Francis : The Talking Mule
Francis : The Talking Mule
Francis : The Talking Mule
1950年、アーサー・ルービン監督作品。モノクロ、日本未公開。

やっと来ました"Francis"シリーズ四作品入りボックス(The Adventures of Francis the Talking Mule, Vol. 1 )。が、開いてみると呆れたことに、両面ディスクの裏表に強引にシリーズ四作品が詰め込まれていました。DVD一枚ではボックスじゃないなぁ…

ミュージカルじゃないけど、どこかで間違って歌くらい歌ってくれるといいなあ、と買ってみた。昔のコメディは一曲くらい、歌入ってることも多いしね。…なぁんも無かったですが。米盤、英語字幕あり。

まずは一作目"Francis"。
ファーストシーンは銀行の受付窓口(もちろん窓口は複数ある)に座る青年ピーター・スターリング(ドナルド・オコナー)。店内は混んでいるのだが、なぜか彼の前だけほとんど列が出来ない。彼を横目で見ながらヒソヒソ話をする客も…
己の不遇をグッと耐える風情のオコナーが何とも可笑しい。やがて上司が彼を呼びつけ、「銀行は信用第一だ。妙な噂のある人間は困る。根も葉もないバカな噂とは思うが…」。
ピーターは意を決し、どもりながら言う。
「いえ、あの噂は、本当なんです!最初から話させて下さい!」

かくして映画は過去に飛び、ビルマ戦線におけるピーター・スターリング少尉と、ヘンテコな"人語を喋るラバ"フランシスとの遭遇、そしてその後の彼らの「冒険」が物語られ始める。
おお、なかなかテンポの良い導入部ではないですか。


部隊からはぐれ、銃声轟くジャングルをひとり逃げ回っていたピーターは、「危ないから頭を低くして」と突然かけられた声に戸惑う。誰もいないのに…と思いきや、オッサンくさい声をかけてきたのは、一頭のラバだった(声:チル・ウィルス)。何故だか人語がしゃべれるラバ“フランシス”は、負傷したピーターを米軍基地まで送り届けてくれる(一応米軍所属のラバであった)。

さて、ピーターが気に入ったらしいフランシスは、その後も何度か、敵日本軍の動きや待ち伏せ情報などを教えてくれる(どこで情報をゲットしているのかはナゾだ)。そのたびピーターは手柄を立てることになるが、「どこでその情報を入手したのかね」「はっ、知り合いのフランシスというラバが…」で、手柄のたびに基地と精神病棟を行ったり来たりする羽目に。正気と証明するために「他の人間にも喋ってみせてくれ!」と頼んでも、フランシス、なかなか聞いてくれないんですね(気持は分かる。特別な存在だと知れたら面倒くさいことだらけだろう)。
病院の作業療法?でピーターが編んでいるバスケットが、だんだん巨大化してゆくのが結構笑える。それでも彼は何とか、精神病棟から出してもらうため、司令官スティーヴンス将軍(ジョン・マッキンタイヤ)を、"お仲間"に引き込むことに成功するが…。


とにかくこの主人公の、バカ正直っぷりが…凄いです(笑)
それも、お人好しで正直者だけどほんとにバカなんです!なのに、こんなに可愛らしく感じるのは何故(カオの問題ではない)。知的なタイプしか眼中に入らないと思っていた私なのに…

ドナルド・オコナーおそるべし…しかも、今回全く歌いも踊りもしてないのに…。
突飛な設定のコメディだが、意外なほど抑制の効いた彼の演技が、物語のスベリを防いでいると思う。終盤ピーターに届く、思いがけない悲報の場面なんか胸キュンですよ…
そう、たんにバカと言うのではなく、「無垢」を感じさせるキャラクターに仕上がってる。

そして、いつもクールに構えているが、ピーターのピンチ!となると、つい主義に反して人前で喋ってしまうフランシス。わかるよそれ!母性本能ってやつかねえ。オスだけど。
ハッキリいってこのコンビ、保護者はフランシスのほうである。
ちなみにラバ(Mule)とは、雄のロバと雌のウマの交配種(雑種)で、家畜としては優れた能力を持つが、生殖能力はない。ある意味切ない生き物である…

当時は低予算でかなりのヒットをかっとばした人気作品だったらしい(戦闘シーンなんかいかにも実写フィルムの転用)。なんと続編が6本も作られている。7本目はオコナーがもう嫌だと言ったので(厳密には、6本目に出る代わりにもうユニヴァーサル辞めさせてくれと言い張ったらしい)、ミッキー・ルーニーが主演したそうな。

私だって、すぐ二作目を見たくなっちゃったくらいだから仕方がない。ホントに何ということもない、ちゃち~ぃ話だし、コメディとしても今の目で見るとユルめな気がするが(爆笑、でなく、ニヤリ、とか、おいおい、って感じ)、場面の切り替えのテンポが良くてスッキリしているし、何より一人と一匹のおかしな友情(!)がほんわかと伝わってきて心地よい。多少古めかしいのかもしれないが、私は好きだ。
★4つ付けるには躊躇を感じるが…ええい、つけちゃえ!

最初からオコナーが気に入っていて見てるからかもしれないが、買って良かった~☆


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