「自分は有罪だ」と言うのみで黙秘を続ける。
極寒と飢餓、不衛生な環境と懲罰。米軍捕虜たちは収容所の過酷な環境に屈せず、何ヶ月も耐えてきたという。それが、突然(誰もが「突然」と強調する)節をまげて収容所長の走狗となったカーギルの動機はやはり自己保身だったのか、洗脳か、それとも?…過去の記録や他の捕虜の印象では、カーギルは知的で誠実な人物と見えたのだが。一方、将軍の息子が同じ収容所内で病死していたということもあり、圧力は次第に強まる。
やがて、カーギルが「堕ちる」直前に病死した二人について、証言の中に奇妙な一致点がある事がわかる。捕虜たちが隠している何かがあるのでは、と考えたエドワーズは証人の一人ミラー少尉(リップ・トーン)とカーギルを対面させた。興奮したミラーは陰惨な「秘密」をぶちまける。
…脱走を目論んでいた仲間の一人が殺されたのは、密告者がいたせい。捕虜たちは密告者を裁くことを決め、殺害役を決めるべく籤を引く。唯一反対したのがカーギル、籤に当ったのがミラー。そして密告者とは、将軍の息子だった…
だがその秘密には、カーギルのみ知る「続き」があった。せっかくの勝利(密告者)を失った収容所長キム大佐は逆上し、彼にに「お前が協力しなければ捕虜全員を殺す」と密かに言い渡したのだ。これ以上仲間の死を見ることに耐えられないと感じたカーギルは遂に「堕ちた」。そして絶望と孤独に苛まれつつ裁きを待ち続けているのだった。
将軍の気持を思い顔色を失うエドワーズだが、真実は真実。
衝撃からある程度立ち直ると将軍は「息子がそんな臆病者だったとは」と失望の言葉を吐くとともに「そもそもキム大佐の提案は、軍人としては蹴るべきだった。何のための軍務規律(Code)だ」とカーギルに言い放つ。「我々将官はもっと大きな規模で、責任を持って部下の命について判断を下し続けているのだ」とも。
しかしここで、カーギルは逆に将軍に強く問いかける。「人に永遠に英雄であり続けることを要求していいのか。どれほど素晴らしい人間の勇気にも限りはあるだろう。最後の一瞬の転落でその人間の全てを否定するのは正しいことなのか?私はあなたの息子さんを否定してしまいたくない」
最後に、エドワーズは調査報告書を読みあげる。曰く「利己的動機によるものではない、軍法会議は不要」。初めての理解者を得て救われた表情を見せるカーギルに、エドワーズは釘をさす。「それでもおそらく軍法会議は開かれるだろう」…だが少なくとも、カーギルの問いを、人々に投げかけることはできる。
エドワーズは、もしも軍法会議が開かれた暁には、カーギルの弁護を引き受けようと決意していた。
…うーーーーん。
50年代後半の映画でこの展開、このテーマには驚かされた。
世界の憲兵を気取っていた冷戦時代の米国において、しかも民間人がでなく、軍隊という組織の内部でこのような問いを放つというのは。
捨て鉢な表情のベースハート、一見好青年だが落ち着かないリップ・トーン、お節介だが上司思いの軍曹マーティン・バルサム、不幸なカーギル夫人ジューン・ロックハート、みな熱演だ。
あまりにも舞台劇臭い演出は面白味があるとは言えないが、テーマがテーマだけに仕方がないかもしれない。
わがご贔屓ウィドマーク様も勿論好演だが、ベースハートとは好対照に、抑えたソフトな演技を見せてくれる。ピシリとカッコよく軍服を着こなしているが、しゃべり方からして普段よりぐっと柔らかい(今回ばかりは大塚周夫さんのアテレコは合わない気がする)。調査官だから舌鋒鋭く迫る場面はあるが、エドワーズ大佐という人物は能弁や鋭さよりも、誠実さと理想主義が基本の持ち味なのだ。証言十ン人分の中から手がかりを見つける時も、自分一人でバリバリと、というのでなく秘書役エヴァンス伍長(ドロレス・マイケルズ)のヒラメキが大きな助けになる。
ドロレス・マイケルズは「ワーロック」にも出ていた筈だが、今回とても可愛いと思った。彼女とのやりとりは、ユーモラスな中にも、呼吸の通い合う男女の(でも恋愛未満の)ふわっとした味わいがあってハードなドラマの一服の清涼剤。ステキな上司とこんなステキな関係だとイイなあ(*^^*)
…結局最後はミーハーな思いで見ている自分でした(笑)
http://www.amazon.com/Time-Limit-Richard-Widmark/dp/B001U6YIB0/ref=sr_1_7?ie=UTF8&s=dvd&qid=1271515502&sr=8-7
あ、念のため。過去の日記でも触れましたが、この北米版DVDには字幕が全くありません。英語字幕すらなし。ただ、クローズドキャプション(CC)字幕だけは入っています(もちろん英語のみ)。ヒアリングに自信があればいいのですが、CCが見れる環境でない方は、辛いかもしれません。私はリージョン1に設定変えたPCのWinDVDで、CC付き視聴しました。
朝鮮戦争時、収容所での反逆行為について調査する男が辿りついた、いっそう醜い真実とは。法廷ドラマではないがそれに近い雰囲気の、渋い社会派ミステリ?映画。主演のリチャード・ウィドマークは制作も兼ね、友人である俳優マルデンが珍しくもメガホンを取っている。気合いの感じられる作品だ。…地味だけど。
日本未公開だし(TV放映はあったらしいが。「祖国への反逆!第5捕虜収容所」)、今回、ストーリーはもうネタバレ全開とします。
北朝鮮の米軍捕虜収容所で、逃げようとした捕虜が射殺されるシーンから映画はスタート。
タイトルロールを挟み、舞台はNYに(多分)。隙のない態度、悠然たる足取りでオフィスへ向かう米軍の調査官エドワーズ大佐(ウィドマーク)をカメラは映し出す。彼の調査対象は、収容所内で様々な利敵行為を行ったとされるカーギル少佐(リチャード・ベースハート)。迅速に進めろと煩い上司コナーズ将軍(カール・ベントン・レイド)の圧力に悩まされながらも、エドワーズは「すべてを明らかにする」ことにこだわり、捕虜十数名の証言を慎重に吟味するが、カーギルは「真実に何の価値がある」と非協力的で、「自分は有罪だ」と言うのみで黙秘を続ける。
極寒と飢餓、不衛生な環境と懲罰。米軍捕虜たちは収容所の過酷な環境に屈せず、何ヶ月も耐えてきたという。それが、突然(誰もが「突然」と強調する)節をまげて収容所長の走狗となったカーギルの動機はやはり自己保身だったのか、洗脳か、それとも?…過去の記録や他の捕虜の印象では、カーギルは知的で誠実な人物と見えたのだが。一方、将軍の息子が同じ収容所内で病死していたということもあり、圧力は次第に強まる。
やがて、カーギルが「堕ちる」直前に病死した二人について、証言の中に奇妙な一致点がある事がわかる。捕虜たちが隠している何かがあるのでは、と考えたエドワーズは証人の一人ミラー少尉(リップ・トーン)とカーギルを対面させた。興奮したミラーは陰惨な「秘密」をぶちまける。
…脱走を目論んでいた仲間の一人が殺されたのは、密告者がいたせい。捕虜たちは密告者を裁くことを決め、殺害役を決めるべく籤を引く。唯一反対したのがカーギル、籤に当ったのがミラー。そして密告者とは、将軍の息子だった…
だがその秘密には、カーギルのみ知る「続き」があった。せっかくの勝利(密告者)を失った収容所長キム大佐は逆上し、彼にに「お前が協力しなければ捕虜全員を殺す」と密かに言い渡したのだ。これ以上仲間の死を見ることに耐えられないと感じたカーギルは遂に「堕ちた」。そして絶望と孤独に苛まれつつ裁きを待ち続けているのだった。
将軍の気持を思い顔色を失うエドワーズだが、真実は真実。
衝撃からある程度立ち直ると将軍は「息子がそんな臆病者だったとは」と失望の言葉を吐くとともに「そもそもキム大佐の提案は、軍人としては蹴るべきだった。何のための軍務規律(Code)だ」とカーギルに言い放つ。「我々将官はもっと大きな規模で、責任を持って部下の命について判断を下し続けているのだ」とも。
しかしここで、カーギルは逆に将軍に強く問いかける。「人に永遠に英雄であり続けることを要求していいのか。どれほど素晴らしい人間の勇気にも限りはあるだろう。最後の一瞬の転落でその人間の全てを否定するのは正しいことなのか?私はあなたの息子さんを否定してしまいたくない」
最後に、エドワーズは調査報告書を読みあげる。曰く「利己的動機によるものではない、軍法会議は不要」。初めての理解者を得て救われた表情を見せるカーギルに、エドワーズは釘をさす。「それでもおそらく軍法会議は開かれるだろう」…だが少なくとも、カーギルの問いを、人々に投げかけることはできる。
エドワーズは、もしも軍法会議が開かれた暁には、カーギルの弁護を引き受けようと決意していた。
…うーーーーん。
50年代後半の映画でこの展開、このテーマには驚かされた。
世界の憲兵を気取っていた冷戦時代の米国において、しかも民間人がでなく、軍隊という組織の内部でこのような問いを放つというのは。
捨て鉢な表情のベースハート、一見好青年だが落ち着かないリップ・トーン、お節介だが上司思いの軍曹マーティン・バルサム、不幸なカーギル夫人ジューン・ロックハート、みな熱演だ。
あまりにも舞台劇臭い演出は面白味があるとは言えないが、テーマがテーマだけに仕方がないかもしれない。
わがご贔屓ウィドマーク様も勿論好演だが、ベースハートとは好対照に、抑えたソフトな演技を見せてくれる。ピシリとカッコよく軍服を着こなしているが、しゃべり方からして普段よりぐっと柔らかい(今回ばかりは大塚周夫さんのアテレコは合わない気がする)。調査官だから舌鋒鋭く迫る場面はあるが、エドワーズ大佐という人物は能弁や鋭さよりも、誠実さと理想主義が基本の持ち味なのだ。証言十ン人分の中から手がかりを見つける時も、自分一人でバリバリと、というのでなく秘書役エヴァンス伍長(ドロレス・マイケルズ)のヒラメキが大きな助けになる。
ドロレス・マイケルズは「ワーロック」にも出ていた筈だが、今回とても可愛いと思った。彼女とのやりとりは、ユーモラスな中にも、呼吸の通い合う男女の(でも恋愛未満の)ふわっとした味わいがあってハードなドラマの一服の清涼剤。ステキな上司とこんなステキな関係だとイイなあ(*^^*)
…結局最後はミーハーな思いで見ている自分でした(笑)
http://www.amazon.com/Time-Limit-Richard-Widmark/dp/B001U6YIB0/ref=sr_1_7?ie=UTF8&s=dvd&qid=1271515502&sr=8-7
あ、念のため。過去の日記でも触れましたが、この北米版DVDには字幕が全くありません。英語字幕すらなし。ただ、クローズドキャプション(CC)字幕だけは入っています(もちろん英語のみ)。ヒアリングに自信があればいいのですが、CCが見れる環境でない方は、辛いかもしれません。私はリージョン1に設定変えたPCのWinDVDで、CC付き視聴しました。